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運営型前提の仕組みで物語を提供する意欲作『テイルズ オブ ルミナリア』レビュー。随所に光る箇所があるも、土台に欠陥を抱える惜しさ

テイルズ オブ ルミナリア (App Store 無料 / GooglePlay 無料)
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バンダイナムコが誇るRPG『テイルズオブ』シリーズの最新作『テイルズオブルミナリア』。
これまでスマートフォン向けに同シリーズのキャラクターが出演するお祭りソシャゲは出てきたが、本作は“マザーシップタイトル”……つまり、『ドラクエ』や『FF』で言えば正式ナンバリングタイトルとして開発された初のスマホゲームとなる。
キャラクターデザインには『食戟のソーマ』などで知られる佐伯俊さんを採用し、グラフィックは美しく、オープニングからエンディングアニメまで作りこんであり、まさにマザーシップタイトルの名にふさわしい大作感。
かなり予算がかかっているのは間違いない。
演出・システム面でも挑戦的な試みがあり、「テイルズの名を使って量産ゲームを作ろう」ではなく、「新しいテイルズを作ろう」という気概が見て取れる。
しかし、ストアの評価を見ていくと2021年12月1日現在2点代。いったい、何が起きているのだろうか。
本作の公式ジャンルは、“21の生き様が交錯するRPG”。
ジャンルが示す通り連邦と帝国、自由な冒険者の3勢力、合計21人のキャラクターが織りなす群像劇であり、物語を追うRPGとして作られている。
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21人のキャラクターには年表が作られており、プレイヤーはその中のエピソード1つ1つをクエストとしてプレイし、体験する。
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▲年表は最初からネタバレとして機能している。「年表を見ると未来で反逆するらしいが、その反逆の前には何があったのか?」と、多少のネタバレを前提に楽しむ構造。

ストーリーは毎週1エピソード(プレイにして1時間弱)が配信される予定となっており、週刊連載の漫画やアニメ放送を見ているかのような感覚で待って、楽しめる。
スマホの物語ゲームは定期的なストーリー供給が途絶えることも多いが、今作は定期的なネタの提供をして盛り上げるスケジュールを組み、運営ゲームならではの構造を活かすものを目指して作られているわけだ。
エピソードが終わると漫画アプリなどの1話分を読んだあとのように、感想を書き込む掲示板に参加できる仕組みもあり、型にとらわれず“今どきのアプリ”を目指していることも分かる。
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▲なんなら各エピソードの“いいね!”数もわかる。

さらに、本作ではキャラガチャを排除して装備ガチャを採用し、ゲーム中は物語に関係ないキャラクターが出てこないつくりを採用した。
一般にキャラガチャを使うと売上やすいと言われるが、ガチャキャラがメインプレイに登場し、物語に関わらないガチャキャラクターがゲーム内で活躍し、物語ではなぜかプレイに関わらないキャラが語っているという「プレイと物語の矛盾」を生み出す。これを排除している。
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▲プレイ時、物語と関係ないキャラクターは出現しない

加えて、難易度を自動調整する機能でゲーム設定とプレイヤーの体験の乖離防止にも挑戦している。
設定とプレイヤー体験の乖離とは、たとえば物語上“大変な戦い”という設定のバトルが、ガチャ運が良くて育成済キャラを揃えたプレイヤーが一瞬で終わらせる、というようなことだ。
主人公が「長くツライ戦いだった」と語っているのに、プレイヤーは雑魚戦闘と同様に終わらせて「ガチャゲーはこういうもの」と納得していると、物語とプレイの一体感が薄れてしまう。
その矛盾を解決しようとしているわけだ。
かなり難しいチャレンジをしていて、物語にかける情熱が並大抵でないことは伝わる。
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また、そういった物語を見せる演出も感心するものがある。
縦画面だとキャラクターの全身を大きく見せられるが、それに甘えず会話シーンのアングルの追求、拡大されたキャラクターに違和感を抱かせないリップシンクなど手間をかけており、縦画面の魅力を示すことに力を注いでいる。
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フィールドに関しても遠景までしっかり描画して奥行きのある美しいフィールドを演出。
世界がうまく描写されており、キャラクターたちがその中でドラマを繰り広げるシーンも映える。
ときには街なども登場し、その中の人との会話も作り込まれている。tales20002

実プレイの多くを占めるクエスト部分は、マップを自由に移動して、敵と戦い、会話して物語を進めるアクション・アドベンチャー形式を採用。
マップを探索しているあいだにも散発的にキャラクターの掛け合いが発生し、何気ない時間に、自然にキャラクター性をプレイヤーに伝えるキャラクター主体の作りを貫いている。
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操作はバーチャルスティック移動、画面タップで攻撃、長押しで特殊攻撃、装備に応じて変化するスキル2種類、必殺技スキル1種類、スワイプで避け操作となり、『白猫プロジェクト』などに近い操作系を持ったものとなっている。
21人の主人公それぞれに異なるアクション・テーマが設定されており、クエストごとに楽しみ方はかなり変化する。
例えば、最初の主人公はオーソドックスに切って、避けて、近接攻撃で戦いながら物語が進む。tales20004

かと思えば、別の主人公では物陰に隠れて弓矢を構え、狙って射貫くシューティング主体のアクションを採用。
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帝国編では大量の敵が出てきて『真・三国無双』ライクな作りになり、冒険者編ではトラップだらけの遺跡探索が楽しめる。
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▲帝国編では、拠点を制圧し、KO数表示まで出る。無双すぎる。

驚くほどの手間。
主人公の数だけ遊び方があり、同じ基本システムで異なる物語を遊んでも飽きない……というのがゲーム設計の意図なのだろう。
各主人公のストーリーを1エピソードずつ、異なるゲーム内容と演出を楽しむ1人用物語ゲームとして全力で作られていることがわかる(マルチプレイやイベントも存在するが、プレイの比重としてはとても小さい)。
物語主体を貫き、演出も、クエストの手間のかけ方も尋常でない大作。
なのだが……現実としてこのゲームを触った多くのプレイヤーは、厳しい評価を下すだろう。

なぜなら、もっとも多くの時間遊ぶことになるクエストの基本設計に無理があるからだ。
縦画面で左右の視野が狭いのに、画面の見えない個所に敵がいたり、見えない場所からの射撃攻撃を避けたり、常に障害が見えないストレスがつきまとう。
マップに隠されたアイテムを探す要素もあるが、これもまた視野が狭いマップを探索することになるのでストレス。
探索要素がないか、絶対に視界に入る場所に隠しアイテムを持ってくるべきだった。
横画面を基本に作られているアクションの遊びを縦画面に合わせられていない。tales0006
▲縦画面で左右の視野が狭いのに画面淵からギロチンのトラップが飛び出してきたりする。横画面なら余裕で見つけて避けられるよ!?

クエスト部分は多様な遊び方を提案してはいるが、すべてのゲームモードは作り込みが浅く、熱中するほどの面白さがない。
同じ操作系でさまざまな遊びをさせようとしているが、要求される操作の繊細さに対して、操作系にも無理を感じる。
演出や映像は縦画面を活かして遊ぶために作り込まれているが、遊びは縦に適応できず、「まあ、遊べるけど……」と言った程度。

肝心の物語も初期ストーリーがいまいち面白みに欠けており、初期の物語が退屈だ。
多くの場合に物語序盤は退屈があるが、普通はプレイの面白さでそこを引っ張る。
帝国編まで遊び始めると徐々に面白くなってきてかみ合い始めるが、そこまでが長く、ゲームの基礎部分で失敗している本作はそこまで引っ張れないから厳しい印象になってしまう。

さらに、本作はリリース時に失敗を犯している。
序盤からプレイヤーを殺しに来る雑魚、やたらに耐久力のあるボスの存在で「課金前提のバランス」とみられてしまった。
クエスト部分はカメラが近すぎて(キャラの魅力を伝えるゲームでキャラを大きく写したい気持ちは理解できるが)遊ぶことが厳しく、隠しアイテム探索などはストレスの塊。
クエストの基礎部分の設計失敗、リリース時のミスが重なったことを考えると、評価が極めて低くなってしまった。

現在は探索アイテムの配布(今後探索アイテムは廃止され、常に探索アイテムの効果が発揮された状態になる)、難易度変更などによって初期の問題点は解消されていて、レビュー平均点から想像されるほどひどいゲームではない。
実際、評価は初期のほぼ2点から上向きつつある。
が、基礎となるクエストのプレイが楽しくない(つまらないというほどでもない)ことは課題として残っており、この部分を今後どうカバーしていくかが問われる状況になっている。

『テイルズオブルミナリア』は、意欲的かつ魅力的な仕組みが多く、さまざまな挑戦、良い演出が積み重ねられたゲームではある。
しかし、積み重ねた土台となるプレイ部分が問題を抱えており、面白いとは言い切れない。
とはいえ、ストーリーに興味を抱ければ週1でエピソード配信を待って遊ぶことを楽しめるし、毎日ガチャが引けるから課金圧力も低い(さらに定額パックの効果が絶大で安く効果的な課金も用意されている)。
さらにログインしていない日のログインボーナスも少しの手間で受け取れるから毎日ログインの必要刷らないプレイ圧力の低さで快適など、パーツを見ると光るものは多い。
興味があるなら手を出してみるのも良いだろう。

プレイ動画:




概要:テイルズオブシリーズのスマホ向け完全新規RPG。SNSやアプリを意識した物語システムや盾主体の演出が光るが、肝心のプレイ部分の設計に問題を抱える。

評価:5(楽しめる)

おすすめポイント
 佐伯俊さんのデザインしたキャラが、美しいグラフィックで再現される

 縦画面主体の演出
 運営型を意識したシナリオ
 定額パックの効果絶大、ログボがログインしていない日のぶんも受け取れる

気になるポイント
 横画面を前提とした遊びを縦画面で提供するのでストレス度が高い

 多様なアクションがあるが1つ1つが浅い

アプリリンク:

テイルズ オブ ルミナリア (App Store 無料 / GooglePlay 無料)
開発:コロプラ(日本)
販売:バンダイナムコエンターテインメント(日本)

HP:https://luminaria.tales-ch.jp/レビュー時バージョン:1.0.8
課金:ガチャ(装備)、定額パック(毎日の無料ガチャのレアリティ最低保証が星4以上に)

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中