劇場アニメの世界でプレイヤーが動くゲーム『フォーゴットン・アン』レビュー。小さな選択が変化を呼び、心に棘を刺す小作品
- アドベンチャー
- 2019年08月04日
古いおもちゃ、片方だけの靴下、いつか出した手紙……そんな、人間たちが忘れ去ったモノがいきつく世界フォゴットンランド。
その世界ではモノが意思を持って動き出し、いつか人間たちに思い出してもらえることを夢見て生活している。
『フォーゴットン・アン』は、おとぎ話の世界を豊かなアニメで描き、プレイヤーはそのなかで動けて、物語を少し変えられる……そんな物語ゲームだ。
ゲームを始めて最初に驚かされるのは、やはりそのビジュアル。
アニメそのもののようなゲーム画面、ゲームの区別がつかないほど自然に切り替わるカットシーンは、開始5分でプレイヤーを虜にする。
『フォーゴットン・アン』App Storeで配信開始。忘れられたものが行きつく世界を、豊かなアニメーションで描くアドベンチャー。
— ゲームキャスト管理人 / 寺島壽久 (@gamecast_blog) August 1, 2019
ゲームからアニメ、アニメからゲームへの切り替えが自然でハッとする。序盤は無料で遊べるので、試すといいと思う。https://t.co/UIi5LiUtMe pic.twitter.com/dnyPbwwDVu
ゲームを実際に動かすと、プレイヤーはまた驚くことになる。
『フォーゴットン・アン』において、プレイヤーは世界の治安を守る執政官“アン”となってある事件を追うのだが……そのアンの動きがアニメそのものなのだ。
▲階段を下りるアン。この動きがアニメのような重心の変化まで描写していて驚く。
世界を描写するタッチだけでなく、動きに関してもゲーム的な省略がない。
本作の手触りは、ゲームではなく“動かせるアニメ”であり、それが新鮮さをもたらしている。
そんな世界で描かれる物語についても、私はかなり満足した。
プレイ時間はだいたい5時間程度だろうか。
モノがしゃべる不思議な世界、人間たちが忘れ去ったモノたちの「また、使われたい」と考える価値観などが伝わってきて、最後には世界の謎が明らかになる。
短く、展開が急な部分もあるように感じたが、劇場アニメのようなものだと考えれば納得がいく。
なかでも素晴らしいと感じたのは、プレイヤーの選択がこのアニメ世界に影響を及ぼし、細かい部分を変えること。
治安を守る執政官として、師であるボンクに従うのか、それとも人間性を持って曖昧な部分を残すのか……些細な選択が、中盤になるにつれて影響を及ぼし、フォゴットンランドの住人からの反応が変わってしまう。
全体の展開は決まっているが、「ああ、過去の自分の行動が返ってきた」と感じられる瞬間があり、それが心に刺さるときが確かにあった。
ゲームを終えたとき、劇場アニメを見終えたかのような“終わりの感覚”と“ゲームだから得られた物語の変化”が同時に感じられた。
そういったビジュアルと物語の満足感とは別に、スマホ版の『フォーゴットン・アン』には気になる部分もあった。
本作は、バーチャルスティックで移動し、ジャンプボタンで障害を乗り越えるアクションアドベンチャー(ただし、難易度は低くパズルより)という側面がある。
このバーチャルスティック操作が微妙に扱いづらく、慣れるまで階段を下りた後ですぐ上ろうとしてしまったり、思ったように動かないストレスがあった。
本作ではゲーム的な省略なくアニメとしてキャラが動くため、少し移動に時間がかかる。それがあだとなり、操作ミスで移動のやり直しが発生するとイラつきがあった。
物語が主となるゲームにおいて、アクション部分が物語の没入感を損ねているタイミングもあり、操作の最適化が欲しかったように感じた。

▲コントローラー操作に対応しているので、コントローラーがあればそれで遊んだほうが良い。
また、本作は英語音声・日本語字幕のゲームだが、ときおり英語音声と日本語訳に違いを感じる部分があった。
大問題ではないが、私自身はそういったときに英語字幕で内容を確認するので、英語字幕オプションがない(日本語と韓国語字幕のみ)はやや気になった。
とはいえ、『フォーゴットン・アン』はおとぎの国を舞台とした劇場アニメの主人公として物語を体験できるアドベンチャーで、「アニメ物語を体験したい」なら購入しても損はない1作ではある。
物語の分岐もあり、最終的にプレイヤーはエンディングを選択する権利すら与えられ、選択の起こした結果について考える深みもある。
スマホ版は無料で序盤を体験でき、その体験部分で十分に世界観やプレイヤーとゲームの相性は確認できるので、まずは試してみて欲しい。
1,200円という価格はスマホゲームとしては高いかもしれないが、映画のチケットを買ったと思って遊ぶなら断然安い。そして、得られる体験も映画に近いので、きっと満足できるはずだ。
概要:
おとぎ話の国で起きた事件を解決し、結末を選択する映画のような短編アドベンチャー
評価:7(要チェック)
おすすめ
アニメとゲームの自然な融合
プレイヤーの選択が心に刺さることのある変化をもたらす
気になるポイント
英語字幕がない
ごく一部の映像の解像度が低め
おとぎ話の国で起きた事件を解決し、結末を選択する映画のような短編アドベンチャー
評価:7(要チェック)
おすすめ


気になるポイント



販売:コーラスワールドワイド(日本)
開発:ThroughLine Games(デンマーク)HP:https://heartmachine.com/hyper-light
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:完全版(1,200円)
ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャスト管理人でゲームライター。アクション、新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。
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