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ゲームを支配する静かな狂気。謎解きがプレイヤーに狂気をもたらす脱出ゲーム『Rusty Lake Hotel』レビュー

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まだ『Rusty Lake Hotel』をプレイしたことがない人は幸せだ。なぜなら、これから『Rusty Lake Hotel』をプレイできるからだ。
本作は保養地のホテルでゲストを“もてなす”謎解き脱出ゲームだが、戸棚にも扉にも鍵がかかっている奇妙な謎を解くアレとは別次元の存在だ。
静かな狂気がゲーム全体を支配しており、ゲームを進めるほどにプレイヤーは狂気に飲み込まれていく。その仕掛けを楽しめることは、ゲーマーとして幸せだと思う。

ゲームは、湖の中央にそびえるホテル“Rusty Lake Hotel”の支配人、Mr Owlの語りから始まる。
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▲日本語対応していないが、なんとなく空気で察する感じで遊べるので安心して欲しい。

ある日、ここに5人……いや、5匹と言った方が正解なのだろうか。
直立し、正装できめこんだ獣人がゲストとして招かれる。
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プレイヤーの役割は、このホテルの給仕としてゲストの要望を満たすことだ。
そのため、毎晩1人のゲストの元を訪れては要求を満たし、さらに翌朝までに豪華な食事の材料を用意することとなる。
プレイを開始すると、奇妙な獣人たちのデザイン、絵本調のイラストによる世界観がプレイヤーをぐいぐいとゲームに引き込む。
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一方で、『Rusty Lake Hotel』のシステムに目を向けると、ごく普通のポイントクリック型アドベンチャー……つまり、気になる場所を触って調べ、アイテムを手に入れたり使ったりして進む脱出ゲームだ。
その基本システムに革新性はない。しかし、『Rusty Lake Hotel』は謎に工夫を凝らすことで素晴らしい脱出ゲームにしあがっている。
本作多くの謎は「鍵を探せ」とか計算パズルとか、そういった古典的なものではある。
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▲算数パズルとか、部屋の構造から解く謎とか、多くの謎はよく見るもの。

しかし、要所要所で世界観を強化し、プレイヤーに伝えるために謎を利用している点が異なる。
謎の解の中には、常人では実行できないような……常軌を逸した行為も存在する。しかし、そういった謎を解いていくことで、プレイヤーには『Rusty Lake』の狂気がすり込まれていき、最後には『Rusty Lake』の常識に沿って行動することが自然のものとなる。
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▲なお、謎が解けなければアプリから公式攻略動画を見て進めることも可能。謎は物語の一部であり、過度に足止めさせるためのものではない……というスタンスが伝わってくる。

プレイヤー自身が謎を解き、その過程で狂ったアクションを思いつくようになること。それ自体が謎の目的である。あなたが本作をプレイしたなら、ゲームの中盤からは謎の解法と狂った行為を結びつけられるようになっているはずだ。

魅力的なビジュアル、世界観、ここまでは良質脱出ゲームと呼ばれる作品群が持つ一般的な差別化ポイントだが、謎自体にプレイヤーを引き込む仕掛けを加えたことにより、本作はそこからさらに一歩飛び出している。
脱出ゲームが苦手でも、ダークな演出が苦手でなければ、本作はぜひプレイしてもらいたい。

なお、本作はRusty Lakeを中心とする連作物語脱出ゲームの1つで、複数の作品をプレイすることで世界観が浮かび上がる仕組みになっている。
シリーズの中でも頭一つ抜けたクオリティなので、最初にプレイするのは『Rusty Lake Hotel』がおすすめだが、コレが気に入ったらぜひ他の作品にも手を出してもらいたい。

評価:9(すごく面白い)

おすすめポイント

絵本のようなイラスト
狂気を感じる演出
攻略動画が付いているので詰まらずに物語を楽しめる

気になるポイント
ややグロい演出

アプリリンク:
Rusty Lake Hotel (itunes 240円 iPhone/iPad対応 / Google Play / Steam)

開発:Rusty Lake(オランダ)
レビュー時バージョン:1.3.1
課金:なし
公式ページ:http://www.rustylake.com/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: