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終末世界を2人ぼっちで生きる『終わる世界とキミとぼく』レビュー。ローグライト・謎解きゲームというべきプレイ感

終わる世界とキミとぼく (App Store 250円 / GooglePlay 240円 / Steam 558円)
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ぼくらは知っていた。この世界が終わることを。誰もが知っていた。知っていたのだ。

核戦争により、とつぜんに世界は終わり始めた。
幸運にも生き延びた“ぼく”は、同じく生き延びた女の子の“キミ”とともに荒れ果てた世界を生き抜く。
ぼくが死んでも、キミが死んでもゲームは終わり。
『終わる世界とキミとぼく』は、終末の世界を2人きりで生き延びるハード・サバイバルゲームだ。

テキストが主体のゲームで、画面は派手ではない。
しかし、システムに目を向けると毎プレイ異なるイベントが発生し、死んだら最初からやり直しになるローグライト(不思議のダンジョンのエッセンスがある)的要素、謎解きアドベンチャー要素を備えた“ローグライト謎解きゲーム”に近いシステムを備えた光る1作だ。
本作はテキストを主体としたサバイバル・アドベンチャーゲームで、プレイヤーは1日に朝昼夜の3回ランダムなイベントに遭遇し、そのイベントに対する行動を選択する。
2人にはそれぞれ体力と正気度が設定されており、行動によってこれらが上下する。そして、たいていはサバイバルに必要な(もしくは不必要な)ものが手に入る。
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夜の行動を終えると1日が終わり、食料をどれだけ食べるかの選択がある。
たくさん食べれば体力も正気度も大きく回復するが、食料が少ないなら少しずつ食べた方が長生きできる。
食料が尽きると、体力も精神(正気度)も目に見えて減っていく。
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体力がなくなれば、即座にゲーム終了。
正気度は尽きても死なないが、正気度が減った”ぼく”は意味不明のことをつぶやき始め、正気度が減った“キミ”は奇行に走り、ゲーム進行を妨害する。
まあ、正気度が尽きるような状況になった時点でたいていは詰んでいる。
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▲ぼくの正気度が減ると、メッセージがバグる。ちょっと怖い。

基本ルールはこれだけなのだが、プレイしてみるとまあとにかくキツイ。序盤を生き延びることすらツライ。
理不尽なイベントで体力・食料は減る。
困窮した人を見かけて食料を分けようとしても、食料を見た瞬間に彼らは豹変して襲い掛かってくる。いや、助けるどころか声をかけただけで「ひゃっはー!」と襲われることすら。
ときはまさに世紀末、いかれた時代へようこそってな状態だ。
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こんな時代だから、ちょっとしたケガだって死に繋がる。
救急キットがなければ、ケガが簡単に重症になり、そのまま体力が回復しなくなって死ぬ。
“ぼく”だけもりもり体力が減っていき、ヒロインのはずの“キミ”に対して「こいつに食料を分け与えなければ、自分だけ生きられるのになぁ」と、殺意を抱くことすらある。
が、残念ながらこのゲームでは“キミ”が死んでもゲーム終了。
終末の世界を1人で生きていけるほど、人間の心は丈夫ではなかった……。

が、序盤を過ぎるとゲームが新たな側面を見せ、印象は変化する。
ランダムイベントは確かに理不尽に見えるが、実は選択には正解があることに気づくのだ。
正解を知ると長生きできて、資材がたまって、さらには拠点を構えて物を作ることもできるようになる。

釣竿を作れば、魚を取れる。
なぎなたを作れば、カップルを退治して食料を奪える。
何度も遊ぶとプレイヤーに経験が蓄積し、終末世界に適応した非常な行動様式が身につく。
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そうして世界に適応した―もしくは、人を見捨てることを覚えて人間性を失った―ころ、物語は動き始める。
まず、特定の条件を満たすことで“病院”や“図書館”、“学校”など、様々な場所へ移動できることに気づくだろう。
すべての場所に、終末世界を生き延びる新たな資材がある。
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さらに、それらの場所には秘密が眠っており、繰り返しプレイする過程で週末世界の様子がわかってくる。
今度はあの場所を徹底的に調べるか、短期間で施設を整えてみるとか、より効率的に生き延びることが、世界の秘密に近づくことにつながる。
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▲何度も図書館のに行くと見つけられる準備室。鍵がないと入れないが……?

秘密を解き明かすには行動の余裕がないといけないから、必死にサバイバルを効率化する。
そうして、ゲームに習熟すると世界の秘密が明らかになる。
本作には複数のエンディングが用意されており、そこに到達するためのヒントはプレイヤーが上達するほどに出そろう。
ヒントからエンディングへの到達方法を推理し終えると、今度はエンディングが見られるサバイバル方法へのチャレンジが始まる。

このあたりのやり直し、上達、謎解き、上達を繰り返してエンディングに向かう流れがローグライト的で、冒頭で書いたように「ローグライト・謎解きゲーム」といったプレイ感を生む。
運要素はかなり高い(かなりやりこんでいる私ですら、3回に1回しか真エンディングにはいけない)が、エンディングまで黙々と遊んでしまうハマり感がある。

なお、1人でやっても攻略できるし面白いが、謎解きは比較的難しい方だと思う。
友達と数人で情報を交換しあいながら遊ぶと大抵の人にはちょうどいい難易度になり、同時に最も楽しめるのではないかな、と思う(公式でもそれを推奨している)。
「やらないか?」と、友達と一緒に遊んでみてほしい。

なお、9月23日にSteam版が発売されたばかりでこれを言うのはちょっと気が引けるが……基本的にスマホ版とSteam版はほぼ同内容なので、PCで遊ぶことや音(寂しげな音楽がとてもよい)にこだわりがなければスマホで遊ぶといいだろう。

プレイ動画:


概要:
厳しいランダムイベントだらけの終末世界を生き延びるサバイバルゲーム。プレイヤーが上達すると生存期間が延び、世界の様子も明らかになっていく。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
厳しいサバイバルを生き延びる楽しさ
終末感たっぷりの世界と音楽(特に音楽)
サバイバルが上達するほどに明らかになる謎

気になるポイント
運要素が強い(序盤を抜けるのが最も大変)

アプリリンク:
終わる世界とキミとぼく (App Store 250円 / GooglePlay 240円 / Steam 558円)

開発:Kumasystem(日本)
HP:https://worldend.illucalab.com/
レビュー時バージョン:1.0.7
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも色々情報発信中