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短い中に計算された熱狂。スマホ最高のゲーム『Vainglory』レビュー

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「すべてのスマホゲームで一番楽しかったスマホゲームは?」
そう聞かれたら、迷わず「Vainglory」と答えることにしている。
『Vainglory』は、私の人生で最も多くの時間を注いだゲームであり、今もって楽しんでいるゲームでもある。当然、そのゲーム評価はゲームキャスト最高点の10だ。



『Vainglory』とは、MOBAと言われる日本では比較的馴染みの薄いジャンルをスマホに持ってきたタイトルだ。MOBAとはマルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナの頭文字をとったジャンル名で、
・RPGの育成の楽しみ
・仲間と協力プレイするリアルタイムな戦術性
・アクションゲームのようなプレイヤーの操作が生み出すドラマ性
この3つを短期間で味わえる夢のようなジャンルである。
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実際に、『Vainglory』を例に流れを追って説明していこう。
本作はプレイヤーがそれぞれに1体のヒーローを操作する3対3の対戦ゲームで、開始時に36人の多彩なヒーローから1キャラクター、操作するキャラクターを選ぶ。
どのキャラクターも長所と短所を持っており、相性はあれど総計すると互角の能力を持つように計算されている。課金で能力差はつかないので、仲間との相性を考えて好きなキャラクターを選べば良い。
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▲キャラ相性もあるので、選択の時点から駆け引きは始まる。

さて、ゲームが始まるとマップが表示される。
右端には味方の本陣が、左端には敵の本陣が存在していて(※2P側になると逆になる)、敵本陣にあるベインクリスタルを破壊した側が勝利となる。
しかし、ベインクリスタルへの道はタレット(砲台)で守られているし、敵プレイヤーだって妨害してくる。
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▲タレットに守られるベインクリスタル。

そこで、序盤は障害を排除するためにキャラクター育成がメインとなる。
ゲーム開始時、全てのキャラクターがレベル1から始まる。だからタレットを守る係と、モンスターの生息地で狩りをする係に別れて育成ゲームが始まる。
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前半の行動でゲーム後半の有利不利が決まってくるが、有利と不利は簡単な成長速度で言い表せない。
単純に成長するのもいいし、敵との相性をにらんで装備を調えるのも良い。
だが、早熟なキャラクターを選んでいれば敵と戦って「成長を妨害する」手もあるし、リスクをとってボス的なモンスターを討伐に行き、大きく成長することもできる。
さらに、場合によっては成長を犠牲にしても敵のタレットを壊して戦術的有利をとることもできる。
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▲装備を購入して、ヒーローをカスタマイズすることもできる。

そして、多くの場合は戦う準備が整った側が戦いを仕掛け、集団戦が始まる。
このバトルではアクション的なセンスも有効になる。移動技で敵の攻撃を回避したり、場合によっては一方的に敵を攻撃して倒すこともできる。もちろん、育成で差がつきすぎたり、戦術的に圧倒的に不利になっていればアクションの腕を持っても勝てないが、とくに互角のときは操作の腕前が重要になる。
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▲2対1!でも、上手いプレイヤーはこの不利でも反撃しつつ逃げ切ってしまうことがある。

ここで6人のプレイヤーが入り乱れて戦い、ここで勝った陣営はタレットを破壊したり、戦術上有利なポイントを奪ったりできるのだ。
そうして、最終的にベインクリスタルを壊した陣営が勝利を手にする。
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RPGのような育成を経て、戦術で有利を取り、その積み重ねにアクションの腕前を加えてバトルする。育成と戦術、アクションが緻密なバランスでゲームを作り、対戦のたびに経過が変化するゲームは飽きることがない。

こんなMOBAというジャンルだが、その中でも『Vainglory』の面白さは素晴らしかった。
スマホにおいて人気のあるMOBAは、なんだかんだで『League of Legends』(以下、LoL)のコピー品ばかりだった。
先行した『ヒーローズオブオーダー&カオス』、後から出た『モバイルレジェンド』もそうだし、『LoL』を生み出したRiot Gamesを買収したTencentの『王者栄光』だってそうだ。

しかし、『Vainglory』は長いと言われるMOBAの試合時間を縮めつつ、面白さの肝であるドラマチックな見せ場は減らさぬよう徹底的に計算されていた。
多くのMOBAでは本拠地に帰る時間をとらなければ装備を購入できない。しかし『Vainglory』ではマップ中央にも装備を販売するショップを配置している。そのため、時間を節約するために両陣営が自然とマップ中央に集まり、争い……つまり、面白い小競り合いが発生するように設計されている。
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▲ショップ。中盤など先にショップにたどり着いて買い物を済ませた陣営が、遅れて装備の整っていない陣営を一方的に倒すことすらある。

それ以上に劇的なのは、ゲーム開始から15分で目を覚ます最強の怪物“クラーケン”だ。
クラーケンは倒した陣営の仲間になる。最強の怪物という名前は伊達ではなく、クラーケンを仲間にした側はそのまま試合に勝ってしまうことも多いほど強力だ。だから、出現と共にクラーケンを巡っては熾烈な争いが始まる。
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で、クラーケンを巡るバトルが終わると、また息つく間もなく次の戦いが始まる。
クラーケンは強力だが、行動は制御できない。自動で敵陣営に向かって進撃を始めるのだ。
クラーケンを手にした側はその力を活かすべく支援に回るし、防御側は全力で守らなければ大きな被害を受けてしまう。ここでもまた強制的に戦いが生まれ、ドラマが生まれるのだ。
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▲クラーケンの一撃!すっごく痛そう。

その他、特殊な回復効果を持つミニオンの配置から耐久力に至るまで、本作は見せ場重視で多くの工夫が凝らされている。
「スマホゲームは短く、プレイしやすく簡略化」なんてしたり顔で言われるなか、『Vainglory』はプレイ時間は削っても見せ場は削らないように全力を注いでいるのだ。
約20分間の試合に凝縮された熱いプレイ。それが『Vainglory』のオリジナリティであり、他のスマホMOBAにはない魅力となっている。

私は、ゲーム機のように熱くて熱中できるスマホゲームが出るべきだと思っている。それを妥協なく体現した本作は、スマホ最高のゲームと信じている。
なお、課金要素は主にスキン(キャラクターの外見を買えるアイテム)で、ミニゲーム的なモード以外は課金で試合に有利不利は生まれない。
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▲イラストも結構日本でいける感じ。

ガチャや課金ゲーにうんざりの方も、単に面白いゲームを探している方もみんな一度は触って欲しい。「昔ながらゲームらしいゲーム(上達の意味があって課金に左右されない)」は、確かにここにある。

で、この『Vainglory』をなんで今さら紹介したかというと、今まさに始めるのに最適な時期が来たからだ。
本作は、日本のスマホe-Sportsにおいて重要な役割を果たしてきた。
まず、2015年に『Vainglory』初となる世界大会“Vainglory World Invitational”で、並み居る強豪を相手に日本チームは世界2位を獲得する。日本のMOBAチームは(プレイ人口のわりには強いと思うが)、世界大会で結果を出せていなかった。しかし、Vaingloryでは違ったのだ。
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▲世界大会で準優勝を果たしたDivine Brothersの面々。OGCの日本語試合動画より

この結果を受けて日本の『Vainglory』界隈は盛り上がり、今では『シャドウバース』などで有名なゲーム大会RAGEの初公式種目に採用され、黎明期のスマホe-Sportsの土台になった。
そして、今、『Vainglory』は新たなステージに踏み出そうとしている。3対3であったゲームは拡張され、PCゲームのMOBAと同じく5対5の先行テストを行っている。
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触ってみたところ、クオリティは十分で『Vaiglory』らしい見せ場を作る工夫も随所に見られた。
「本格MOBAをやるならPC」という意見も理解できるが、「PC以外でMOBAを遊ぶ意義のあるオリジナルゲーム」に仕上がりつつあるように感じる。
おそらく、このタイミングで再び大きく盛り上がる可能性があるし、今から始めておけば5対5の新展開について行きやすい(戦術などはガラリと変わってしまう)。
将来性を見ても、他のプレイヤーと差が付きづらいスタートラインを考えても、今始めるのが良いというわけだ。
多分、私はこれからもライフワーク的にこのゲームを遊んでいくと思う。そんなゲームをブログ読者の皆さんが気に入ってくれたら、これはもう大きな幸せだ。

評価:10(傑作)

おすすめポイント
ガチャや課金で差が付かない競技ゲーム
短いなかで凝縮した見せ場を作ることに重点を置いた設計
プレイ人口が多く、マッチングが比較的楽

気になるポイント
やや取っつきは悪い

アプリDL:
Vainglory (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:Super Evil Megacorp(US)
レビュー時バージョン:2.12.1
課金:キャラクター(無課金でも手に入る)、スキン、お遊びモードのタレントなど

ライター:ゲームキャスト トシ

動画:(左の変なオッサンが昔の私です)


欄外:
このゲームをずっと書かなかったのにはワケがある。1つは、AppBank在籍時にゲームファイターという名前で公式にPRを扱うライターであったこと。
そんな状態で書くと「いくらもらった」とかコメントが来そうなのが面倒で書かなかった。
で、AppBankをやめた後は好きすぎて記事がまとまらなかった。そこにきて今回、隠れた名作などの推薦のお願いの応募で投稿されたので、ひねり出すように書いた。とにかく、面白いからやって!