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Nintendo Switch版『勇者ヤマダくん』レビュー。アイテム課金の呪いから解放され、面白さが引き出された意外な1作

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2016年から2018年末まで、スマートフォン向けに配信されていた基本無料・アイテム課金型のパズルRPG『勇者ヤマダくん』。
このNintendo Switch版を遊んで、今さらクリアしてしまった。
Switch版は有料・追加課金なしのゲームとしてバランスを変更した結果、面白さのポテンシャルが引き出されている。
明らかに、スマホ版より面白い。
よって、ここで初めてレビュー記事を書いてお勧めしておく。

このゲーム、パッと見ると独特の世界観が目を引く。
主人公のヤマダくん(36歳)は大手ゲーム会社で出社拒否気味のサラリーマンで、プログラミングは天才的だが、半裸でプログラミングする(しかも家の窓が開いている)奇人。
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このヤマダくんが製作したゲームをデバッグするという名目で遊ぶのだが、ゲームを進めるとなぜか現実世界が変化し、ヤマダくんと敵対する会社がつぶれたり、お隣の女子高生マリアちゃんとの恋仲が進展したりと物語もぶっ飛んでいる。
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なお、マリアちゃんは半裸のヤマダくんを窓から見て応援するタフな女子。こういった突っ込みどころもまたこのゲームの魅力である。
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実際、プレイしてみても独特の名前の武器防具の数々、特定のセットで装備を身に着けると“珍コレ”で特殊な能力を発揮する演出があるなど、さまざまな要素が奇天烈で面白い。
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▲セット装備には能力ボーナスもつき、結構強力


だが、『勇者ヤマダくん』の最大の面白さは、基本となるパズルRPG部分にある。
ステージクリア型を採用しており、ダンジョンのフロアを攻略して最後にいるボスを退治すればデバッグが完了し、ゲームが進む。
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▲ダンジョンをクリアする(デバッグが進む)ほどに新しい機能が追加され、難易度も上がる。

そのダンジョンはと言うと、1フロアが5☓5マスで表現されており、移動ルートを決めて階段までたどり着くと次のフロアに移動できる。
移動するときは同じ場所を2度通れず、一筆書きでゴールまでのルートを決めなければならない
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これだけのルールなら超簡単なのだが……『勇者ヤマダくん』はパズルRPGだ。
5×5マスの小さなフロアには、モンスターやトラップなどが敷き詰められており、モンスターとぶつかればどちらかが倒れるまで戦う必要があるし、飛び道具を持つモンスターの目の前を横切れば一方的な攻撃を受けてしまう。
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もちろん、危険なマスを避けることはできるが、ダンジョンに入るたびにヤマダくんのレベルは1に戻るから、ダンジョン内の敵を倒して成長する必要もあり、安易には逃げられない。
しかも、フロアのすべてのマスを通らなければ、通過しなかったマスの数だけダメージを受ける。
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▲階段にたどり着いたのち、使わなかったマスの数だけダメージを受ける。

飛び道具を持っているモンスターに撃たれないようにして、同時に一筆描きですべてのマスを通って、トラップはダメージ最小の方向から起動して……と、同じ構成のフロアでもルートの選び方で安全度が大きく変化する。
あと、ルートを30秒以内に決められないと時間と共にHPが減る。
もちろん、HPが0になったら攻略失敗。かなり忙しいゲームである。
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▲焦って遠く離れた位置から射撃キャラに近づいて射殺される……わりとある。

ルートが決まっても終わりではない。こんどは、ヤマダくんがそのルートをたどって移動し始めるのだ。
移動時は基本見ているだけで自動進行するが、プレイヤーは手持ちのアイテム(これまたダンジョンに落ちていて、拾うと利用できる)を自由なタイミングで使用できる。
HPを回復したり、敵の魔法を跳ね返したりとアイテムの効果はさまざま。ただし、アイテムは1度使用すると一定ターンが経過するまで使用できなくなる。つまり、安易に連打していると重要な時にアイテムが使えずに死ぬ。
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という感じで、ルートを決めるときは考えるし、移動が始まってもアイテムの使用タイミングを考えるパズル性があるしで、基本ルールがまず面白い。
そこに、豊富すぎる隠しギミックがトッピングされていて、「油のモンスターに火をつけたら燃える」とか、「凶悪なスライムを毒で攻撃すると通常の毒スライムになる」とか、意外な攻略方法もてんこもり。
『勇者ヤマダくん』のダンジョンは悩ましくも楽しいパズルRPGで、基本ルールもギミックもとても優秀な作品となっている。

ここまで読んできて、スマホ版をご存知の方は「スマホ版とシステムは同じじゃないか」と疑問に思うかもしれない。しかし、基本システムは同じでも、Switch版は課金なしを前提にしたバランス修正により、圧倒的に面白くなっているのだ。
スマホ版はアイテム課金で長く遊ばせようとしていたから、序盤を過ぎると成長が鈍くなり、装備強化のために何度も同じダンジョンを遊ぶ必要があった。
しかし、Switch版では簡単にレア装備も落ちるし、ちょっとお金を払えば装備強化も完了する。
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また、スマホ版ではダンジョンの攻略方法を思いついても、レアな消費アイテムを気楽に使用できなかった。
が、Switch版ならドロップ率も高いし、レアアイテムも足りなければショップで簡単に買い増せる。
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かつて、このゲームを3回記事にしようとしたことがある。
このゲームに出会ったのは2015年で、イベントに出展されていたテスト版だった。
ここで触ったテスト版は良くバランスが取れていて、とても面白かった。これに関しては記事を書いた。
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▲今となっては懐かしい、旧版。イベント出展されたバージョンはえらく楽しかった。

2回目は、2016年にスマホ版が登場したとき。スマホ版は十分面白かったが、基本無料になって序盤をすぎると面倒になったので、残念な気持ちになって書けなかった。
3回目は、スマホ版のバランスが調整されたときで2018年ぐらいだったかと思う。
開発元のOnion Gamesの木村さんから「調整したから、気に入ったら書いてほしい」と言われてクリアまで遊んで、かなり楽しめたが……どうしてもイベント出展時のゲームの面白さに届いていない気がして、やっぱり記事に書けなかった。
パズルRPGを楽しみたいのに、パズルの解決に使用するアイテムが使えないとか、正解の解き方をしているのに装備が弱くて通れないとか、アイテム課金型特有の難点がどうしても残っていた。

しかし、Switch版の『勇者ヤマダくん』は、そういった悩みから解放され、かつて私が期待した面白さに達している。
難しいゲームではあるが、少しずつ難易度が上がる設計になっているので、無理なく(何回もダンジョンで倒れると思うが、それも歯ごたえだ)上達していける親切設計なので、多くの人がプレイできるだろう。
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▲記事を書くために遊び、何度も死んだ。でも、楽しい難しさだと思う。

長かった。2015年に期待した面白さのゲームが出るまで実に4年。ようやく、皆さんにゲームをお勧めする記事を書けた。
ユニークなパズルRPGを遊びたいなら『勇者ヤマダくん』を検討して欲しい。見た目から想像もつかない歯ごたえと、豊富なギミックであなたを楽しませてくれることだろう。

唯一欠点を挙げるとすれば、価格面はある。
改めてNintendo Switchのインディーゲームを見ていくと、ラインナップが充実しすぎていて、『勇者ヤマダくん』の定価2,800円は、コストパフォーマンスから見るとちょっと気になる。
とはいえ、私は(4年ごしの感慨もあるが)このゲームをすごく楽しく遊べているし、セールなどで見かけたらファンでなくとも購入を検討する価値はあるはずだ。

概要:
基本はシンプルだが、ギミック豊富で悩ましいパズルRPG。ユーモア満載の味のある演出も魅力。

評価:7(要チェック)

おすすめ
ユーモア(オヤジギャグも)満載のユニークなキャラクターと演出
プレイヤーの工夫で難易度を変える豊かなパズルダンジョン

気になるポイント
ダンジョンで早送り時、ときおりカクつく(致命的ではない)
価格はやや割高に感じる

アプリリンク:
勇者ヤマダくん (NintendoSwitch 2.800円)

開発:Onion Games(日本)
HP:http://www.yamadakun.jp/
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)

動画: