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レビュー:BAROQUE 独特の世界観が魅力…だが、味わう前に挫折する操作性

BAROQUE(Ver1.0) 体験無料 iPhone/iPadの両方に対応
課金:1600円(完全版アンロック)
評価:2.0(良くはない)
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荒廃しきった独特の世界観
ストーリー演出がローグライクのシステムとマッチしている。
ゲームの操作性が悪い
昨今の基準で言うとゲームの内容が説明不足すぎる(昔でも不親切な部類だった)
一部のイベントを進めるための方法が分かりづらい
『トルネコの冒険』などでよく知られるローグライクゲームが、プレイヤーと敵が交互に行動するターン制ではなく、アクションだったら…?
ローグライクをプレイしていると誰しもが考えるこのアイデアを実現したのが、1998年にセガサターンで発売された『BAROQUE』だ。
今作は2007年にリメイク発売されたPS2版の移植で、ボイスが削除された代わりに高難度のダンジョンでサバイバルしてスコアを競う“サバイバル”が追加されている。

1998年の登場以来、今日まで移植され続ける『BAROQUE』の魅力は何と言ってもその演出と世界観。
“大熱波”で荒廃しきった終末的な世界観、グロテスクな異形の姿となった人々とイカれた会話、“何回も死んでやり直す”というローグライクのお約束をストーリーと絡めた独特の演出。
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▲これも町の人。

主人公は何者なのか?
なぜ、何度も死んでも神経塔に向かえるのか?
この世界に何が起きたのか?

死ぬたびに変わっていく町の人々の反応や、ランダム生成される神経塔(ダンジョン)の中で出会う不思議なイベントを通じてこの世界の謎を解き明かそうと、当時のプレイヤーたちはなんどもダンジョンに足を運んだ。
ローグライクの面白さに「ストーリーを知りたくて何度もプレイしてしまう」という動機を組み合わせたのは素晴らしい作りだったように思う。
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ゲーム部分は三人称視点(キャラクターの後ろから世界を見る)アクション。
画面左をドラッグすると出現する十字キーで移動し、画面右タッチでの攻撃。
画面右側をドラッグすると上下左右へ視点を移動させることができる。
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“VIEW”で主観視点と切り替え。
セガサターン・PS版では主観視点だったので、旧作プレイヤーはこちらのほうが好きかも?
また、演出がより良く見えるのでゲームがやりづらいというのを除けば個人的にもおすすめ。
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“LOCK”で近くの敵を中心に見ながら移動することが可能。
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▲モンスターを常に正面に捉えて移動中。

その他、画面左上にレベル、HPとVTという3つのパラメーターがある。
レベルは経験値が溜まると上昇して主人公が強くなる。
HPは0以下になると死亡してスタート地点からやり直し。レベルは1に戻り、アイテムも全ててなくなってやりなおすローグライクのお約束を踏襲。
VTはいわゆる空腹度で、時間と共に減っていきこれが0になるとHPが時間と共に減少する。
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アイテムは大きく分けて使う物と装備の2種類。
武器・コート(防具)と、さまざまな特殊効果がある偽羽の3種類が主人公の装備、その他に武器や主人公に特殊能力を加える“印”や、使いきりの“寄生虫”、複数回使える特殊アイテムの骨など、ローグライクらしい様々なアイテムがある。
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ダンジョンはランダム生成され、入るたびに構造が変化。
アイテムを駆使してひたすら神経塔を降りていき(塔なのに降りる不思議)、最下層に進むと次のダンジョンに行ける仕組みだ。
もちろん、ストーリーもそれに合わせて進むが、ダンジョンの内部をくまなく探索してイベントに遭遇しなければストーリーや設定の細部まで辿りつけない様になっているので、時間をかけて探索するか、何度も行き来することとなる。
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基本システムはリアルタイムアクションになったローグライクで、強力すぎるアイテムが1つあるもののそれさえなければ楽しく遊べる範囲。
そこにストーリーと演出を交えたこのゲームの基本は悪くないはずなのだが、AppStoreの評価は2012年12月31日現在ではかなり悪い。

理由はいくつかあるが、まず、このゲームがPS2版から操作性を悪くした単なる劣化移植でしかない事が挙げられる。
初期設定では視点の切り替え速度が遅く、移動キーを深く押し込まなければ走ることができない。
操作性が悪くて「オプション設定で調整するか」と思うよりも前に投げ出したくなるレベル。
また、オプションで感度を最大にすればまあ遊べるが、それでもちょっと遅いように感じる。
旧作のファンでもこれでは高い評価が付けられない。
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さらに、新規プレイヤーには圧倒的な説明不足と不親切さが襲いかかる。
チュートリアルダンジョンで基本は説明されるが、アイテムの使い方や特殊な施設などについて一切の説明がないので、わけがわからないままゲームをすることになる。
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▲この球体に向かってアイテムを投げると地上で預かってもらえる…ってわかるか!

また、一部のイベント通路はそれこそ知っていないと気付けない人も多く、そこで詰まったりもする。
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▲序盤の最下層、ここで前に歩き続けると次の階層へ…気づけません。

第1章を終えると、製品版を買うか選択することになるが、その区切り方も微妙。
第1章はほぼ無敵モードでストーリーが展開されるだけでローグライクとしての面白さはないので、正直あまり面白くない。
余程のことがない限り製品版を購入する選択にはならないだろう。
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▲第2章が終わってからにすればよかったのに…。

細かいことを言うと、近くに敵の接近を音で判別して周囲を見回すゲームなので、サウンドなしでプレイされることもあるiPhoneではそれもマイナスに働いているかもしれない。

全体的に“移植はしたけどそれだけ”という印象で『ファイナルファンタジーIV』のように操作性・グラフィックなどを最適化して移植されるようになってきている今、これではさすがに辛い。

なお、追加モードのサバイバルは高難度のダンジョンで限界までサバイバルしてスコアを競うというもの。
スコアをゲームセンターで競えるのはいいのだが、これを購入動機にするにはまず操作性が良くならなければ…というのがまず難点。
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独特の世界観と、システムとストーリーが一体になったゲーム自体は今でも通用すると思うが、残念ながら現時点では新規はもちろん、ファンの方にも勧めづらい。
プレイできないことはないので、セール価格のうちに買うならばまあ、ありかも。

アプリリンク:
BAROQUE(itunes) iPhone/iPadの両方に対応