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DL数水増しは過去のもの。サーバー落ちの原因になる「リセマラ」がなくならない理由を解説する

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リセットマラソン……通常「リセマラ」。ガチャ系ゲームをプレイしている方なら、1度は耳にしたことのある単語だろう。
リセマラとは、基本無料ゲームのスタート時にガチャが引けることを利用し、ガチャを引いてはアカウントデータをリセットし、目当てのキャラクターが出るまで繰り返す長い道のりを走る作業を指す。

このリセマラが続いている理由は結構有名だと思っていたのだが、注目の新作のサーバーが落ちるたびに「なんでなくならないんだ!」と疑問の声が上がったり、「DL数水増しのためにリセマラを残してサーバーを落としている」という誤った認識の声が上がったりするので、今回はそれについて書いておきたい。

まず、軽くリセマラの歴史を振り返っておこう。
リセマラの原型は、おそらく2010年のMobageやGreeのカードバトル系ゲームが出てきたころに見られる。
この頃、複数の携帯を用いて良いキャラクターが出たアカウントでプレイしたり、人気ゲームのガチャをとりあえず引いて良いカードが出たらオークションに売り飛ばすようなことが行われていた。
が、MobageやGreeのアカウントを作るためにキャリアメールの登録が必要で、携帯の所持数までしかリセマラ(?)ができず、PCゲームの複数アカウント所持と似たような状況になっていた。
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▲ドラコレ元祖の画像がなかったので、今は亡きドラコレ&ポーカーを…。

ところが、iPhoneの登場がすべてを変えてしまう。
Appleは他所のIDを使用されることを嫌い、オンラインゲームに対してユーザー登録しないでもプレイできる仕様を推奨した。
結果として認証が必要なくなり、所持端末のアプリを削除すれば何度でもスタート時のガチャを引けるようになった。これがリセットマラソンの始まりである。このリセマラの風習は『パズドラ』のゴッドフェス時に始めた新規プレイヤーを通じて一気に広がっていき、以後ガチャゲームを有利にプレイする定番の手法となる。

この「リセットマラソン」の風習はガチャが存在する韓国や中国にも存在するし、近年の『パズル&ドラゴンズ』や『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』の海外展開を受け、「Reroll」の名前で欧米でも親しまれている。
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▲海外でもGoogleの検索結果を見るとリセマラの手引きがあるし、リセマラの候補リストもある。

リセマラの歴史について語ったところで、いよいよ本命のリセマラがなくならない理由に入ろう。
まず、企業側がリセマラを利用して宣伝活動されるなどの認識を生み出した初期のリセマラについて書いていきたい。
リセマラが生まれたころ、リセマラはメーカーにも大きなメリットをもたらしていた。
当時は「ダウンロード数〇〇万突破!」という発表が大きなニュースバリューを持っており、そのダウンロード数はリセマラを通じて水増しできた。リセマラされるほどゲームに勢いがあるように見えるという仕組みである。
(AppStoreやGooglePlayなどのランキングには影響しないと言われている)
そして、プレイヤーも好きなキャラクターが手に入って嬉しい。
これが「水増しに利用している」との認識を作った初期のリセマラである。

しかし、現在のリセマラ事情は異なっている。
次第にリセマラ分のダウンロード数は「水増しである」という認識が広まり、メーカー発表でも重複ダウンロードの有無が明記されることが多くなった。つまり、まともに発表するメーカーにとってはリセマラによるDL数水増し効果はなくなった。
(今でも水増しに利用するメーカーはあるが、前ほどのニュースバリューはなくなった)
さらに、ガチャタイプのゲームが普及するにつれてゲーム配信初日にサーバー負荷が増えるようになり、リセマラがその負荷をさらに大きくした。つまり、サーバーが落ちるリスクと、サーバー維持にかかるコスト面のデメリットが増えてきた。
こうなってはメーカーにとってリセマラを許容するメリットが小さ過ぎると思えたのたが、現在でもリセマラが続く理由を複数の開発者から聞いたところ、いずれからも「リセマラは止めたいが、止められない」という回答が返ってきたのだ。
リセマラは普及しすぎて、今度は止められなくなってしまっていた。

初期はチートの一種とも捕らえられていたリセマラは、現在は一般化して結果がTwitterなどに投稿され、リリース直後のゲームの盛り上げに一役買っている。
「リセマラ終わった。このキャラとゲームします」
「お、そのキャラクターいいじゃん!なんてゲーム?」
というような会話がTwitterで交わされるわけだ。Twitterでバズることが重要などといわれるが、その一翼を担うようになっていた。
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▲あたった…!

また、リセマラをしたプレイヤーはゲームの継続してプレイしてくれる可能性が高いというデータも出た。
多少の困難を克服したという体験が「あんなにリセマラをしたから、少しつまらなくてもゲームを続けよう」というモチベーションにもつながる。
(公式リセマラ的な簡単すぎるリセマラは集客にはなるが、こういった効果は低めだという)
リセマラのしやすさでゲームを選ぶプレイヤーもおり、リセマラがプレイヤーを呼ぶ時代になった。

さらに、日本のガチャゲームが「ガチャで強キャラを手に入れないと、ゲームによっては厳しい」という構造になっていることをプレイヤーが学習し、特に時間のある学生層を中心に「リセマラできないゲームは(ろくにプレイできないで終わるから)だめ」とネガティブな発言を引き出してしまう。

メーカーから見ると初日のサーバー監視やリソース転送が大変になることもあるし、データベースに使われないアカウント(リセマラ時の廃棄アカウント)が残るしでコスト的にも作業的にもキツイ。できればなくしたい。
しかし、ゲームの盛り上げてネガティブな評価を打ち消す効果がある限りリセマラはなくせない。
以上、「リセマラがゲーム広告とゲーム内容の一部になってしまい、なくせない」。これがリセマラがなくならない理由である。

最後に、リセマラの存在について私の意見を述べておきたい。
本音を言えば、私は時間がかかって面倒なリセマラはしたくない。
だが、キャラを育てるよりもガチャで手に入れることに重点が置かれすぎている今の日本のゲーム構造の中で、これがないとろくに楽しめないゲームも多い。「無料でも(最高レアを当てれば)楽しめます!」というタイプのゲームがある限り、これはなくせないと思う。
私がプレイヤー側であることもあるが、リセマラはしないと後悔するほど重要で、すでにゲームの一部になっていると感じている。

消えないの根っこには日本のゲームがガチャで最高レア度のキャラクターを当てることがゴールにつながるモデルに集約されすぎており、画一化されすぎていることがある。
そろそろ、ガチャ一発頼みは止めて、「無課金でもリセマラナシに今までと同じように楽しめる」を実現するゲームを出して欲しいと思っている。