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ドイツゲーム賞2017大賞の重量級ゲームを気軽に遊べる喜び。『テラフォーミング・マーズ(Terraforming Mars)』レビュー

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人類はついに火星へ進出する!
火星こそこの世の天国、人類の未来だ!

ドイツゲーム賞2017の大賞、そしてドイツ年間ゲーム大賞のエキスパート部門ノミネート作でもある『テラフォーミング・マーズ(Terraforming Mars)』がアプリになってやってきた。
本作は火星を人の住める惑星に改造する“テラフォーミング”計画を描いたボードゲームで、テラフォーミング事業を手掛ける企業のうち1社の代表となり、競合企業よりも成果を上げる(勝利点を獲得する)こゲームである。
さあ、今すぐアプリを起動して火星の歴史に名を遺すのだ!

ゲーム開始時の火星は赤い不毛の大地で、酸素濃度(Oxygen)ゼロ、海(Ocean)ゼロ、気温(Tempture)マイナス30度と、人が住める環境ではない。
これを酸素濃度14、海が9マス、気温8度まで上げることが目標で、この3つの数値が完全に達成されたとき、勝利点が最も高い企業が勝利となる。
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▲酸素濃度と海の数、温度は画面右側に表示される。

ゲームモードは対人戦とAIとの疑似対戦、1人用モードがあるが、今回は基本となる対戦モードの説明をしていこう。
まず最初に、上級者向けルールとドラフト機能の有無が選択できる。
上級者向けルールを取り入れると使用できるプロダクションカード(後述)の種類が増え、資源生産力の初期状態が0になるため、初めてなら選択しないで遊ぶ方が分かりやすくておすすめ。
また、ドラフト機能は慣れたら必須なのだが、これも初めてならオフでいいと思う。
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ルールを決めたらプレイヤー人数とAIの強さを設定。AIは3段階から設定でき、ハードならばそれなりに定石を踏んできて手ごたえはある。
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続いて企業の選択。企業によって長所が異なり、初期所持金も変化する。
ゲーム内にはクレジット(MC)・鉱物(STEEL)・チタン(TITANIUM)・植物(PLANT)・電気(ENERGY)・熱エネルギー(HEAT)の6つの資源所持数と、その生産能力(PRODUCTION)が存在し、企業の能力は大抵においてこれらの資源・生産能力に関係する。
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企業を選ぶと10枚のプロジェクトカードが配られ、それぞれ1枚3クレジットで購入できる。
プロジェクトカードは資源を消費して特別な効果を発揮するカードで、企業の長所とこれがかみ合うように選ぶのがポイント。これを選び終わると、いよいよゲーム開始。
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メインゲームでは各プレイヤーが順番に行動し、1回の手番に2回の“アクション”が可能になる。
アクションは大きく分けて5つ。
1.“スタンダードプロジェクト”の実施。
2.プロジェクトカードを使う
3.資源を森か気温に変換する
4.青いカードのアクションを実施
5.アワード・マイルストーンの獲得

スタンダードプロジェクトとは、プロジェクトカードなしでクレジットを支払って行うコマンド。
プロジェクトカードの売却、お金を支払って発電能力・熱の獲得、海や森の配置が可能になる。

プロジェクトカードは、プロジェクトカードに書かれたことを実施するもの。
意識したいのは、プロジェクトカードには属性だ。化学系、採掘系、宇宙系などの属性があり、それぞれに異なる特性を持っている。
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採掘系はクレジットの代わりに鉱物1つを支払うたびに2クレジット使用コストが減り、宇宙系はチタニウム1つ支払うたびに使用コストが3クレジットが安くなる。
また、科学系のカードを2回使っていないと使えないカードとか、気温が一定以上でないと使えないカードとか、そういった使用条件の設定もある。もちろん、条件が厳しいカードは効果的なものが多い。

資源の変換は、熱エネルギーと植物にのみ利用できる。
熱エネルギーを8点消費すると火星の気温を2度上げられ、植物を8つ消費するとタイルを1つ森に変えて酸素濃度を1段階上昇させられる。
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▲アイコンがある位置に森や海を作ると、その土地に示されている資源も手に入る。

4番のアクションカードとは、青いプロジェクトカードのこと。
青いプロジェクトカードを使うと場に残り、毎ターン1回まで起動して特別な効果を受けられる。1つ1つは大したことがないが、組み合わせによっては恐ろしい効果を発揮することも。

5番のマイルストーン・アワードの獲得は勝利点を増やすときに重要な行動となる。
マイルストーンは「TRが35以上になった」などの特定目標を達成したときに、購入できるもの。1つあたり5点の勝利点が加算されるが、誰かが手に入れたマイルストーンは購入できない。
アワードはマイルストーンと似ているが、購入したうえでゲーム終了時に特定の事柄の順位(所持資源の数など)に応じて勝利点が入る。
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これらのアクションを1回の手番のたび2回行い、最後のプレイヤーが手番を追えるとまた最初のプレイヤーの手番が始まり、最終的にすべてのプレイヤーのやることがなくなると1世代(GEN)が終了し、終了フェイズが始まる。
終了フェイズには残った電気が熱エネルギーに変換された後、TRと同額のクレジット、そして各資源のプロダクションと同数の資源が手に入る。
これを繰り返し、火星の環境が完全に改善されきったときにTR+その他の勝利点が最も高いプレイヤーの勝利となるのが基本ルールだ。

ゲームの展開としては、酸素濃度などの環境改善の目標値がとても重要になる。
3種類の目標値をすべて満たしたときにゲーム終了となるのもユニークだが、これらを目標値に近づける(すでに達成していたらダメ)とTR(テラフォーミングレーティング)が上昇する。
これは毎ターンの収入になるだけでなく、ゲーム終了時は勝利点として計算される。
そのため、自分の長所を生かしてTR上昇を基軸に据えつつ、企業の能力を考慮し、プロジェクトカード、アワードやマイルストーンで勝利点を上乗せするのが基本戦術になるだろう。
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ゲームとして感じるのは、じわじわと自分の戦い方を作っていく面白さだ。
文明を選び、そこにハマる戦い方ができるように遊ぶ『シヴィライゼーション』のように、選んだ企業とのランダムに手に入るプロジェクトカードの組み合わせに応じて戦術を変化させ何度も遊んでしまう魅力がある。
ドイツゲーム賞2017の大賞をとり、同時にドイツ年間ゲーム大賞2017のエキスパート部門にノミネートされただけの深さと中毒性がある。

しかも、これがアプリとの相性が良くて、ハマる。
もともと『テラフォーミング・マーズ』は重量級ゲームとして分類されることが多く、1プレイには60~90分かかるといわれる。が、アプリでCPUと戦うならその半分程度で終わる。
だから、何度もプレイしなおして、好きな企業で異なるカードの組み合わせを試すソリティア的なプレイが楽しめる。
また、本作にはもともと“ソロチャレンジ”と呼ばれるタイムアタックのルールがあり、1人用でも遊ぶこともできる。

日本語非対応で簡単な英語の理解が必要になること、プレイ中に中断をせずにアプリを終了するとデータが保存されないのは欠点だが、ゲームの根本の面白さ、アプリとして遊ぶ面白さ、どちらも文句なし。
あまりボードゲームを遊ばなくても、戦略系ゲームが好きなら試してみる価値もあるといえる。
もちろん、ボードゲーマーなら買って損はない。

概要:
火星を開拓し、その成果で競うボードゲーム。ドイツゲーム賞2017の大賞受賞作のアプリ版。アプリとの相性も良い。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
CPU戦、1人用でも十分楽しめる
理想の戦術を実現するまで繰り返しプレイしてしまう中毒性

気になるポイント
なんだかんだで最低30分はかかる
日本語対応していない

アプリリンク:
Terraforming Mars(App store 1,100円 / GooglePlay 980円 / Steam 2,050円)

開発:FryxGames(スウェーデン)
販売:Asmodee Digital(フランス)

HP:https://www.asmodee-digital.com/en/terraforming-mars/
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中
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