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なぜ、ゲーム会社が個人メディアのゲームキャストを支援したのか。ネストピという会社の方針と、スポンサードの動機を聞く

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ゲームキャスト、企業スポンサード獲得と本格再開のお知らせ」にて、株式会社ネストピのスポンサードを受けてゲームキャストが一時的に復活したことを報告したが……そもそも、スポンサーに名乗りを上げたゲーム会社“ネストピ”とはいったいどのような会社なのだろうか。
そして、なぜゲームキャストを支援することになったのかだろうか。
今回、ネストピ代表の生田恭理さんにお話を伺ってきた。

インタビュワー…ゲームキャスト、寺島壽久
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まずは、生田さんの経歴をお願いします。

ネストピ代表:生田恭理さん
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経歴から言うと、任天堂セカンドパーティ系にて主にWiiのゲーム開発に参加し、それからRPGだけをひたすらに作り続けてきました。
プランナー職でしたが、数字を扱ってバランスをとることが得意なので、「バランスデザイナー」としてRPGのレベルデザイン(※)を専門にやっていました。
※ここでいうレベルデザインは、レベルアップやアイテム取得、モンスター能力などが与えるゲーム体験の設計、ゲーム難易度のバランス設計を指す
WiiのRPGが終わったあと、ディレクターをやりたくてスマホゲーム業界に転職後、『イザナギオンライン』の企画を立ち上げて、ディレクターやプロデューサーを兼任し、リリース以降2年間の運営まで携わり、現在はネストピを立ち上げて独立しています。
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▲イザナギオンライン。Unreal Engine 3を利用したMMORPGとして、当時とびぬけたクオリティを誇っていた。

nama
Wiiのセカンドパーティー系RPGというと良い物しか思い浮かびませんし、『イザナギオンライン』もアプリ界ではそれなり以上のヒットを記録した作品だと思います。
その経歴を考えると、会社を立ち上げずともゲームを作り続けられたかと思います。なぜ、会社を立ち上げることになったのでしょうか。

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僕は、開発の立ち上げから運営まで含めて計5年間、『イザナギオンライン』を作っていたんですね。それは素晴らしい経験でしたが、次もMMORPGを作るとなると、同じようにかかってしまう。もっと、たくさんのゲームを作りたかったんです。
また、コンソールとモバイルの両方の業界で長らく開発に関わった結果、それぞれの業界で感じていた違和感がありました。その解決方法として起業をする意味を感じ、過去に仕事した仲間の賛同を得て一緒にネストピを作りました。

nama
違和感とは、具体的にどういったことでしょうか。

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まず、日本のインディーゲーム開発に対する違和感ですね。
インディーゲーム市場のおかげで、資本に縛られず自由な挑戦ができるようになりましたが、インディーズになると不安定で給料0円だし、他人を巻き込みづらい。だから、とくに日本では1人や2人で規模の小さいものを作ることになりがちだと考えています。
それが、インディーズに挑戦するハードルを高くしてしまっていると思っている。

nama
確かに、1人、2人ですごいゲームを完成させられるのは、マルチな能力を持つ一握りの人になりがちですね。

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もちろん解決している開発者もいますが、それをもっと押し広げたかった。
そこで、インディーゲームを作りたい熱量のある仲間で集まって、最低限の生活の保障がされた状態でチャレンジもできる環境が作れれば解決するのではないか、と考えて会社を作りました。
その意志が、給与制度にも反映されていて、給料は“基本給+歩合制”となっています。最低限生きられるだけの給料は保証して、あとは作品の売上に応じて歩合で支払われます。
作ったゲームが給料に直接反映されるのは良いことだし、クリエイターがよりユーザーに向き合うきっかけにもなるとも考えました。

nama
歩合、ですか。既存の会社でも成果報酬制度はあると聞きますが、何か違うのでしょうか。

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インセンティブではなく、ダイレクトに売上から割合で支払われます。だから上限とかありません。
ゲーム会社の給料は「何歳でこの仕事ならこれぐらい」みたいに上限がある。でも、プログラマーならプログラマーで、ディレクターならディレクターで、そのままでゲームがヒットしたら億万長者になれるような、そういった夢のある会社にしたかったんです。
でも、何より重要なのは“ゲームに対する熱量”を保ちたい、という意識です。

ゲームを開発するとき、現代の大規模開発では作業が細分化して、仕事も「このパーツを完成させてね」みたいな、巨大なゲームの完成図も見えないまま部品を製作するお仕事になりやすい。これが許されるは、ゲーム業界が産業として健全化してホワイトになったからでもあるんですけど……。
とくにインディーでは「このゲームを面白くするのは俺の責任だ」と皆が考えられることが必要だと思っています。
歩合制になると、誰もが「このゲームをヒットさせなくては」と思える。それを給与制度に反映しました。

nama
とはいえ、ネストピではゲームを自作するだけでなく、受託で他社の仕事を引き受けているとも聞きます。
受託などをしているメンバーの歩合はどうなるのでしょうか?

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ゲームを作るために稼いでいるメンバーは、そのゲームを開発しているメンバーという扱いで、そういった部分もルールに定めてあります。
あとは、様々な能力をもったメンバーが、必要なときに力を貸して開発しているのでまったくノータッチにもならないですね。

nama
余計なことに突っ込むようですが、歩合を意識しすぎて売上優先の保守的なゲームがメインになってしまう恐れはないでしょうか。

asa1564741042262
そのあたりは難しいですが、資本的に独立していればインディーだし、僕らは“偏る”ことを重視して作る鉄則を持っています。
ゲームの核となる部分では絶対に合議制を採用せず、1人や2人の少数メンバーが「俺はこれが面白い!」と偏った良さをぶち込むことにしています。
それを守っていれば、インディーであり続けられると思っています。
あとは、安定や売上が欲しければ、ある程度成功したあと、独立しても、他所にいってもいいんです。そういうサポートもしたいと思っていて。

nama
独立のサポートですか。

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これも先に言った違和感の1つなのですが、スタッフや若手の露出が少ないこと悩みを抱えていたんです。
ゲームを開発していると、やはり制作の中でも「あの××を開発した〇〇さん」「××の制作会社が」のように、強い看板に頼りたくなってしまう。その方が宣伝として強いから。
僕たちの若い頃って、そういったゲームの顔役が若かったじゃないですか。でも、現代になってみるとそういった顔役の人は今も現役で、20代で超有名クリエイターみたいな人は本当に少ない。
それにも関わらず、仕事としてスタッフロールにも名前が出せないことがあったり、開発実績として書けないこともあったりする。ネストピでは特定のプロデューサーなどが前に出ず、作った人たちを前に出して名前を売ることを会社として サポートする体制を作りたいと考えています。

nama
お話を聞いていると「インディーゲームを作りたい開発者が集まり、お互い助け合って作品を売って、出たいときに出る」場所のように聞こえてきました。
それって、会社というより“場の仕組み”だな、と感じます。

asa1564741042262
そうですね。ネストピは「インディーズとメジャーの間」を目指す会社です。
「食べられる」ことが保証されている環境で、ゲームを作りたい仲間が集まり、自由に挑戦できる場所を作りたいという想いからはじまっています。
面白いものを、ここから作っていくつもりなので応援していただけると嬉しいです。

nama
尖った会社ですね。
だからこそゲームキャストのスポンサーになる発想が浮かぶのかな、とも思いました。
さて、今回はゲームキャストが応援される立場になって驚いているのですが、そもそも、なぜゲームキャストのスポンサー契約をしようと考えたのか、聞かせていただけますか。

asa1564741042262
単純に10年くらいから読者として楽しませてもらっていた。
客観的にゲームを紹介するようなメディアが多い中、主観で面白いものとつまらないものをはっきりと区別してるのが面白かった。
だから、ネストピから『アンクラウン』を出すタイミングになったので相談させてもらいました。

nama
方針を好きだから応援してもらえる、というのは本当にうれしいところがありますが、会社としての利益というか、思想的な部分の理由などはありますか?

asa1564741042262
昨今、無数のゲームが生み出されている状態に対して、ゲームメディアの総数が足りないと感じているんです。
メディアが減っているのにゲームはどんどん増えている。Unityなどのゲームエンジンが出てきて、開発速度も上がっている。それを1メディア、2メディアでカバーするのは無理ですよね。
Youtuberは増えていますが、動画に向かないゲームを紹介する場が圧倒的に足りない。

nama
確かに、とくにアプリでは文字系ゲームメディアはどんどん数を減らしていますね。

asa1564741042262
ゲームをチェックする方も大変なんです。ゲームを網羅して、そこから面白いものを探すこと自体が困難になっている。
そんな状況だと、他のゲームファンも「面白いゲーム」と出会えることが少なくなっている気がして、これが将来的なゲームファンを減少させてしまい、日本のゲーム市場が衰退するのではないかと心配しています。

僕自身、すべてのゲームをチェックすることはできないんです。
でも、ゲームキャストのようなフィルターを通せば少ない時間でチェックできる。ゲームキャストさんみたいなメディアが増えたら、それもチェックしてゲームを追えるし、楽しめる。
ゲームキャストのようなメディアがもっと増えていき、趣向のあったメディアをユーザーが選べるようになることで、面白いゲームをユーザーが見つけやすくなると思っている。
だから応援することにしました。
将来的には、ライターさんにたくさんファンがついて、好きなライターを選べるような形が理想だな、と思っています。

nama
ありがとうございます。私自身も、昔からライターが個性を発揮して、好きと嫌いを宣言し、読者が読むものを取捨選択できる形が理想だと思っていました。

asa1564741042262
将来的にはスポンサードは“記事に影響がない”形で見返りを求めるのがいいと思っています。
スポーツの企業ロゴ枠のように、「うちの会社はこのチームを応援している、センスがいいだろう」とそれだけで済むものがいい。
でも、今回はゲームキャストさんに助けられたいという状況でもあるので、『アンクラウン』の記事に関してはゲームキャストの読者さんたちに許してもらいたいと願っています。

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以上。

現在、ネストピは初作品となるゲーム『アンクラウン』を App Store / Google Play で予約受付しており、近日リリース予定となっている。
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