ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

演劇とゲームの融合『演ゲープロジェクト』体験記。ゲームを通じて参加できる『テニミュ』や『ロマンシング サガ THE STAGE』の可能性を探って #BitSummit

bits-6
レアなインディーゲームが見られる見本市BitSummit Vol.6でも、10:00~13:00までしか展示されなかった(しかも、実際は機材や人員の問題からプレイ可能期間はもっと短かった)幻の展示『演ゲープロジェクト』をあなたは見ただろうか。
本作は立命館大学のブースに展示されていた実験作で、、“人間による演劇”と“ゲーム画面”、“プレイヤーの操作”の3つを組み合わせたゲームであった。
本作は実験的な展示であり、まだまだ検証・制作中のものだったが、この取り組みに可能性を感じたので紹介しておきたい。

このゲームには結構大変な前準備が必要だった。役者2人が揃って、モーションキャプチャーなどの機材がその場にあって、やっとプレイヤー2人にコントローラーが渡される。
その準備が整って、ようやく役者によるゲームの説明が始まる。
bits-2
▲学生演者。かなり通る声で演劇をしており、迫力があった。

『演ゲープロジェクト』の登場人物は、電脳世界に生きるAIを作る博士と、旧型AIのブロズの2人(?)。
すごく省略して説明するが、博士は旧型で素行が悪いブロズを追うことをプレイヤーに要求する。
bits-4

一方、ブロズは自由に生きていたいから博士にあらがう。その様子はゲーム内ではなく、役者の演技で説明される。
演劇を見ていると、最終的にプレイヤーはブロズと出会うことになる。
bits-5

『演ゲープロジェクト』の焦点は、ここで演劇からゲーム画面へ移る。
ブロズの役者にはモーションキャプチャーが取り付けられており、ブロズの演技に応じてゲーム画面でもロボットが動く。
bits-7

そして、プレイヤーにはUFOのようなアバターが設定されており、ビームを撃てる。
ここでプレイヤーはビームを撃ってブロズを攻撃もできる。だが、目の前の役者の演技がそのまま画面に反映され、プレイヤーに「人間を撃つかのような」ためらいを感じさせるという理屈のようだ(実際のプレイ時はバグによってブロズがうまく動かず、我々は躊躇なくブロズを撃った)。
bits-1

そして、ビームによってブロズのHPをゼロにすると……画面が遮られ、「ブロズをころしますか?」という選択肢を描いた看板が演者の手によって示された。
我々はコントローラーを置いて相談し、最終的に指で「YES」を指し示すと物語が再開し、ブロズ演者の哀れな叫びと共に終了した。
bits-8

本作は、『テニスの王子様』や『ロマンシング サガ THE STAGE ~ロアーヌが燃える日~』のように、ゲームや漫画が原作のミュージカルや演劇が増えているなかで、劇場内で観覧者がより劇に没入できるよう、そして観覧者の選択を劇に反映させてインタラクティブ性を上げることを視野に入れて制作・実験されているという。
わかりやすく例を出すなら、『テニミュ』の氷帝vs青学の名シーンに観客が参加して「勝つのは氷帝!!」と叫びまくることで本当に氷帝が勝ったり、応援が足りないと負けるような分岐を作るようなシステムを視野に入れているとのこと。

今回はゲームが不完全だったり、グラフィックも仮のものであったりしたためにゲーム画面への没入感は低かったが、目の前で演劇が行われていたこともあって「ころしますか」という選択時に「人間のように意思のあるものを殺すのか」というためらいは、普通のゲームよりかなり大きかった。それを踏まえると、この研究は価値がありそうなものに感じられた。

その昔、ナムコワンダーエッグというテーマパークに、劇仕立てでブリーフィングを行ってから実践に臨む『ファイターキャンプ』というゲームがあったが、この技術がものになれば「直接現地に行かないと楽しめない、体感・参加型コンピューターゲーム」が再び登場することになるのかもしれない。
そういった可能性を感じられた取り組みで、BitSummit展示品の中でもダントツに(良い意味で)くるっている作品と感じられた。

成果が出るのは数年後になるかもしれないが、すごくワクワクできたので、来年のBitSummitなどに行く予定の皆さんは、立命館大学の出展を確認しておくと良いと思う。