ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

くたびれたドット絵で昭和を描く刑事ミステリー『和階堂真の事件簿 – 処刑人の楔』レビュー。推理を当てれば完全無料で遊べるミステリー好きをくすぐる1作

和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔 (App Store 無料 / GooglePlay 無料)
04
あれは、悲しい昭和の事件だった……。
1981年と1982年のH県K市では、2年連続で電柱につるされた首なし死体が発見された。
そして、1983年。
3度目に首のない死体が発見されたとき、本庁の警部、和階堂が事件の解決に乗り出す。

本日紹介する『和階堂真の事件簿 – 処刑人の楔』は、携帯電話も存在しない時代に泥臭い調査で事件を解決する、昭和の香りが漂う刑事物アドベンチャー。
プレイ時間はおよそ1時間程度。1冊のミステリー小説を読むように楽しめる作品だ。

このゲームを見るとき、やはり目を引くのは白を基調とした空白の多い……くたびれたドット絵だろう。
昭和というか、昔の匂いがこれでもかと漂ってくる。
01

そして、そこに登場するのはやはり古い昔気質の刑事。
やや突き放した台詞が職人気質の刑事を感じさせ、プレイヤーを昭和の世界に引き込む。
soulrrc-4

ゲームの内容だが、こちらは気になる場所をタッチして調べるポイントクリック型アドベンチャーとなっている。
気になるところを調べたり、人と話すと”手掛かり”が見つかる。
soulrrc-3

そして、得た手がかりをセットして適切な人物に話しかけると新しい選択肢が登場し、さらに”手がかり”が手に入る。
ともすれば総当たりになりがちな古典的システムではあるが、本作はかなり情報が整理されているし、これ以上情報がない場所では「もうここで聞けることはなさそうだ。」と明示される。
推理が当たればすぐに進み、そうでなくとも総当たりで進めるちょうど良い案配の作りだ。
soulrrc-5

そして、一定数の証拠を集め終わるたびに推理パートがはさまれ、これまでの情報を警部・和階堂の独白という形でまとめる。
さらに、要所では「この●●が××である証拠はどれだ?」という形でプレイヤーに問いかけが行われ、事件についてプレイヤーが推理を行う。
soulrrcr-1

ここの仕組みが実に面白い。
本作は無料でダウンロード可能で、CM表示によって収益を得ている。
が、そのCMは推理パートで誤った推理をした場合のみ広告が再生される。
つまり、プレイヤーに十分な推理力があれば完全無料・CMなしのアプリとして遊ぶことも可能な推理ゲーム。

本作の謎は比較的簡単だが、この仕組みのおかげで「1度もミスせず推理を完全に終える」ことにチャレンジ精神をくすぐられ、飽きることなく「今、まだノーミスで推理している」という達成感でゲームを進められる。
これはもう、システムの勝利と言えるだろう。
1時間という短いプレイ時間のおかげで集中力を途切れさせることなく、昭和の空気と、推理をこなす自分自身に酔いながら遊びきることができる。
小粒な良作なので、刑事物・ミステリーが好きな方は是非遊んでいただきたい。

最後になるが、本作を制作しているスカシウマラボについても紹介しておきたい。
スカシウマラボは、ドット絵による世界観を作ることに長けたインディー開発ユニットだ。
World for Two』や『サムライ地獄』などで知られるハフハフ・おでーんさんの描くドット絵は業界でも評価が高い。
相棒の高岡さんはプログラムという目に見えない部分をカバーするだけでなく、今回は世界観に沿ったシナリオを提供しており、このユニットはゲームキャストとして注目している。
ここ数年は活動を停止していたが、今回は復活のためにリハビリでアプリを作ったのだという。

リハビリでこの完成度なのだから驚くしかない。
なお、すでに年内に『サムライ地獄 九天魔城の謎』をリリースすることを予告しているが、下記のツイートが「5,000RT」を超えたら新たな何かを考えたいということなので、このユニットの活躍をみたい方は告知に協力すると良いだろう。


動画:


概要:
昭和感あふれる泥臭いミステリーアドベンチャー

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
平坦なようでひねりがある物語
昭和を感じるくたびれたドット絵
推理をはずさなければ広告が出ない、推理力を試す仕組み

気になるポイント
特になし

アプリリンク:
和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔 (App Store 無料 / GooglePlay 無料)

開発:スカシウマラボ(日本)
HP:https://w.atwiki.jp/wakaido1/pages/1.html
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:作者へ寄付。

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中