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原作付きソシャゲとして1つの理想形。シミュレーションRPG『ラングリッサーモバイル』レビュー [AD]


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原作が存在するゲームのソーシャルゲーム製作は、漫画の実写映画化のようなジレンマを抱える。
漫画を短く実写化にするにあたって物語も見た目も必然的に変わるし、演技より話題性を考えたキャスティングだってある。
どうやってもどこか原作から離れるし、全部のファンが納得してくれるわけではない。
ただ、そんな世界でも当たりと言われる幸せな実写映画はある。

同じように、ゲームも売り方が変わればシステムが同じでいられず、いろいろと文句はでる。
しかし、今回紹介する『ラングリッサー モバイル』は、そんな原作ゲーム付きのソシャゲ化において、1つの理想形といえそうなほどよくできていた。
少なくとも原作を遊んでいた自分にはそう思えた。

まず、『ラングリッサー』シリーズについて説明しておこう。
このシリーズはかの『ファイアーエムブレム』と近い時期に登場したシミュレーションRPGだ。
見下ろしマップでユニットを動かすターン制の戦術ゲームだが、騎兵や槍兵など相性の強弱が大きな兵科を指揮する戦術性と、兵科バランスを考えつつ指揮官のクラスチェンジ先を選択する(クラスチェンジで兵科が変わり、指揮官も急激に強くなる)育成システム、うるし原さんのイラストなど、当時は独自の魅力が多くのファンを引き付けた。
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Project EGG版『デア ラングリッサー』より

なかでも、物語とキャラクター描写は当時として特に優れていたと思う。
このシリーズは、“聖剣ラングリッサー”を掲げる光の勢力と、“魔剣アルハザード”を持つ混沌の勢力の争いを描く戦記物だ。
ただし、単に"光=善”と”混沌=悪”の物語ではなく、光と混沌の戦いの中で思惑を持って動く人間たちが描かれていた。
敵味方の双方にそれぞれの正義と理念、説得力のある戦う理由が設定されており、そのドラマ性がプレイヤーたちをひきつけた。
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▲妻を残し、部下を助けるため死地におもむく敵将バルガス。こんなナイスガイが敵。

とくに人気の高かった『デアラングリッサー』では、多くの分岐が用意され、敵の理想に共感したなら光の軍勢を裏切って戦う選択も用意された。光の使途が世界に平和をもたらす王道パターンはもちろん、破滅的な結末、最終的に光と混沌のどちらも出し抜き、“魔剣アルハザードの力を制御して人間が世界に平和をもたらす”結末すらあったのだ。

話はソシャゲ化に戻る。
『ラングリッサー』は、キャラクター・世界観において素晴らしい。
しかし、キャラや世界に思い入れが深いファンが多いほど、ソシャゲ化の難易度は上がる。
キャラクターの扱いをミスすると「私の解釈と違う!」となるし(たとえ原作者が続きを作っても、終わった物語を崩すのは厳しい)、異なるシリーズの人物を1つに集めると大抵のゲームは設定に無理がくる。
しかも、日本のゲームを中国の人々が作っているとなると、遊ぶ前は不安しかなかった。

が、『ラングリッサー モバイル』には奇跡が起きていた。
まず、シリーズものも語り構成が驚くほどソシャゲに向いていた幸運があった。
『ラングリッサー』では、シリーズを通じて同じ大陸で、同じ主要人物と共に聖剣ラングリッサーと魔剣アルハザードの対立が描かれる。
光の勢力は1,000年を生きる魔術師ジェシカが登場して、混沌の勢力の中心人物として不死の王子ボーゼルが暗躍し、その時代の人々が巻き込まれて戦う。
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▲今作でも前作通じての案内人ジェシカがストーリーを導く。

『ラングリッサー モバイル』もそれを踏襲し、聖剣ラングリッサーの加護を受ける主人公たちと、敵対する帝国という伝統的な構造を作り上げた。
これを引き継げば『ラングリッサー』感が出る、で、ファンとしてもシリーズとして受け入れられる。
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▲いつもの大陸で、また主人公vs帝国の戦いが……。

過去作のキャラが登場するオールスター化の言い訳としては「聖剣ラングリッサーに蓄積された記憶が聖剣に引き継がれており、それが具現化している」という形をとっている。
やや強引ながら、シリーズ全出席の神のアイテムを持ちだされてしまうと、
「まあ、ラングリッサーなら記憶もあるし、全シリーズ登場しているしな……」
などと納得してしまう。これぞ歴史のなせる技、もはやこの定型は水戸黄門ばりの安定感である。
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▲毎作オープニングに登場して主人公の職業を選ばせる光の女神。彼女も同じように今作に登場する。

さて、ここまでは「ラングリッサーだから簡単に収まった」話なのだが、本作はそれを超えていた。
過去作キャラクターの扱いが神がかっていた。
現代においてキャラクターに固有のサイドストーリーが用意されることは多いが、このサイドストーリーが「わかっているな、こいつら」と唸る品質。
あくまで、原作から読み取れる範囲の内容を膨らませて語り、過去作のプレイヤーの「このキャラをもっと見たい」という欲求を満たしてくれる作りで、「こいつはこんなじゃなかった」を巧みに避けて作られている。
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かつての敵の首領、皇帝ベルンハルトは覇道を目指したことを振り返り、誠実で人気が高いバルガス将軍の物語では帝国の将軍として実直に戦う様子を描かれる。
オリジナルストーリー部分は翻訳が気になる(中国語圏独特の癖が感じられる)部分はあるが、原作の物語で語られたことを違和感なく膨らませている。
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▲レオン編では理想のために死んでいったかつての部下が……。

しかも、レアリティが低かろうが物語が面白そうならサイドストーリーが実装されていて、そうでなければSSRキャラ女子ですらサイドストーリーはない。
サイドストーリーを進めるとキャラクターのかけら(キャラ強化に必要)が手に入るため、システム的な問題は発生するのだが……蛇足になるサイドストーリーなら実装しないのは英断だと思うし、スタッフの『ラングリッサー』愛が伝わる作りだった。
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▲ザ・脇役顔なエグベルト。彼の好感度を上げてサイドストーリーを見る日がくるとは。

最後に何より驚いたのが、原作の物語をすべて収録していることだった。
『ラングリッサーモバイル』では過去の英雄たちの記憶を見る“次元のはざま”というステージが存在し、旧作の物語がフルボイスで完全収録されている。
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オールスターものゲームでは、「新規プレイヤーは旧キャラクターを知らない」からゲーム内での関わりや描き方が薄くなることがある。
ところが本作では 「原作を知らないなら、学ばせればいい」という理屈で、旧作をそっくりゲーム内に収録して強引に解決してしまったのだ。

もちろん、基本は新たな主人公をベースに物語が進むが、しばらくすると旧作のキャラクターが登場し、次第にメイン物語と旧作の物語を交互に見る構成になる。
これを繰り返すことで、新規プレイヤーにはガチャから登場するキャラクターの性格をアピールし、シリーズファンには懐かしさを感じさせ、新旧の物語を融合させている。
新規プレイヤーにとっても、サイドストーリーは“次元のはざま”で見た物語の深堀りとなり、興味深いものとなる。原作モノとして理想的な作りではないだろうか。
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▲イラストはうるし原さんの元デザインを引き継いで描き直しており十分魅力的。なお、原作発売時は絵がエッチすぎて持っていると学校で「えっち者」扱いされた。

この時点で『ラングリッサー』ファンの私はノックアウトされたのだが、これにゲームそのものの作りがダメ押しした。
原作のシステムをうまく小さくまとめられていて面白かったのだ。
原作は広いステージで大量の兵士を展開して戦うゲームだったが、これを狭いステージで戦うターン制のバトルに縮小した。
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戦場を埋め尽くす兵士は消えたが、指揮官とともに行動する部下にの扱いでゲームに取り込まれている。指揮官が突撃するときは兵士の攻撃力が微力ながら加算され、攻撃を受けたら指揮官より兵士が先に倒れていく。いわば、盾役である。
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▲戦闘画面はラングリッサーより、ファーランドストーリー感

兵士と指揮官には槍兵、歩兵などの兵科が設定されており、兵科には歩兵は騎兵に弱いなど、強弱関係がある。
通常、指揮官と兵士は同じ兵科が設定されるが、『ラングリッサーモバイル』においては指揮官のクラス(職業)によっては異なる兵士を配属できる(これも原作のシステム)。
例えば、歩兵の指揮官に槍兵を配備して騎馬兵の突撃に耐えられる編成したり、歩兵に騎馬兵をつけて歩兵指揮官同士の衝突で有利に戦えるようにしたり、状況に応じて使い分けられる。
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▲異なる兵科を配備すると、兵科の特徴は薄れるがが弱点も補える。

追加の兵科は、一定レベルで行えるクラスチェンジで得られるのだが、このクラスチェンジも良かった。
指揮官がクラスチェンジすると、選んだ職業に応じて兵科や追加スキルが得て急激に強くなる。クラスチェンジ後は急に強くなった指揮官の力を振るうのは、純粋に楽しい。そして、原作の面白ポイントそのままだった。
小さくなっても、細かいお楽しみポイントを原作通りにしてくれていることが、私のテンションをぶち上げた。
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そして、最後のとどめは「ゲーム機の原作に近い面白さを感じられる」ところにあった。
原作の家庭用ゲームではプレイヤーの成長速度を想定し、常に「苦戦するが勝つ」バランスをとっていた。しかし、日本の多くのソシャゲでは最初にガチャで当てたキャラのレベルを一気に上げて、サクサク進めるプレイが主流でゲーム機の感覚とは異なる。
ところが、本作はプレイヤーLVがキャラクターLVの上限になるシステムがあり、いきなりキャラクターを高レベルまで育てることができない。

そして『ラングリッサーモバイル』では、プレイヤーランクによってキャラクターの能力上限も決まることを利用し、レベルに合わせて適正な難易度のステージを用意した。
これによって1ステージは2分~3分で終わる手軽さながら、家庭用ゲームのような手ごたえも再現する絶妙なバランス調整を行った。
ちょっと手ごたえを感じて満足して遊べるのだ。
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▲左上のプレイヤーレベル=キャラクターLVの限界。中盤からははっきり考えた方が効率が上がる

このゲームの枠組みは、『ソウルクラッシュ』や『プリンセスコネクト!ReDive』などが採用する大陸系RPGの枠組みを使っている。
キャラクターはすべて “かけら”を利用すれば★を増やしてレア度を上げて使い続けられる。
時間で回復するスタミナを消費してステージを攻略していくと、次々と新しい機能が解放されていき、無理なくゲームシステムを覚えられる仕組みは、そろそろ日本でもおなじみになってきたのではないだろうか。
一種のマンネリはある。だが、驚くほどピタリと『ラングリッサー』がはまっていて、私はまたこのシステムを楽しめてしまった。

根本には育成が楽しい大陸系RPGの面白さがあり、プレイの感覚には少し家庭用ゲーム機の手応えがある。
そして、怒濤のごとく旧作のシナリオの懐かしさに驚き(あまりに記憶のままだったので、原作と見比べたら本当にそのまますべて収録していて2度驚いた)、新規のエピソードでうんうんとうなずき、細かい面白ポイントも再現されている。
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▲おなじみのアレも。

ゲーム内にはプレイヤー同士の対戦も用意されているが、1人用プレイの手ごたえと物語だけで十分に楽しめるので、自分の趣味に合わせて遊んでもいい。
ソシャゲアレルギーなら無理にとまで言わないが、『ラングリッサー』世代なら遊ぶべきゲームになっていると断言できる。これほど幸せなソシャゲ化は珍しい。
ここだけの話、私も思わずちょっぴり……すごく課金してしまった。

一方、そういった"思い出補正”を抜いても、オールスターなソシャゲでありながら過去作の物語を遊べる形で提供して、新規向けにも遊ばせる作りなので、是非遊んでみてほしい。
今回は、思い出補正込みで評価を1段階上げて8にしておく。なんせ、評価=自分の大好き度なので。

評価:8(かなり面白い)

ゲーム概要
ラングリッサーを原作としたタクティカルRPG

おすすめポイント
ラングリッサーの世界観やキャラクターをリスペクトした物語
大陸系RPGとして育成が楽しい
サターン版のラングIIシナリオをほぼそのまま収録

注意点
新規シナリオは日本語に不自然さを感じる
序盤の物語はやや戸惑う

アプリリンク:
ラングリッサーモバイル (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
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開発:ZlongGames(中国)
レビュー時バージョン:1.1.6
課金:キャラ、スタミナそのほかいっぱい。しなくても遊べるがしたくなる
公式ページ:http://langrisser.zlongame.co.jp/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画:


2019.04.21訂正
当初、兵士を騎馬にして移動力をあげると書いていましたが、誤りでした。訂正いたします