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SWAN SONG レビュー - 終わりゆく世界の痛みを、プレイヤーに伝えるアートアクション

SWAN SONG™ (itunes 400円 iPhone/iPad対応)
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『SWAN SONG』は、滅びゆく世界を旅する少女と鳥を描いた「アートアクション」だ。
自ら「アートアクション」と名乗るだけあってアート面はとても素晴らしい。
崩壊してゆく世界のビジュアル、静かな中に不安を感じさせるサウンドが独自の世界観を見せてくれる。

ゲームプレイもその世界観を存分に活かした作りになっている。
このゲームは難易度の高い。が、難易度の高いゲームをプレイさせることで、主人公の苦難をプレイヤーに疑似体験させ、主人公とプレイヤーが一体感化する仕組みなのだ。

難しめのゲームを体験させることで圧倒的な世界観を体感させる作りは、ゲームが好きなプレイヤーならば深くはまるが、反面カジュアルゲーマーでは2ステージ目すら越すのが難しい。
まさに、通向けの一品といえよう。

世界観や演出は文句なく素晴らしい。
オープニングで少女と鳥が出会う瞬間の美しさと、鳥が羽ばたく躍動感はプレイヤーを一気にゲームの世界に引き込む。
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プレイヤーが操作を覚えて飛び立つと美しい空が見え…。
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そのまま崩壊が進む世界に容赦なく叩き込まれる。
崩れ去る建築物、人間がいなくなっても作業を続けるロボットたち。
無機質な世界がプレイヤーを不安に誘う。
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ときおり発射されるロケット。
中には人が乗っているのだろうか?
それとも人間文明の名残なのだろうか?
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この世界については、文字や声では説明されない。
しかし、だからこそディストピア感が引き立ち、進む先で起きる出来事を見て想像力をかき立てられる。
世界観は満点である。

で、ゲームの方はと言うと、シンプル操作の高難度アクションとなっている。
操作自体はシンプルで、画面をタップして鳥が羽ばたかせるだけだ。
端末を左右に傾けながら画面をタッチすると左右に、傾けずにタッチすると上に羽ばたき、鳥が移動する。
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ただ、操作はシンプルでも難易度はとても高い。
傾け操作なので移動の微調整は難しいのにかなり素早い操作が要求されることもあり、慣れない間は(慣れても)壁にぶつかりまくる。
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で、鳥は黒い壁か白い壁にぶつかるとダメージを受け、だんだんと白くなっていく。
そして、完全に白くなるとゲームオーバー。
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▲ライフは時間と共に回復するので、ゆっくりプレイすれば結構簡単な場所もある。

チェックポイントは最近のゲームにしては少なめで、1回死ぬとそれなりに前からやり直しになる。
しかも、コンテニューにはステージに散らばる【DNA】を消費する必要があり、DNAが尽きるとステージの最初からやり直し。
理不尽と言うほど辛くないが、やり込む気合いがなければここで脱落してしまうかもしれない。
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が、このハードルですらゲームの表現、アートの一部である。
少女と鳥が立ち向かう苦難、問答無用に世界の終末を突きつけられる理不尽感。
簡単にゲームが進められては、その感覚は軽いものとなってしまう。
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このゲームは、ゲームであってゲームではない。
ビジュアルとサウンドで終末の世界を感じ、それに立ち向かう少女の苦難とプレイヤーが一体化することで、世界をよりリアルに感じられるアートなのだ。
自分は最初、「このゲームは操作も内容もつらいな」と思っていたが、ゲームを進めると「難しいから素晴らしいんだな」と感じ、今ではこの世界の虜である。

このゲームはそんなアートを感じるか、それとも感じないかで評価が分かれるので、誰にも勧められるものではない。
だから、「カジュアルゲーマーならやらないでいい」とはっきり書いておく。

だが、もしあなたが雰囲気ゲーが好きで、多少難しいゲームでも挑む気力があるならば、記憶に残るゲームなる可能性のある一作だ。
ゲームマニアを自認するならば、試す価値はある。

評価:3.0(面白い)

おすすめポイント
滅び行く世界を描いた美しいアート
静かで不安をかき立てるサウンド
先に進めたときの達成感が高い

気になるポイント
難しい。そしてやり直しがキツい。

課金について
なし

(バージョン1.0.1、GCドラゴン)

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SWAN SONG™ (itunes 400円 iPhone/iPad対応)