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プレイヤーに覚悟を求め、相応の面白さを与える『マジック:マナストライク』レビュー。思った以上に『マジック』で、それゆえに難しい

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原作の世界観を大事にして、面白さもゲームに取り入れて……欲張って真面目に作った結果、目標は果たしたが、敷居がとてつもなく高くなってしまった。
面白い。でも理解が難しい。困ったな。
世界中で人気の対戦カードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング(以下、マジック)』をもとにしたスマホゲーム、『マジック:マナストライク』は、そんな作品だ。
本作を起動してすぐ目を引くのは、迫力満点の3Dグラフィックだ。
オープニングから巨大なボーラス様(大ボス的存在)が登場し、やさしくゲームを教えてくれる。この展開は一般プレイヤーにもインパクトがあるだろうし、展開にマジックプレイヤーはニヤリとするはずだ。
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肝心のゲームシステムを見ると、大人気対戦ゲーム『クラッシュロワイヤル(クラロワ)』をベースにしているが、そのプレイ感はかなり異なる。
まず、2人のプレイヤーがデッキを組み、限られたマナを消費してカードを利用して攻め合い、敵のガーディアン(陣地にいる石像)を壊した者が勝利となるリアルタイム戦術ゲームというベースは『クラロワ』と同じ。
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また、8枚のカードを選んでデッキを組み、時間とともにたまるマナを消費して手札に来たカードを使用し、敵のガーディアンを破壊するデッキ構築&バトルのゲームになっていて……。
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▲左右にいる石像のような巨人がガーディアン。ガーディアンは近くの敵を攻撃する能力を持つ。

カードには1回出すとAIで行動して戦い続ける“クリーチャー”と、使い切りで効果を発揮すると消える“呪文”の2種類が存在し、それぞれ使用するときに消費するマナが大きいほど強い傾向がある。
マナは有限(時間経過に合わせてゆっくり回復する)ため、単純に強いカードを選ぶよりも、マナコストと組み合わせのバランスが重要になる。
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ここまでは『クラロワ』と同じなのだが、この先はかなり異なる。
デッキ構築時には本作においてはプレインズウォーカー(以下、PW)というデッキリーダーが1人必要で、PWには属性(白・赤・青・緑・黒の5種類の属性がある)が定められており、デッキに登録できるカードはPWの属性と一致したものでなければならない。
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PWは属性に関わるだけでなく、バトルにおいては高い攻撃力と耐久力を持ち、マナ消費なしに呼び出せるクリーチャーとして大活躍する(出撃回数に制限はある)。
場に出たとき1度だけ使える独自のスキルを持っており、この使用タイミング、手持ちのカードとのコンボも強力。
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▲美しい3Dグラフィックで好きな角度からPWを見られるのもファンには嬉しい要素。

加えて、PWの周囲には自由にクリーチャーを出せる。
普通の『クラロワ』系ゲームでは敵陣に切り込んでもクリーチャーを配置できるのは自陣だけ。よって、援軍を送っても間に合わず、攻めきれなくなることが多い。
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▲クリーチャーを出そうとしても赤い敵陣には配置できない。

しかし、本作ではPWの周囲敵に切り込まれるリスクが大きく、油断するといっきにクリーチャーが本陣になだれ込み、即座にガーディアンが破壊される攻撃的なゲームに仕上がっている。
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▲敵陣にPWが切り込むと、周囲が白くなってクリーチャーを召喚できるようになる。

そんなPWの属性によって組み込まれるカードも、『マジック』要素を取り込んだ独特なものになっている。
『マジック』の華と言えば、複雑な効果を持つカード群を利用し、独自コンボを決める面白さ……という方も多いだろう。このゲームでは多くのカードに特殊な能力が備わっており、その組み合わせ次第で色々なことができる。

たとえば、場に出ている味方クリーチャーを生贄にして召喚するユニットがいる。
そのクリーチャー召喚しつつ“ユニットが破壊されても戻ってくる”能力を利用し、生贄になったクリーチャーを同時に復活させるなど、『マジック』的コンボがいくつも用意されているのだ。
正直、始める前はこんなに『マジック』しているとは思わなかった。

カードを見ると5属性それぞれに極端な特化型能力のもが多く、原作のイメージを再現しつつゲームとしての個性になっている。
白属性は生産・防御が強く、クリーチャーを次々と生産する建物、あらゆる状態異常を受け付けない騎士、さらには敵の攻撃範囲外から本拠地を攻撃する長距離砲撃ユニットを持つ。
無限にクリーチャーを生産しつつ長距離攻撃する組み合わせはやっかいで、うまくハマると強力。
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次に赤属性。原作でも攻撃に偏ったクリーチャーや、直接的な攻撃魔法を備えていた属性だが、それがそのまま再現されている。
範囲攻撃で複数のクリーチャーが倒されたり、攻撃魔法で直接ガーディアンにダメージを与えたりと、わかりやすく強い。
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緑属性は完全に原作と同じで、能力値が高くてシンプルに強いクリーチャーがバンバン出てくる。
マナを増やす生産能力もあり、数も出せる。緑の代名詞『巨大化』を使って敵陣に突入したクリーチャーを強化して蹂躙も可能。
わかりやすいので、初めて『クラロワ』系を遊ぶプレイヤーにお勧めだ。
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青属性はトリッキーで、タワーまでクリーチャーを送り届けたり、敵をかく乱する魔法を使ったりと、とにかく搦め手が強い。
妨害魔法やら、隠れ身(攻撃を受けない)などの能力で、「やりたいことはわかっているのに妨害できない」嫌らしい状況を作ってくる。
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▲正直、青を使うプレイヤーは性格が悪いのではないかと思えてしまう。それは、マジックの要素をうまく取り入れた証拠でもある。

黒属性は骸骨を大量に召喚したり、死んだクリーチャーを蘇らせたり、いけにえを捧げるだけ強くなるデーモンを呼んだりできる。
黒はマナストライク独自のシステムを体験しやすいので、『クラロワ』系のルールを知っていて本作の独自性を体験したいプレイヤーお勧めの属性といえる。
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それぞれの属性に尖った能力のカードがあり、対戦においては属性の個性がぶつかり合う。ゲームを理解していれば、『マジック:マナストライク』は楽しい。
能力を組み合わせて勝つコンボの楽しさは、『クラロワ』系でもピカイチと言えるだろう。

だが、その面白さを味わうために、乗り越えねばならないものがある。本作は、複雑なゲームをわかりやすく伝えることに失敗しており、プレイヤーがゲームの理解に努めなければならないのだ。
こういったゲームでは、演出やエフェクトで何が起きているかわかるように細心の注意を払うものだが、本作はそうなっていない。
たとえば下図の円は攻撃力を上げるスキルの発動予告。しかし、実際に使用しても一瞬アイコンが出て終了。見逃すと何が起きたかもわからない。
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▲アイコンが出るのは良い方で、「敵はこの能力を持っているから、この演出はこの魔法だ!」と暗記しないと対処できないものもある。

キャラクターが小さくて視認性も悪い。
そのため、乱戦時には新しいクリーチャーが出てきても気づきづらく、「見えないから負ける」ような理不尽な展開が多い。
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▲これがスマホ画面の20%ぐらいの範囲に表示される。何が起きても簡単にはわからない。

・画面がごちゃついていて状況が見づらい
・演出が淡泊でなぜ負けたのか、勝ったのかわかりづらい

これはかなり致命的で、プレイしていてストレスを感じる。
序盤は使用できるカードが少なくてプレイが単調になることもあり、私自身も最初の1時間ぐらいは「なんだこのクソゲー」と思っていた。
しかし、気合を入れて遊び始めると「この敵はこの能力だから、このエフェクトは××だな」などと覚え、戦況を理解できるようになって楽しくなる。
少なくとも、私は結構ハマって一時期は日本で7位に入るほど遊んでしまった。
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プレイ最初の1~2時間はかなり厳しいゲームではある。しかし、覚悟を持って遊べば、それ相応に応えて楽しい世界を提供する戦術ゲームであり、コンボの面白さは他の追随を許さない。
それが『マジック:マナストライク』というゲームだ。
もし、ここまでの説明を見て「面白そう」と思えたなら、序盤を気合で乗り越える前提で遊んでみて欲しい。

▲あまりにわかりづらいので自分で説明生放送してしまった。うまい放送ではないが、マナストライクが理解できないときの参考にどうぞ。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
マジックの世界観
複雑なカード能力の組み合わせが楽しい

気になるポイント
チャットに不具合がある
演出が淡泊で何が起きているかわかりづらい
ランクが上がらないとバトルが単調

アプリリンク:
マジック: マナストライク (App Store 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 無料)

開発:Netmarble(韓国)
HP:https://help.netmarble.com/game/mana?gameCode=mana&menu=consult
レビュー時バージョン:1.2
課金:バトルパス、カード課金、カードレベルアップ課金など

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中