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開発6年、Rayark渾身の対戦RTS『ソウル・オブ・エデン』レビュー。カードゲームのような独自のプレイ感と、課金優位を覆す仕組みを持つ意欲作

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リアルタイム戦術ゲーム『クラッシュロワイヤル(クラロワ)』。
いまや『クラロワ系』とジャンルで呼ばれるほどフォロワーが多いゲームだが、たまたま似たシステムで同時期に開発されていたゲームをご存じだろうか。
今回紹介する『ソウルオブエデン(SoE)』は、『Deemo』や『Cytus』など世界的に人気のゲームを擁するRayarkが『クラロワ』リリースの1年半前から開発していたものだ。

本来2016年夏リリース予定だった本作は結局、4年以上の歳月を経て2020年8月にリリースされた。
『クラロワ』の大ヒットにより、さまざまな調整が必要になったのは想像に難くないが……待った甲斐はあった。
『SoE』は、独自性があり、短時間でハマる面白さがあり、なおかつ課金の力で勝つことはできない、Rayark渾身の対戦ゲームとして仕上がっていた。

最初に書いた通り、『SoE』は『クラロワ』と似たシステムを採用しているが、実際にプレイしてみると似ているようで全然違う。
『クラロワ』も『SoE』も拠点を破壊し合う戦術ゲームのMOBA、デッキを構築するカードゲーム、ユニットを配置で戦うRTS(リアルタイム戦術ゲーム)を融合したゲームである。
『クラロワ』は強固な拠点(タワー)を破壊しあうMOBA要素が強いのに対して、『SoE』は『ハースストーン』や『シャドウバース』のようなデジタルカードゲーム(DCG)の要素を前面に出したゲームで、明らかに異なるゲームなのだ。

概要を書いたところで、順番にシステムを説明していこう。
本作は1vs1の対戦ゲームで、プレイヤーは戦場を下から上に、敵は上から下に向かって攻め、“守護者”というユニットを破壊した側が勝者となるリアルタイム対戦ゲームとなっている。
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プレイヤーはこの戦場にカード30枚でデッキを作って試合に臨む。
カードはデッキからランダムに5枚が配布され、時間の経過でチャージされるエネルギーを消費して使用する。

カードは3種類。
1つ目は、使用すると場にユニットが登場し、AIによって戦う部隊カード。
最も種類が多く基本となるカードで、戦いによって体力がなくなるまで行動し続けるので残れば強力だ。
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部隊カードは出す位置をタッチしたあとで指をドラッグすると隊列が変化する。
同じ部隊でも隊列変更によっては敵を避けて左右の端から進んだり、敵を囲むように配置して殲滅したりと、小技が効かせられる。これは本作独自要素だ。
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▲マゴット8体をバラバラに配置(何もしないと密集携帯で登場する)。自由度が高い。

話がそれたが2つ目。その場から動けず、一定時間で消えるが強力なユニットである建築物カード。
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3つ目、使用すると即座に効果を発揮するが継続性が低い魔法カード。これは、瞬間的な逆転の一手、搦め手として使用されることが多い。
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このあたりまで、『クラロワ』をプレイしたことがある方は「同じじゃないか」と思うかもしれない。だが、この先は大きく違うので安心して欲しい。

まず、デッキの作り方。
本作には4勢力があり、攻撃魔法が豊富な“共和国“、増殖・洗脳を得意とする“異種“、生命力が高い“獣人”、数を出すほど強くなる“帝国”の4種類の勢力が存在し、それぞれに使用できるカードが一部異なる。
勢力によって異なる特殊能力も存在し、同じカードを使っていても運用が変化する。これによって、各勢力で異なるプレイングを楽しめるわけだ。
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カード30枚1組でデッキを組むが、カードには4段階のレアリティがあり、一番ありふれているコモンは4枚まで、レアは3枚まで、エピックは2枚、レジェンドは1枚というデッキに入れる制限がある。
レアリティの高いカードは特殊な能力を持つが、欲しいときに手札にやってくる可能性は低い。手札運を考えつつデッキを組む必要がある。
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▲このあたり、手札が計算できるクラロワはMOBA思考だと思う。

プレイを通じて使用できるエネルギーの総量は決まっているので、デッキ構成によってはゲーム終了までにすべてのカードを使用することも可能。
つまり、カードを使い切れる前提(30枚使い切ると補充はない)のカードゲームとして作られている。

『クラロワ』は破壊されたら即座に敗北となるメインタワーと、破壊されても大丈夫なサブタワーという2種類の拠点が設定されていて、いずれも強力な防衛能力を持っている。
しかし、『SoE』にはサブタワーがなく、メインタワーにあたる守護者は無防備に近い。
だからDCGで盤面にカードを出して本体を守るように、『SoE』でも敵を守護者に近づけないことは必須。そのために相手の手札を予想しつつ、必死の牽制合戦が行われる。
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ゲームの序盤はエネルギーの回復が遅いので緻密に、ゆっくり盤面の有利を積み上げる。
そして、後半になると少しずつエネルギー回復速度が加速していくので、そこまで獲得した有利を使ってたたみかけてとどめを刺す。負けている側はエネルギー量を利用した大技でなんとか盤面をひっくり返そうとする。

プレイするとわかるが、この感覚は毎ターンマナ最大値が増えていく『ハースストーン』や『シャドウバース』のようなデジタルカードゲームをリアルタイム戦術ゲーム化したものだ。
カードゲームはターン制で1試合に5~10分かかるが、本作はそれを待ち時間の少ないリアルタイムで、最長4分の対戦に凝縮し、上手くゲームとして成立させている。

『クラロワ』経験者でも新鮮だと思うし、DCGプレイヤーだと「同じ仕組みで、ジャンルを変えるとこうなるのか!」と感心することだろう。

で、ここからがさらにすごいのだが……本作は課金に関して禁断の領域に踏み込んでいる。
いや、踏み込んでしまった、の方が表現として正しい気もする。
多くの基本無料カードゲームやRTS、対戦系のゲームは何かしら勝負の有利を課金で売ってきた。
一見テクニックが重要な戦術ゲームにおいても、テクニックで劣る敵が課金の力でユニットレベルを上げ、圧倒的な戦力差の前に負ける……そんな悔しい思いをしたこともあるだろう。
本作にはほぼそれがない。

本作ではカードの所持総数に応じて“守護者レベル”が上昇していき、守護者レベルが離れすぎているマッチしない。
例えば、全国ランキング10位のプレイヤーと11位のプレイヤーがいたら、普通の対戦ゲームなら対戦が成立してしまう。しかし、『SoE』では守護者レベルが離れていると近いランクのプレイヤーであっても対戦がおきない。
近いランクかつ、カード資産が同程度のプレイヤーとしか対戦が行われないのである。
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つまり、課金してカードを揃えてレベルを上げたプレイヤーは、課金したプレイヤーとばかり当たる。
無課金は同じくレベルが等しい無課金と当たる。
そこにあるのは実力の勝負で、「レベル差で負けた」という体験はほぼない。
これでいいのか、運営が成り立つのか、と思ってしまうが、プレイヤーとしては嬉しいこと限りない。理不尽な負けがないので課金勝負のゲームより遙かにハマってしまった。
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実力で戦える対戦ゲームを探しているゲーマーにも本作はおすすめである。
Rayarkは言っている。
「課金者は課金者同士で、無課金は無課金同士で対戦すべきだと思うの」と。
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▲ある漫画のコラっぽいヤツ。本当にこんな感じだからすごい。

ただ、このゲームは欠点もある。
いや、それを念頭に置いてプレイした方がきっと楽しめる。
先ほど書いたように多くの『クラロワ』系ゲームには2つのサブタワーがある。
これはゲームのわかりやすさという意味で素晴らしく有効で、試合中に「タワーを1つ壊した!」となれば優位をとっていることがわかりやすいし、左右どっちのタワーを攻めるか……という展開も予測しやすい。
しかし、『SoE』はそれがないので優位を取ったのが理解しづらいし、レーンの概念もあいまい(細かい)ため、見た目のわかりやすさで劣る。
このあたりは、プレイしていてあらためて『クラロワ』の完成度を感じてしまった。
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▲クラロワ。このサブタワーによる優位の視覚化、演出のわかりやすさは本当に神がかっている。

また、各勢力に独特の特殊能力をもつカードが用意されており、なかでもレジェンドカードは(強いとは限らないが)独特の能力を持つ。
慣れれば多くのカードには対処方法があるのだが、慣れるまでは「なんか強力なカードにやられた」という感じで体験上、理不尽を感じることがある。
だから、面白くなるまで人によってはやや時間がかかるかもしれない。

とはいえ、全勢力が解放されて、カードの効果を覚え始めると強烈な中毒性を発揮する。
上手くなればなっただけ勝てるし、勝ってランクが上がると細かく報酬も手に入る。すごいやりがいがある。
DCG、『クラロワ』系対戦ゲームが好きなら、本作をとりあえず試してみることをおすすめする。

概要:
デジタルカードゲームをリアルタイム戦術ゲームに直したようなクラロワ系対戦ゲーム。

評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
無課金でもずっと同等の実力の相手と戦える
クラロワ系で終わらない、独自性が高いシステム
ランキングポイントシステムが勢力で分かれており、遊びが多い

気になるポイント
UIがわかりづらいところがある
初期手札によっては待ちゲーに
面白くなるまで少しかかる(クラロワと面白さのポイントが違うのでギャップを埋めるのも大変)

アプリリンク:
ソウル・オブ・エデン Soul of Eden (App Store 無料 / GooglePlay 無料)

開発:Rayark(台湾)
HP:https://marukiyagames.com/
レビュー時バージョン:1.0.3
課金:カードパック、カードレベルアップなど(カードレベルは上げなくとも良い)

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中