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音と文字とドット絵で。黄昏の世界を表現する『Dandara』レビュー。ゲーム機と変わらぬ体験をあなたに

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『Dandara』というゲームは、文明の黄昏を迎えて閉じつつある世界を手探りでさまよう旅である。
その旅を味わうためにすべてが作られている。
ゲームを見ればメトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルのゲームで、広い2Dマップを自由に探索し、ときに戦い、ときにアイテムを手に入れて行動範囲を広げていく探索アクションだ。
もちろん単にアクションゲームとしても楽しいが、そこに黄昏の世界を持ち込むことで「異世界の探索+アクション」として魅力を発揮している。

本作の舞台は、サルトという謎の世界。
サルトはかつて自由な市民たちが創造を行う場所だったが、現在は抑圧され、孤立している。この恐怖から世界を救うために生まれたのが主人公のダンダラである。
だが、この設定からして奇妙だ。
子供が育ったのではなく、“想像のゆりかご”のような建物から直接に生き物が生まれているのだから。
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建物が目的のために生き物を創造する世界。
実際、このゲームで出会う人物(と言ってもいいのか)は、人型であるものの何かしら異なり、地球にある生命の営みとは異なる何かという印象を受ける。
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そういった登場人物が住む世界もまた、印象深い。
文化が滅びつつある辺境から始まり、建築物そのものがダンダラを監視する生きた都、忘れられた博物館など、文明の黄昏を感じるには十分な表現がなされている。
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▲個人的には漫画版の『風の谷のナウシカ』に近い世界観を感じた。

極めつけは、そこにかぶせられるテキストと音楽。
各マップは小さい区画で区切られており、区画を移動するたびに名前が表示される。その名前を見ていくとマップの背景が想像され、寂しげな音楽をバックに複数の区画を移動しているとプレイヤーの中に何となくストーリーができる。
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ゲーム内に詳しい説明がないこともあり、登場人物から聞き出せる断片的な情報とマップ名から、それとなく世界背景を推測するようになっているのだ。
寂しげな音楽と、過去の栄光ばかりを引きずったマップ名と、ドット絵で表示される映像。その3つが1つになり、「見知らぬ異世界を、手探りでめぐる旅」を演出している。

そんな世界を旅するゲームシステムもまた、異世界の感触を強化している。
サルトの世界には上も下もなく、360度どこでも、足をつけている場所がそのまま足場になるから、どこへでも移動できる。
結果として、現実世界にはあり得ないマップが出来あがる。
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▲トリッキーな縮小図。似た系統のゲームで、PS Vitaの代表作『Gravity Daze』は日常の中に重力を操る非日常を盛り込んでいたが、『Dandara』の場合は異世界にさらに不思議を混ぜ込む要素として機能している。

ただ、不思議な世界、トリッキーな見た目のマップ構成を有していても、プレイ感は王道を行っている。
操作はショット&移動のシンプル操作にまとめ上げられ、プレイヤーが混乱せずに遊べるよう工夫されている。
ショットは画面左をドラッグして長押し。すると、ショットガンのような散弾を放てる。
ゲームが進むとミサイルや強力な破壊弾などのエネルギーを消費して利用する特殊ショットも使えるようになる。
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移動は足場から足場へと忍者のように跳躍するシンプルな操作に集約されており、巧みな床の配置もあって簡単に慣れる。
画面右をスライドすると同時にマーカーが出現するので、ドラッグして次の着地点へ狙いをつけ……。
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指を離すと狙った位置へ素早く着地する。
足場は白い場所であればどこでもよく、複雑な地形では画面が自動で回転し、見やすい構図に切り替えてくれるのでキャラクターの立ち位置が立て続けに変わってもプレイヤーの混乱は少ない。
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▲慣れてみるとどんな場所へも瞬時に跳躍できることが気持ちいいし、いつでも全体マップが見られるので迷うこともなくなる。

シンプルな操作と配慮の行き届いた床配置・構図切り替えの結果として、床の方向が次々と切り替わる珍しい要素を持っているのに、普通の2Dアクションのように混乱なく遊べるはずだ。
移動部分以外については王道メトロイドヴァニアの構造を保っており、新しい場所に行っては恐る恐る探索し、アイテムを集めてパワーアップしたころにエリアボスと戦って締める流れになっている。
わかりやすく王道すぎるような気もするが、マップを見てはまだ行って場所をつぶし、新しい能力を手に入れては過去行けなかった場所をこじ開ける楽しみを存分に味わえることだろう。
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▲ボスもまた印象的な外見

少し気になったのは、難易度とゲームオーバーの罰則だろうか。
『Dandara』ではレベルアップに経験値が必要だが、ゲームオーバーになるとレベルアップに使用されていない経験値がゼロになってしまう。
前回倒れた場所には魂(?)が配置され、これをとることで経験値を取り返せるが、魂を回収する前に倒れると経験値は完全に失われてしまう。難しいから倒れているわけで、経験値まで消えてしまうと少し厳しい。
私自身、ゲーム内で2度ほど急激な難易度上昇を感じた個所があり、そこで何度も倒れて経験値を失って気になってしまった。
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▲青いのが魂。なお、体力回復やエネルギー回復アイテムはセーブポイントに到達するたび回復するので、ガンガン使って欲しい。

ただ、気になる点としてはその程度で、全体として見て『Dandara』は王道のメトロイドヴァニアの面白さを提供しつつ、独自の世界観でオリジナリティも提供している。
内容としても、ゲーム機のゲームと比べてそん色ない(そもそも、ゲーム機版と同時リリースだ)。
操作面で見ても「タッチスクリーンとゲームパッド入力の両方に対応して開発」と開発が豪語していたが、実際に私はタッチスクリーンで遊んだ方が楽しいと感じた。
指でスッと指を払うと同時に跳躍する移動操作は、コントローラーのキーよりもスワイプの方が一体感が出る。床から床へ、高速スワイプでジャンプするときの気持ちよさは格別。
このゲームは様々なハード向けにリリースされているが、遊ぶとしたらタブレットで遊ぶかHD振動対応のSwitchで遊ぶか、どちらかがおすすめだ。
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▲大量の床を高速スワイプで跳躍するのは爽快。タッチ操作に慣れているなら、ぜひタッチで遊んでほしい。

「アクションはコントローラー」という説もあるが、それはコントローラー向けに作っているからであり、最初からタッチを考えればタッチ操作向けの本格ゲームも十分にあり得ることを『Dandara』は証明して見せた。
プレイ時間はおおよそ6時間程度だろうか。
価格もスマホとしては高めだが、ゲーム機と同じ内容を、快適な操作で遊べるとあれば、十分納得できる。
アクションと不思議な世界、同時に味わいたい方はぜひ遊んでみて欲しい。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント

文字と音と見た目が織りなす黄昏た空気
跳躍操作のシンプルな気持ちよさ
ゲーム機のようなゲームが、快適操作で遊べる

気になるポイント
王道であるが意外性の薄いマップ構造
タッチだと特殊武器切り替えが高速で行えない

アプリリンク:
Dandara (itunes 720円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)
販売:Raw Fury
開発: Long Hat House(ブラジル)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: