なぜ洋ゲーのキャラクターは強くなるほど怒ってごつい顔になっていくのだろう?
最近はまっているスウェーデンのゲーム『Rivengard』で気になっていたことに、同じスウェーデンのゲーム会社に勤めているデザイナーさんに聞いてふわっとインタビューしてもらえました。
聞いて下さったナマステ・キティさんは、Twitter やブログで北欧のゲーム開発やゲーム情報を発信しているのでこの記事が気になったらぜひフォローしてみてください。
スウェーデンのモバイルゲーム『Rivengard』をご紹介!という記事を書いていたら、ゲームキャストの中の人が「進化するほどキャラクターが可愛くなくなる洋ゲーイズムだけはアレだけど」というTweetを見てちょっと気になったので、このイズムは何なのか?どこから来ているのか?
同じくスウェーデンベースのスタジオ Flamebait Games のキャラクターデザイナー・3Dデザイナーのグスタフに質問をしてみました!というのが今回の話です。
『Rivengard』は、スウェーデンはストックホルムにスタジオを構えるSNOWPRINT STUDIOS 制作のRPG。
キャラクターをマスに進めてターン制で戦うシュミレーションRPG。
ゲームは結構安定しているので大きなスタジオかと思う人もいるかもしれませんが、創業は2015年で従業員数は現在19人という比較的小さなスタジオです。
▲マップは真上からだが、高低差がわかりやすいのがすごいUI
開始して3時間くらいのガチャでドラゴンを引いてしまった。なんてこった。
▲ド、ドラゴンだと
ちなみに、キャラクターの説明がちょいちょい倒置法なのは、うちのゲーム内でも多い。
▲デザイン安定性ある
ヒーラーのハンナは可愛い。推せる!
▲Hannaはスウェーデンでよくある女子の名前
無料なので気になる人は是非プレイを。動作も安定していて長く遊べそうな感があります。
というブログを書いていた時にTwitterに流れてきたのがこちら。
快速シミュレーションRPG『Rivengard』がiOS/Android向けにリリース。
— 寺島壽久/ゲームキャストの中の人 (@gamecast_blog) January 19, 2021
本当に面白くてプレイが止まらない。「遊びたいからスタミナたまってくれ!」って久々に思えている。
超おすすめ。進化するほどキャラクターが可愛くなくなる洋ゲーイズムだけはアレだけどhttps://t.co/eOzTidsDkO pic.twitter.com/1namt2PlIc
私も随分前から「なぜ進化すると萌えられなれなくなるのか?」疑問に思っていたので、うちのスタジオのスウェーデン出身のキャラクターデザイナーのグスタフに聞いてみました。
返答者はグスタフです。
目次.
質問1、この手のキャラクターデザインは北欧スタイルなのか?
質問2、じゃあちなみに何が北欧スタイルなのか?
質問3、洋ゲーでは強く進化すればするほど怒っている様になるのはなんで?「強さ=怒り」なの?
質問4、強い女性はウケるのか?
質問5、女性が強くなったのはジェンダートレンドからなのか?
まとめ
質問1、この手のキャラクターデザインは北欧スタイルなのか?
『Rivengard』は思いっきりアメリカのデザインだと思うよww。
モバイルゲームの観点からいうと、北欧内のゲーム市場はかなり小さいから、北欧のスタジオは自分たちの地域の外で売れる事が分かっている、より確立されたアメリカのデザインやスタイルを取り入れる傾向があるんだよね。
ドイツの開発者はドイツのプレイヤーをターゲットにすることが多いからなんか変わったキャラクターデザイン多くてちょっと違和感感じることがあるよ。
質問2、じゃあちなみに何が北欧スタイルなのか?
そもそもゲームで北欧スタイルということになると、ミニマリズムで芸術方面な感じのデザインになるかな。
デンマークだとPlaydeadのゲームは陰影のつけ方やミニマリズムという点でかなり北欧的デザイン。
あとモニュメントヴァリーのミニマルなデザインとかね。
こういうのはアート寄りで素敵だけどすっごいマス向けではないよね。
PlaydeadのInside
ミニマルなモニュメントバリー
ミニマルで女子デザインというとコレ。Sayonara Wild Hearts
質問3、洋ゲーでは強く進化すればするほど怒っている様になるのはなんで?「強さ=怒り」なの?
任天堂はカービィのゲームをアメリカに出す時にはパッケージはかなり怒った顔になってるよね。
それと同じことなのかもしれないね。
良くデザイン界隈では話題になる、パッケージのデザインが日米で違う話で、Box Art Battles: The Kirby Series - IGNに良くまとまってるんだけど。
やはりアメリカは、ヒーローと悪者がはっきりしている世界観がコミックやコンテンツの根底にあって、勧善懲悪みたいなストーリーが多いと思うよ。
パッケージに悪者を倒しに行く重要な使命のあるカービィみたいなストーリーを入れることでプレイヤーにヒーロー感を持たせてる感じなんじゃないかな。
▲めちゃ意気込んでるカービィ
この下の画像では、日本はなんかみんなで楽しそうにワイワイしてる感じでチーム感あるけど、アメリカのはなんか、ザ・ヒーローカービィみたいなイメージだもんね。
▲日本のカービィハッピーすぎや。上記出典Box Art Battles: The Kirby Seriesより。
任天堂は任天堂アメリカもあってローカライズもマーケティングもちゃんとデータに基づいて調査してるだろうから、根拠があってやってることなんだと思う。
ちなみに僕は幸せそうなカービィの方が好き。
質問4、強い女性はウケるのか?
日本のゲームのキャラクターデザインに良く見られるあからさまにセクシーなキャラクターは欧米では少なくなってきてると思うよ。
最初は「セクシー」を売りにしてたキャラクターも徐々にトーンダウンしてきている。
例えばトゥームレイダーのララ・クラフト。
初期はおっぱいとお尻がメインの焦点だったにも関わらず、最近では露出のそんなにない本当に一般的であっても魅力的なキャラクターに変わってきたのは本当に良い例だと思う。
▲寒くなってきてもいる。出典:https://www.youtube.com/watch?v=PRxPtKT5tEU
質問5、女性が強くなったのはジェンダートレンドからなのか?
そうだと思うよ。
ララ・クラフトの胸が巨乳で尖ってたあたりの頃、それ以前はゲームは男性に向けて作られてた頃があるからパッケージやゲーム広告も結構男性向けのものが多かった。
▲「サイズは関係あるよ」と書かれた釣りゲームの広告。出典:vintageeveryday
それから考えると女性のゲーマーも増えたしね。
ゲームの祭典E3では2006年に展示するゲームブースにセクシーな女性(ブースモデル・ブースベイビー)を立たせるのを規制してて、PAXも2010に厳格なガイドラインを制定し、「部分的なヌード」を禁止してるし、アメリカは女性の社会的な地位の向上とか、そういう性的なものとしての対象からの脱却の動きもかなり活発だろうしね。
最近のディズニー映画でも女性が主人公で強い傾向があるから、そういうジェンダートレンドはあると思うよ!
まとめ
ということで、「進化するほどキャラクターが可愛くなくなる洋ゲーイズムはなんなのか?」という質問で私たちがたどり着いた結論は「欧米では強くなるほど鍛えられて筋肉つくし、背負う使命が大きく重たくなってくるストーリーを表現しているデザインなのでは?」ということになりました!『Rivengard』の中でセクシーに進化しないのは、ただこの『Rivengard』の世界観デザインの中で特に女性キャラがセクシーであるコンテクスト(文脈)がないだけの話だということです。
みなさんの考えも聞かせてください!
アプリリンク:
Rivengard (App Store 無料 / GooglePlay 無料)
補足:ちなみに、欧米でもセクシーに進化するゲームはあります。そういうのをお探しの方はNataku(※R18)でお探しください。
筆者:ナマステ・キティ
スウェーデンでゲーム作ったり、遊んだり、レビューしてまったり生きている開発者。
hokuogamecat.hatenablog.comで、北欧のゲーム開発事情、ゲームなどを紹介している。
Twitterはhttps://twitter.com/Namaste_Kitty