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ゲームルールの秘密を解きながら遊ぶパズル『Evergarden』レビュー。美しい庭でゲームを発見する体験のパズル

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母の残した不思議な庭を育て、その秘密を解き明かす美しいパズルが『Evergarden』だ。
開発は『Race to The Sun』で知られる Flippyfly で、2016年に母が亡くなった母のためにこのゲームを作ったという。実際、ざっくりしたポリゴンに、光の演出をふんだんに盛り込んだアンニュイな庭の雰囲気はどこか「思い出」を感じさせる。
ただ、こういった「雰囲気が良い」ゲームは内容がシンプルすぎることも多いが、本作は雰囲気だけで終わっていない。
『スバラシティ』や『Triple Town』などのエンドレスパズルの系譜に連なる、奥深く楽しいパズルも同時に用意されているのだ。

本作の特徴は「雰囲気ゲー」と「面白いやりこみパズル」の融合にある。
ゲーム開始時、プレイヤーはロウソクで照らされた机の前に立たされ、亡き母の残した手紙読む。そして、遺された瓶に触れると……。
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六角形のマスで構成された不思議な庭に閉じ込められてしまう。
ここは、かつて母も閉じ込められた場所で、プレイヤーもまた母と同じようにこの庭を育てて秘密に触れるととなる。母は、なぜプレイヤーをこの庭に誘い込んだのか。
『Evergarden』ではこの物語が最初の導入となって遊ぶ動機を提供する。淡々と遊ぶのも良いが、やはり導入があるとゲーム好きとしてはうれしい。
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そう思いつつパズルに部分に触れると、そのパズルも「どこかにありそう」な親しみやすいルールを採用しつつ、「ありそうでなかった」内容にもなっていて、驚く。
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本作は決められた手数内で六角マスに植えられた植物を増やし、育てるマッチパズルとなっている。
実のついた植物を隣接したマスに向けて引っ張ると、そのマスに種がまかれ、苗が育つ。
全ての操作が終わったら、画面右の時計をタッチしてターンを終えると時間が経過し……。
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▲実が落ちて、苗が育った。

苗は再び実をつける。
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さらに実をつけた植物を、同じ成長度の実をつけた植物に向けてドラッグすると、植物が合成されて1段階成長する。
プレイヤーは土地や種が残っている限り1ターンに何度でも“種まき”と“合成”を行えるので、先のターンの動きも考え、できる限り大きく植物を育てる庭造りをする戦術が重要になる。
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で、ゲームの1ターン目が終わると、今度は画面の左上にランダムに“ミッション”が表示される。
これは、ミッションに示される並び順で植物を並べると、好きな位置に成長しきった植物を植えられる“ストックアイテム”が出現するというもの。
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通常、植物は小さな苗から順番に育てないとならないが、“ストックアイテム”を使用すればインスタントに育った植物を配置できる。
ストックアイテムは3つまで保持可能で、4つ以上になると盤面にずっと放置される。
盤面に苗を植えられないと成長が遅くなるため、ストックアイテムを思い切りよく使いつつ高速でミッションをこなす(ミッションは1ターンに何度でもこなせる)プレイが重要となる。
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プレイが終わると庭のすべてをキツネ(?)がエネルギーとして吸収してスコアが産出され、石柱(6段階目に到達した植物を合成すると柱になる)から物語進行に必要なキーアイテムが出現する。everg-6

とまあ、これがゲームの流れなのだが、実際にプレイすると感心することばかりだった。
ゲームのプレイ感覚こそ『スバラシティ』などのエンドレスパズルに近いが、先行作品を研究してそれらの欠点を克服していたからだ。
まず、1プレイは10ターンと短くまとまっており、エンドレス系のマッチパズルにありがちな「上達すると長すぎて終わらない」欠点が克服されていた。
石柱を作るたび3ターンの時間延長はあるが、悩みすぎなければ15分以内に(慣れていなければ数分で)1プレイが終わる。
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▲石柱はスコアが高く設定されているだけでなく、ステージクリア後に物語を進めるキーアイテムとなる。

また、ゲームはメインのパズルと、庭の謎を解き明かす短いパートの2重構造となっており、庭の謎を解くにも簡単な別のパズルが必要になる。
これがまた良いゲームのクッションになっていて、メインパズル→秘密を解くパズル→メインパズルのループに飽きないよう設計されているし、庭の秘密を解くことでキツネが音楽を思い出し、メインパズルで特殊能力を使えるようにもなる成長の楽しさもある。
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さらに、本作のパズルに関しては「説明されすぎない」ことも面白さになっている。
いくつかの重要なルールや、庭の謎を解くことに必要なルールは説明されないことがある。しかし、何となく触っているとプレイヤーに引っかかるようにできていて、「これはなんだろう?」とゲームの現象を発見し、解き明かす楽しさが設計されているのだ。
『スバラシティ』のようにストイックなパズルだけを遊ぶのもまた純粋で良いが、寄り道があるのもまた良い。
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▲庭にもパズルが隠されている。

この手のゲームは淡々とプレイするだけになりがちだが、物語に引っ張られて初めて、パズルや庭に隠された新しいルールを発見して喜び、何度かの“発見”をしつつ積極的にパズルを楽しめる(積極的に遊びたいプレイヤー向けになるが、有料ゲームなら問題にならない)。
720円という価格はスマホにしては高く見えるし、実際に私も購入まではそう思っていた。が、同タイプのゲームにはまった経験を持つなら、遊んだ後に「適正価格だった」と納得することだろう。
本作は、FlippyFly が亡き母への捧げものとして作り上げた、見事な良作パズルだ。

評価:8(かなり面白い)

ゲーム概要
パズルの成績に応じて美しい庭の謎が判明するマッチパズル

おすすめポイント
美しい庭と音楽の雰囲気
黙々と遊べるエンドレスマッチパズル
庭の謎、パズルのルールの謎を発見して解く面白さ

注意点
価格が高めなので『Triple Town』や『スバラシティ』を遊んでこの系統のゲームが合うか試すといいかも

アプリリンク:
Evergarden (itunes 720円 iPhone/iPad対応 / Steam)

開発:Flippfly(アメリカ)
レビュー時バージョン:0.9
課金:なし
公式ページ:Flippflyflippfly.com/evergarden/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: