ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

一度は訪れる価値がある観光地。ジオラマを取り込んだ風景をみるゲーム『Trüberbrook(トルバーブルック)』レビュー

Trüberbrook (App Store 610円 / GooglePlay 600円 / Steam 3,090円)
tr-5
たとえその旅がどうなろうとも、トルバーブルックは訪れる価値がある場所だ──
意識してはいないだろうが、『Truberbrook(トルバーブルック)』公式のキャッチコピーは、見事にゲーム内容を表現している。
シナリオは盛り上がりに欠けるし、アドベンチャーゲームとしても使い古されたポイントクリック型(気になる場所をタッチで調べる)でしかない。
しかし、そういったマイナスを補ってあまりある風景がゲーム内に広がっている。
その風景を見るためだけに、一度行きたい観光地。
そんなゲームが『トルバーブルック』なのだ。

単純なアドベンチャーゲームとして見ると『トルバーブルック』はさんざんだ。
ゲームの舞台として1960年代冷戦下にあるドイツの田舎村トルバーブルックを強調しているが、その設定はほぼ活かされない。
SF物語とあり、開始時は確かに壮大な何かを期待させるが……結局は「どこかでみた」展開で、盛り上がりに欠ける。
tr-8
▲オープニングのガスステーションは、風景・音ともにこのゲームのポイントの1つ。

システムとしては気になる場所をタッチして探す謎解きゲーム形式だが、謎はあまり機能しておらず、単純な総当たり作業になりがち。
調べられる場所を”×”でマーキングしてくれる機能があるので作業自体は楽だが……「謎を解く」ことには力が注がれていないのは間違いない。
tr-9
▲画面左下のボタンを押すと、タッチに反応する場所がすべて×で示される。

しかし、それでも『トルバーブルック』は手を出してみる……一度行ってみる価値のある場所だ。
本作の魅力は、手作りのジオラマや環境エフェクトを3D映像としてゲームに取り込んだ膨大な労力の成果物……ゲーム内の風景にある。
ゲームの舞台となる場所は、なんとすべて手作りのジオラマで作成されている。
2020-09-13_23h04_58

そして、ゲーム内ではなく現実世界の照明を利用してライティングが行われ……。
2020-09-13_23h05_26

天候にあわせてペインティングなども行われる(これがCG処理ではなく、実際に手で行われるのだから驚きだ)。
そして、それを写真測量法と呼ばれる技術でそのままゲーム内に取り込み、さらにデジタル処理を行って3Dキャラクターと背景のエフェクトをなじませる。2020-09-13_23h05_35

同じようにジオラマなどから製作されたゲームとして『Lumino City』があるが、こちらはペーパークラフトの世界を歩いて回る「おもちゃの世界の冒険」だった。
ruminocity - 8
▲『Lumino City』のゲームより

対して、『トルバーブルック』はミニチュアセット感のあるジオラマ、クレイモデルのような3Dキャラクターを採用し、エフェクト処理で背景となじませることで「クレイアニメの世界に入ったような」感覚を作り出している。
とくに、雪の降る演出は絶品。プレイしていて思わず声が漏れてしまった。
tr-4

詳しくは動画で紹介されているので、是非こちらを見て欲しい。


物語も、謎解きも枯れている。
それでも訪れて良かったと思える。
そう、たとえその旅がどうなろうとも、トルバーブルックは訪れる価値がある場所、なのだ。
しかも、ゲーム機版は3,500円の定価に対して、スマホ版は600円の格安ツアー。気になったら行ける価格まで落ちている。

……ただし、アプリ版は iPad などの大画面でみると細部の味が損なわれる(スマホで見るための画像になっている)ので、大迫力のツアーに生きたければゲーム機・PC版を買うと良いだろう。

プレイ動画:


概要:
ジオラマを取り込んだ背景で、クレイアニメのようなキャラクターが動くアドベンチャー

評価:6(面白い)

おすすめポイント
ジオラマを取り込んだ風景
クレイアニメのようなキャラクター

気になるポイント
謎解きや調べ物は総当たり作業になりがち(攻略サイトを見るのもアリだとおもう)
スマホ版はiPadなどの大画面でやると細部の味が損なわれる
物語は平坦

アプリリンク:
Trüberbrook (App Store 610円 / GooglePlay 600円 / Steam 3,090円)

開発:btf(ドイツ)
販売:Headup Games(ドイツ)
HP:https://marukiyagames.com/
レビュー時バージョン:1.20
課金:なし
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中