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『東方ダンマクカグラ』終了の舞台裏と、『ファンタジア・ロスト』としての復活まで。アンノウンXの団長JYUNYAさんインタビュー

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2022年10月のある日、PCの対戦ゲーム『League of Legends』を遊んでいるとき、いつものゲーム仲間のJが寂しそうに、唐突に語り始めた。

「ゲーキャスさん、俺はダンカグが終わってしまうから今、悲しいんだよ」

彼は、2022年10月28日20時をもってサービス終了が発表された『東方Project』公認二次創作のリズムゲーム『東方ダンマクカグラ(以下、ダンカグ)』のヘビープレイヤーだ。
聞いてみると「ダンカグには10万人以上のプレイヤーがいる(※)のに、収益が上がらずに1年強でサービスが終わる」のだという。

いやいや、10万人プレイヤーがいるガチャ付きのスマホゲームが終わるなんて、想像もつかない。
で、良く良く調べてみるとサービス終了日に『東方ダンマク祭 ありがとうダンカグSP』なる終了記念放送をして終わるという。
通常、1年程度で終わる収益のない運営型ゲームはサービス終了告知放送程度はしても、告知後、終了の日(何気に忙しいのだ)に手間のかかる生放送をするなんてまずない。

きっと何か面白いことを考えていそうだし、取材したらダンカグの面白い話が聞けるかもしれない。
最悪、ゲーム仲間の寂しさを紛らわせたり、納得させたりできる何かしらの追悼インタビューはできるだろう……そう思って『ダンカグ』運営にコンタクトを取ったところ、ゲームの拡張のためのクラウドファンディングを行うことが判明し、その舞台裏を聞くインタビューを行う運びとなった。
※プレイヤー人数についてはプロデューサーの上田さん(以下、上田P)が「1日で切り取っても十数万人」と語っており、実際には1日当たり十数万人が正しいと思われる。

インタビュイー:JYUNYA
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ゲーム制作サークルAQUASTYLE代表。
中学生時代にアマチュアがゲームを作り自分で販売する「同人ゲーム」の世界を知り、黄昏フロンティア(現在では『東方Project』の公式外伝作品を手掛けるサークル)の初期メンバーとして加入。
年齢や立場を問わず日夜ゲームを命がけで制作することに魅せられ、自身も学校の同級生とサークルAQUASTYLEを設立しデザイナー兼代表となる。
2009年に東方Projectの二次創作ゲーム『不思議の幻想郷』を制作、2014年にPlay,Doujin!へ参加し同人サークルながらPlayStation®Vitaで「不思議の幻想郷-THE TOWER OF DESIRE-」をリリース。
続編の『TOD-RELOADED-』ではPlayStation® Awards 2017でインディーズ&デベロッパー賞を受賞。
以後展開するプラットフォームを増やし商業や同人問わず面白ければ自分らで全部やる!の精神で日々仲間とゲーム制作を行っている。

インタビュワー:ゲームキャスト(寺島壽久)
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10万人以上が遊ぶのに終わってしまう、ダンカグ
ゲーキャス:
本日はお時間いただきありがとうございます。結構きわどい質問もするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。インタビュー実施の直前に年齢層に関するツイートが少しバズってしまったので、そのあたり読者が聞きたいだろうことも含めて。

JYUNYA:
はい、本日はよろしくお願いします。
今日は、言える限りのギリギリまで回答していきます(笑)

ゲーキャス:
では、率直に。
最後の放送となる『東方ダンマク祭 ありがとうダンカグSP』ではプレイヤーの年齢層が低かったというデータを明かされていて、そことサービス終了(収益が上がらない)のあたり相関関係があるのか、気になっています。
まず、『東方Project』というのはかなり長いIPですが、プレイヤー層が非常に若いことは予想通りだったのでしょうか?

JYUNYA:
正直、ここまでとは予想外でした。
もちろん僕らAQUASTYLEとしては、(東方に)年々若い人たちが増えている実感はあったんですよ。
10年ぐらい前からかな。東方の同人イベントに親子連れ、子供たちだけのグループが増えていましたしPlayStation や Nintendo Switch にゲームを出すようになってから、反応してくれるプレイヤーの年齢層が下がっていたので。

ゲーキャス:
リズムゲームは若い人が多いジャンルなので、『ダンカグ』のプレイヤーの年齢層が低かったと思っていたのですが、もともと東方のファンが若返っていたのですね。

JYUNYA:
両方あると思います。
東方って若い人にとって(二次創作を入り口とした)いまちょうど熱いIP。同時に、昔からのファンにはいつでも帰れる原作がある実家のような存在。
東方ファンは全年齢、満遍なくいると思っています。そのなかで『ダンカグ』に若い人が多かったのは、リズムゲームというジャンルだからでしょうか?
ただ、それでも僕らは20歳から25歳ぐらいが一番多いと思っていましたし、事前の調査でもそのあたりから30代近くがボリュームゾーンになっていたところ、さらにその下の 14 歳未満が多かったのは予想外でした。

ゲーキャス:
終了発表時点でも『ダンカグ』は毎日10万人以上が遊ぶと聞きしましたが、基本無料ゲームは無料で遊べるが、お金を持っている人には多く出してもらう前提で成り立っているものが多い。
とすると、課金の商品の問題があったのではないかと想像されます。

今回のインタビュー前に『ダンカグ』プレイヤー10名強から自由記述式のアンケートを取ったのですが、「安く遊べた」と「課金するポイントがなかった」という回答が90%の人から出てきていて。
「安かった、支払う理由がなかった」と語っていました。
いわゆる「課金圧が低かった」ことが問題になったのではないでしょうか。

JYUNYA:
それについては、前提として AQUASTYLE はその辺りの施策や運営に関しては判断する立場にないので想像になりますが、課金の設計を担当した DeNA さんに「若い人が多いから、薄く課金してもらって、長く愛されるタイトルにしよう」って思いがあったと思うんですよ。
課金圧が低いのはいい意味で、狙い通りだったのだと思います。

ゲーキャス:
若い人が多いからか、120円でSSR確定の夢見くじ券(ガチャチケット)を販売するなど、ほかのゲームでは考えられないほど安くてお得なアイテムを販売していたし、月額パスもお得だったと感じています。というか、調べれば調べるほど「これでいいのか」というほど安い。
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▲SSR1枚で120円のお得パックなども。

ダンカグラジオでは、「ほかのゲームと比べて、年齢が若いのにできる限りお金を払ってくれている」ということを上田プロデューサー(以下、上田P)がおっしゃっていましたが、若い人向けのアイテムは、効果があったのでしょうか?

JYUNYA:
そこは上田Pが言う通り、一定の効果はあったかと思います。
ただ、それ以上に想定した年齢層との差が大きかったのもあるだろうと思います。120円の商品については一種実験的に出してみたのですが、あの値段と内容でもほとんど購入されませんでしたからね。
運営に関しては素人意見ですが、予想より若すぎて購入手段を持たない人が多かったというのもあったと思います。安い品物を用意したら買えるというのではなく、そもそも課金する手段がない。

ゲーキャス:
若すぎると購入手段がない問題ですね。
低年齢層向けのゲームはリアルな店舗で「あれ買って!」と親にアピールして買ってもらうのが王道だから、DL専売だと問題が発生すると聞いたことがあります。
極端に言うと、120円でSSRを販売しても課金の決済を親が許していないから買えないけど、ゲーム売り場で1,200円で売っているゲームは親に言うなり、お小遣い出すなりして買えてしまう、みたいな。

JYUNYA:
そういうことはあるんじゃないかな、と。
実際、リアルイベントやグッズ、コラボ系は凄まじく反応はよかった。ローソンコラボでは「東方コラボやっているからグッズが欲しい」と言って、いっぱい買う若い子が多かったという話も聞いています。

ゲーキャス:
最初からそれを織り込んで制作していれば、ゲーム的にも仕掛けが用意できて、課金の方式もうまく作れていた可能性はあった?

JYUNYA:
そこはたらればなのでなんとも言えませんが、可能性はあったかもしれません。
他にも、人が入ってくるIPということは、勢いがあるし、人気があるゲームってことなんですけど、コロナでそれを可視化することが難しかったことはあります。様々なリアルイベントでアピールできれば、賑わいを見て人がもっと来てくれたかもしれないですね。

プレイヤーの声で復活が後押しされたファンタジア・ロスト制作発表
JYUNYA:
若干聞く人が聞いたら嫌な聞こえ方に聞こえるかもしれないけど、サービス終了してしまった無念やユーザーさんへの心苦しさ別にすると、感情として「自分の好きな東方の世界でこんな事がデカいことが出来た!俺たちの中の東方の世界をみんなに押し付けれた!」みたいな思いはあるんです。
特にこれからの生きていく若い世代の人生の一部一端を『東方Project』に向けられたのは、東方ファン、東方二次創作をやっている人間としては冥利に尽きますよね

ゲーキャス:
元となるIPである『東方Project』に貢献したという思いですね。
私も事前のプレイヤーアンケートに応募してくれた方が若くて驚きましたね。なんと最年少で15歳。『ダンカグ』が自分で選んで入れた初めての基本無料ゲームで、初めての『東方』体験であり、14歳時代に熱狂的に遊んだゲームとしての『ダンカグ』があり、熱量がけた違いに高いのは感じました。

JYUNYA:
我々も(そういったプレイヤーに)ずっと夢中になって欲しかったし、1年で終わって申し訳ないという思いがありました。
そういった責任を果たすというか、『ファンタジア・ロスト』が発表できてよかった。

ゲーキャス:
とはいえ、サービス終了を発表したあとの『だんかぐらじお(※)』で、上田プロデューサー(以下、上田P)が「何も決まっていないけど、復活させたい気持ちがある」ということをおっしゃっていたので、完全にそういう流れだろうな、とは思っていましたが(笑)
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※『だんかぐだんちょうのだべりらじお』の略。プロデューサーやJYUNYAさんが話、プレイヤーとコミュニケーションをとるYoutube放送だった。

JYUNYA:
そう思われるかもしれませんが、上田Pが発言したときは本当に何も決まっていなかったんですよ。
サービスが続いているゲームのプロデューサーが、あのタイミングでユーザーさんに期待させる発言をしたのは、僕らもすごく驚きました。
当日らじおの打ち合わせでも「本当に喋るんですかこれ?」と聞いたけど、(上田Pが)「僕は本当にそういう思いがあるんで喋ります」っていうね。
だから、当時は「誰が作る想定なんだろう、大変だろうなぁ」と「でも、できれば自分たちも当然関わりたいなあ」と思いが同時にありました。

ゲーキャス:
その後、結局はAQUASTYLEとして関わることになったんですよね。もしかしたら、AQUASTYLEさんの東方への愛を信じた上での発言だったのかもしれませんね。

JYUNYA:
リアルな話、誰もやらないなら自分たちで『ダンマクヒロインズ(※)』という形で、いつか復活させようと妄想はしていました。その後、スタンドアローン版に携われることになって、本当に嬉しいです。
※『ダンカグ』の前身としてAQUASTYLEが制作していたPC向けゲーム。
ゲーキャス:
いま振り返ると、ラジオで上田Pが「いっぱい投稿をください」とか「ハッシュタグとか言ってくれ」って言っていたのも『ダンカグ』を復活させるため……?
でも、収益的に失敗したゲームにおいて、大きな会社をファンの声で動かせるものなのでしょうか? 

▲最終回は運営側の思いが垣間見られて興味深い内容

JYUNYA:
意外だったんですが、ファンの皆さんの声の力はDeNA さんとか、大人の会社にこそ大きく作用したんです。
ネットの匿名の誰かが書いているのではなくて、アカウントを使って声明を上げて(スタンドアローン版を)作ってくれって言っている。それが信じられないほど集まって、手紙もきた。
こんなに人いると「これは答えなきゃいけないでしょ?」となって、実際の契約とか、そういう大人の選択ができるようになりました。

ゲーキャス:
ファンの声で大人の選択ができるようになる、というのは聞いていて嬉しい事実ですね。

JYUNYA:
僕らだけでなく、作った人間からしたら、誰だって「(スタンドアローン版を)作りたい」って言うんですよ。
でも、それだけだと会社では「お前がやりたいだけじゃないか」と言われてしまう。世間が本当にそれを望んでいるかっていう度合いを測るのは、開発者の声じゃなくて、お客様の声なんです。

ゲーキャス:
とはいえ、サービス終了1.5カ月前に何も決まっていなかったものを準備するには相当な労力が必要だったと思います……というか、普通は不可能な速度ですよね。

JYUNYA:
実は(『ダンカグ』にかかわる)各社さんが、元々やりたいという気持ちがあって、関係する各社さんがそれぞれ独自に検討・準備をしてくださっていたんですね。だから、いざ動き始めたら想いも含めてスムーズで。
そのなかで各社で「プレイヤーが発表をいちばん喜ぶときはどこだろう」と話し合ったとき、「サービス終了の悲しいときに1つ、嬉しいニュースを届けたい」ということになりました。

▲最後に発表されたPV

予定が決まったあとは激流の中にいるような忙しさでしたね。『ダンカグ』のサービスも続いているじゃないですか。終わらせなきゃいけないのに、これから始まる作業もしなきゃいけない。
プロトタイプの画作りも2、3週間で見れるものに仕上げました。僕とたかむら(※)で話してほぼ2人で。AQUASTYLEの開発の中でも指折りぐらいの超特急でした。
※ゲーム制作サークルAQUASTYLE所属のディレクター/エンジニア。『不思議の幻想郷』シリーズのプログラマー、ほかタイトルのプロデューサー・ディレクターを経て『ダンマクヒロインズ』プロジェクトのゲーム化を企画し、『ダンカグ』ではAQUASTYLEサイドのプロデューサー・ディレクターとして従事。

ゲーキャス:
結果、ゲームのサービス終了イベントで、ゲーム名も素材も引継ぎでゲーム発表ができたと。

JYUNYA:
普通はゲームの名前はそのまま使っちゃいけないと言われたり、アンノウンX として発表できないとか、あると思ってました。うまくいってもそれっぽい「精神的続編」が限界かな、と。
世の中、想いはあっても色々な会社の都合で実現できないことってあるじゃないですか。『ダンカグ』も結局サービスが終わればそうなっちゃうんじゃないかって思って。
でも、DeNAさんはじめ関係するすべての人達が理解を示してくださって、サービス終了時の生放送の中で発表させてもらえて、ゲームの名前も組織名もそのまま踏襲できる。本当に 100点中100点の引き継ぎ方ができたと思います。感謝しかありません。

ゲーキャス:
私もスマートフォンゲームメディア歴は長いので、多くの場所で作り直したいけど作れない、名前や素材を使えない、という現実を見てきました。
でも、今回はファンが行動して、関わった会社が呼応してくれた、と。素晴らしい話ですね。

JYUNYA:
エンタメ業界に生きてる人って、ビジネスとしてはもちろん儲けたいけど、何よりもお客様に喜ばれたいって気持ちが絶対強いと思うんですよ。実際、「喜ばれたい」っていう尺度で、物事の選択や決断をするっていうのがエンターテイメントの会社、ゲーム屋の本望で、そういった志の上で再び開発できることになったのは、本当に幸運だと思います。

重ね重ねになりますが、各社で話し合い、スタンドアローン版開発の舞台を整えていただけたことには感謝しかありません。
僕らも大変でしたが、許諾・契約周りを担当した方はもっと大変だったと思います。

スマホからSteamへ、作り直すもの
ゲーキャス:
ここからは、『ファンタジア・ロスト』のゲームの話で。
まず、こういった引継ぎ版では元のスマホゲームのオンライン処理を省いたものを作ればいいじゃないか、みたいな見え方で「結構楽にできるんじゃないの?」というイメージを抱いてるプレイヤーも多いと思うんですよね。
乱暴に言うと、スタミナなくしてだすだけだから楽じゃないか、みたいな。
『ダンカグ』についてはいかがでしたか?
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▲『ダンカグ』のゲーム画面。音ゲーなんだから、普通にスタミナなくせば遊べるだろう、と何も知らないと思ってしまう。

JYUNYA:
実は僕も実際にこうなるまでそう思っていました。が、やろうとしたら全然違って。
オンラインゲームは、データの整合性をとるためにあらゆる要素にサーバー側の処理が走っていて、ほぼ数秒に1回細かく処理していて、そのためのデータなどがあらゆる場所に入っている。
オンライン処理をなくすだけでなく、その補填処理を新規開発することを計算したら、ゲームじゃない部分なのにゲームをまるごと一つ作るぐらい手間がかかることがわかって、ならば新作ということになりました。

ゲーキャス:
スマートフォンからPCへプラットフォームを移したのはなぜでしょうか?

JYUNYA:
いままでPCを中心にゲームを作っていた我々が開発するとなったとき、Steamや家庭用ゲーム機の方がよりストイックに、さらに面白くゲームを作れるだろうという判断がありました。
ある意味のリベンジとして「終わらないゲーム」を出す。つまり買い切りをしたかったっていうのは気持ちとしても絶対あったんですよね。
あとAQUASTYLEの開発規模になると、途方もない数もあるスマートフォンの全機種で動作チェックするのも難しいですし。
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AQUASTYLE公式ページの作品群を見ると、ほとんどがPCや家庭用ゲーム機。

ゲーキャス:
確かに開発体制が違うなかで『ダンカグ』と同じようには出せないし、プラットフォームが変わるとなるとゲーム内容も変化しますよね。
クラウドファンディングのページには「移植ではない」と書いてありますが、具体的には何が残って、何が変わるのでしょうか。
変わった理由や、作るにあたって、大事にしているものなどあればお聞きできるでしょうか。

JYUNYA:
今回チャレンジして感じたのはスマートフォンゲームって本当に巨大なものだったんですよね。一つのゲームを作るのにゲーム制作を生業とした会社が何社も参加して、それこそピーク時は何十人、何百人で作るっていう体験したことのない規模でした。
それを小さい組織で作り直すとき、規模的に「すべて作り直す」のはちょっと難しいので、『ダンカグ』にとって一番大事なことは何かって考えたんです。
そう考えたとき、「東方の音楽って素晴らしい、東方の音楽でゲームするとこんなに楽しいんだ」っていうところは絶対死守したかった。

「東方の音楽でゲームするとこんなに楽しい」を考えたとき、スマートフォンそのまま再現ではコントローラー、キーボードで遊んだときに恐らく楽しく遊ぶのが難しい。
ならばゲームとしての面白さを再提案して、音楽ゲームとしてのより面白くするために、譜面を作り直すことも含めて決断しました。
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▲『ファンタジア・ロスト』の開発中画像。画面構成が変化している。

その上で「東方の素晴らしい音楽」が大事なので、今まで入っていた曲をできる限りいれたいというのもありますね。

ゲーキャス:
システムを作り直して、そこに矛盾のない譜面で楽しませるとなると、それだけで大作業ですね。
あと、ストーリーも新しくなると聞いていますが。
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JYUNYA:
『ダンカグ』でストーリーの制作協力をしていただいたストーリーノートさんに参加していただいて、新しいゲームにあった新規ストーリーを提供できるように考えています。
『ダンカグ』の続編ではなく、本当にまったく新しいストーリーです。まあ、PVを見れば雰囲気は伝わるんじゃないかと思っています(笑)。
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それ以外のソーシャル要素、ハコニワに関しては別のゲームっていうことで、今現在はまったく考えてないですね。ご希望があれば、色々皆さん声は頂けたら嬉しいです。

クラウドファンディングとSteamがゲームと心の糧になる
ゲーキャス:
クラウドファンディング、ファンが応援してお金を出して、その力でゲームがよりよくなり、開発が進む素晴らしい仕組みですね。
クラウドファンディングのお金で普通にSwitch移植ってできるものなんでしょうか。いや、率直に言います。1,500万、集まらないとSwitchで出ないんですか?

JYUNYA:
どこまでいうべきかな……正直言うと、僕個人として、クリエイターとして、クラウドファンディングの結果にかかわらず他機種で作りたいし、多くの人に手に取ってもらいたいっていうのはあります。

ゲーキャス:
嬉しい話の反面、クラウドファンディング前にそこまで言ってしまっていいんですか!?

JYUNYA
僕らは同人サークルだから、作りたいと思ったらいつかは作るんですよ。移植はしたいという気持ちは本当です。
でも、手弁当でSwtich版を作るには、あまりにいろいろなものが足りていないのが現状。リアルな話、クラウドファンディングが達成できなかったときSwitch版を作ることは事実上不可能になります。

今、僕らでしか作ってないんですよ。でも、お金が増えるとエンジニアとか作家とかいろいろな人に助けてもらえます。
ボランティアとかではなく、「ダンカグの仕事やってくれ」って堂々と頼んで仲間を増して、Switch版を開発できる。もちろん熱量のある人に頼んで、ですよ。だから、クラウドファンディングが絶対うまくいってほしいなとは思っています。

ゲーキャス:
AQUASTYLEさんはSwitchでいくつかゲームをリリースされているからこそ、そういう見積もりができるんでしょうね。その経験をもって「必要な資金などがこれだけ足りない」となると、切実さが伝わります。

JYUNYA:
資金だけでなく、声が集まればもっとできることが増えるはずなんです。
楽曲やイラスト使用など、まだ大人の契約を進めなければならないときこそ、クラウドファンディングの結果やSteamのウィッシュリスト登録数があれば「これだけの人が待っているんです」と言える。

「ダンカグに出す予定で契約したけど、実装されなかったのが残念」と言ってくださるサークルさんがいます。ミタマイラストもまだ実は公開してないものがあるんです。そういったものも応援の声があれば、何か動けるかもしれません。

ゲーキャス:
まだまだ、裏には大人の対応として進めるものがあるって、クラウドファンディングの結果がSwitch移植だけはなく、裏で進んでいる既存要素の契約、さらには追加要素の有無にまで影響するということですね。
気持ちの話だけでなく、声の多さが契約を進める大人の話にまで影響する。そういった話を聞いた後だと、金額以上にクラウドファンディングが重要なのがわかってきました。

JYUNYA:
あと、根本的な話として応援されるって嬉しいんです。
クリエイターって「誰かのこの世の誰かが応援してくれるはず、買ってくれるはず」っていう想像や妄想って時に心苦しくなるんですよ。
わからない。本当なのかなって。やっぱね、1人でもくもくと続ける心の寂しさってあります。
それがウィッシュリスト見に行ったら「お前が出したら買うぞっていうような声がこんなにあるんだ」とか、「クラウドファンディングでこんなに人が待っている」という目に見えるものがあると、心が弱ったときも、つらいときも、立ち上がれるんです。

ゲーキャス:
先ほど言っていましたけど、エンターテイメントを提供する会社は、プレイヤーに信任されたい、という話。個人であるクリエイターも同じなんですね。

JYUNYA:
「ファンタジア・ロストの制作」は、ZUNさんが作った『東方Project』という偉大なIPをお借りして様々な方に届けて想い託したい「夢のバトンを渡し合う制作リレー」だと思ってるんですよね。
まず僕個人のクリエイターとして叶えたいエゴがあり東方ファンとして見たい世界の夢があります。
それを束ねてバトンにし一緒にカグラを作る仲間たちにリレーのようにバトンを託し、そしてそこから更にみなさんの元に走っていき託す。
そして最後に誰かに届けてゴール……ではなく、そこから様々な夢をお互い託して受け取り走って、また皆さんから僕らに新たな夢のバトンを受け取ってまた走り作る続けように循環する制作スタイルだなと。
運営型の『ダンマクカグラ』では僕たちの力不足や至らなさで終了を迎え、様々な人に悲しい想いをさせてしまったと痛感しています。
しかし、その辛い思いをさせた中で皆さんから「ダンカグを続けて欲しい」「なにかの形でアンノウンXを残して欲しい」という強い想いから生まれたバトンを託され、今回「ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト」の発表にたどり着くことが出来ました。
改めてご支援ご声援頂いたユーザーの皆さんにお礼を申し上げたいです、ありがとうございました。

そしてお願いする立場で言い方が偉そうで恐縮ですが、ここで次なる「クラウドファンディングというバトン」を僕らから皆さんに託させて頂けたらと思っています。
サークルさんからお預かりしたにも関わらず残念ながら実装出来ず幻となってしまった楽曲や、イラストレーターさんが魂込めて描いたのに実装できなかったミタマカードをいま再び皆さんのお手元に届けたい。
様々なユーザーさんがファンタジア・ロストを手に出来るよう今現在Steam(PC)の対応なのを、Nintendo Switchやその他要望ある機種への対応もしたい。
そんな夢を繋ぐバトンを、皆さんの力で僕たちに届けて頂けたらあとは僕らが命がけで完成まで突っ走り完成したファンタジア・ロスト皆さんの手にお渡しして繋ぎます。
そこからまた新しい展開を一緒になって考えて制作を続けていきたいと想っています。
とても大変な部分をみなさんに頼んでしまって本当に心苦しい限りですが、ダンマクカグラの続く未来の為にもなにとぞお力添えよろしくお願いします。
僕らとみんなで共に新たなダンマクカグラを作っていきましょう! 

ゲーキャス:
ありがとうございました。

以上。

「サービス終了するゲームが、何らかの形で残ってほしい」
そう思うプレイヤーは多いことだろう。しかし、サービス終了した運営型ゲームが遊べる形で残ることは少ない。
しかし、ファンが大勢で声を上げることで会社や権利者を動かし、形を残す道を作れる。
そして、スタンドアローン版の制作が決まった後も、ファンの声が大きいほどより良いものが作れる。

すべてのゲームに当てはまるわけではないだろうが、ファンの声がきっかけで実現する夢もある。
そう思ってクラウドファンディングのJYUNYAさんのコメントを見ると、「ファンの声」を募る文字が、インタビュー前と違った切実さと意味を感じられることだろう。

応援の声を上げるほど、ゲームは開発しやすくなる。
終わってしまった『東方ダンマクカグラ』というゲームをより良い形で残したいなら、いまこのタイミングで声を上げることが本当に力になるはずだ。
クラウドファンディングのページでJYUNYAさんのコメントを見て、共感したなら、声を上げて示してあげてほしい。

クラウドファンディングページ:
東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト Camprire

関連リンク:
東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト (WEB / Twitter / Camprire / Steam)