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それは謎解きを通じて神秘の世界を見る旅。脱出ゲーム『The Room: Old Sins』レビュー

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精巧な3Dグラフィックで作られた物体の仕掛けを探り、その秘密を明かす脱出ゲームシリーズ最新作『The Room: Old Sins』の日本語版がついに発売された。
今作ではシリーズ通じて評価されているグラフィックは強化され、メカニカルな機構はさえわたり、ゲーム画面の中に別世界があるかのような存在感を出すことに成功している。
実際、ゲームをプレイしても謎解きがゲーム世界を邪魔しないよう作られており、“謎解きを通じて別世界を旅するゲーム”という印象を受けた。
そう、このゲームをプレイすることは異世界に旅立つことに等しい。

今作は不思議な力を持つドールハウスを調べ、そこに隠された“過去の罪(Old Sins)”と“零因子”と呼ばれる物体を探す脱出ゲームとなっている。
毎回説明しているが、『The Room』シリーズのシステムは気になる場所をタッチしてアイテムを見つけては使用して新しい道を切り開くオーソドックスな“脱出ゲーム”だ。
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ただし、その面白さは写真や一枚絵だけで構成されたシンプルな脱出ゲームから一線を画す。
シリーズ通じてのことだが、3Dグラフィックスは素晴らしいの一言。
3Dで表現された物体を眺めていると、物が実在しているかのように錯覚してしまうほど精巧に作られている。
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▲前作以上に謎解きにかかわる物体の周囲の描写も細かい。

さらに、物体にはスイッチや歯車などの機構が取り付けられており、これが説得力のある動きを見せて“物体の存在感”を補強している。
歯車なら噛み合って動き、錠前は機械的で複雑な動きと共に解除される。その動きは「現実にありえそう」で、かつ「かっこいい」機構として作られており、見ているだけで楽しめる。
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▲上の地球儀が開いた図。開き方がまたかっこいい……。

それは謎を解くときも同じで、歯車を動かしながら噛み合わせたり、シリンダーをぐるぐる回したりと、ロマンあふれる動きを見せてくれる。
さまざまな機構が動いて物体が変形し、その様子に胸が躍るゲームとなっている。
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この仕組みはシリーズ共通ではあるが、今作ではハード性能の進化で物体がさらに美しくなり、液体など表現の幅も増えてさらにパワーアップした機構を楽しめるだろう。
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▲ハードの進化は、スマホで液体をリアルに見せるまでになった。

また、本作はリアルな物体によって仕掛けを楽しむ脱出ゲームというだけでなく、神秘的な体験をする旅でもある。
ドールハウスの中には魔法的な仕掛けも隠されており、“接眼鏡”というアイテムを使って覗きこむことで非リアルな物を見ることもできるのだ。
ゲーム中に登場する虹色の金属板を接眼鏡で覗くと……。
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このように、奥にいびつな世界が広がっていることがわかり、そこに手を加える謎解きが楽しめる。
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▲描画できる物体が増えたからか、こういった世界の見応えも増している。

接眼鏡を使うことで異世界への入り口が開けることもある。
たとえば、この和風の部屋にある五重塔のミニチュア。ここの穴をミニチュアで覗くと……。
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▲最近では珍しくなりつつある中華が入った和風。

突然に障子で区切られた和室に移動する。
鉄道の模型があればそこに入って中から操作することもあるし、とにかくすべてのものが何かの入り口となっている。
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ただ謎を漫然と解いていくのではなく、謎を解いたときに複雑な機構を備えた物体の動きや、神秘的な世界の演出を垣間見られる。
それがご褒美として機能しており、最終目的は零因子を手に入れての脱出なのに、そんなことを忘れてただ謎を解き、その先にある仕掛けや世界を見ることに没頭してしまうほど魅力的だ。
しかも世界を楽しむことを重視してか謎の難易度は低めで、スムーズに世界を見て回れる。次々と精巧な仕掛けを見て、不思議な道を歩む旅は辞め時を失ってしまうほど楽しい。
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▲日本語訳も完璧

そして、とにかく先に進んで世界を見ているとクライマックスが訪れて盛り上がり、本来の目的を思い出してゲームが終わる……そんな体験ができる贅沢な作品となっている。
大いなるマンネリとでもいうべきか、ゲームの面白さのポイントはシリーズ共通なのだが、毎回ハードの進化と共に映像が強化されているので毎回楽しめる。
これまた『The Room』シリーズを紹介しているときには必ず書いていることだが、単なる脱出ゲームを超えて誰もが楽しめる作品であり、不思議を体験する装置になっているので、このゲームの説明や映像を見て気になったらぜひ遊んでみて欲しい。

評価:9(すごく面白い)

おすすめポイント

適度な難易度の謎解き(ヒント機能アリ)
精巧な3Dグラフィックと、リアルな機構
日本語訳はばっちり

アプリリンク:
The Room: Old Sins (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Fireproof Game(イギリス)
販売:NetEase(中国)
レビュー時バージョン:1.1
課金:なし
公式ページ:http://jp.room.163.com/index.html
ライター:ゲームキャスト トシ