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『プリンキピア:マスター・オブ・サイエンス』レビュー - 17世紀の科学者になり、理系の浪漫を追う科学史シミュレーション

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まだ科学という言葉もなく、神の教えがすべてとされる17世紀ヨーロッパ。
しかし、その中でも一部の天文学者たちは天界で地上と同じ現象が起こることに気づき始めていた……。
17世紀を生きた科学者になって生き、歴史的発見をする唯一無二の科学史シミュレーション、それが『プリンピキア マスターオブサイエンス』である。

ロマンあふれる導入と裏腹に、17世紀の科学者の道は思ったより険しい。
学びにも実験道具の購入にも金が必要。ときに政治力でライバルの論文を握りつぶすことすらやる。本作は、そんな科学者たちのリアルを知るゲームである。

当然ながら、このゲームの主人公は実在の人物である。
プレイヤーはアイザック・ニュートンやロバート・ボイルなど、17世紀を生きた科学者を選んでゲームを開始する。
科学者によって適性が定められており、実験したい分野の学者を選ぶのが望ましい。

ただ、才能があっても知識がなければ研究は進まない。
まず「読書」や「講義」で学問を学んで研究分野の知識を深めることが重要となる。また、幾何学であれば「製図」能力が重要だし、科学的な道具を作るなら「工作」の訓練も必要となる。
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十分に能力が挙がったら「実験」と「推理」を繰り返し、研究テーマに対する知見を深めていく。
実験と推理のパラメータが上がると仮説を思いつき、その仮説をもとに論文をつくったり新しい器具をつくったりできる。
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論文や新しい器具ができたら、それを科学アカデミーに提出すると妥当性がチェックされ、受理されれば名誉が増える。
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ただし、論文は先願性である。同じ研究をしているライバルが先に論文を出すと、後から論文を出した側の論文は無条件で却下される。
そこで、ライバルのいない研究をしたり、ときにライバルの誹謗中傷を行って妨害する必要もある。
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▲中世には本当にこんなことがあったらしい……果たして、現代に残る資料のどれだけが本物なのだろうか…。

また、十分に名誉が増えていれば科学アカデミーの会員になり、自分で論文を審査してライバルの論文を却下することすらできる。ここまで来れば怖い物なし。
科学力とは、権力である。
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と、なかなか良い感じの雰囲気のゲームなのだが、本作はすぐに飽きる。
ゲームに目的は設定されておらず、科学者の寿命が尽きるか、引退すると即座にエンディングが始まる。
エンディングは結構いい感じなのだが……説明がないために目的なくさまよって適当に終わってしまうのだ。
また、すぐに他の科学者たちの能力を上回ってしまうし、お金も余ってくる。同じイベントしか発生しないプレイにはどうしても飽きてしまう。
これは大きな欠点なのだが、本作にはそれを補ってあまりある長所が存在する。

科学者たちが実験を行うとき、さまざまなセリフを残す。これがプレイヤーの興味を引き立てる。
たびたびよくわからない推論を示されると調べたくなるものなのだ。
そして、その学説を調べると興味深い知識が得られる。
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例えば、本作では光学を研究していくと望遠鏡を発明する。原始的な「反射式望遠鏡」から「空中望遠鏡」へ、そして「アクロマート望遠鏡」へと順番に作られるものをネットで検索するとその動作原理が判明し、知らなかった科学知識が身につく。
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また、驚くべきことに科学の歴史的にも興味深い背景がゲームでも再現されている。
本作のプレイ中、ニュートンに対してロバート・フックがたびたび「奴は私の研究を盗んだ」と非難されることが苦痛の種であった。
ことろが、重力の研究とニュートンの業績を調べていくと「ニュートンはフックの研究成果を盗んでいた」とされる説があり、争っていたことも判明した。プリンピキアは、科学史の人間関係をも取り込んだ作品だったのだ。
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▲他人の盗用はあいつの専売特許だというのに!

世界史ですら記憶に危うい人間が、科学史など知るわけはない。
しかし、歴史を細かく見ていくことが楽しいように、科学の歴史を1度紐解き調べ始めると止まらない。本作は科学史への興味を誘う呼び水として機能している。
そして、その点から見れば1994年に開発されてから今までライバルはおらず、オンリーワンのゲームであると言えるだろう。
理系に興味がある方なら、ぜひ試してもらいたいゲームの1つである。

しかし、この作品のファンとして私はあえて苦言を呈しておきたい。
本作は1994年に発表された『PRINPICIA』の完全版と言う位置づけで作られている。
私は高校生のとき、ワクワクしながら初代『プリンピキア』を遊び、さまざまな科学知識を得てゲームの制作者に感謝した。作者のTOMEさんと会えたときは、内心かなり喜んだものだ。
続編が出ると知り、それもまた嬉しかった。
だが、あまりにゲームに変化がなかった。上に書いた感想は、前作プレイの感想とまったく同じなのだ。
テーマが唯一無二なので、プレイしやすくなって音楽と色が付いただけで未体験のプレイヤーに勧める意味はある。

しかし、このゲームはもっと良くなれたはずだ。
「ニュートンとフックの手紙」など科学者同士の歴史的イベントを作ったり、フックがニュートンを非難するときにその背景を説明してもいい。教会と科学者の対立など、この時代ならではの面白い話しもできたと思う。
ゲームとしても、単に科学者に「ミッション」をつけて目的を明確化するだけで面白さが増すはずだ。
ファンとしては、本当に進化した『プリンピキア』を見たかったので、TOMEさんの次回作を待ちたい。

もちろん、未体験の(とくに理系の)方はこのゲームを遊んで、TOMEさんのファンになって一緒に待つ立場になって欲しいと思う。

評価:6(面白い)

課金について

なし

おすすめポイント
科学史に基づいた人間模様
興味深い発明の過程
独創的な作品がプレイしやすくなった

気になるポイント
ゲームシステムはすぐ飽きる
前作とほぼ同じ

(バージョン1.0.0、ゲームキャスト トシ)

アプリリンク:
プリンキピア:マスター・オブ・サイエンス (itunes 360円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

動画:

コメント一覧

    • 1. はやミン
    • 2017年05月09日 01:31
    • ゲームをプレイすることで勉強にもなるね。これぞ遊びながら学ぶってのとかw
    • 2. sawat1203
    • 2017年05月09日 09:23
    • 「ゲームに目的は設定されておらず…」とありますが、「最終テーマ」を達成することが目的では?最終テーマの存在はチュートリアルでもちゃんと示されています。
      まあ、実際それまでにダレることは確かにですが(張り合いのないライバル、波乱のない展開)

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