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コラム:ゲーム攻略が盗用されすぎて続けられなかった。ゲームキャストが体験した2012年~2015年の攻略記事盗用事情

古くからのゲームキャストの読者であれば、ゲームキャストが昔、かなり攻略サイトをやっていたことを知っているでしょう。
もともとwikiというのはPCゲームの攻略などに用いられて、自分の気に入ったゲームの攻略サイトやwikiを作るのは私の趣味でした。
ゲーム機のゲームの攻略もやっていましたが、iOSになってからそれが本格化しiOS初期のTravian系の戦術ゲーム『Haypi kingdom』、2011年1月に出てApp Sotreで1位を獲った『Kingdom Conquest』、スクエニの『ガーディアンクルス』などのゲームのNo1攻略サイトやwikiは、私が運営していました。
それをやめた理由は何かというと、攻略情報のコピーに対処できなかったからです。

今、攻略業界大手のGameWithさんがデータコピーを行って話題になっているので、この機会に情報をある程度出して「直してよね」という感じが伝わるといいなぁ、と。
とりとめもない感じですが、ご容赦を。

その昔、攻略系wikiやサイトは趣味でやっていけました。
ところが、2012年6月にAppBankが『パズドラ究極攻略データベース』を開設して信じられないPVを叩きだし、「アプリゲームの攻略サイト・wikiは商売になる」ことに誰もが気づき始めます。
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今ではアプリになったパズドラ攻略。立ち上げ時にはアルバイトで私も関わりました。

そして、ゲームキャストもまた「好きなゲームのwikiでも作って少し広告はるか」程度の考えに行きついていました。
『Kingdom Conquest攻略wiki』とか最盛期に何十万/日もアクセスがあったのに完全無料だったわけで、ゲーム代ぐらいちょろっと稼いでもよかろう……と思ったわけです。

とはいえ、嫌いなゲームのwikiを立ち上げるのもあれだし……と、ゲームを探して出てきたのが『ロード・トゥ・ドラゴン』(ロードラ)で、『ロードラ攻略wiki』を立ち上げようと思い立ちます。
過去3回有名ゲームのwikiでトップを取っていたし、自分の攻略には自信がありました。
しかも『ロード・トゥ・ドラゴン』は当時ものすごくデータが変動していたため、データをとっても翌日には何もなかったかのように修正される。そんなことの繰り返しなのが良かった(プレイヤー的には良くないけど)。
よほどしっかりした体制で攻略しなければまともなデータが提供できないので、兄弟2人体制でがっつりやっている我々の攻略情報が最強・最速であり、最も優れている攻略になる……そう考えていました。
つまり、「良い攻略を早く提供すればなんとかなるだろう」という考えです。

実際、ゲームキャストが作ったwikiはアクセスを集め始め、これならいけそうだと思えたのですが、同じぐらい……いや、それどころか我々の持っている情報+αが掲載されている攻略wikiが登場します。
まさか、2人態勢でやっているwikiを1人で超えるとは……と思ったのですが、ライバルのデータ更新のタイミングがいつも我々より遅い。つまり、「コピーしているのではないか?」と疑いました。

ユニットの数字データやドロップデータは誰がとっても同じになるので、コピーしてもばれない。そこでわざとwikiのデータを間違えて見ることにしました。罠です。
自分でデータを取っているなら、この数値は同じにならないはず……と、1時間待つと果たして。
ライバルwikiのデータは更新され、ゲームキャストのwikiと同じようにデータを間違えました。

それを証拠に抗議のメールを出しましたが、返事はない。
それどころか、しばらくするとページを削除しようとする荒らし、スパム更新Botによる巡回が始まって管理の手間が膨大になり、wikiは閉じることにしました。
相手が逃げられない企業でないと告発しても無駄ですね……。2012年は個人、もしくは個人を装った企業がこういったことをやっていたので、抗議しても無駄でした。
そして、単に趣味で攻略をしていた我々は、そういったものに対抗する手段をもっていませんでした。

とは言え、仕事ならまだできるという見込みもありました。ちゃんと管理人がいるwikiは、メーカーにとってありがたいはず……と、今度は広告会社に収益の相談をしてソロバンをはじきつつ、ゲーム会社Aにwiki管理の仕事を作れないか持ち込もうとしました。
今で言う公式攻略サイトのノリです(これ、2012年の話ですよ)。
ところが、相談した広告会社のエラい人がその2日後に、A社に同じ企画を持ちかけていたことがわかり、完全に攻略wikiを諦めました。こじらせたゲームオタクであり、ビジネス素養のない私はこの業界で生きていけないと思いました。

その後、なぜこんなことになったのだろう……と、ここまでの競争が始まった原因を調べ、ソシャゲの隆盛に伴ってアプリ攻略wikiが儲かる存在になり、激しい競争が始まっていたことを知りました。
アプリ広告の出稿が増え、とくにブースト広告(Appleなどの規約に違反するダウンロードで報酬を与える広告)が台頭し、お小遣いアプリから何かのゲームをダウンロードするとポイントが付与され、換金できる仕組みの“お小遣い・ポイントアプリ”が収入源になっていました。
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▲こんなヤツや、最近ではモッピーキャンペーンなど様々なパターンが。ポイントを換金させない詐欺、登録したらメールアドレスが出会い系サイトに転売されているような超悪質なアプリもあって問題にもなりましたが、正しく交換して長くサービスしようとするポイントサイトはそれに迷惑していました。
(参考:相次ぐ「ポイントサイト」トラブルについて国民生活センターに聞いた - ねとらぼ

2013年の時点で、自分の知る限り『パズドラ』の中堅攻略サイトで月額50万を稼いでいると聞きました。それを言った人間も「ずっと旅行でもパズドラはできるから攻略サイト更新できる」と自慢げに旅行していたのでまあ、間違いはないでしょう。
2015年には有名ゲームの大手攻略サイトは月3桁万に突入していたそうです。
大ヒットしていないゲームの攻略wikiでも、一度軌道に乗せてプレイヤーが集まれば、あとは広告を載せておくだけで他のプレイヤーが攻略を更新してくれるので不労所得が入ります。

当時ソーシャルゲームをプレイしていた方なら、2ちゃんねるへの執拗な攻略サイト誘導リンクを張る行為が行われていたのを思い出すのではないでしょうか。
それだけの利益が出るものになっていたのです。
実際、この時期に有用なwikiの管理人が、コピー被害もあってモチベーションを失い、辞める方向を選んでいきました。
そういった生き馬の目を抜くような業界になっていたことに気づかなかった私は、今思えばすごく甘かったと思います。

2013年には攻略wikiをいくつも作る商売が始まり、攻略wikiを作ることを趣味にしていた友人や私にも「アルバイトでwiki作らないか?」と声がかかっていました。
とはいえ、ソーシャルゲーム攻略wikiを時給1,000円でやっていたら割に合わない。
バイトを持ち掛けてきた方に「時給の割りが合わない」というと、「2ch wikiなどからコピーする派」と、「ゲーム好きな人を雇って好きなことのついでに書かせるから監督してくれ派」の2つがありましたが、結局私はどちらにもいかず、攻略をやめる方向にしました。

そして時代は移り変わり、私は攻略と無縁に……なりませんでした。
脱出ゲームブームが表面化し、馬鹿にならないPVを稼ぎ出すことが注目され始めたのです。
今でこそ少し落ち着いていますが、SEOが強いサイトに良質脱出ゲームの攻略を載せておけば、かなりのPVが稼げる……そんな時代があったのです。

しかも、脱出ゲームはソシャゲと違って更新がないので、一度書いたら放置でもそれなりにジワジワ稼いでくれる。方々で脱出ゲーム攻略が始まったわけですが、ここで私にも「脱出ゲーム攻略」の仕事が回ってきました。
しかし、私は脱出ゲームが苦手。クリアにはとても時間がかかり、簡単なアプリだと1日仕事、難しいと数日かけて1アプリの攻略記事を書く始末。当たり前ですが、採算が合わない。

「遅い!他のサイトの攻略を見て書け」

と、指示を受けました。そして見るように指示されたのは「iphoroid 脱出ゲーム攻略」さん。
脱出ゲーム攻略の老舗であり、私の知人でもある方のサイトです。
ここはガチで脱出ゲームを解いていて「どうしてそんなに早く攻略できるのか?」と聞いたら、「脱出ゲームをやりすぎて勘でわかるようになった」と、目の前で新作脱出ゲームを超速で解いてくれた管理人さんが運営しています。
ちなみに、2カ所の攻略ライター(?)のお仕事でこのサイトが転記元として指示されたので、本当にガチなサイトです。

脱出ゲームの解法は1つなので誰が見ても同じになりますし、
「攻略サイトを見ての写しは手順にごくまれに間違えがあるので、全部プレイしてスクショをとって書くこと」
という指示もあったので、攻略をコピーしても上記が守られていれば絶対にばれません。
ゲーム攻略って愛と時間が必要になる作業で、プレイを仕事時間に含めるとまず割に合いません。大ヒットゲームでない限りは。
ゲームが好きではない人々の作った会社の行きつく先はこうなるのかな、と思いました。

結局、私はコピーを拒否して、むしろ「告発するぞ」ぐらいの勢いで攻めました。結果かどうかわかりませんが、その指示があった会社は存続しつつももうコピーしていない(そうすると割に合わないから脱出ゲーム攻略していないのかもしれないですが)状態です。

その後、こういった攻略記事を書いている学生アルバイトなどと話す機会もありましたが、ソーシャルゲームも含めて1記事いくら+PVで支払われる形式だと数をこなすのが良いため、コピーやイベント開始のお知らせ丸写しが楽で良いと語っていました。
「コピーはだめ」「自分でプレイしたスクリーンショットを」などとルールがあるそうですが、データや手順はリライト(他のサイトの文章を言い回しを変えて使うこと)すればバレないと語っていました。

これは2011年~2015年あたりまでの事実ですが、もとより2012年の『パズドラ究極攻略データベース』が公式のお墨付きサイトであったように、公式から情報をもらってまっとうにやっていたところもあることは強調しておきます。
ゲーム好きを集めた攻略会社も存在しました。

一方、底辺ライターにわざわざ出したり、クラウドワークスに出す案件は、やはりひどいものが多いので、私はひどい場所を多く見ている可能性もあります。
また、これらは今は少しずつ改善されつつあります。
例えば、脱出ゲームの攻略コピー指示を出した会社は今それを行わなくなりました。誰でも簡単に投稿して収入を得られた攻略サイトも、投稿審査が必要になったり、リスクのある売れないゲームには手を出さず専用ライターを雇って書かせる動きも多くなりました。
(特に売れているゲームは他との差別化のために腕利きを雇ってオリジナル記事を書かせるのが重要になっています)

その上で、なんでこんなものを今さら書いたかというと(攻略業界についていけなかった私の恨み節も残っていることは否定しませんが)、意図的にせよ、システムが生み出したにせよ、過去に「コピー文化」が攻略サイト系の一部にあり、その意識はどこかに残っている会社もあると思っています。
特定のサイトや会社を弾劾する意図はない(あと、私が相談した広告会社はもうつぶれていることも書いておきます)ですが、「これが過去です」ということで警告も含めて残しておこうと思ったからです。

今回、GameWithさんの『北斗が如く』の記事盗用が見つかったのはいいことで、上場企業でもありますし、過去の全ての攻略記事について洗い出し、再発防止する策を業界全体の見本として提示してくれると思います。
この機会に、攻略業界全体からこういった闇を洗い流されることを願っています。

え、まだやっているところがある?
じゃあ、こっそりgamecastblog@gmail.comまでたれ込みをいただければ取材します…。

※当初、盗用をモンスターハンターワールドと書いてありましたが北斗がごとくの誤りでした。申し訳ございません。