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筋肉育成ゲームは、なぜ定期的に流行るのか。『マッチョGOGOGO』×『マッチョでポン』2大筋肉ゲー開発者対談。

マッチョでポン公開&コラボ画像
2019年、世界は筋肉の炎に包まれていた!
『ダンベル何キロもてる?』という筋トレギャグ漫画がアニメ化し、マッチョを育てる『マッチョGOGOGO』はスマッシュヒット。
さらに、そんなマッチョ業界(狭い!)で最大のヒットゲームともいわれる『マッチョでポン!』がスマホに移植されるという情報までやってきた。
なぜ、マッチョゲームは定期的に流行り、話題になるのだろうか。
今回は『マッチョGOGOGO』×『マッチョでポン』2大筋肉ゲー開発者に聞いてきた。

小野口:
バリスタとして活躍する傍らゲームを作っております。クアッドアローの小野口正浩と申します。
会社を始めて10期目で、受託で他社の作品に協力することも多いんですが、格闘ゲーム『EF-12』、アプリだと『モグラ戦隊タタクンジャー』など自社ゲームも出していて、『マッチョGOGOGO』が最近のヒットです。
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▲小野口さんは初代『鉄拳』からゲーム業界の一線で活躍してきたが、近年趣味が高じてバリスタが本職に。現在はゲームを製作しつつ社内カフェも経営しつつ、他社が経営する専業のカフェでラテアート指導をするなど精力的に活動している。

※『マッチョGOGOGO』とは!?
無限に筋肉が育つマッチョをスマホの中で飼い、トレーニングの指示を出す放置系ゲーム。
プレイヤーがアプリを立ち上げていないときでもマッチョはトレーニングを続け、筋肉が肥大化していく。
こまめに面倒見ている間はいいのだが、1か月ぐらいアプリを放置していると、筋肉が育ちすぎて大変なクリーチャーが生まれてしまう。その様子がTwitterでバズり、スマッシュヒットを飛ばした。
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▲無限に筋肉が育つため、やばい生命体が出来上がる。

渡辺:
渡辺恵太と申します。
STINGの過去作品を現代に蘇らせることをしていて、最新作は『マッチョでポン! トライ』、その前は『ユグドラユニオン』のスマホ版を担当しています。
一応、プランナーですが、『マッチョでポン』ではまず企画をやって、UI全般と雑務を。
Switch版は私とプログラマー1人、モーションほぼ1人、サーバープログラマー1人でやっています。
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▲渡辺さんは『ユグドラユニオン』など、STINGの人気作を次々移植している。

※『マッチョでポン!』とは!?
Flash時代にブラウザで大人気となったマッチョ育成ゲーム。決まった期間の中でバイトで金を稼ぎ、トレーニング器具を購入し、効率よくマッチョを育て、コンテスト入賞を目指す育成ゲーム。
Flash全盛期、Flashゲーム好きなら知らぬものがいないほど流行った。本当。
近年、『マッチョでポン! ZZ』としてNintendo Switchで復活。スマホ版も記事が出ているときには配信しているはず…!
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<気づいたら『マッチョ』がいて、勝手にヒットしていた>
小野口:
マッチョのゲームを作った理由は、単純に新人プログラマーに経験を積ませたいというのと、当時「マッチョゲームは最低10万DLされる」という伝説を聞いていたからですね。
実際、作っていく中で「嘘だった」と知ったんですけど(笑)

nama
自分も聞いたことのある伝説がいきなり否定された(笑)
とはいえ、マッチョゲーはなぜかスマッシュヒットを飛ばすことがありますね。
その元祖こそ『マッチョでポン』なんじゃないかな、とも思います。今回はその伝説誕生、いや、製作経緯を聞かせていただけませんか。

渡辺:
それは絶対聞かれると思っていました。が、「気づいたら完成していた」としか言えないんです。
『マッチョでポン』制作が昔すぎて当時のスタッフと連絡もつかず、社内で聞き取り調査をしてきたのですが……本当に「気づいたら完成していた」そうで。

インターネット時代がやってきて、STINGにもホームページを作るチームがいて、「自社タイトルの認知度を上げるため、Flashで何か作ろう」という話が出て。
ある日、社長が「今どうなっている?」って聞いたらそこに完成していたのが『マッチョでポン』だったという。
ホームページ部隊に自由な権限を与えていたら、そこにマッチョがいた。
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▲気づいたらマッチョが公式ページ上に、いた。

小野口:
それがヒットしていて、若い人に聞くと「ああ、やってた!」ってなるのですからすごいですね。
当時、ヒットしたときの社内の様子とか聞きたいです。

渡辺:
実は、社内では『マッチョでポン』がヒットしていることすら気づいていませんでした。
『マッチョでポン』を製作してからしばらくして、いつの間にかサイトのアクセスが増えているのが判明して。
「なぜかアクセスが増えている」と、よくわからないまま時が進んでいたのです。

nama
当時、自作ホームページ制作でアクセス解析が流行っていたように記憶していますが、そういった分析はされなかったのでしょうか。

渡辺:
実は、当時はそういったものを使えていませんでした。
2006年ごろ、毎日アクセスが1万以上になっていて「STINGのゲームのことを知ってもらえてよいことなんだな」と思っていて。

nama
2006年で1日1万以上……ハーレム漫画の鈍感主人公でも、そこまでくれば気づくレベルですよ!(笑)
結局、人気に気づいたきっかけはなんだったのでしょうか?

渡辺:
それが、デジタルな解析ではなく、アナログなルートで判明するんですよ。
社長の息子が当時は小学6年生で、ある日「学校でこんなのが流行っているよ!」と見せてきたのが『マッチョでポン』だったんです。
「うちの会社の製品が流行ってる!」と(笑)

小野口:
そのころ、小学校にもパソコン教室が導入が完了し始めて、自由に使えたりしましたね。

渡辺:
それです。当時、学校で『マッチョでポン』が流行っていて、小学生が競うようにマッチョを育てていた。
『小学●年生』とかの小学生向けサイトがあって、そのランキング上位にも入っていて、その当時の小学生だった人がメインなんだろうなぁ、と推測されています。

nama
学校のPCは特定の会社がゲームサイトや有害サイトを遮断していたそうですが、STINGのホームページはアクセスできたと聞いたことがあります。学校で遊ぶことが許されたゲームサイトがSTINGのページ。

渡辺:
それもきっと要因ですね。
そんなわけで、社内でも『マッチョでポン』はあまり認識されていなくて、遊んでいたプレイヤーもSTINGという名前を知らなかった。
今年のSTING新入社員も「マッチョでポン、やってましたよ!」って言っていたけど、STINGで作っていたことは知らなかった(笑)

nama
かなりのヒットを飛ばしたのに、まったく商売に結びつかない……というか、ヒットした側も気づいていなかったのはすごいですね。

渡辺:
後から気づいてSTINGのゲーム紹介など入れたり、広告を少し入れたりしたのですが、ブームが過ぎたあとで完全に手遅れでした……。


<若い人はマッチョが好き!??>
nama
昔は小学生にマッチョが流行った。では、現代流行ったマッチョ……というか、『マッチョGOGOGO』は誰が遊んでいるのでしょうか。
あまりプロモもせずに30万DL近い実績は、結構大きいですよね。

小野口:
見た感じでは高校生8割、女性1割、あとはそれ以外で。圧倒的に中学生、高校生が多い感じですね。

nama
やっぱり、若い人にマッチョが受けると。

小野口:
思ったより女性の反響があって、話を聞いたら「女子校では筋肉が人気があって、図書館では男性の筋肉が見られる図書がずっと貸し出し中になったりする」など、想像のつかない世界を教えてもらったりできました。

渡辺:
うちも女子が『マッチョGOGOGO』遊んでます。

小野口:
あと、ゲーム作っていて良かったなって思える事件もあって。
旦那さんがすごい病気で入院して落ち込んだ一家が『マッチョGOGOGO』に出会って、旦那さんが喜んで遊んで家族が明るくなったと。そして「マッチョには感謝しています」ってメールをいただきました。
ちょっとでも人に影響与えられるゲームを作れたのは感動的でした。
残念なことは、うちの会社の女性社員には「恥ずかしいからマッチョは遊ばない」と言われて。「うちの製品だから名刺にマッチョ入れるね」って言ったら0.1秒で「嫌です」と断られてます(笑)


<小学生に『マッチョでポン!』を届けたかった>
小野口:
Nintendo Switch版の『マッチョでポン! ZZ』はどんなプレイヤーが遊んでいるんですか?

渡辺:
圧倒的に男性層が多いですね。
少なからず、Vtuberさんの方とかにもゲーム動画を実況してもらったりとか。以前からのユーザーは多いのかなって感じですね。
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▲Vtuberさんの配信も。コメント欄を見ると、Flash版のプレイヤーがアドバイスする様子が見られゲームの歴史を感じる。画像は本間ひまわりさんの動画より。

Flash版を解析してかなり忠実に作ったうえで遊びやすくしているので「Flash版をうまく調整してくれてありがとうございます」みたいなファンレターはいただきました。

小野口:

歴史があるシリーズならではですね。昔遊んでくれた若い人……今の大人が遊んでくれている。

渡辺:
本当は、今の小学生にも遊んで欲しかったのですけど、完全に失敗してしまいました。
『マッチョでポンZ』はダウンロード専用です。
で、ダウンロード専用で作るとキッズたちに届かないんです。
彼らの購買の流れは、“ゲームショップでROMを見て親に直談判する”か、“小学生雑誌系で情報を得て買っていく”の2パターンがあって、ダウンロード専売はその2つのパターンに入らない溝だった。
子供はNintendo Storeに入るための権限がないから、ダウンロード専売だと見つけてくれないんですよ。

nama
ネットが初めてゆえにヒットに気づかなかったFlash版、初Switchゆえに販路に気づかなかったSwitch版。
せっかく、バカゲーを作って、話題もあるのに……つらい。


<マッチョは、現実味のあるファンタジー>
小野口:
今、バカゲーと言う話が出ましたけど、『マッチョGOGOGO』、僕はバカゲーだと思っていないんですよ。
筋肉でつくるアート作品だと思っている。
放置するととんでもないことになっているから、誰かに言いたくなっちゃうけど、真面目に作っているんです。
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▲筋肉で作るアート

渡辺:
実は、私も真面目に作ってます。
昔すぎて原作のスタッフにも連絡つかないし、スタッフロールはペンネームだし、どう思って作られたかわからなくて、移植の最初にボディビル選手権を見に行って。
その後にジムに通って、筋肉はいろんな部位があって、鍛えるところで変化して、自分がどんどん変わっていく。『マッチョでポン』の体験も「そういうことなのかな」と。
マッチョでポンは真面目なゲームなんじゃないかというのを思えてきて、「これをバカゲーと言ってはいけない気がする」と思ってきたんですね。
筋肉って素晴らしいんですよ。

nama
『マッチョGOGOGO』は、ボディビルなどをしている人たちのエンタメとして届けたいという目標もあって、トレーニングの動きにもこだわっていましたね。

小野口:
実際はボディビルをしている人たちに届かなかったんですけど(笑)
今思うと、彼らが興味を持っているのは自分の筋肉なんですよね。
自分の成長を楽しみたい。現実で筋肉が育っている人は、仮想世界で育てる必要がない。興味があるのはたぶん、自分なんです。

渡辺:

さっき女子が筋肉に興味があるという話が出ましたが、それなんだと思っています。
動きとか見た目の面白さもありますけど、若い人は頑張っても筋肉がつかない。現実にあり得る筋肉モンスターを、ファンタジーとして作れるのが面白いんじゃないかな、と思っています。

nama
なるほど。マッチョは現実であり得るファンタジーを、手の届かない人に与えるから受ける。理屈としてわかる形になってきました。

渡辺:
ですね。僕らはそうしてマジメに作ったマッチョをちゃんと人に届けたいんです。
Nintendo Switch版は若い人にあまり届きませんでしたが、スマホ版がヒットすることで若い人で広がりが出てくれるといいな、と思っています。
すごく課金は緩いので、まずは触っていただきたいな、と。
触って、我々の筋肉に対する情熱が伝われば嬉しい。

小野口:
わかります。もっと世間に筋肉を届けたい。

渡辺:
ですよね。
そこで実は、今回コラボできないかと思って考えてきたんですが……(おもむろに書類を取り出す)。

小野口:
(内容を見ずに)やりましょう!
話を聞いていて、限りない共感があって(笑)
うちも『マッチョGOGOGO』はダウンロード数が伸びたんですけど、課金を考えてなかったから伸びてから課金を入れて完全に手遅れになって、気持ちが手に取るようにわかりました。
※『マッチョGOGOGO』は新人研修アプリとして作ったため課金設計が十分でなく、ヒットしたときに稼ぐ仕組みがなくて売り上げ損ねている
nama
そっちですか(笑)

小野口:

もちろん、筋肉好きとしても。
2019年は、『ダンベル何キロ持てる?』なんて筋トレ漫画がアニメ化したりして、今ちょうどマッチョが普及しようとしているときなんですよ。
もっと、筋肉を盛り上げたい。
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アニメ『ダンベル何キロ持てる?』の予告動画より。

渡辺:
やりましょう!

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そして7月末のある日、2人は深夜の街へ筋肉の話をしながら消えていき……。
翌日、『マッチョでポン! トライ』と、『マッチョGOGOGO』と2大マッチョゲームがコラボが対談の後、ノリで決まったことを知らされたのだった。

で、9月ぐらいにコラボが始まるかと思っていたら……なんと、本日配信された『マッチョでポン! トライ』は配信と同時にコラボ開始。
筋肉ゲームによる、肉のサバトが始まった!
マッチョでポン公開&コラボ画像


今なら『マッチョでポン! トライ』をプレイするだけで『マッチョGOGOGO』仕様のフェイスとパンツが入手可能。
『マッチョGOGOGO』側では、コラボ期間中『マッチョでポン!』仕様のプロテインが期間中に使用でき、育成スピードがけた違いにアップするという(つまり、化け物が育つ)。
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コラボ期間は2019年9月30日まで。
筋肉愛が生んだ暑苦しいコラボをぜひ体験して欲しい。
それでは、ナイスバルク!

アプリリンク:
マッチョでポン! トライ (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
マッチョ GoGoGo (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)