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ポケモン世界と人を3Dで表現したファン向けRPG『ポケモンマスターズ』レビュー。実質、「トレーナーマスターズ」では!?

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ついに、スマホのポケモン本編に近い空気を持つゲームがやってきた。
そう、DeNAと株式会社ポケモンが共同開発した『ポケモンマスターズ(以下、ポケマス)』だ。
『ポケマス』の舞台は、世界中からポケモントレーナーが集まる島パシオ。
ここで開催される3on3のチームバトルの大会“ワールドポケモンマスターズ”のチャンピオンを目指し、プレイヤーは冒険を繰り広げることとなる。
と、物語はに関しては本家のシリーズ作品と似ているのだが……実際に遊んでみると印象や遊びは大きく異なる別物のゲームであった。

まず目立つのは、キャラクターの扱いの違いだ。
本作のキャラはトレーナーとポケモンがセットになったバディーズという単位で扱われ、トレーナーは相棒のポケモンを変更できない。進化前のポケモンを相棒にしている場合は進化で姿・能力が変わることがあるが、基本はそれだけ。
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プレイヤーキャラクターも外見は変更できるが、相棒はピカチュウのみで御三家から選択することはできない。
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そして、何よりも大きいのはポケモンよりトレーナーの方が目立つ作りになっていること。
もちろん、ポケモンの表現にも力が入っているが、ゲームとしてメインで描写されるのはトレーナーで、これは本家との差別化につながっている。

まず、3Dで描かれる歴代ポケモンのトレーナーたちは、ヒロインのメイなど女性陣はもちろん、男性陣も魅力的。
このキャラクター達を眺めるだけで満足感が高い。しかも、各トレーナーと会話する専用イベントも用意されている(一応ポケモンも出るが)。
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ホーム画面となるポケモンセンターにはゲーム中に出会ったトレーナーたちが集い、自由に会話できる。
このときのトレーナーたちの会話内容が多彩かつ設定を踏まえており、かつ、ときにはある種の闇を感じるセリフが揃っており、ポケモンイズム満載。
株式会社ポケモンの監修がよほど良かったのか、よほどシリーズが好きなスタッフが揃っているのか。キャラクター描写の隅々まで『ポケモン』愛を感じられ、楽しい。
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冒険ステージではポケモンの世界がフル3Dで描かれ、物語とキャラクターが描写されるだけでなく、背景ではそこかしこでトレーナーがポケモンを探している様子も見て取れる。
このステージ描写は本作の中で随一のお気に入りで、「携帯ゲーム機で見ていたポケモン世界を3Dで見たら、こんな感じだったんだろうな」と、素直に思えた。
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▲目が合えばポケモンバトルが始まるシュールさが、美しい3Dグラフィックだとより引き立つ。

一方で、バトルについては古臭いソシャゲの属性バトルでしかなくなっていた。
プレイヤーは3組のバディでパーティーを組み、時間と共にたまるエネルギーを支払ってバディのもつ技を使用する。技は同じバディが使ってもいいし、異なるバディを切り替えて使ってもいい。
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一定回数のコマンドを実行するとバディゲージがたまり、バディーズ技(必殺技)が使用できる。
この技の使用時は専用の演出が入り、それぞれに強力な効果を発揮する。さらに、敵のバフ(能力強化)と、味方のデバフ(能力低下)をすべて解除するので、まさにゲームを仕切りなおして一発逆転するほどの効果が期待できる。
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▲バディーズ技演出。

これらのシステムを利用して、敵を全滅させれば勝利となるのだが……このバトルが微妙すぎる。
今作において、属性は過去作と大きく異なる。
これまでの『ポケモン』では、“タイプ”という要素がゲームに大きな提供を及ぼしていた。
たとえば、“くさタイプ”ポケモンは炎、氷、虫、飛行、毒が弱点だった(多すぎ)。代わりに、4種のタイプに対して耐性があり、ダメージを抑えることができた。
さらにタイプを複数持つポケモンもいて、パーティーを組むときは複雑な耐性パズルを考慮する必要があり、これが奥深さをもたらしていた。

ところが、『ポケマス』ではこのタイプがシンプル化された。
ポケモンは1体1タイプとなり、複数タイプを持つポケモンはいない。
特定タイプの弱点は1つで、複数の弱点を持つタイプはない。また、耐性はなくなり、タイプがバトルに及ぼす影響はかなり少なくなった。
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▲弱点は表示されるが、気にするのは序盤だけだ。

この結果、『ポケマス』はただレベルを上げて殴るゲームと化した。
バディーズ技でバフ・デバフが無効化されるから、状態異常で勝負を決めるのは難しい。
一方で耐性がないから、どんな属性でも攻撃力の高いポケモンが1匹いればでかいダメージが期待できてバトルは押し切れる。いろいろなポケモンを育てるよりも、一点集中で攻撃役を作ればよい。
敵のAIは防御力の高いポケモンから狙うこともあり、弱点に関係なくレベルの高い防御役と攻撃役の2匹がいれば勝てる。

中盤以降は決まりきった勝利パターンで、同じ戦闘展開でゲームが続く。
勝てなければレベルアップ作業が始まるが、それもまたソシャゲ的な育成クエストの周回となり、とても味気ない。
対戦機能が追加されたり、マルチプレイのレイドイベントなどが追加されれば話は変わるかもしれないが、現時点ではバトルシステムが複雑にみえて底が浅い。
18種類と普通のソシャゲよりもはるかに属性(タイプ)が多く、ポケモンを使い分けたくなってしまうが、実際にはレア度の高いバディのレベルをとにかく上げるのが正解。
すると、レベルアップクエストだけやっていれば最短でクリアできてしまい、ゲーム設計として失敗している。
現段階の最終ステージまで、ポケモンの使い分けはほぼ必要なかった。まあ、使い分けを求められるとたくさんのバディーズを育てることになって、それはそれで困るのだが。

とはいえ、実際にゲームをプレイしてみると「バトルが微妙」なことは人によっては致命傷ではない。
そもそもこのゲームは基本的に1人用であり、ポケモンのトレーナーのキャラクターや会話を楽しみ、世界観の描写を味わうだけのキャラクターゲームなのだ。
バトルも雰囲気の1つだと思えば、まあ楽しめなくもない。実際、途中までは私も楽しめていた。
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それでいてスタミナなどのゲームを妨げる要素はなく、プレイヤー同士の対戦による競争要素もなし。
クエストのドロップ品が多いことによる育成の簡単さは特筆もので、サービス初日(つまり12時間で)で最高レベルの仲間を作っているプレイヤーもいるほどだ。
やりたいところまでやって終わればいい。
ポケモンファンがスマホでポケモン成分を摂取したり、魅了的な3Dキャラクターに惹かれたプレイヤーが気楽に遊ぶゲームとしては十分すぎる。
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▲好きなトレーナー(仲間にしている必要がある)と会話もできるぞ!

さらに言えば、ストーリーモードを遊んでいると次々とトレーナーが仲間になり、中には最高レア度の★5トレーナーもいる。だから、ある程度はガチャ運に関係なくゲームを進めていける。
さまざまなポケモンそのものの組み換え、バトルの戦術を楽しむならポケモンの本編である『ポケットモンスター ソード・シールド』が2019年内に登場する。
ポケモンファンが、ポケモンのいる世界を見て世界を楽しめる。これだけでこのゲームは存在価値がある。


概要:
ポケモンのトレーナー・世界観描写に重きを置いたRPG。バトルは普通のソシャゲバトル。

評価:6(面白い)

おすすめ
アーティストを表彰したいぐらいよくできた3Dキャラクター
女性トレーナーは特に気合が入っている
ポケモン愛を感じるテキスト
育成が楽、スタミナもないのですぐ終わる

気になるポイント
レベル上げ作業の虚無感(本家と違いポケモンが仲間にならない)
バトルは複雑そうに見えて底が浅い
マルチプレイのテンポの悪さ

アプリリンク:
Pokémon Masters (itunes 基本無料 / GooglePlay 基本無料)

開発:DeNA&株式会社ポケモン(日本)
HP:https://pokemonmasters-game.com/ja-JP
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:ガチャ。

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。
アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
Twitterでも色々情報発信中
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