短い中に計算された熱狂。スマホ最高のゲーム『Vainglory』レビュー
- RTS
- 2018年02月04日

「すべてのスマホゲームで一番楽しかったスマホゲームは?」
そう聞かれたら、迷わず「Vainglory」と答えることにしている。
『Vainglory』は、私の人生で最も多くの時間を注いだゲームであり、今もって楽しんでいるゲームでもある。当然、そのゲーム評価はゲームキャスト最高点の10だ。
『Vainglory』とは、MOBAと言われる日本では比較的馴染みの薄いジャンルをスマホに持ってきたタイトルだ。MOBAとはマルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナの頭文字をとったジャンル名で、
・RPGの育成の楽しみ
・仲間と協力プレイするリアルタイムな戦術性
・アクションゲームのようなプレイヤーの操作が生み出すドラマ性
この3つを短期間で味わえる夢のようなジャンルである。

実際に、『Vainglory』を例に流れを追って説明していこう。
本作はプレイヤーがそれぞれに1体のヒーローを操作する3対3の対戦ゲームで、開始時に36人の多彩なヒーローから1キャラクター、操作するキャラクターを選ぶ。
どのキャラクターも長所と短所を持っており、相性はあれど総計すると互角の能力を持つように計算されている。課金で能力差はつかないので、仲間との相性を考えて好きなキャラクターを選べば良い。

▲キャラ相性もあるので、選択の時点から駆け引きは始まる。
さて、ゲームが始まるとマップが表示される。
右端には味方の本陣が、左端には敵の本陣が存在していて(※2P側になると逆になる)、敵本陣にあるベインクリスタルを破壊した側が勝利となる。
しかし、ベインクリスタルへの道はタレット(砲台)で守られているし、敵プレイヤーだって妨害してくる。

▲タレットに守られるベインクリスタル。
そこで、序盤は障害を排除するためにキャラクター育成がメインとなる。
ゲーム開始時、全てのキャラクターがレベル1から始まる。だからタレットを守る係と、モンスターの生息地で狩りをする係に別れて育成ゲームが始まる。

前半の行動でゲーム後半の有利不利が決まってくるが、有利と不利は簡単な成長速度で言い表せない。
単純に成長するのもいいし、敵との相性をにらんで装備を調えるのも良い。
だが、早熟なキャラクターを選んでいれば敵と戦って「成長を妨害する」手もあるし、リスクをとってボス的なモンスターを討伐に行き、大きく成長することもできる。
さらに、場合によっては成長を犠牲にしても敵のタレットを壊して戦術的有利をとることもできる。

▲装備を購入して、ヒーローをカスタマイズすることもできる。
そして、多くの場合は戦う準備が整った側が戦いを仕掛け、集団戦が始まる。
このバトルではアクション的なセンスも有効になる。移動技で敵の攻撃を回避したり、場合によっては一方的に敵を攻撃して倒すこともできる。もちろん、育成で差がつきすぎたり、戦術的に圧倒的に不利になっていればアクションの腕を持っても勝てないが、とくに互角のときは操作の腕前が重要になる。

▲2対1!でも、上手いプレイヤーはこの不利でも反撃しつつ逃げ切ってしまうことがある。
ここで6人のプレイヤーが入り乱れて戦い、ここで勝った陣営はタレットを破壊したり、戦術上有利なポイントを奪ったりできるのだ。
そうして、最終的にベインクリスタルを壊した陣営が勝利を手にする。

RPGのような育成を経て、戦術で有利を取り、その積み重ねにアクションの腕前を加えてバトルする。育成と戦術、アクションが緻密なバランスでゲームを作り、対戦のたびに経過が変化するゲームは飽きることがない。
こんなMOBAというジャンルだが、その中でも『Vainglory』の面白さは素晴らしかった。
スマホにおいて人気のあるMOBAは、なんだかんだで『League of Legends』(以下、LoL)のコピー品ばかりだった。
先行した『ヒーローズオブオーダー&カオス』、後から出た『モバイルレジェンド』もそうだし、『LoL』を生み出したRiot Gamesを買収したTencentの『王者栄光』だってそうだ。
しかし、『Vainglory』は長いと言われるMOBAの試合時間を縮めつつ、面白さの肝であるドラマチックな見せ場は減らさぬよう徹底的に計算されていた。
多くのMOBAでは本拠地に帰る時間をとらなければ装備を購入できない。しかし『Vainglory』ではマップ中央にも装備を販売するショップを配置している。そのため、時間を節約するために両陣営が自然とマップ中央に集まり、争い……つまり、面白い小競り合いが発生するように設計されている。

▲ショップ。中盤など先にショップにたどり着いて買い物を済ませた陣営が、遅れて装備の整っていない陣営を一方的に倒すことすらある。
それ以上に劇的なのは、ゲーム開始から15分で目を覚ます最強の怪物“クラーケン”だ。
クラーケンは倒した陣営の仲間になる。最強の怪物という名前は伊達ではなく、クラーケンを仲間にした側はそのまま試合に勝ってしまうことも多いほど強力だ。だから、出現と共にクラーケンを巡っては熾烈な争いが始まる。

で、クラーケンを巡るバトルが終わると、また息つく間もなく次の戦いが始まる。
クラーケンは強力だが、行動は制御できない。自動で敵陣営に向かって進撃を始めるのだ。
クラーケンを手にした側はその力を活かすべく支援に回るし、防御側は全力で守らなければ大きな被害を受けてしまう。ここでもまた強制的に戦いが生まれ、ドラマが生まれるのだ。

▲クラーケンの一撃!すっごく痛そう。
その他、特殊な回復効果を持つミニオンの配置から耐久力に至るまで、本作は見せ場重視で多くの工夫が凝らされている。
「スマホゲームは短く、プレイしやすく簡略化」なんてしたり顔で言われるなか、『Vainglory』はプレイ時間は削っても見せ場は削らないように全力を注いでいるのだ。
約20分間の試合に凝縮された熱いプレイ。それが『Vainglory』のオリジナリティであり、他のスマホMOBAにはない魅力となっている。
私は、ゲーム機のように熱くて熱中できるスマホゲームが出るべきだと思っている。それを妥協なく体現した本作は、スマホ最高のゲームと信じている。
なお、課金要素は主にスキン(キャラクターの外見を買えるアイテム)で、ミニゲーム的なモード以外は課金で試合に有利不利は生まれない。

▲イラストも結構日本でいける感じ。
ガチャや課金ゲーにうんざりの方も、単に面白いゲームを探している方もみんな一度は触って欲しい。「昔ながらゲームらしいゲーム(上達の意味があって課金に左右されない)」は、確かにここにある。
で、この『Vainglory』をなんで今さら紹介したかというと、今まさに始めるのに最適な時期が来たからだ。
本作は、日本のスマホe-Sportsにおいて重要な役割を果たしてきた。
まず、2015年に『Vainglory』初となる世界大会“Vainglory World Invitational”で、並み居る強豪を相手に日本チームは世界2位を獲得する。日本のMOBAチームは(プレイ人口のわりには強いと思うが)、世界大会で結果を出せていなかった。しかし、Vaingloryでは違ったのだ。

▲世界大会で準優勝を果たしたDivine Brothersの面々。OGCの日本語試合動画より
この結果を受けて日本の『Vainglory』界隈は盛り上がり、今では『シャドウバース』などで有名なゲーム大会RAGEの初公式種目に採用され、黎明期のスマホe-Sportsの土台になった。
そして、今、『Vainglory』は新たなステージに踏み出そうとしている。3対3であったゲームは拡張され、PCゲームのMOBAと同じく5対5の先行テストを行っている。

触ってみたところ、クオリティは十分で『Vaiglory』らしい見せ場を作る工夫も随所に見られた。
「本格MOBAをやるならPC」という意見も理解できるが、「PC以外でMOBAを遊ぶ意義のあるオリジナルゲーム」に仕上がりつつあるように感じる。
おそらく、このタイミングで再び大きく盛り上がる可能性があるし、今から始めておけば5対5の新展開について行きやすい(戦術などはガラリと変わってしまう)。
将来性を見ても、他のプレイヤーと差が付きづらいスタートラインを考えても、今始めるのが良いというわけだ。
多分、私はこれからもライフワーク的にこのゲームを遊んでいくと思う。そんなゲームをブログ読者の皆さんが気に入ってくれたら、これはもう大きな幸せだ。
評価:10(傑作)
おすすめポイント



気になるポイント
やや取っつきは悪い

課金:キャラクター(無課金でも手に入る)、スキン、お遊びモードのタレントなど
ライター:ゲームキャスト トシ
動画:(左の変なオッサンが昔の私です)
欄外:
このゲームをずっと書かなかったのにはワケがある。1つは、AppBank在籍時にゲームファイターという名前で公式にPRを扱うライターであったこと。
そんな状態で書くと「いくらもらった」とかコメントが来そうなのが面倒で書かなかった。
で、AppBankをやめた後は好きすぎて記事がまとまらなかった。そこにきて今回、隠れた名作などの推薦のお願いの応募で投稿されたので、ひねり出すように書いた。とにかく、面白いからやって!
コメント一覧 (40)
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- 2018年02月04日 09:06
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私も1週間程前から始めましたが、対人だと中々勝てません!アイテムの使うポイントとか、勝率を上げる立ち回りなど初心者向けの指南的な記事を書いてもらえると嬉しいです
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- 2018年02月04日 13:08
- AppBank出身かよ
もう見るの辞めるわ
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- 2018年02月04日 13:21
- やってる事がずっと同じだからキャラ追加来る前に飽きてやめちゃったなあ
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- 2018年02月04日 14:12
- ?連打の雰囲気悪がイヤになって辞めたなぁ。
幻塔戦記グリフォン内のmobaがかなり面白かった。MOやMMO内のmobaでも侮れない物はあるよ。
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- 2018年02月04日 14:40
- LoLやれば良いと思って試していなかったが、言われてやってみると違いがある。
ちょっと続けそう。
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- 2018年02月04日 16:27
- >>3
気持ちは分かるけどそこを辞めた上で
こういうサイトを運営しているという所をワイは応援するで
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- 2018年02月04日 16:46
- ゲーファイは、マニアックなソフトだけ担当する良心枠だったぞ。
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- 2018年02月04日 17:08
- 5v5追加されて(まだアーリーアクセスだけど)上位層も試行錯誤してる段階だから新規が入るのにはいいタイミングだよね
それ抜いても競技性は間違いなくスマホNo1だから人増えて欲しい
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- 2018年02月04日 17:20
- MOBA系というと面白そうだが複雑で取っつきにくい印象があるけど、いっちよ始めてみようかな
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- 2018年02月04日 17:46
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同じくスマホ史上最高のゲームだと思う。もっと人口が増えて欲しい(^_^)
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- 2018年02月04日 18:10
- なんか難しくないコレ?
携帯ゲーなのに全然手軽じゃないんですけど
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- 2018年02月04日 18:41
- MOBAって日本で普及していないだけで、ルールはとてもシンプルなのでもっとはやって欲しいと思っています。
皆さんが興味を持ってくださって嬉しいです。
▼12さん
奥は深いですが、基本ルールは日本のソシャゲよりよっぽど簡単ですよ、
(合成とか面倒なこともないし)
本文に書いてある通り、携帯ゲーだから手軽である必要もないと思っています。
モンハン2GPは手軽ではないのにヒットしていますよね。
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- 2018年02月04日 19:20
- 人口増えて活発になって欲しい
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- 2018年02月04日 20:50
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PCのMOBA系のゲームの筆頭にあたるLOLとの違いとか、モバイルならではの良さをもっと教えていただけないでしょうか?
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- 2018年02月04日 21:41
- ▼おわまさん
モバイルならではの良さは、持ち運べることですね。
あと、マウスよりタッチのが慣れると操作しやすいです(マウスは疲れるし)。
で、Vaingloryはややアクション要素が強めです。反射ブロックと言って敵の攻撃の追加効果を完全にシャットアウトするアイテムを反射神経に任せて使う要素があるので。
また、スタッターステップと言ってプレイヤーの操作で微妙に攻撃を早くするテクもあります。
あとは、PCのMOBAとほぼ同等の面白さを持っていてプレイ時間は半分というのが特徴ですね。
ゲーム概要にあまり差はありません。
3v3は戦術性が低めですがアクションで補っている。あとは、今後5v5でどうなるかってとこですね。長年整備された環境はLoLが上だと思いますが。
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- 2018年02月04日 23:11
- いくつか「いくら金もらった?」的なコメントと、それに関するフォローのコメント(ありがとうございます)があったのですが、まとめて消しました。
まとめサイト見すぎて頭が陰謀論的になった人たちにつきあっても面倒なだけなので。
根拠のない中傷は消します。
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- 2018年02月04日 23:17
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昔動画見てた時に映ってたゲームファイターさんがここの管理人だとは思わなかった。応援してます。
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- 2018年02月04日 23:51
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シーズン0からのプレイヤーですが、ベインの魅力をとても綺麗にまとめてくださっていました。
5v5はlolとはまた違った魅力があり面白いです。
新規で始めるのは簡単ではないかもしれませんが友達と始めると続けやすいと思います。
色々なコラムや解説サイト、プレイ動画を見ることで上達が早くなると思います。
環境もアップデートごとに大きく移り変わるので色々なキャラを練習する必要がありとても奥深いです。
でも自分の使いたいキャラで勝つのはとても気持ちいいものですよ。
誉れで待ってます。
みんなベインやろーぜ!
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- 2018年02月04日 23:59
- 以前?も書き込んだような記憶があるんですが、MOBA系は文章じゃ伝わりにくいので、実況動画をシリーズ化してアップロードしてほしいです。
すごい興味はあるんですよ……ただ、免疫がないんで手が出しにくいんですよね。
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- 2018年02月05日 00:59
- 配信とはわりとおススメです
最初何やってるかわからんかもだけど...
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- 2018年02月05日 03:09
- HOC→aoa→vainとやって来たが、vainは3v3でやり込み、飽きてきたところに5vs5来て歓喜
キャラ増えていけば更に楽しいかと
5vs5で死んでるキャラが調整必要なのと、タカやフリッカーなどのステルス持ちが暴れてますねー
フレアやワードが頻繁に使えなくなったのが痛い
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- 2018年02月05日 03:55
- ずっとスマホゲームやってきたけど同意見だわ
ハースストーンもハマったけど忙しくなるとどれもこれも付いて行けなくなる
継続してプレイしなくても面白さが変わらないゲームが結局残るんだな
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- 2018年02月05日 05:28
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5v5実装されたのはとても嬉しくてかなり楽しみなのだけれど、ヒーローの数がまだまだ足りていない気がする。今までは3v3だったから36体でなんとかできていたけど、5v5となると少なくとも50体は欲しい。運営としてはこれからは今まで通り一ヶ月に一体のペースで増やすみたいなこと言ってたけど、始めのうちは2体ぐらいじゃないと同じような構成ばかりになってユーザーが離れていくんじゃないだろうか
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- 2018年02月05日 11:45
- 対人ゲーム嫌いなぼくにとっては、ゴミにもならないゲームだけどね。
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- 2018年02月05日 13:44
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ゲームファイターってトシさんだったのか!
それに驚いて技師の内容が吹っ飛んだ。
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- 2018年02月05日 14:26
- ゲームファイターだったのかよ
当時野良で一緒にプレイしたことあるわ
いやービックリ
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- 2018年02月05日 15:51
- ずっとマップ同じで小競り合いの繰り返しだったからすぐ飽きたなぁ。
育成ってのも戦術要素の1つで一般的なRPGの成長の楽しみとは全く違うし、大袈裟にしか聞こえない。
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- 2018年02月07日 01:38
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以前やったことあるけど早々に挫折…
戦術とか腕前の前に、
・キャラごとの性能(数値等々)がよく分からない。
・アイテムも効能がややこしく感じる(要はどうビルドに影響していくのか分からない)クリスタル力とかなんだよ!という記憶が…
これらを分かりやすく解説して欲しいです。
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- 2018年02月07日 07:40
- 韓国…
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- 2018年02月07日 09:52
- >30
お前あんだけ気持ち悪いコメントしといて良く平気な顔で出てこれるな。
狂ってるんじゃねえの?
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- 2018年02月07日 22:27
- 5vs5出たけど、うーん
もう某スマホMOBAが世界台頭してきてるからvainは残念だけど下火になる。
あと運営がどんどんダメになってるんだよ
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- 2018年02月13日 13:13
- なんで管理人さんはAPPBANK出身であることを隠してたの?
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- 2018年02月13日 14:01
- >>33
隠してなかったよ。
少なくとも過去の記事で見た気がするし、Twitterでは確実に何回も言っていた。
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- 2018年02月13日 14:08
- ゲームキャストができて、数年してからAppBankでも書き始めたんじゃなかったっけ?
何にせよ、時間軸で言えばAppBankが後。確か、AppBankに書き始めたとき記事で報告していたよ。
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- 2018年10月13日 20:23
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間違いなく面白いのは間違いない。
ただハマる人とハマらない人が居るのが...
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- 2019年01月15日 14:14
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生まれてくるのが早すぎたゲームだったと思います。ここ1年程のスマホゲームのeスポーツ化に合わせてリリースしていれば世界を席巻できていたゲームだと思います。
リリースされた4年前から徐々にプレイヤーを獲得してきたゲームだとは思いますが、イマイチ波に乗り切れなかった印象です。ゲーム自体は今でもトップの質だと思うので運営には頑張って欲しい。
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- 2019年02月13日 07:01
- mobaはゲームは良くてもプレイヤー同士でのいざこざが起きやすいんよね。
lolとか煽り暴言酷くてあんま日本人気出なかったし
ヴェインも若干そんな感じがした
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- 2019年02月13日 07:03
- mobaはゲーム自体が良くてもプレイヤーの諍いが多くてそれでいまいち流行らないのが多い印象
lolも煽り暴言とか多くて流行らなかったし
ヴェインも似た感じだと思うわ
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- 2019年08月13日 14:45
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これ面白かったけど煽りとかは確かに多いです
mobaは味方が死ぬと敵がどんどん強くなるゲームシステムが
戦犯探しを助長させて煽りとか喧嘩になるのばっかりで
そこがうんざりすることが多いですね
結局日本人でmobaやってる人も少ないのが……
今までMOBAやったことなかったけどおもしろいね
時間があったらLOLも始めてみたい