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EpicとAppleの『フォートナイト』裁判が決着。Apple独自決済の強制などが反競争的と認められ、該当規約の削除が言い渡される

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米国時間9月10日、App Store の規約などが連邦と州の定める反トラスト法(独占禁止法)、カリフォルニア州の不正競争防止法に違反するとして Epic Games が Apple を訴えた裁判において、ついに判決が言い渡された。
結論としては、Epic の主張が一部認められ、結果としては Apple の支配にくさびを打つ判決が下されたと言えるだろう。
Apple による規制は反競争的で消費者の選択を狭くしているとして、App Store で Apple の決済以外を認めない規約を廃止することを求めている。つまり、独自決済が認められる見込みだ。
一方、Apple が独占企業である、という主張は認められず、 Epic Games は規約違反を犯して得た収益の一部を賠償金として Apple に支払うことを命じられている。

本訴訟は、2020年に Epic Games がスマホ版『Fortnite(フォートナイト)』に独自の決済を実装して Apple に支払う手数料を迂回して商売を始め、App Store の規約違反を理由にアプリを削除したことから始まった。
Epic Games は、Apple は市場を独占し、決済手段を支配して30%という高額すぎる手数料をすべての商行為に科し、消費者の選択の自由、競争による進歩などを妨げていると主張し、他社が Apple のようなアプリストアを作れるように iOS を解放することを要求した。
一方、Apple は独占企業であるという主張を否定し、App Store の規約は顧客を守るために必要なものであると主張し、Epic Games が Apple を提訴するにいたっていた。
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そして長い裁判の結論として、裁判官は Apple は本裁判のなかで独占企業とみなさなれない、としている。
App Store の収益の70%をゲームが生み出していることから、争点はスマートフォンのアプリ市場や OS シェアの独占ではなく、スマートフォンゲーム市場の独占であると指摘。
Apple はこの市場で55%の高いシェアを持っているが、「成功は罪ではない」と語った。

この判決において Apple はアプリ市場全体の独占を指摘されたり、OS 独占を認定されて他社に App Store の仕組みを乗っ取られるリスクはなくなったわけだ。
ただし、独占的でないとする理由の中には「Apple がイノベーションを妨げていると説得する充分な証拠が提示されなかった」ためであり、Apple による独占の可能性は否定されていない。
今後、別の裁判にて Apple が独占企業と認定される可能性は残った。

また、Apple は『Fortnite』が独自決済を実装以後に得た利益の一部を Epic Games から Apple へ賠償金として支払うという内容も勝ち取った。
さらに、Epic Games は規約違反を犯したたことが認定されたため、アカウント復活などに関して裁判所は命令を下していない。

一方、App Store で独自決済を強制し、なおかつ WEB 決済など他の決済手段が存在するアプリについても顧客にそれを通知してはならないとする規約については消費者の選択を狭め、反競争的であると認定。
該当の規約の削除を求めた。
具体的には、以下の項目となる。
3.1.1 App内課金:
Appのコンテンツまたは機能(例:サブスクリプション、ゲーム内通貨、ゲームレベル、プレミアムコンテンツへのアクセス、フルバージョンの利用)は、App内課金を使用して解放する必要があります。コンテンツや機能を解放するため、ライセンスキー、拡張現実マーカー、QRコードなど、App独自の方法を用いることはできません。App内課金以外の方法で、ユーザーを何らかの購入に誘導するボタン、外部リンク、その他の機能をAppやメタデータに含めることはできません。
App Store Reviewガイドライン - Apple Developerより
先日、日本でも公正取引委員会によって Apple はリーダーアプリについて他の決済への誘導リンクを認めることを認めさせられたが、この取り決めは「アカウント管理のリンクを認める」という曖昧な物だった。
Apple、日本の公正取引委員会とアプリストアの規約変更に合意。KindleやNetflixなどのメディアリーダーアプリに外部リンクを認め、決済手数料回避が可能に
しかし、3.1.1を撤廃した場合、たとえばトップページに大きく他社決済を広告したり、アプリ購入時に毎回他社決済がオプションとして表示されることも考えられる。
また、雑誌付属コードの販売禁止もこの規約に盛り込まれているため、大手を振ってゲームのコードを販売し、入力フォームなどをアプリ内に実装できるようになるだろう。
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パズドラなどのこういった画面がiOSにも帰ってくるかも。

The Verge によれば、Apple はこれに対して「裁判所は、App Storeが反トラスト法に違反していないという、我々がずっと知っていたことを確認しました。Appleは、我々がビジネスを展開しているすべての分野で厳しい競争に直面しており、我々の製品とサービスが世界で最も優れているから、お客様や開発者が我々を選んでくれると信じています。引き続き、App Storeが安全で信頼できる市場であることを約束します」とコメントしたとのこと。

Epic の Tim Sweeney さんは「今日の判決は開発者にとっても消費者にとっても勝利ではありません。Epic は10億人の消費者のために、アプリ内決済方法やアプリストア間の公正な競争のために戦っています。」と声明。
広報担当者は NPR に対して控訴予定であると語り、Apple も応戦する構えとのこと。まだまだこの争いは続きそうだ。


なお、本件の文書を見ていくと、さまざまな興味深い数値を見つけることができる。
スマートフォンのOSシェアで負けている Apple だが、ゲームの収益では全体の57.6%のシェアを持っていると推測され、依然として収益面で非常に存在感が強いこと。

2017年のゲームの収益は全体で App Store 収益の76%を締めており、さらにそのうち88%の収益(App Store 全体の収益の約57%)が上位6%の顧客が占めている。
さらに、上位1%の iOS ゲーマーはそのうちの64%を占めており、App Storeでゲームをプレイする人間の1%が App Store の収益の43%程度の収益を確保している。

『Fortnite』がiOSプラットフォームから削除される前、1億1,500万人以上のプレイヤーがおり、このうち64%(約7,300万人)は、iOS で初めて『Fortnite』を触ったプレイヤーだという。
しかし、これだけ大規模なプレイヤーがいるにもかかわらず、2018年3月から2020年7月の間に課金したプレイヤーのうち、iOSデバイスの割合は13.2%だった。

などなど、気が向いたら原文を読んで見ると面白い発見があるかもしれない。

関連リンク:
apple-epic-judgement - DocumentCloud
Apple must allow other forms of in-app purchase, rules judge in Epic v. Apple - The Verge