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荒廃した王国に残る騎士を集め、魔王と戦うシミュレーションRPG『アンノウンナイツ』レビュー。スマホに最適化されたダークファンタジー版『FTL』ならこれ

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最初、私に忠誠を誓ったものは優れた戦士であり、火の呪いにかかった狂人であった。

荒廃した王国を救うため、あなたに忠誠を誓う騎士団を結成して旅するダークファンタジー・シミュレーションRPG『アンノウンナイツ』が面白い。
難しいゲームなのだが、何度もプレイするうちに臨機応変な指揮、状況に合わせて騎士団を作り上げられるようになる目に見えてわかり、最終的にクリアしたときの達成感も高い。

何度も最初からやり直すゲームなので、プレイのたびにマップやイベント、仲間の騎士もランダムに変化するローグライト(『FTL』や『Slay the Spire』のようなランダムステージ要素と繰り返しのあるジャンル)要素も導入されていて、飽きずに何度も遊べる。
比較的難しいが、遊ぶほどに攻略が進む原始的な面白さも同居しており、楽しめるゲームであることも保証できる1作だ。

絶望に満ちたダークファンタジー。それが『アンノウンナイツ』の世界だ。
死者はよみがえって人々を襲い、それを守るべき兵士たちは武力を背景に重税を課して圧政を敷き、耐えかねた人々は野盗になってさらに弱い人々を虐げる。
そんな様子を主人公が淡々と語り上げるテキストには独特の味わいがあり、まず雰囲気からしてかなり良い。
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ゲームの目的は10の地域に存在する魔王の塔をすべて破壊すること。
そのプレイは大きく分けて2つのパートに分かれている。

1つはマップを1マスずつ移動してランダムイベントをこなす旅パート。
必ず戦闘が発生するマス、ミスリル鉱山やヒーラーの小屋のように特定傾向のイベントがランダムに発生するマスなどがあり、プレイヤーの経路判断が試される。
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騎士団には“疲労度”という要素があり、マップを1マス移動する旅に疲労がたまり、これが最大値になると脱走兵が出始め、騎士の体力は減って……騎士団が崩れていく。
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同時に、ミスリル・金・ポーションの3資源がプレイヤーを苦しめる。
ミスリルは騎士団の能力強化に必須で、これを手に入れられないと後半にどんどんつらくなる。金は新しい騎士を雇うのに必要だし、ポーションが足りないと戦闘で傷ついた騎士たちが回復できない。
旅の選択において、「ミスリルをとるか、それとも疲労度を回復するか」というような厳しい判断が連続して繰り返される。
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プレイヤーの選択によって結果の変わるイベント、ランダム発生でいきなり疲労度や資源の消耗を迫るイベントなどもあり(これはかなりきつい)、ランダム生成のマップに適応し、さらに予定外の出来事に対応する判断力も求められるつくりとなっている。
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そして、旅パートと並んで重要なのがバトルパートだ。
『アンノウンナイツ』におけるプレイヤーは王であり前線に出ない。だから、騎士たちを指揮して戦うことになる。
騎士は前列と後列に分かれており、前列の騎士は画面下の“攻撃ボタン”を押すと全員で敵に向かって移動して剣をふるい、 “防御ボタン”を押すと盾を構えて敵の攻撃に耐え続ける。
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▲防御ボタンを押すと、縦を構えて耐え続ける。ダメージを大きくカットできるので使い分けが重要

また、バトル中は2種類の魔法の矢を利用することもでき、炎の矢を放つと敵が燃えて以後に与える攻撃ダメージが2倍化し、雷の矢を放つと敵を一時的に気絶させられる。
これらは非常に強力だが、使用回数に制限がある。

騎士より弱い重戦士と民兵を騎士団に加えることができ、これが生きていれば突撃支持も可能。
ただ、民兵は敵の攻撃に簡単にやられるし、重戦士も長期戦には弱い。彼らをダメ押しに突撃させるか、騎士の前に突撃させて盾にするか、これもまた重要な判断どころになる。
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▲重戦士や民兵を出撃させると楽だが……彼らは基本使い捨て。

基本はこの3要素だけで(ゲームが進むと使い切りの遺産というアイテムを使えることもあるが)、スマホでも片手で遊べる作りなのだが……これが意外にやりごたえがあって面白い。

敵の攻撃パターンを見切る必要があるのはもちろんだが、ここでも各騎士の個性が重要になる。
火をつけると狂ったように突撃する狂人が仲間にいれば、火の矢を放つタイミング次第で戦闘の結果は大きく変わる。
通常より強力な突進攻撃をする強いハンマー使いがいれば、距離を見て攻撃支持をすることが重要となる。
結果、忙しく攻撃と防御を切り替えることになり、バトルパートは見た目は地味でもアクション性を感じるいい具合のゲームとなっている。

ゲームプレイは旅とバトル、この2つの要素が密接に絡まっており、「先にバトルがあるから疲労を回復しよう」「バトルのためにこのイベントをこなさないと」など、悩ましい判断が続く。
App Storeのレビューには「難しすぎる」などと書かれているのだが、実際、慣れるまでは難しい。
だが、その難しさは面白さでもあって、プレイを重ねて知識が積み重なると目に見えて先に進みやすくなり、楽しくなってくる。

たとえば、旅パートでは騎士たちの特殊能力が大活躍する。
騎士たちには「交渉が得意」、「医療知識がある」などの特殊能力が1つ以上設定されており、特定の騎士を連れているとイベントが大幅に有利になる。
「決闘では負けなし」というように、何気なくプロフィールに存在するテキストがそのまま特殊能力だったりすることもあり、プレイヤーが選んだ騎士(初期の騎士以外は町で選んで雇う)の意外な一面に驚くことも。
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▲得意分野のイベントにおいては、騎士がいれば一瞬で終わる。意外なところで個性が設定されている。

バトルの腕が上達するのもあるし、何かが上手くなったり、何かを知った瞬間にゲームが進みやすくなるつくりとなっている。
熟練のプレイヤーにとっては最適解が見えやすくて物足りない部分もあるかもしれないが、それでも10時間~20時間ほど楽しめるはずだ。
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▲プレイして高難易度に挑むとボスが追加され、物語の核も明らかになっていく。

縦画面で片手でどこでもプレイできるゲームとして構成されているので、「やりごたえがあるゲームをスマホで楽しく遊びたい」というよ球にも応えてくれる。
PCゲームなどに詳しい方なら『FTL』をファンタジーRPG風に作ったものと思ってもらえればいいし、単純にやりごたえがあるシミュレーションRPGを求めている人が遊んでもいいし、ゲーム好きなら買って損のない1作だと思う。

欲を言わせてもらえば、騎士の性格の描写が淡泊なので、各騎士の会話パターンがもう少しあったり、騎士ごとにエンディングがあったら嬉しいとは思った。
が、それでも最終マップあたりに騎士たちが会話を突然に雑談をはじめるシーンは「死を覚悟しての旅路だったけど、彼らもここまで来るとその後を考え始めるのかな……」なんて心打たれるものはあるので、ぜひそこまでプレイして感慨にふけって欲しい。
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概要:
ダークファンタジーの世界観を持つ、ファンタジーシミュレーションRPG。毎プレイ変化するマップと仲間の違いを吸収し、戦力を整えて困難に立ち向かう難しさが楽しい。

評価:9(とても面白い)

おすすめポイント
ダークファンタジーな世界観
歯ごたえはあるが、やるほどに先に進めるつくり 
うまくなる(難易度が高くなる)ほどに新たなハードルが出てくる

気になるポイント
もう少しキャラ描写が濃くても良かったかも
このジャンルのなかでは最適解が見えやすい

アプリリンク:
アンノウンナイツ (itunes 370円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 330円)

開発:teamarex(韓国)

HP:https://www.facebook.com/helloteamarex
レビュー時バージョン:2.630
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中