ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

ランダム生成確率に手を加えるダンジョンコントロール・ローグライクRPG『Undervault』レビュー。ロジックでランダムを制御するボドゲ的な味わい

vaultrrr-1
常に資源が足りず、真綿で首を絞めるようにプレイヤーを追い詰める凶悪なランダム生成ダンジョンに挑むローグライクRPG『Undervault』がえらく面白い。
プレイしてみると、食料も装備も、本当にすべてが足りない。
普通のローグライクRPGでは、これを細かいプレイでカバーしていくのだが……主人公は“ダンジョンの構造をちょっぴりコントロール”する能力が与えられている。
凶悪なダンジョンに穴を作り、巧みに生き延びるダンジョンコントロール・ローグライクRPGとでもいうべきゲームが本作だ。

本作はランダム生成のダンジョンを探索し、謎の館から脱出を目指すローグライクRPGだ。
最初に、使用キャラクターと難易度を選べる。
“長時間行動しても疲れない野蛮人”、“食料の消費が少ないシーフ”、“暗闇でも目が見えるキャットガール”など、特徴の異なる様々なキャラクターが存在し、どれも一長一短。
難易度はカジュアルでも十分に手ごたえがあるので、最初はカジュアルで良いだろう。
vaultr-1
▲最初は野蛮人しか使えないが、だんだんとキャットガールなどが追加されていく。

キャラクターを選ぶと、即座に見知らぬ地下屋敷に放り込まれ、裸の状態で目を覚ます。
マップは部屋単位で区切られていて、ハシゴマークでつながっている部屋には移動でき、黄色い穴のマークでつながっている部屋には上から下(つまり落ちる)にだけ移動できる。
vaultrr-1

各部屋には装備やアイテムがあったり、安全に眠れるベッドがあったりとイベントが発生する。
vaultrrr-2

部屋に敵がいるときは、戦闘して勝たなければならない。
戦闘はターン制を採用しており、プレイヤーと敵が交互に行動するシンプルなモノ。
ただ、シンプルなぶん邪道技も使いづらく、被害なしに勝つことは難しい。
vaultr-3
▲プレイヤーは通常攻撃、命中率が低いがクリティカルヒット率が高い“頭狙い”、命中率は高いが威力が低い“足狙い”の3種類の攻撃と、ダンジョンで覚えたスキル、拾ったアイテムを利用して戦うことになる。

このような部屋が毎回ランダムに結合されるダンジョンを渡り歩き、ときに敵と戦い、アイテムを蓄えて強くなる基本部分はローグライクRPGというのがゲームの基本。
だが冒頭に述べたように、このゲームの面白さの中心はボードゲームのようなダンジョンの構造をコントロールするリスク・リソース管理にある。
『Unvervault』は、ローグライクRPGにありがちな「序盤はこれを揃えれば安定」がなく、常に、絶妙に何かのリソースが足りないように設定されている。

キャラクターにはHP、疲労、満腹度という3要素があり、HPがなくなれば即座にゲーム終了。
疲労は一定ターンベッドで寝ないと発生し、戦闘時の命中率と回避率が半分になってしまう(かなり致命的)。
HP・疲労を回復するにはベッドルームで寝る必要があるが、寝ると満腹度が一気に減ってしまい、あちらを立てればこちらがたたず。
vault-4

HPなどが減らなければいいかと言うと、戦闘があれば確実にHPが削られる。
戦闘を回避して迂回して歩けば腹が減る。
さらに、装備品にはすべて耐久力があり、使い続けるといずれ壊れる。
常に何かが足りず、真綿で首を絞められるようにきつくなっていく絶妙な設計。
vault-5

それに対抗するのが、ダンジョンのコントロール能力だ。
ダンジョンには固定で内容が決まっている部屋と、中身がわからない“?部屋”が存在する。
“?部屋”は、隣接する部屋から部屋をタッチすると、ルーレットによって部屋の内容がランダムに決定されるのだが……。
vaultr-2

ここで、プレイヤーは任意の部屋の出現率を上げることができる。
休憩したければベッドルームを指定すればいいし、腹が減っていればキッチンを指定すればいい。そうすれば、その部屋は出やすくなる。
vault-8

これによって、ダンジョンに存在しない部屋を意図的に多く出し、足りないものは埋められる。
ただし、あくまで“確率を増やせる”だけ。
たとえば「疲労で死にそうだ…」となってからベッドルームを増やそうとしても、間に合わないことが多い。
究極の切り札として「ダンジョンの部屋を強制的に決める」カードアイテムが用意されているが、アイテム所持数は限られているため、軽々とは使えない。
vaultrrrc-1

よって、かなり先に足りなくなるリソース見越して確率をコントロールし、いざと言うときのためにカードを温存し、長期的な戦術を組み立てる楽しさがある。

そうして、ダンジョン部屋が見えてきたら、次はルート決めによるリスク管理のターンがやってくる。
ダンジョンでは、部屋に入る前に発生するイベントやそこにいる敵がすべて見える。
ダンジョン生成はランダム性が高いが、部屋を選んだら偶然に罠を引くようなことはないので、どの部屋に入って、どの部屋に入らないかを考えるロジカルな決定が可能。
vault-9

確率をコントロールしてダンジョン部屋を作っていき、次にどこに入って、どこに入らないか計算してルートを決める。
この選択はプレイするほどに研ぎ澄まされていき、だんだんとダンジョンでの生存時間が伸びていく。
『Unvervault』はローグライクRPGのような成長感は残しつつ、面白さはボードゲームのような確率コントロールとロジカルなルート選択に集約しており、遊ぶほどに面白くなる中毒作だ。
変わり種ローグライク、何度も遊べるRPG、ボードゲーム好き……そういった方はやればきっとハマる。

現在の状況からみてどの部屋を訪れ、どこをあきらめるのか。
ランダム性を絡めたリスク回避・取捨選択が面白さと悩ましさ、これをぜひ体験して欲しい。


評価:8(かなり面白い)

おすすめポイント
ランダム性をコントロールし、長期的にリソースを管理する戦術性
絶妙に何かが足りないバランス

気になるポイント
日本語対応なし(トレーディングカードゲームの英語を読む程度の能力が必要)

アプリリンク:
Undervault (itunes 360円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay 無料)

開発:Angry Kid(ウクライナ)

HP:https://undervault.net/
レビュー時バージョン:1.3.4
課金:なし(Google Play版は課金あり)

動画:


ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中