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成長物語がアツい『逆転裁判6』レビュー。逆転裁判4と5を遊んでいてよかった

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初代主人公の成歩堂龍一がクライン王国の、4作目からの主人公である王泥喜法介が日本の法廷で戦う“ダブル主人公”の『逆転裁判6』がスマホに登場した。
ネット上での評判が良くて楽しみにしていた作品なのだが、プレイしてみて納得。逆転裁判4から始まった王泥喜くん主人公編のまとめともいえる内容で、丁寧にキャラクターがフォローされたうえで本編もアツい。
過去作に登場したキャラクターの成長がみられて『逆転裁判4』と『逆転裁判5』をやっていてよかった、と思える作品に仕上がっていた。過去作を通して遊んでいるなら、満足間違いなしの1作である。
本作のキーとなる舞台は『逆転裁判4』で存在が明らかになった“クライン王国”。
霊能力を持つ王女を頂点とした国で、霊媒の本場。2人の主人公が日本とクライン王国をまたにかけて法廷に立ち、その国の闇と対峙する作品となっている。
今回のライバルはクライン王国のナユタ検事で、霊能力の国らしい演出を特徴としている。ただ、検事能力は中程度で、そこそこの強敵という印象。
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▲独特の霊能力的な演出の検事。手ごわさは……中程度かな?

基本システムはシリーズを踏襲しており、事件が発生すると主人公が事件現場を探索する“探偵パート”で証拠を集めることになる。
このパートは“移動”で場所を変え、“調べる”や“話す”などのコマンドで現場を調べるオーソドックスなコマンドアドベンチャー。
総当たりでも解けるが、助手に“相談”すると豊富にヒントがもらえるので快適に進められる。
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そうして証拠を集め終わると“法廷パート”に移動し、プレイヤーは証拠品と証人の証言などと突き合わせてムジュンを探り出す。
このパートは与えられた情報から論理の破綻を探す“論理パズル”になっており、時間をかけて証拠を集めることもあって解けたときのカタルシスは抜群。
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基本的なシステムは前作までを踏襲しており安心して遊べるし、論理的なムジュンを見つけては「意義あり!」を突きつける快感も健在だ。
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今作での大きな変更は、“御魂の託宣”というシステムの追加のみ。これは、巫女が被害者の死ぬ寸前を映像で再生し、殺人現場の証言するというものだ。
死者の視点は巫女が解釈し、その解釈して言葉で伝えられる。
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巫女の解釈に対して、プレイヤーは動画で再生されるシーンとのムジュンを見つけ出して指摘する。
死ぬ寸前の映像がわかる……というと即座に結審してしまいそうなものだが(実際、その証拠能力が強すぎてゲーム世界では問題が発生している)、そこはゲーム。
扱う事件ではぎりぎりで重要な個所が見えておらず、その解釈をめぐってプレイヤーが推理を重ねることになる。
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▲託宣は少しだけ操作が面倒。指摘したい感覚が、託宣決定を押すころに消えてしまうことも。たぶん、コントローラーだとボタン操作なのでクイックに対応できていたのだと思う。

今作ではこの御魂の託宣がストーリーとも深く結びついていてしっかりとしたキー要素になっている。
また、個人的に「逆転裁判世界には霊能力者がいるのに、なぜ未解決事件が多かったのか」と常々思っていたなかで回答が示されたのがうれしかった。
『逆転裁判』は霊媒が存在する世界だが、これまでは日本が舞台で霊媒が証拠として認められなかった。だが、真宵ちゃんが修行に出るほどの本場の宗教国家“クライン王国”なら、霊能力で得た情報が証拠として採用される。国によっては証拠能力があるわけだ。
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▲今回は成長した真宵ちゃんの姿が。

そのほか、過去のシステムもほぼすべて登場する。心音ちゃんが相手の心をカウンセリングして真実を見つける“ココロスコープ”、様々な道具を用いて現場を検証する“科学捜査”。
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相手の心を開いて証言を引き出す“サイコロック”、集中力で“みぬく”。
出番が少ないものも多く、リアル系のものからオカルト系までシリーズを重ねて増えすぎてしまったように感じた。この部分は何かと説明が入ってわずかにテンポの悪さを感じた。
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▲制作側もそのあたりは把握していたようで、別シリーズの大逆転裁判ではきれいに整理されていた。

ただ、それでも『逆転裁判6』の面白さのコアはぶれていない。
証拠をもとに論理パズルを解き、物語が収束していく……その気持ちよさは健在である。
そして、今回は『逆転裁判4』から始まった王泥喜くん主人公シリーズのまとめとしてはよくできていて、とても楽しめた。

1つとしては、シリーズ(4~6)の登場人物の成長が安定してみられたことが良かった。
『逆転裁判4』から5への流れで成長したはずの王泥喜くんが、『逆転裁判5』あまり活躍していなかったことが気になっていた。
しかし6作目では、各人物の成長がきっちり描かれている。王泥喜くんが成歩堂と民事裁判で対峙し、成熟した成歩堂に対して若い力で対抗する場面は名シーンではないだろうか。
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王泥喜くんだけでなく、『逆転裁判5』で悩みを克服した心音の裁判も用意されていて、シリーズを通じて成長したキャラクターたちの姿を見られるのはうれしかった。
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もちろん、かつてのライバルだって登場する(牙流検事だけほぼ出番がないのが残念だが)。特に夕神検事は仲間として登場し、ライバルだったころの手ごわさがそのまま頼もしさに変っていてかっこよさを感じられた。
4以降のシリーズの思い出を上手にフォローしており、作品を大事にしてくれている感があってよかった。真宵ちゃんの扱いについて賛否あるのは知っているが、『逆転裁判4』以降のまとめとしてみるととても良い。
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そのうえでクライン王国と日本の法廷を行き来しつつ最終的につながっていくストーリーも楽しめるし、今作独自の登場人物も物語上で成長して物語のラストを盛り上げる。
トリックも荒唐無稽ながらも素人目に「それは……」と突っ込むほどの破綻は感じなかった。
全体として過去2作で感じられていた不満が解消されていて、かつ総集編としての盛り上がりもあってストーリー面は満足の1作。
終盤長いわりに結論が駆け足で少しだけ説明が足りない気もしたが、不足というよりも「次回作などに続けるため」と思える程度。満足である。
まあ、トリックと物語が良ければ、逆転裁判はすべてよしである。

4と5をプレイしていないと面白さが減ってしまうが、どちらも面白い(逆転裁判4はネット上で評価が低いが、1本のゲームとして十分楽しめる品質)ので通して遊んでみてほしい。
なお、App Storeを見ると「起動しない」などの評価がみられるが、iOS11とiOS10.3で問題なく動いたことも書いておく。多少メモリに余裕がないと落ちることがあるので、数GBの空きはあった方があった方がいいかもしれない。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
 4以降のキャラの成長を見られる
 最後に向かって盛り上がる物語
 今作で登場する人物の物語もよし

気になるポイント
 4と5があっての6
 御魂の託宣の操作が少しやりづらい
 システムが多すぎるかも

アプリDL:
逆転裁判6 (itunes 120円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:CAPCOM(日本)
レビュー時バージョン:1.00.00
課金:2,400円(全ストーリー)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: