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レビュー: Deus Ex:The Fall - 看板に偽り無し、大作タイトルをゲーム機品質でリリース

Deus Ex: The Fall (itunes 700円 iPhone/iPad対応)
課金:経験値増加200円、ゲーム内通貨(十分手に入る)
開発:スクウェア・エニックス
評価:3.0(面白い)
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美しく、スムーズに動くグラフィック
ミッション攻略に何通りもの道筋がある自由度
キャラクター成長の楽しさ
世界観やストーリーが重要なゲームだが、日本語訳されていない。
緻密な世界観とプレイヤーの選択によって変化するストーリー、攻略の幅が非常に広いことで人気のFPS+RPG、『Deus Ex』シリーズの新作がiOSに登場。
正直、大作タイトルの新作がスマホで出るということで、コアゲーマーからの前評判は高くなかった。
スマホ向けに直されたタイトルは元の面白さを損なってしまっていることが多いからだ。

しかし、『Deus Ex:The Fall』はその前評判を覆し「Deus Exが携帯ゲーム機に移植されたらこんな感じだろう」というレベルのクオリティでゲームを作り上げ、リリースすることに成功した。
まず、その見た目。
最新の家庭用ゲーム機には届かないが、十分綺麗でPS2のグラフィックは完全に超えている。
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企業が力をつけ豊かな場所がある一方、貧民層には疫病のクスリさえ行き渡らない。
貧民街の陰鬱な空気やサイバーパンクな世界観がしっかり再現され、ただ綺麗なだけで終わらない。
また、iPad miniやiPhone4Sなど最低動作環境でもスムーズに動き「重い」と感じることは一切なかった。
快適にプレイできて美しい、ゲーム機のグラフィックといえるだろう。
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プレイヤーの選択がゲーム世界に影響を及ぼすという要素もそのままで、NPCとの会話のやり取りから重要な場面での行動までプレイヤーが選択することが可能だ。
この自分が主人公で話が進んでいるRPGのような感じも再現されており、その面でも『Deus Ex』している。
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▲ターゲットを殺すのか、とらえるのか?

そして、もう個人的になにより大事だと思っているのがミッション攻略の自由度。
このシリーズでは同じミッションでも複数の解決方法が用意されており、プレイヤーの裁量で好きに攻略していけるのだ。
例えば敵アジトの最深部にある情報を奪いに行くとき。
まず普通のFPSのように敵を皆殺しにして進んでいくことができる。
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が、このゲームの戦闘はそれなり以上の歯ごたえがある。
敵のAIもそれなりに賢く、見つかれば周囲の敵が徒党を組んで攻めてくるし、正面から誰かが射撃しつつ、誰かが背後に回りこんでくるような戦法も取ってくる。
初期の主人公はそこまで強くないので正面から戦ってしまうとかなり苦戦し、即死もありえるほどだ。
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▲油断していると即死。ただし、セーブ地点からすぐやり直せる。

なので、換気ダクトなどの脇道を探し出し、敵の側面をついたり戦いを回避してもいい。
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プレイヤーが見張りの死角から死角へと動きまわり、要所要所で背後から近づいて仕留める『メタルギアソリッド』のようなプレイも可能。
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ミッションマップも非常に凝っており、施設内のセキュリティルームから監視装置をOFFにするようなマップもあれば、抜け穴を使って背後から敵を始末していくマップもあり、ハッキング一発でかなり短縮できてしまうような場所もある。
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▲監視モニターを乗っ取れ!

で、敵を倒したりして経験値を貯めるとレベルアップ。
キャラクターのAUGMENTATIONS(オーグメンテーション、人体に組み込むインプラント)をプレイヤーの選択で強化できる。
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これも自由度が高く、単純にHPが上がったり素早くなるだけのアクション系のパワーアップだけでなく“ハッキング”や“ステルス”など特殊能力も非常に強力。
例えば、ハッキングの能力を上げるとゲーム中に出現する電子錠をすべて解除することが可能で、序盤から倉庫から物を盗んでアイテムを入手し、パスコードを入手しないでも次々ミッションの扉を開くことが可能だ。
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▲全ての鍵を開けられる!

力を強化すれば重いものを動かして隠された通路を見つけたり、脆い壁を壊して敵の背後から奇襲するなどの行動も取れ、攻略のバリエーションがひろがる。
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▲壁を壊しつつ、背後から奇襲!

これらの能力を活かせるようにミッションマップも細かく作りこまれており、全ての鍵を開けられるハッキング能力を持つかわりに戦闘力が弱い状態でもクリアできるし、卓越した身体能力で強行突破していってもいい。
戦闘で敵を倒さなくても、隠し通路を見つけて移動したりハッキングをしても経験値が手に入るので成長しなくなる心配もない。
選択した能力を活かしてマップを攻略していくのが楽しい、質の高いゲームに仕上がっている。

また、それを支える基本操作も相当なもの。
移動はアナログスティックでもできるが、基本的にはタッチ操作で最適化されており、移動したい場所をダブルタッチするだけで自由に移動可能。
壁から壁への移動や、立ちしゃがみなどは専用のボタンが用意されており、慣れると「操作性が悪いから死んだ!」ということもあまりなく、本格ゲームをきっちり楽しむことが可能。
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左右に射撃ボタンが有るため、アナログスティック移動を使用していると射撃が暴発しやすいが、オプションで右側にボタンを重ねてしまえば解決する。
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▲よく見ると右の射撃ボタンが2つ重なっている。

プレイの自由度が高く、操作性もタッチパネルに合わせて作られており、グラフィックも非常に高品質。
正直、ミッションが沢山あればこれだけでずっと遊べるぐらいゲームは完成されているのだが、1つ大きな難点がある。
それは全編英語であること。
字幕はあるものの、会話とともに流れていってしまうのでそれなりの英語力が求められる。
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ミッションの目的地にはマーカーがつくので英語がわからなくても迷うことはないし、重要な情報は後からも見られるのだが、とにかく文章量が多いので理解するには気合が必要。
世界観がきっちり作られており、プレイヤーが行った行動に対して反応があるのが面白さの1つだけに日本語対応して欲しかったところ。
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▲一応、ミッションはいつでも確認できるし、行き先も画面に表示されるが…。

課金要素はゲーム内通貨の購入と、経験値の増加。
元々金も経験値も潤沢に手に入らないなかでクリアするゲームになっているので、単純にお助け機能として機能しており、購入しなくても十分クリアできるし楽しめるバランス。
これぐらいの課金なら納得だ。
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リリース前に「スマホ向けのDeus Exではなく、Deus Exの完全なゲームをスマホで楽しめる」と発言して話題になっていたが、まさにその通り。
たった600円で数時間『Deus Ex』をきっちり楽しめてしまう。
強くてニューゲームを備えており、周回を考えるならもっとだ。

『XCOM:Enemy Unknown』はゲーム機のゲームをそのまま持ってきて話題になったが、『Deus Ex:The Fall』はタッチパネルに合わせてゲーム機なみの体験が得られるように作られた新作。
そういう意味でiOSのゲーム史上に残る作品の1つであると感じているが、先に書いたように世界観や会話がわかるとより楽しめるゲームなのに日本語でないことだけが本当に残念だ。

システムが分かるギリギリの英語力と考えてゲームの評価は3.0、英語でストーリーなどをきっちり追えるのであれば、評価は3.5〜4.0になるだろう。
iOS専用の完全新作でここまでのものが楽しめようになったかと思うと、感慨深いものがある。

アプリリンク:
Deus Ex: The Fall (itunes 700円 iPhone/iPad対応)

動画: