ノルウェーゲーム賞二冠のゲームが5年越しに日本語対応『少女と宇宙の物語』 レビュー。1920年代の牧歌的なノルウェ―と、牛飼い少女と、牛をさらう宇宙人の物語
- アドベンチャー
- 2022年03月22日
少女と宇宙の物語 (App Store 610円 / Google Play 610円 / Steam 598円)

1920年ノルウェーで、不可思議な事件に巻き込まれた牛飼いの少女を描く短編アドベンチャー『Milkmaid of the Milkyway』。

1920年ノルウェーで、不可思議な事件に巻き込まれた牛飼いの少女を描く短編アドベンチャー『Milkmaid of the Milkyway』。
ドット絵で描かれるキャラクターと世界観、牧歌的な雰囲気から予想がつかない展開へと繋がる物語などが評価された本作は、2017年にSPILLPRISEN(ノルウェーのゲーム賞)で“GAME OF THE YEAR”、“GAME OF THE YEAR SMALL SCREEN”の二冠に輝いた。
が、長く日本語には対応しておらず、2022年になってようやく『少女と宇宙の物語』として日本語版がApp Store / Google Play 向けに販売開始となったので、今回紹介したい。
本作は、画面をタッチするとその場所へ主人公が移動し、物事を調べられるポイントクリック型のアドベンチャーで、ダブルタップで主人公が高速移動するので、移動はかなり快適。
画面下にはアイテム欄があり、スライド操作でアイテムを使いたい場所まで移動させて指を離すと、そのアイテムを使用できる。
調べて、アイテムを使って、課題が解決すると物語が進行していくオーソドックスな謎解きゲームとなる。
が、本作において重要なのは物語と雰囲気で、こちらは十分に特徴的だ。
ゲームの舞台は1929年のノルウェ―。主人公の少女ルースは山岳部の小さな牧場で、伝統的な牛飼いとして家族同然の牛たちと生活している。
映像、会話、物語情報ともにこの田舎の空気を十二分に伝えており、見た目からして説得力十分。
ゲーム序盤でルースの身の上を記した日記が手に入るが、ここで日本語化の恩恵に感謝することになった。
日記には牧歌的な生活に隠れた厳しさ、ルースの思いを知る重要な情報が記されており、ここが日本語で読めるだけで物語への感情移入度が段違いだ(辞典を片手にプレイしていると、やっぱり素直に物語に入りづらい)。
ゲームの進行とともに牧歌的な生活にも近代化の波がやってきて、だんだんと昔のままの暮らしは成り立たなくなりつつあることが判明していく。
伝統的な暮らしの様子と変化の波が序盤に描かれ、牧歌的な雰囲気から先に待つ波乱の様相をプレイヤーに伝え、物語はだんだんと意外な方向へとシフトする。
謎解きゲームとしては難度は低めだが、アイテムを意外な場所で使ったり、理屈ではなく感覚で(ヒントはある)解く謎もあり、まれに詰まることもある。
総当たりで解ける程度の規模ではあるので、完全に詰まることは少ないとは思う。
総当たりで解ける程度の規模ではあるので、完全に詰まることは少ないとは思う。
私自身は、中盤以降は詰まることなく、序盤にマップで移動できる場所がわかりづらいとか、木を置く場所が見当たらないことが最も詰まった場所だったので、もしかしたら序盤の方がハマりがちかもしれない。
物語全体としては、おとぎ話を聞いているような味わいがあった。
いやいやいや、それまで結構な尺で紹介してきたノルウェー伝統的生活の描写の意味はどこに!?
とは思うものの、それでも先の展開が気になって目が離せない2~3時間程度の短編。

緻密な物語構成とか、伝統文化を基盤としたノルウェーならではの物語を期待すると外れるが、短く興味をひかれる短編を求めるなら『少女と宇宙の物語』はアリだ。

緻密な物語構成とか、伝統文化を基盤としたノルウェーならではの物語を期待すると外れるが、短く興味をひかれる短編を求めるなら『少女と宇宙の物語』はアリだ。

多くのプレイヤーに、意外な展開の連続のSF物語を見せてくれるだろう。
プレイ動画:
概要:
牧歌的な牛飼いの少女が、不思議な事件に遭遇するポイントクリック型の短編アドベンチャー
評価:6(面白い)
このゲームがお勧めな人
+ノルウェーの牧歌的空気感を感じたい人
+その場その場の雰囲気を楽しみ、意外性を楽しめる人
このゲームが合わないかもしれない人
-理路整然とした物語を期待している人
-全編通じてノルウェーの1920年代の描写を期待している人
アプリリンク:
販売:グラビティゲームアライズ(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中。
降ってきた巨大岩塩の正体・局地的な嵐の原因・嵐の際ドレスから出現したパーティクルが船ステージでの「知識」と同じだった訳・牛が溺れた理由・母親にまつわる前日譚・なんでミルクビースト?が神聖視されてるのか、ざっと思い出してもこんくらい未回収の伏線がある。
後ラスボスの投擲スキルと杖ェ、、、
ただラストの最終決戦、あの犠牲は「呪縛と化していたそれまでの暮らしからの決別」という作者のメッセージ上仕方なかったのかなぁと
伏線気になる人はアレだけど雰囲気は良かったです