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レトロ風アクションに1980年代のアニメ・映画・都市伝説まで全部ぶち込んでしまった闇鍋。『ザ・ビデオキッド』レビュー

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海賊ビデオ配達人のビデオキッドになって1980年代の危険なストリートを駆け抜け、ポストにビデオを投函して金を稼ぐゲーム。

それが『ザ・ビデオキッド』である。

ゲーム歴の長い方は、これが1984年の新聞配達アクション『ペーパーボーイ』のパロディ作品であることにすぐ気づくだろう。
が、本作をプレイすればその感想は変わる。このゲームにとっては『ペーパーボーイ』すらパロディ要素の1つでしかなく、その実態は1980年代のオタク文化を片っ端からぶち込んだカオスな闇鍋だったのだ。

ゲームが始まるとスケボーに乗ったビデオキッドが登場し、道路を前に進み続ける。
ビデオキッドの目的は、バイト代を稼ぎつつ恋人の待つゴールまでたどり着くこと。videor-1

しかし、海賊ビデオを配達するビデオキッドの前には多数の障害がある。
警察でも、車でも、障害にぶつかれば即ゲーム終了。ビデオキッドは少し虚弱なのか、少しひっかけるだけで倒れてしまい、コンテニューもできず起き上がることもできない。
少しの失敗でスタートからやり直しなので、ゲームとしては結構難しい部類に入る。
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移動操作は左右スワイプで進む車線・歩道を切り替えるレーン移動と、上スワイプでのジャンプが用意されている。
車高の低い車ならジャンプで踏みつけてグラインドトリックを決めることもでき、グラインド中に左右スワイプすると車線を切り替えながら派手にジャンプする。
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また、画面をタップするとビデオテープを左側に投げられる。
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このビデオテープを赤いポストに配達させればバイト代が入って、恋人にプレゼントを買えるわけだが……このゲームにおけるビデオテープのメイン利用方法は配達ではない。
ビデオテープは、暴力装置なのだ!
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▲実際、ペーパーボーイでは新聞で窓ガラス割っていたそうなので正しくパロディと言えるけど。実際にプレイすると「いいのか!?」って感じがある。

ビデオボーイを笑う者に「スコーン!」と命中させ、カップルがいれば投げつけ……もちろん、当たれば倒れて、スコアが加算される。
家の窓に投げ込めばガラスが割れるし、日曜大工でペンキ塗り中のお父さんに投げればペンキがこぼれて大失敗。気にくわないものはビデオテープを投げて台無しにするのだ。
スコアが増えるということは、ゲームで推奨されている行為なので問題なし。
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ただし、銃を持っている相手とか、明らかにビデオキッドより強い相手にはビデオテープは通じない。
弱きに強く、強きに弱い。
そんな感じで、街に被害をまき散らしつつするゲームが『ザ・ビデオキッド』である。
この時点で結構いい味を出しているのだが、ゲームを進めるとこの要素すらおまけであることに気づく。

ゲームが先に進むほどに、“1980年代に活躍したなにか”っぽいキャラクターが次から次へと出てきて、その懐かしさとギリギリっぷりが楽しめる。
たとえば、道路を進めばアヒルの家族が車を運転してやってくる(踏みつけ可能)。
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中盤になって画面の左側を見てみると、どこかで見たヒットゲームっぽいものが街を占拠している。
とにかくアニメ、特撮、ゲームまで1980年代パロディが次々に登場し、「この作者、ギリギリの線を突いているけども大丈夫か……?」と心配してしまう。
冒頭で述べた“1980年代の危険なストリート”の“危険”とは、権利的なポイントなのだ……!
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1980年代ネタはアニメやゲーム、特撮にとどまらない。
下水道ルートに入ると、巨大化したワニがプレイヤーを待ち受け、都市伝説もカバー。
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アルビノのでかいワニなどレアキャラクターも用意されていて、ちょっとやそっとのプレイでは味わい尽くせないほどネタが用意されている。
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しかも、繰り返し遊ぶやや難しいゲームに、繰り返しが苦にならないほどのパロディーネタを盛り込んでカバーしており、ゲームとしての飽きさせない工夫でもある。
道中で稼いだ金はトリックや新しい衣装などの購入に充てられるが、その衣装も1980年代のパロディー要素で、すべてが徹底されている。
ゲーム内容も含めた1980年代のパロディーネタをひたすら見る。それだけで楽しい。
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無料ゲームとなると気になるのは課金だが、広告さえ気にしなければゲーム機版とほぼ同じ内容を楽しめてしまう太っ腹ぶり。
課金要素としてもゲーム内マネーを有料アイテムとして買えるが、プレイヤーが上達すれば1プレイで驚くほど金が稼げるから、アプリ内購入はオプションでしかない。
唯一有用と思われる課金アイテムの“広告削除”すらゲーム内マネーで買えてしまうので「このゲームやっていけるのか?」と心配になるほど課金は薄い。
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▲ショップの有料アイテムで360円支払うと広告を削除できる。ゲーム内マネーを貯めて広告削除もできるが、金を稼ぎづらい序盤を考えると買ってしまった方が快適だとは思う。

本作はPCやゲーム機で先行してリリースされているが、ゲーム内容はどの機種でもほぼ同じ。
まずスマホ版を無料で試して気に入りそうだったら、好きなハードで遊ぶと良いだろう。

私からの説明は以上だ。
あとはプレイして1980年代の闇鍋を楽しんでほしい。

概要:
1980年代のアニメ、特撮その他のパロディネタを盛り込んだランゲーム。カオス。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
1980年代のパロディ満載なカオス世界
ゲームとしても普通に楽しめる

気になるポイント
乗れる障害物の見分けがつきづらいときがある
衣装を購入・広告視聴のおすすめが多すぎる(広告削除購入で消したい)

アプリリンク:
ザ・ビデオキッド (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / Steam)

販売:コーラスワールドワイド(日本)
開発:Pixel Trip Studios(イギリス)
HP:https://chorusworldwide.com/the-video-kid-jp/
レビュー時バージョン:1.0
課金:広告完全削除(360円)、ゲーム内マネーなど

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも情報発信中

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