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歴史を辿ってFFを遊ぶゲームブックRPG『ファイティング・ファンタジー・レジェンド・ポータル』レビュー。日本初公開の『死の軍隊』を最高に面白く見せる良作

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往年の人気ゲームブックシリーズ『ファイティング・ファンタジー』から、特に人気の高い『火吹き山の魔法使い』、『バルサスの要塞』、『盗賊都市』の3冊をまとめてオープンワールドRPGに仕立て上げた『ファイティング・ファンタジー・レジェンド』に新作が登場した。
『デストラップ・死の罠ダンジョン(旧邦題:死のワナのダンジョン)』、『チャンピオンのトライアル(旧邦題:迷宮探索競技)』、日本語版が未発売の『死の軍隊』が収録され、日本語で遊べる『ファイティング・ファンタジー・レジェンド・ポータル』だ。
2018年になって、日本語ファイティングファンタジーの実質新刊が遊べるとは……しかも、これはこれで前作と異なる面白さを追求していて面白い。ゲームブックファン必携のアプリだ。
本作は、読み手が主人公となり、読み手の選択で結末が変わる本“ゲームブック”をRPGとしてアレンジしたアプリだ。
ゲームはプレイヤーの分身となるキャラクター作成から始まる。
キャラクター能力には戦闘などの技術、運の良さ、生命力を示す体力の3つがあり、合計が36になるように割り振る必要がある。また、2つの特殊能力を選択して身につけることもできる。
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▲前作にはなかった難易度の設定。死んだときの復活回数が限られている。始めは旅人推奨。

技術は扉をこじ開けるなど技術的な行為の成功率や、戦闘で敵に与えるダメージに影響する。
戦闘で攻撃するときは技術と同じ数のサイコロ(1面だけに成功マークが記されている)が転がり、成功マークが出た数と同じだけ敵にダメージを与えられる。
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▲戦闘は2人のキャラクターが交互に技術点の数だけサイコロを振り、相手の体力点を0にするまで戦うデッドオアアライブなイベント。

運そのま幸運度で、偶然による判定なら運と同じ数のサイコロが振られて、成功マークが出た数が“目標スコア”以上なら判定成功となる。
オリジナルのファイティングファンタジーとは異なる仕組みだが、雰囲気は出ているし、RPGのバランスを取るために仕方のない変更と言えるだろう。
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キャラクターを作り終えたら、後は冒険するだけ。次々とクエストが出てきて、選択肢が出てくるので、それを選んでいけば自分だけの冒険が楽しめる。
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助けを求めている男に手を差し伸べても良いし、見捨てても良い。
牢屋に捉えられたときに食事を差し出されたら、おとなしく食べても良いし、看守を殴り倒して逃げようとしても良い。
1980年代の空気だからこそ許された、フリーダムな選択肢のRPGが始まる。
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なお、本作には前作と決定的な違いがある。それはゲームの自由度の低さである。
前作は3冊分のクエストを自由に楽しめるオープンワールドRPGに仕立て上げ、ゲームブックにない世界観の広がりが好評を博したのだが……今回は『死の罠ダンジョン』、『チャンピオンのトライアル』、『死の軍隊』の3冊を順番にクリアし、プレイしていくものになっている。
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ただし、自由度が低いからいってつまらないわけではなく、むしろ逆。この3冊は順番にクリアすることで面白くなるチョイスだ。
そもそも、この3冊は時系列が決まっており、順番にクリアしないと歴史が変わってしまう続き物なのである。

最初にプレイするのは、『デストラップ・死の罠ダンジョン(邦題:死のワナの地下迷宮)』。
これはファングという田舎町を治めるサカムビット公が町おこしのために作ったダンジョンに挑む、ダンジョン冒険ものである。死のダンジョンから生還すれば、10,000Goldの大金が手に入る。
これは徹頭徹尾ダンジョンだから選択肢の自由は少ないが、様々なトラップをくぐり抜ける楽しさがある。
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▲町おこしは成功し、ファングは賑やかな場所となった。

そして次の作品『チャンピオンのトライアル(邦題:迷宮探索競技)』。
プレイヤーが10,000Goldの賞金を手に入れたところから始まり、門番がいれば大金で買収し、酒場では酔うまで飲み、金に物をいわせてイキる。
しかし、あっという間に奴隷に落とされて再びファングの街のダンジョンに挑むこととなる。
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で、このファングのダンジョンがひどい。
「主人公に攻略されたから、今度こそ攻略されないように難しく作り直された」という設定で、原作は超難しいし、運が良くないと攻略できない敵すらでる……自分の中ではクソゲームブック。
だが、『FFLP』はアプリになって救われている。
ライフ制のRPGだから死んでもやり直せて(ライフが尽きたら本の最初から)、運が悪いプレイヤーでもボスを倒せる。また、続き物として連続で遊ぶと『デストラップ』との地形の共通点などが見える面白さもあり、ギリギリ楽しめるのだ。
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そして3作目、日本初配信の『死の軍隊』で『FFLT』は本領を発揮する。
『死の軍隊』は、ここまでのダンジョンで稼いだ賞金で軍隊を雇い、デーモンの軍団と戦う戦記RPGになる。
プレイヤーに、これまでダンジョンで苦労していたことが報われた感、そしてダンジョンで自由のなかったところにフィールドを自由に歩く開放感が一気に押し寄せる!
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軍隊を率いて戦うという設定もゲームブックとしても新鮮で、プレイしていて楽しい。そう、3冊目のために辛い2つのダンジョンがあったのだ……!
そう感じられる構成になっていて、3冊1セットで素晴らしいものになっている。
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また本作独自の長所として、1冊完結で話が進むのでエンディングが存在するというのもある。
シナリオをクリアするたび、プレイヤーの行動に応じて解放された仲間のその後などがエンディングロールとして流れる。これはゲームブックには存在しないパートで、達成感もあるし、よく見ると他のゲームブックに繋がっていそうな設定もあって興味深い。
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前作はオープンワールドにすることで『ファイティング・ファンタジー』の世界観を楽しませてくれたが、今作はゲームブックを時系列に沿って物語として遊ぶ楽しさを拡張し、楽しませてくれている。
は往年のゲームブックファンならぜひ試す価値ありだ。
ただ、新規の方はあまりの難易度が辛いと思うので、前作の『ファイティング・ファンタジー・レジェンド』をおすすめする。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
懐かしのゲームブック+日本未発売作品が遊べる
ゲームブックの雰囲気やイベントを再現
十分なレベルの日本語(良いとまでは言えない)

気になるポイント
難易度が高い
原作のイラストが見られない

アプリDL:
Fighting Fantasy Legends' (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam))

開発:Nomad games(イギリス)
販売:Asmodee Digital(US)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画:


ちょっと攻略:
デストラップダンジョンの攻略に必要なサファイアは、原作のパイプの中ではなく、転がってくる岩の奥に変更されている。

チャンピオン・トライアルの毒で即ゲームオーバーになる格子は、倉庫でパンを食べてヤスリを手に入れると通れる。