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好きなヒロインと心中できるゲーム『永遠の七日』のサービス終了と、その最後が決まった日にやってきた脱出(エクソダス)請負人の話

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ゲームのサービス終了時、プレイヤーの前にエクソダス(脱出)請負人が現れ、サービス終了からプレイヤーを救うという。

「キングゲイナーかよって思うけど、本当にいるんだよね」

3年ぐらい前だったか、そんな話をゲーム系会社にいたときに聞いたことがあった。
『キングゲイナー』とは、極寒のシベリアから新天地への脱出(エクソダス)する旅を描いた富野監督のアニメだ。
そのなかで、外の世界を知らない人々を導き、脱出を手引きする仕事人として“エクソダス請負人”が登場する。
そんな存在が、ソシャゲにもいるという。

話を聞いたときは与太話と思っていたが……『永遠の七日』のサービスが終わるとき、エクソダス請負人は確かに姿をみせた。
今日は、『永遠の七日』サービス終了直前の1日に見たものを記事として残しておく。

まず『永遠の七日』について説明しておこう。
中国のNetEaseが作り、日本ではDeNAがローカライズ・配信していた基本無料のアドベンチャーRPGだ。
ゲームの発表時は『荒野行動』のNetEaseが中国で人気を得たゲームを提供し、台湾や韓国など先行して配信された諸外国でも評価は上々と、鳴り物入りで発表された。
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実際、『永遠の七日』は基本無料で似たゲームのないオリジナリティを備え、映像やシナリオ面でも高いクオリティを誇っていた。

プレイヤーは”神器使い”と呼ばれる特殊能力を持つキャラクター達の司令官となり、7日後に破滅を迎える世界を救うために戦う。
膨大なシナリオ分岐が用意されており、プレイヤーの選択によって物語の展開が大きく変化し、異なるエンディングを迎える。
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エンディングのあとは何事もなかったかのようにまた1日目からゲームがスタートし、前回の知識をもとにまた新たな選択を行い、新しい世界の秘密を探っていくこととなる。
シナリオは興味深く、十分にゲームのうりとなっていた。
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そんなシナリオをベースとして永遠に同じ7日間が繰り返され、選択し続けて新しい道を探し続けるゲーム。
だから『永遠の7日』というタイトルになるわけだ。

ローカライズも気合いが入っていて、テキスト翻訳は海外ゲームに見えないレベルだったし、日本サービスに当たってはボイスも中国語版より良くなっていた。
少なくとも、交通標識に至るまで日本語できっちり読めるゲームはめったにないと思う。
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ゲームも良い、ローカライズも良い。
だが、品質が売上げを約束するわけではない。
残念ながら、日本版の『永遠の七日』は4月27日(サービス開始から約1年)でこのゲームはリリースから約1年でサービス終了になることが発表された。

普通ならここで「また1つゲームが終わってしまった」とくくるのだが、今回は話が違った。
『永遠の七日』は私にとって代替のないゲームの1つだったので、終わってしまっては困る。
このゲームは、現代日本では貴重なエンディングで好きなキャラクターと死ねる「心中できるゲーム」なのだから。

心中とは好きあった男女が一緒に死ぬこと。
何を隠そう、私は全力で運命にあらがって、できることをやった後に一緒に死ぬエンディングが好きなのだ。
私は、お話の流れとして「何かが変わった。しかし、救われるまでに消えたものはかえってこない」程度のエンディングが好き。
最近では「すべてが救われる究極のハッピーエンド」みたいなものが用意されているゲームが多いので、それに飽きた結果かもしれない。
なんというか、いろいろな犠牲に悩んだ上で得られるものがあって、すべてが後から解決されると、「今まで悩んだ選択は何だったのか」という気持ちになるのだと思う。
『永遠の七日』のゲーム目的は世界を救うことだが、世界を救う究極のエンディングは未実装だった。
だから、仲良くなりたいキャラクターと共に戦い、死力を尽くしても、個別のエンディングを見ても、最後には世界が破滅する。
それによって、結果的に「好きなキャラと共に世界の最後を見届ける」ゲームになっていた。
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男性キャラクター・女性キャラクターともに個別のエンディングが用意されていて、主人公も男女の性別を選択可能だから、好きなキャラクターと心中し放題(友情を貫いて倒れるという考え方もあり)。
極端に言えば「マルチ・心中・エンディングゲーム」であり、私にとって天国のような作品だった。
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中でも、病を隠して戦ってラストではかなく倒れるアントネーワというキャラクターが好きだった。
はかなくて真面目なお姉さんキャラみたいなものが大好きな私にとって、そんなキャラクターと命を賭けて前のめりに倒れられるゲームは代替物のない作品だったのだ。
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とは言え、そのエンディングはだいぶ悲惨だった。
必死に病気を治して(これがえらく大変だった)、すぐまた死ぬとか……あまりにあまりなので、いつかもう少し良いエンディングが実装されることも確信していた。
そして、それが実装されるまで、サービス終了されても困る。
俺は、もっと良い形でアントネーワと心中するシナリオを見たいんだ!
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そこで、私は非常手段を選ぶことにした。
日本の国外で提供されている欧米版『永遠の七日』こと、『Eternal City』をインストールしたのだ。
日本で終わっても、好評だったという海外では終わらないぜ!
ところが、そんな行動に返ってきたのは『永遠の七日』撤退の真実につながる情報だった。
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日本で『永遠の七日』がサービス終了する理由として、ファンの間では「NetEase/DeNAが日本でろくに宣伝しなかったから」などと言われていた。
確かに驚くほど宣伝しなかったので、それもあるかもしれない……が、もっと大きな原因が他にあったのだ。

欧米版の『永遠の七日』こと、『Eternal City』もサービス終了予定となっていた。
それだけではない。
人気と噂だった台湾ならばと、台湾版の『永遠の七日』をインストールしてみると、そこにもやはりサービス終了の告知があり、本国からシナリオ提供が打ち切られたということが書かれていた。
つまり、『永遠の七日』は世界的に商売に失敗して海外向けの商売から撤退した……というのがより真実に近い情報と思われた。

いろいろと調べたところ、各国において独自性が高く話題にはなり、ゲーム自体も高評価を得るのだが、そもそも買うものがないので商売として失敗していたようにみえた。
つまり、先行して配信された国々で評価されたのは嘘ではないが、ご飯は食べられなかったのだろう。
日本は最後の最後にリリースされたので、先行した国の結果がすでに出ていて、広告が控えられてしまったのかな、と想像している。

中国本土ではまだ続いており、日本には来なかった『カードキャプターさくら』コラボやら未実装シナリオがあるのだが……。
中国ゲームは国民番号による認証だとかが必要なようで、手が出なかった。

当時、チャットルームなどで交わした会話を見ていると、ほかの『永遠の七日』プレイヤーたちもゲームとの別れを惜しんでいたが、状況を見て諦めていた。
私も諦めて、最後に「アントネーワと一緒に破滅を待つ」エンディングを見て終わろうと思った。
「ゲームサービス終了時に何かをすることで、その世界でのあり方が永遠に保存される」という限界ゲーマー宗教の儀式である。
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ところが、その覚悟を決めたとき……。

「エクソダス、するかい?」

チャットルームに、1人の男(?)が現れた。
会社でうわさに聞いた……あの"エクソダス請負人”……本当に、本当にいたのか!
エクソダス請負人とは、海外をベースにしたゲームの日本版がサービス終了するとき、更新が続いている海外版がプレイできるよう、覚悟あるゲーマーを導く請負人だ。
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日本サーバーから脱出することで、プレイヤーはゲームを続けられるのだ。

エクソダス請負人のサポートにより、私は中国語版の『永遠の七日』を開始した。
ありがたいことに、私とアントネーワの物語は続いた。
もちろん、テキストは中国語。新しいルートを開拓してもまだその内容はわからないが、勉強もかねて遊んでいる。

エクソダス請負人は、同じゲームが好きな同士の前に登場するという。
お気に入りのゲームのサービスが終了するとき、もしかしたらあなたの目の前にもエクソダス請負人が登場するかもしれない。