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攻略本を読みながらRPGを遊んだ”あの頃”を再現する、攻略本・説明書付きのRPG。多重人格の妹と旅する『5つのネイト』レビュー

5つのネイト (App Store 無料 iPhone向け / GooglePlay 無料)
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“懐かしいあの頃のRPG体験”を掲げる RPG は多いが、その中でも『5つのネイト』は独特な方向で成功を収めている。
本作が再現に挑戦した”あの頃”は、ゲームを買ったら説明書を見て、悩んだら攻略本とにらめっこしながら楽しく遊んでいた”あの頃”だ。RPG体験だ。

アプリをダウンロードすれば22pの説明書が最初にあり、さらには150pに及ぶ攻略本”虎の巻”が収録されている。
重要なゲーム本体、懐かしいテイストのRPGもきっちり面白い。
Nintendo DS や 3DS 時代の素朴で面白い RPG 体験。そんなゲームを求めているなら、『5つのネイト』は見逃せない1作だ。

本作を起動すると、説明書も兼ねた“ねこどらマガジン”が最初に目につく。
これが面白くなければ話にならないが、そこはもうバッチリ合格。
ゲーム説明あり、謎の4コマありの古い説明書のお約束を踏襲しつつ、作者の顔が見える作りの説明書だ。
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攻略本の方は、攻略情報だけでなくキャラクター紹介から制作ノートまで色々な情報が収められて、読み物としても楽しめるものになっている。
表紙で”ネタバレ防止機能”をONにすれば、ページをめくってもネタバレ部分は読めなくなる親切機能付きなので、いきなり究極のネタバレを見てしまう心配もない。
ネタバレ防止をOFFにすれば全部見られるので、ネタバレしてから遊ぶのも自由。
なお、攻略本は広告を見てページを解放することもできるが、基本的には課金で購入した方が楽な作りとなっている(広告だと1回見て数ページ解放なので効率はかなり悪い)。
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本作は、少女ネイトにかけられた呪いを解くため、兄と2人で旅をする冒険RPGだ。
呪いをかけられたネイトの体には5つの人格が宿り、頻繁に性格が入れ替わってしまう。このままでは生活できないからと、村長の知恵を借りて呪いを解くための依頼を受けることになる。
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世界を救う大きな物語でも、故郷の村が焼かれる悲壮な話でもなく、シスコン気味な兄とブラコン気味の妹が個人のために小さく緩さがちょうどいい。
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2人の拠点となる村でも会話はきっちり作られており、イベントが進むたびにとりあえず会話してみたくなるテキストが用意されている。
そういった魅力に加えて、村人との会話に隠しイベントに気づくヒントなども隠されており、良いテキストに積極的に読みたくなる理由もあり、テキスト全般の丁寧な造り込みは本作の魅力だろう。
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村で会話し、装備を調えたらいよいよダンジョンだ。
本作のダンジョンは簡易マップを移動していき、行く先々でイベント(主に戦闘)を解決していく形式となっている。
ランダムエンカウントの戦闘もあるが、自由に逃げられるし、逃げることに失敗することはない。
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バトルは伝統的なターン制のコマンドシステムを採用しているのだが、決して単調ではない。
多重人格のネイトを制御する”ネイトボード”と、それを利用した巧みなバトル設計によって、パズルゲームのような面白さを獲得している。
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主人公ネイトは強力な魔法を使えるが、戦闘中には5つの人格が頻繁に入れ替わり、人格によって使える魔法が変わってしまう。
ネイトボードには5種の属性が示されており、ネイトの現在の人格はボード上のマーカーがついている属性と同じになる。
マーカーはネイトの行動に応じて決まった量だけ移動するので、ネイトボードを見てから行動を決めれば、プレイヤーはネイトの次の人格を計算して行動できる。
ネイトに強い技を使わせるか、先のターンで扱いやすい人格に切り替えるか、そういった計算がバトル中は重要になるわけだ。
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▲右下がネイトボード。

バトルの調整はこれを前提にして、手応えをあるプレイを提供している。
本作のボスはどれも強いが、必ず攻略方法が用意されている。
特定のタイミングで特定の属性攻撃を使うとか、特定の状況下で特定属性の技を使うとか。
その攻略方法を見いだして、上手く実行できれば苦戦していたボスもあっけなく倒せてしまう。
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手強いボスを相手に、手持ちの技やアイテムからボス攻略の方法を導き出すのは、パズルを解いているような面白さでやり応えは充分。
試行錯誤は多いが、バトルで負けてもその場ですぐ再開できるので、ストレスがなく、何度も繰り返してパズル的に攻略を楽しめる。
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▲本作では敵の行動を中断させる店頭技が重要だが、同じ技を利用するとボスは技を見切って耐性を得てしまう。そのため、ずっと回復し続けて行動妨害する永久パターンはほぼ使えない。

こう書いていくと「難しすぎるのではないかな?」と思う方もいるかもしれない。そこは心配無用。
最初に書いたとおり本作には攻略本が付属する。攻略本を見るためには買うか、広告を見るかしなければならないが、攻略のヒントがある。
もちろん、普通のRPGのように経験値を稼いでレベル上げをしてもボスは突破でき、ゲーム慣れしたプレイヤーから、ひさびさにRPGしたいプレイヤーまで、幅広い需要に応えるゲームと言えるだろう。

私はゲームを遊びまくっているタイプのゲーマーなので、レベルを抑えてクリアしたが、『ファイナルファンタジー5』を低レベルでクリアした”あの頃”を思い出す、懐かしい経験ができた。
プレイ時間はおよそ6時間程度で小さくまとまっており、エンディングまで気持ち良くプレイできる。広告は各章1回挟まれる以外は小さなバナーが出るだけなので、広告も最小限。

近年話題になった『ファンタジアン』のように、スマホでは懐かしのRPGを掲げる作品は多い。しかし、その多くはエンディングがあって、課金なく最後まで楽しめて、という買い切りスタイルの提案だ。
『5つのネイト』は違う視点で、攻略本をみて見て楽しむ”遊び方も含めた昔の楽しさ”を提案しており、ある程度成功している。

開発したねこどらソフトによると、本作は「昔ながらのエンディングのあるRPGを無料で提供し、気に入ったら攻略本を買ってもらうことで作り続けられないか」という実験にもなっているという。
これが上手くいけば、これからもこれぐらい面白いRPGが無料で遊び続けられて、面白かったら攻略本を買う「遊んで楽しければ課金」で続けられる、というわけだ。

私は攻略本も買ったので、この試みが成功して広がって次回作が遊べたらいいと思えたし、それを応援したくてこの記事を書いている。
もちろん、読者に無理に攻略本を買えとは言わないが、ともかく遊べば面白さは伝わるゲームなので、手に取ってみて欲しい。
スマホで買い切り系RPG(無料だけど)を求めている方なら試して損はないと思うし、周回に疲れて落ち着いて遊べるゲーマーにもこれは良い作品のはずだ。

プレイ動画:



概要:
5つの人格を持つ妹を制御して戦うバトル主体のRPG。攻略本と説明書がアプリ内に同梱されており、読み物としても楽しめる。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
 パズル的なバトルの面白さ
 状況に応じたテキストが細かく作り込まれている
 説明書、攻略本と共にRPGを遊ぶ体験

気になるポイント
 攻略本は広告で開こうとすると結構手間
 ときどき移動速度が気になる

アプリリンク:
5つのネイト (App Store 無料 iPhone向け / GooglePlay 無料)

開発:ねこどらソフト(日本)

HP:https://mobile.twitter.com/NekodoraS
レビュー時バージョン:1.0.9
課金:攻略本購入(広告閲覧でも見られる)、クリエイターへの寄附。課金を1度すると額に関係なく広告が削除される

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中