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ジオラマ風ダンジョンでの戦いと成長を描くボードゲーム『Fallen of the Round』レビュー。魔物の暴力を、それを上回る暴力で破壊する荒削りな面白さが光る1作

Fallen of the Round (App Store 370円)
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末弥純さんが描く『ウィザードリィ』扉絵を思い出すようなジオラマ上で戦い、ダンジョンの最奥にいる悪を倒すバトル・ボードゲームが登場した。
血の臭いが漂う石畳のダンジョン、そこに立ち向かう騎士や魔法使いという構図は見事で、グラフィックだけでがっちりハートをつかんでくる。
ゲームは1プレイ15分程度で、戦いを繰り返しつつ仲間を集めて成長する無骨な楽しさがある。
本作はバグや問題が多い早期リリース的な状態なのだが、現段階でも楽しめるし、バグ技を悪用して遊ぶ(1人用だからバグを使っても誰の迷惑にもならない!)楽しさも今だけのものなので、それを使って遊びまくっている状況の紹介をしていきたい。

本作の目的は、地図から行き先を選び、バトルを繰り返しながらダンジョンを進み、最奥にいる魔物を倒すこと。
ダンジョンの地図はプレイするたびランダムに生成され、プレイヤーは地図に記されたイベントを頼りに行き先を決定する。
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ダンジョンイベントの多くはバトルで、敵と遭遇したプレイヤーは最大4体まで駒を石板上に配置して戦闘準備をする。
駒には攻撃値と体力値のステータスがあり、接近戦が得意な“騎士”は体力値と攻撃値共に高く、矢で遠くの敵を狙い撃つ“ならず者”は体力値が低め、複数の敵を遠くから攻撃できる“魔法使い”は体力値も体力値も低いなど、種類に応じて異なる特性が設定されている。
遠距離攻撃する駒は配置後に動けないので、下手な位置に置くと体力値の低さと相まってバトル開始と同時に倒れてしまう。よって、駒の配置はバトルの勝敗を決めるほどに重要となる。
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配置が終わったら、フィギュアは素早さ(データとしては表示されないので勘で覚える必要がある)に応じて順番に動く。
フィギュアの行動順がきたら、引っ張り操作して狙いを定め……。
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指を離すことで駒の種類に応じた固有の攻撃が発生する。
駒の動きとともに鈍い音の演出がなされ、攻撃の演出の重さはかなり気持ちいい。があってとも操作感はかなり気持ちいい。
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攻撃を受けた駒は体力に攻撃側の攻撃力と同じだけダメージを負い、体力がゼロ以下になるとその場で砕けて塵になる。
これを繰り返して敵をすべて破壊すればバトルは勝利となり、続いて敵が守っている宝箱が開く。
宝箱には3体の駒が入っており、プレイヤーはそのなかから1体を選んで取得できる。
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駒には、ノーマル・レア・レジェンドのレアリティがあり、レアは1つ、レジェンドは2つ、“攻撃力50%アップ”とか“戦闘終了後HPが30%回復”などのランダムなスキルを持つ。
また、同じ種類の駒を3つ取得すると合体してランクアップし、素材になった駒3体のスキルをすべて受け継ぎ、能力が2倍になり、なおかつプレイヤーが任意のスキルから1つ選んで新たに習得させられる。
ごく一部の例外を除いてすべてのスキル効果が重複するため、ランクアップするととても強力な駒ができあがる。
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▲ランクアップは駒が強くなるだけでなく、自由にスキルを選べるため、パーティーの弱点が補えるので一気に強化される。

そして、戦って駒を得て、パーティーを強化してラストバトルに勝利するまでこれが続くわけだが……遊んでみるとかなり壮絶なバランスで、積極的にゲームを楽しみたい人でないと現在は厳しい。
いや、壮絶とは悪い意味ではなく、気を抜くと即座に倒れてしまう厳しいバランスだ。
最初はともかく、少し進むと敵は急激に強くなり、後衛なら即死、前衛でも2回ダメージを受ければ倒れてしまうほどの強さになる。
バトル間の体力回復がない(スキルで回復はできる)ため、連続で強敵が出てくると即座にゲームオーバー。

そんな厳しい状態で、あるときは距離を測って生き延び、あるときは泣く泣く駒を犠牲にして、ギリギリで生き延びる。
敵の純粋な暴力を、知恵と工夫で上回って生き延び、仲間を育ててて最終的に敵の上回る暴力でねじ伏せるゲームプレイは確かに面白い。
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▲主力が倒れるとそのまま一気にパーティーが瓦解することも多い。

他方、行動1つ、配置の1つのさじ加減の生死に直結するので、こういったゲームに慣れていないプレイヤーなら「理不尽ゲー」と感じるかもしれない。
また、スキルの攻撃値増加が強く、遠距離攻撃できる駒が複数このスキルを得ると一気に攻撃力がインフレして簡単になってしまうバランスの問題もある。

バランス面だけでなく、現在はボリューム面も気になるし、誰でも簡単にクリアできるフェアリーループ戦術、最終ボスを倒すと画面が次に進まなくなる、途中セーブがない、iPadで遊ぶと3番目の駒がボタンと重なって選択しづらい問題など、問題だらけのゲームでもある。
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▲フェアリー+攻撃値上昇で楽勝に。

が、たとえ必勝法を見つけてもフェアリーを悪用しないなど縛りプレイで熱いバトルが楽しめ、ギリギリゆえに宝箱から出現するユニットの強弱で一喜一憂するスリルも味わえる。
さらに、バグを利用して最強の駒を育てるソリティア的な遊び方もまた楽しい。
通常は3体合体でランクアップする駒を、6身合体バグで超パワーアップさせたり、最初からランクアップした駒が出る金の宝箱を増やしてランクアップ済の駒3体を集めてさらにランクアップさせたり(駒9体分のスキルが取得できるため、もはや単体でクリア可能な域に達する)など、色々壊れた展開も楽しめる。
そういった部分も含め、「積極的に遊んでいく」プレイヤーなら、本作は楽しめるだろう。
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▲よく見ると攻撃値36、体力値300。バケモノ駒の誕生である(本作最強の敵ですら40点程度のダメージ)

不満は多いが、初期段階ならではの粗さも含めて楽しいのもまた事実で、これを理解した上で遊ぼうと思えるゲーマーにとっては、今がまさに楽しい時期だと思うので、バグが多い状況ながらも今、『Fallen of the Round』をおすすめしておく。
なんせ、バグも粗さも、直されてしまったら二度と楽しめないのだ。

動画:


概要:
ジオラマのような盤面で、引っ張り操作で駒を動かしぶつけて戦わせるバトルゲーム。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
重厚なグラフィック
1手のミスで簡単に倒れてしまう緊張感
駒を合成すると一気に強くなる爽快感

気になるポイント
操作、視点で気になる箇所がある
バグが多い
簡単な勝ちパターンを発見すると楽になりすぎる

アプリリンク:
Fallen of the Round (App Store 370円)

開発:HIDEKI HANIDA(日本)

HP:https://twitter.com/hani_h
レビュー時バージョン:2.0.2
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中
最後に、私が見つけたバグを紹介しておく。
1人用ゲームだから、利用しても誰も困らない。思う存分利用して楽しんで欲しい。ただ、フェアリーループだけはどうしてもクリアできないときにどうぞ。

・6身合体バグ
本作ではすでに10体の駒を持っていると、新しい駒を獲得したときランクアップ処理が行われないバグがある。
このバグを利用し、ランクアップ条件を満たした駒を6体(同じ駒6体でも、2種類の駒3体ずつでも良い)揃えてから駒を9体以下にしてランクアップ処理を走らせると、すべての駒が1体に合成されてランクアップされる。
6体分の能力が1体の駒に集約されるのでとても強い。

・金の宝箱を余分に獲得するバグ
本作には銀と金の宝箱があり、銀の宝箱からは通常駒が、金の宝箱からはランクアップ済の駒が出現する。
金の宝箱は強敵マスで勝利したときの見えられるが、強敵マスで勝利してから雑魚と戦わずに宝箱マスに移動すると、通常は銀の宝箱が出現するはずが、金の宝箱が出現する。
これを利用してランクアップ済の駒を大量に集められる。

・2段ランクアップバグ(?)
本作ではランクアップした駒はそれ以上ランクアップしないが、同じ種類のランクアップ済駒を3体集めることで、2回目のランクアップができる。
ランクアップ後は、合成した駒すべての能力が引き継がれるため、駒に直して9体分の力が1体に集まる。これをやると1体でゲームクリアまでいけるぐらい強い駒ができる。
ただ、普通のプレイで2弾ランクアップすることは困難なので、もしかしたらバグではなくて仕様かも。

・フェアリーループ
フェアリーが体当たりした味方駒は即座に行動でき、フェアリーを2体パーティーに入れるとフェアリー同士で体当たりを繰り返すことで永遠に行動できる。これだけなら問題ないが、フェアリーが攻撃値増加スキルを持っていると行動のたびに周囲の駒の攻撃値を増やすため、無限に攻撃値を増やせる。
さすがにまずいので、早期修正予告がなされている。

・大勢で袋だたきバグ
ある操作で(実は確実なやり方を見つけられていない)4体以上の駒を出撃させられる。当然、攻撃回数も増えるし、プレイは楽になる。