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無数の粒子と、アートと、指が連動する快楽実験アプリ『GEN』レビュー

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何かしらの無作為なデータを機械的に処理して映像化し、アートを作り出す“ジェネラティブ・アート”というジャンルがある。
この「無作為なデータ」を、ゲームプレイヤーが遊んだ操作にして「遊べるアート製造機」として作られたゲームが『GEN』だ。
プレイヤーは無数の粒子を操り、持ちよく敵を倒すゲームを遊んでいるだけなのに、ゲーム終了後には毎回異なるアート画像が出力される……そんな実験的ゲームが好きなら本作を試すべきだ。

ゲームを開始すると、画面には粒子が飛び交っている。
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▲もしかしたら、スマホだとブログの仕様上画像を粗くされて粒子が見えないかも。

指を置くと、その位置に粒子が集まって美しく色づく。
1本指なら赤く点が、2本指なら2本の指の間に青い線が描かれ、3本指なら点を通る緑の円というように、画面に触れている指の本数で色と粒子の形が変わる。
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『GEN』は、この色が付いた粒子を敵に当てて倒すアクションゲームである。
ゲーム開始すると画面外から次々と白い円形の敵が登場し、この上に粒子をのせると膨張をはじめ、最後には破裂する。
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粒子が増えるほどにプレイヤーの攻撃力も上がるが、敵が画面外に出てしまうと粒子が減ってしまう。初期値よりも粒子が減ることはないが、後半になると同時に破裂させなければ倒せない線でつながった敵、特定の色でなければ倒せないバリアに覆われた敵なども出現し、粒子が足りないと苦戦す仕組みになっている。
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また、画面右上の円をドラッグすることにより、1プレイに1回だけ強力な広範囲攻撃をすることも可能だ。
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以上が本作の基本システムだが、プレイすればすぐに「敵を倒すタッチアクション」がこのゲームの本道ではないことに気づくだろう。
プレイヤーの操作が、画面に大きな影響を及ぼすからだ。
例えば、殺風景な黒い画面に出現した敵に対して、青い線で攻撃して破裂させると、倒した位置を中心に画面が青く2分される。
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続いて緑の円で敵を倒すと、分割された画面がさらに緑で塗り分けられる。
穏やかな音楽に合いの手を入れるかのように破裂音が鳴り響き、画面が明滅する様子は触れるMV……いや、遊べるMV。
タッチパネルの反応が、触感に訴えるかのような錯覚を覚える気持ちよさ。
他のゲームで例えるなら方向性で言えばその気持ち良さは、『Rez』のようなリズム&映像シンクロゲームが近いだろうか。
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しかし、それともまた明確に違うのは、そこに終着点があることだ。
ゲームを進めて多くの敵を倒すほどに画面は複雑に塗られていく。
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そして、ステージ終了時には美しいステンドグラスのような模様が完成し、それが保存される。
このような形で、音楽にノリながら敵を倒して、世界に1つのジェネらティブアートを作ることがこのゲームの目的なのだ。
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その試みは面白いし、実際にプレイしてみると映像とプレイがリンクする点も気持ちよく、数多くのインディーゲーム展示会で賞を獲得したことも理解できる内容である。
中でも先に紹介したステンドグラス風のアートができるステージは素晴らしい。
タッチの反応と音楽、画面の映像が連携する気持ちよさに、スマホゲームの可能性を見る思いだった。

一方で、その可能性は素晴らしくとも手放しには褒められない気持ちもある。
全3ステージ(×3難易度)しかなく、創造されるアートも3種類(基本的な3種類の表現の中で、プレイヤーの操作に応じて無限のバリエーションのアートを創造する)なのは寂しい。
「もっといろいろ体感したい」という物足りなさがある。
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▲ステンドグラス、ラインの奇跡、そして木の3パターンしかないのは残念。

また、単に敵を破裂させるゲームとみると敵の出現パターンが単調で、あと一歩磨き込みが足りない。もう少しパターンがあったり、音楽と破裂音の同期が作り込まれていたら名作の域に達していたかもしれないという残念さも感じる。
ゲームの可能性を示したあとで、ボリュームやゲームとしての作り込みを極める前に力尽きたような……そんな印象を受けてしまうのだ。

今後のアップデートで何かしらが加わるか、このゲームをプレイした開発者が発展系を作るか……そんな思いを抱く1作である。
とは言え、240円と言う価格を考えればすでにそれ以上の価値がある「アートゲーム」として成立している。実験的な作品が好きなら、ぜひ本作を試してみて欲しい。


評価:6(面白い)

おすすめポイント

美しい粒子の表現
プレイヤーの操作がアートになる

気になるポイント
バリエーションが少ない

アプリリンク:
Gen. (itunes 240円 iPad専用)

開発: Yack Lab.(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
公式ページ:http://www.yacklab.com/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: