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また本編を遊びたくなるし、もっと本編が味わい深くなる。たった10分の見事な外伝作品『魂の架け橋 ー序章ー』レビュー。『OPUS:魂の架け橋』を遊んでいたら、絶対やるべき作品

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本編をまた遊びたくなるし、その物語がもっと味わい深くなる。『OPUS: 魂の架け橋』を遊んだプレイヤー全員に遊んで欲しい、模範的な、たった10分の外伝作品が『魂の架け橋 ー序章ー』だ。
このゲームの本編は、文明が滅びた世界でロケットを作って宇宙葬を執り行おうとする巫女のフェイに、ひねくれ者ヨハンを操作して協力するゲームという側面が強かった。
それに対して『魂の架け橋 ー序章ー』では、そんなフェイの生い立ちと、ヨハンに出会う直前の物語を語り、見事な補完がなされている。

本作は、イラストとアドベンチャーで語られるとても短いアドベンチャーゲームである。
序盤では満ち足りた教会での生活と、コールドスリープに入るまでの様子が紙芝居で描かれ……。
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コールドスリープ装置から目覚めるところから、プレイヤーはフェイを動かせるようになる。
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アドベンチャーパートは、タッチした位置にフェイが移動して物体を調べるシンプルな作り。
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だが、全体的にビジュアルと音のつくりは非常に豪華で、そのままどこか有名スタジオの新作アドベンチャーと言われても信じてしまうほどに作りこまれている。
場の空気感も、見た目も、動きも、無料の外伝であることが信じられないほどよくできており、フェイの孤独を伝える。
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このクオリティをもって、本作は短時間で濃密にフェイの生い立ちを語り、心情を語り、目覚めたフェイの姿を見送って物語は本編へ続く。
時間にしておよそ10分。とても短い物語なのだが、本編にとって大きな意味を持つ外伝物語となっていた。

誤解を恐れずに言えば、私にとっての『OPUS: 魂の架け橋』は気持ち悪さが残る作品だった。
本編の絶望的な困難に立ち向かう物語は世間的に非常に評判が良いし、App Storeのレビュー欄を見ても「感動した」などと絶賛の声が多い。
実際、私もラストには胸にこみあげるものがあった。

ただ、それでも私はフェイの愚直すぎる献身には居心地の悪さを感じていた。
あまりにも絶望的な状況に愚直に耐え進みすぎるフェイの姿は、ひねくれた私にとって人間味が薄く感じられていたのだ。
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▲前作より。あまりにも献身的なフェイが理解しきれなかった。

ところが、たった10分『魂の架け橋 ー序章ー』のプレイは、この気持ち悪さをかなり解消してしまった。
前作では想像力に任されていた部分……フェイの献身の源が、ある程度は理解できた気がする。
本編に疑問を抱かなかったプレイヤーにとっても、フェイの新たな一面を知る素晴らしい短編として受け入れられるはずだ。
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これを遊んだあと、私は即座に本編を遊んでフェイの物語を見直しくなった。
衝動に突き動かされるままに遊んでみると、ヨハン視点で入ってきた物語が少しだけフェイ寄りに見えるようになり、より好意的に見えるようになった気がする。
正直に言えば、短すぎてまだ物足りないのだが、語りつくしてしまうよりは後を引くぐらいのつくりが何事もちょうどよいのかもしれない。

とにかく、本作はまた本編を遊びたくなるし、その物語をもっと味わい深くしてくれる素晴らしい外伝作品となっている。
『OPUS: 魂の架け橋』を遊んだなら、このゲームは試した方が良い。

概要:
『OPUS: 魂の架け橋』の本編を補完する短い前日譚

評価:7(面白い)

おすすめポイント
短いが全体に手抜きのないクオリティ
本編を足しすぎない程度に補完するストーリー

気になるポイント
もう少しだけ遊びたかった

アプリDL:
魂の架け橋 ー序章ー (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)

開発:SINOGO(台湾)
HP:http://www.sigono.com/opus-rocket-of-whispers-prologue
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: