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スマホだから楽しめるハード・ローグライクアクション『ReversEstory』レビュー。ランダム装備ビルド、アクション、物語、すべてそろった逸品。

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“スマホ縦持ち・1本指”で、こんな素晴らしいアクションが楽しめるなんて、このゲームが出る前は思ってもいなかった。これは、本当の気持ちだ。
ゲーム機的なアクションゲームはコントローラー前提の設計のため、タッチパネルで遊びづらい。だから「スマホゲーの操作はいまいち」なんて言われがちだ。
ところが、スマホ向けにゼロからゲーム設計すれば、スマホでもゲーム機と同じようにアクションゲームの面白さを味わえる……『ReversEstory』は、それを証明した作品である。

本作は、伝統的なアーケードゲーム的な面白さを、“スマホ縦持ち・指一本”で構築しなおし、かの『Downwell』などに比肩する歯ごたえのローグライク・縦アクションを実現している。

『ReversEstory』は、ランダム生成のステージを縦横無尽に飛び回りつつ、引っ張り操作で敵を射抜くローグライク・アクション・シューティングである。
基本操作は3種類だが、すべて指1本で完結する。
1つはアタック。画面をタッチすると主人公が矢を放って、最も近くにいる敵を攻撃する。
また、地上でアタックすると矢を放つと同時に地面を蹴ってジャンプする。
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2つ目の操作はフリック移動。
フリックした方向と反対側に(オプションで変更可能)素早く移動する。
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最後に、チャージアタック。
ジャンプ中に指を離さずに引っ張り操作すると弓を引き絞って力を貯め始め、指を離すと強力なチャージアタックが発射される。
これは移動操作も兼ねており、ためながら主人公はゆっくり浮遊移動する。長距離移動はできないが、精密な操作により弾幕回避が可能となる。
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▲チャージ中は主人公周囲に円形のゲージが表示され、白線で狙っている方向が示される。

こう説明しても実感として伝わらないと思うが、実際に遊ぶとこの操作は片手持ち、一本指に最高にフィットしている。
画面をこするように行う操作は、仮想パッドのように窮屈がなく、慣れれば快適だ。

何より素晴らしいのは、チャージアタックの仕組みだ。
タッチパネルはフィードバックがないから、コントローラーより操作感で劣る。しかし、コントローラーでは難しい“引っ張る操作の気持ちよさ”に関しては例外的に強い。
そこで、『ReversEstory』は引っ張りを攻撃に取り入れた。最大までチャージして指を離して、その反動で飛ぶ瞬間はこのゲームのハイライトで、これでフィニッシュを決めると「終わった…!」という虚脱感すらある。
スマホ操作の気持ちよさを考え、スマホで遊ぶために作りきられている。
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で、その操作だけではもちろん終わらない。これを基盤としたローグライク・アクションの面白さが『ReversEstory』の真骨頂だ。
本作はステージクリア型で、ステージ開始時には2枚のタロットが提示され、選んだタロットによって生成されるステージの傾向が変化する。
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“狭い”ステージを選べば、『トルネコの不思議のダンジョン』のモンスターハウスのような高密度の戦いが待っているし、“レア度アップ+宝箱増加”のようなお宝部屋もある。
これによって、プレイヤーの腕前と現在の成長度合いを考え、リスクとリターンをコントロールできる面白みを提供している。
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▲敵だらけの狭い部屋。すでに半分倒した後だが、それでも攻撃が激しい!

で、ステージが始まると先ほどから説明している操作の素晴らしさがわかる。
通常ステージでは遠距離で攻撃しつつ、射程外の敵に素早く接近して一撃を加える緩急つけた戦いが楽しめる。
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▲敵の多くは固定砲台なので、位置を見極めて倒し方を定め、戦術を組み立てて実行する流れがある。急がされ過ぎない、しかし戦術性も難しさもあるスマホスタイル。

6ステージごとに登場するボスに対しては、チャージアタックでゆっくり移動する操作が効果を発揮する。
ボスの弾幕に対してゆっくり、精密な操作で、緊張感をもって避ける。
そして、避け切ってチャージが満タンになったときに指を離すと……弾幕を避け切った苦労が大ダメージとして報われる。
通常ステージもそうだが、緊張と解放のつくりが本当にうまい。
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▲ボスの弾幕の隙間だって、ゆっくり移動すれば抜けられる

ここからさらに、“ランダムドロップ装備の組み合わせ”の面白さがやってくる。
敵を倒したり、宝箱を開けると通常攻撃を変更する“弓矢”と、チャージ魔法を変更する“魔法”、特殊能力を得る“アクセサリ”の3種類がドロップし、それらには個性的な効果が付与される。
弓矢であれば、“シングル”は1本の矢を射るだけだが、“トリプル”であれば射程が短い3本の矢が発射されるなど、様々な能力を持つ。
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魔法も主人公の周囲を守るもの“オービタルショット遠くまで狙いすました矢を放つ“アロー”など、様々なものがあり、それぞれに使い勝手が違うし、有効なボスも異なる。
さらに、敵を凍らせる“凍結”、凍っている敵に対してダメージ上がる“凍結中の敵にダメージ+”、チャージ中はバリアが張られてダメージを無効化できる“チャージバリア”などなど、多様な追加能力も加わり、装備選びはえらく悩む。
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単純に暴力で強い“攻撃力+125%”の弱い弓(破壊力が高くて、扱いづらい弓があるのだ、これが)より、使いやすい弓の方が強いかもしれない。
だが、基本攻撃力が増えたら(装備の能力はすべて合算されるので、弓が強化されればチャージ魔法も強くなる)使いやすい魔法を選び、魔法だけで戦うことも考えられる。
ステージを戻ることできないので、状況を考慮して装備を取捨選択する作業が待っている。

難易度調整も絶妙で、どのボスも最初は「絶対倒せない」と思えるほど強い。
だが、パターンを覚えていくと最適な装備を選べるようになり、攻撃も回避できるようになっていつの間にか簡単に倒せるようになる。
難しいが面白い。そういった手ごたえを実現している。
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本作はてんこ盛りの要素を備えるが、ゲームにどれも貢献していて隙が無い(説明不足は感じるが)。
強いて大きな欠点があるとしたら、「課金が弱すぎる」ことだろうか。
本作ではボストレーニングモードと、ライフ最大値を購入できるが、これらはゲーム終了時に手に入る“Time Tears”を払えば買えてしまう。
1度でもコンテニュー時に出てくる広告も1度課金すれば消える(やるとすればライフ課金は1回ぐらいやってもいいかもしれない)。
最初に書いた通りあの『Downwell』と比肩するほど面白いが、金を払う必要性がなく、私は心配になってfanboxで支援(月額課金でクリエイターを支援できる)をしてしまった。

とはいえ、プレイヤーにとって課金が緩いのは美点だ。
敵が登場し、装備を厳選し、ルートを考えて世界の最奥に到達するハードアクションをぜひ味わってほしい。
骨太なアクション(シューター)RPGを求めているなら絶対遊んで欲しいと思っている。

最後になるが、少しだけ物語にも触れておきたい。
ゲームのスタート地点は廃墟で、赤い服の少女(主人公)と、青い服の少女がたたずんでいる。
そして、赤い服の少女は弓を取り、なぜかゲートをくぐって戦いに挑むのだが……物語がないようでいて、ゲームが進むと世界観と少女の目的は察せられる。
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▲この物語、現代風に言うとエモすぎるんですよ、ほんと。

あるボスに初めてたどり着いたとき、ゲーム終了時に手に入る“Time Tears(刻の涙)”があかされ、その瞬間からがゲームの物語の真の始まりで、感動してしまった。
背景とゲームを通じてうっすら語られる古のシューティング技法が生きているので、そこにも注目して遊んでいただけると嬉しい。

概要:
タッチパネルを前提とした気持ちよい操作で、ローグライク・ディアブロのビルド要素も入れ、プレイするほど上達する難易度設計も実現した欲張り・ハード・アクションシューター。

評価:9(名作)

おすすめポイント
スマホのために作られた操作
スマホで難しいアクションシューターをストレスなく遊べる
装備の組み合わせに悩める
薄く語られる物語
パターンを覚えると途端に楽になるボスの難易度設定

気になるポイント
なんだかんだで難しいので根気は必要
課金するものがない

アプリDL:
ReversEstory (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:ilili_barcode(日本)
HP:https://www.pixiv.net/fanbox/creator/27323063
レビュー時バージョン:1.0.2
課金:ライフとボスモード(それぞれ1つごとに120円~、1回買うと広告がなくなる)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: