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『大征服者: ローマ』レビュー:今度の歴史ストラテジー『欧陸戦争』シリーズの舞台は古代ローマ。カエサルやハンニバルが争うヨーロッパを転戦せよ

世界大戦やナポレオン戦争など、歴史をテーマにしたターン制の戦略シミュレーションゲームをスマホで公開している中国のメーカー「Easy Tech」が、新たなアプリを公開しています。
カエサルやハンニバル、スパルタクスなどが登場する、古代ローマが舞台の作品。
『大征服者: ローマ』です。

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名前は違いますが、スマホ定番のストラテジーゲーム『欧陸戦争』シリーズの新作です。
『将軍の栄光』や『世界の覇者』なども含め、これで実に15作目。

今回は古代ローマが舞台のため、第一次~第二次世界大戦と比べると、馴染みの薄い人が多いでしょう。
爆撃機やミサイルが飛び交っていた過去作と比べると、システム的にも演出的にも、ちょっと地味。
国名や武将もピンと来ない人が多そうです。

ただ、ゲーム自体はこれまで通りの、硬派な大戦略型のターン制シミュレーションで、その面白さは変わっていません。
また、今回は重課金しなくても、相応の能力の将軍を雇用することができます。
しかも将軍が成長するため、安価な人でも育てれば結構な強さに。
好きなように育てられる主人公の指揮官も存在します。

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価格はiOS版120円、Android版100円。
将軍の強化や雇用に使う"勲章"を買う課金がありますが、無課金でも遊べます。
ただ、数百円の課金は考えておいた方が、ゲームはラクになりますね。

カエサル、ハンニバル、スパルタクスの三名は課金武将で、ひとり1000円~1300円ですが、無理にいなくても構いませんし、特定のシナリオには買っていなくても登場します。
広告やスタミナはありません。

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ヘックス(六角形のマス)で区切られたマップ上に歩兵や騎馬などのユニットが配置されており、これを動かして敵ユニットを撃破していきます。
『ファミコンウォーズ』や『ファイアーエムブレム』などでもお馴染みのシステム。

登場するユニットは主に、雇用と補充がしやすい"歩兵"、高額だけど移動力に優れる"騎馬"、反撃を受けずに攻撃できる"弓兵"の三種類。
軽装歩兵や剣闘士、ローマ兵など、細かい区別はありますが、大まかには3つしかないので戦略ゲームとしてはシンプルな方です。
水上に入ると"軍船"に代わり、装備している船に応じた強さになります。

各ステージには最初から多くのユニットが配置されていますが、そのすべてを動かす訳ではありません。
プレイヤーの初期兵力は5ユニットほどで、方面軍といった感じ。他の部隊はコンピューターが担当します。
占領した都市から資金を得られ、それを使ってユニットを追加生産することは可能です。

欧陸戦争シリーズの特徴は、敵を挟むと"士気"が下がることと、移動だけして攻撃は後でも行えること。
これを利用し、味方ユニットでまず敵を挟んで弱体化させ、それから攻撃するのが基本となります。

なお、今作の特徴として、弓兵が遠距離攻撃できません。
「それじゃ弓兵の意味ないじゃん!」と思うかもしれませんが、歩兵や騎兵から反撃を受けないだけでも有用です。
向こうからの攻撃だとダメージを受けるし、弓兵同士だと反撃されるし、今までと比べると弱いですが……。

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こんな風に敵を前後から挟んで士気を落とし、それから攻撃するのがダメージを抑えるコツ。
周囲6マスを完全に包囲すると2ランク士気が落ち、合計3ランク士気が落ちた敵は"混乱"となって行動不能、反撃も不可能となります。
弓で遠距離攻撃できないのは、古代らしさを出すためでしょうか? 銃や砲弾が飛び交う時代じゃないですからね……。


もうひとつ大きく変わっているのは、都市のシステム。
今回の都市は"中心部"と、その周囲に配置されている"城区"と呼ばれる外郭部に分かれています。
つまり、都市は1マスではありません。

城区には"商業"、"住民"、"軍事"などの種類があって、ユニットを生産できる軍事の城区は、"馬屋"を追加すれば騎馬、"射的場"を作れば弓兵を生産できるようになります。
住民の城区は"人口"が増え、これが十分でないとユニットを多く保持できません。

中心部をレベルアップすると収入が増えるのに加え、城区も強化できるようになり、上位の兵士を雇用したり、新しい施設を追加できるようになります。
また、城区を増設することも可能になります。
資金と工業力が必要ですが、今回は必要に応じて都市の強化も行わなければなりません。

そして中心部だけでなく、城区にも耐久力があります。
都市は耐久力を0にしないと侵入できませんが、城区も同様。
都市の耐久力があるうちは守備部隊のダメージが少なくなるため、強力な敵がいると苦戦は必至で、今まで以上に都市を占領するのは大変です。

攻めるときは、敵がいない外郭を破壊して入り込み、中心部をまず弓矢で削るのが基本。
投石機や破城槌などの攻城兵器もありますが、固有のユニットではなく、既存の部隊に付加する追加装備です。

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城区の開発画面。城区は都市中心部のレベルと同じ数だけ設置でき、中心部がLv3なら城区はLv2に、中心部がLv5なら城区はLv3に強化することができます。
ただし、都市ごとにレベルの上限があって、田舎町をローマのようにすることはできません。
城区に建設できる追加施設は二者択一。同じ町で騎馬も弓兵も作りたい場合は、軍事の城区がふたつ要ります。
"人口"は正確には、ユニットの総数による経済力の低下を抑えるもの。
ユニット数が上限に近付くにつれ、国家の状態が 平和→防御→侵略→狂気 と変わっていき、収入にペナルティが生じます。


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都市から生み出される"文化"のポイントを使って、"策略"を実行することができます。
よく使うのは士気を上げる"演説"と、都市の耐久力を減らす"破壊"。特に破壊は毎ターン実行してもいいぐらい。
再行動できる"強行軍"も便利ですが、Lv2の国家技術"総督"が必要です。


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文化ポイントを使って"国家技術"も取得できます。
ただ、1ステージが短いシナリオモードでは重要ではありません。
長丁場となる"征服"モードでは必要になりますが、どの技術を習得できるかは国によって異なります。


メインのゲームモードは、古代ローマ帝国の戦いを数々のステージで再現した"シナリオ"ですが、他に”征服”と"遠征"があります。

"征服"は、『欧陸戦争』や『将軍の栄光』でおなじみの「全国モード」。
ヨーロッパ全土が巨大な1枚のマップになっており、多くの国々が配置されていて、その中のひとつを選んで陣営の勝利を目指します。
他国をすべて滅ぼす必要はなく、すべての国が"ローマ帝国陣営"か"反ローマ陣営"に分かれており、相手側の国だけ倒せばOK。

巨大マップのため時間はかかりますが、多くの国々が入り乱れて戦う大戦争を楽しめます。
また、資金や工業力を味方に提供できるので、友軍の支援に徹する遊び方も可能。

"遠征"は、従来の作品にはなかった新モード。
ボードゲームのような簡易マップが現れ、1マスずつ進んでいき、敵がいる場所に入ると最初に与えられるユニットを配置して、小規模な戦いを行います。
これを繰り返してゴールを目指すのですが、受けたダメージを引き継ぐため、より慎重な戦いが必要です。
勝利で得られるポイントで兵士の補充や攻城兵器の購入を行えるため、それを何に費やすかが重要。

遠征にもいくつかのステージがありますが、なかなか難易度が高いので、まずは将軍を増やして鍛えておく必要があるでしょう。
なお、遠征はメインメニューにはありませんが、部隊の強化を行う"元老院"の画面から実行することができます。

"シナリオ"も、今回は裏ステージが用意されていて、表ステージはローマが主役ですが、裏ステージはローマの敵となります。
例えば、ハンニバルのローマ遠征を防ぐ"ポエニ戦争"のシナリオなら、裏のステージはハンニバル側で参戦。
ステージ総数は表裏を合わせるとかなり多く、ボリュームは十分です。

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征服モードの担当国選択画面。ふたつ目のマップ"カエサル時代"を選ぶには、ひとつ目のマップをクリアする必要があります。
マップ自体もかなり異なっていて、ひとつ目の"ポエニ戦争"は地中海周辺が舞台ですが、ふたつ目はイギリスや黒海沿岸も含まれます。
中立国がいくつかあり、「金出さないと敵になるぜ」とたかられますが、我慢して払いましょう。
かなり強いので敵に回ると苦戦しますし、払い続けていればそのうち味方になってくれます。


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このユニットの量! 征服モードで戦いが一方的になったシーン。フルボッコにも程がある。
待ち時間が長そうですが、ゲームスピードはオプションで調整可能です。
また、コンピューターの思考シーンを早送りするボタンもあるので、ゲームは手早く進められます。
風呂から上がってもまだコンピューターが考えてた、とか言われるアドバンスドなアレみたいなことはないです。


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遠征のマップ画面。とにかくダメージを受けないように進む必要があります。
テントや家のマスまで進めば部隊の補充が可能。
最初のマスをタップすると部隊に将軍を配属できます。他のモードと違い、戦闘中には配属できないので注意。
部隊が全滅すると、そこにいた将軍は再配属できなくなりますが、解散や退任させた将軍は再配属できます。


今作の将軍は、既存のユニットに配属する形。
最初から"指揮官"と言う名の主人公の将軍がいて、他は勝利することで得られる"勲章"を使って雇用できます。

前述したように、今回はステージクリアで得られる勲章で、無課金でも相応に将軍を得られるようになりました。
シナリオモードの各ステージで得られる勲章は20~30個。
将軍には金・銀・銅のランクがあり、銅ランクなら雇用に必要な勲章は80~300。
頭数をそろえるだけなら、それほど苦労しません。

銀ランクは300~550、金ランクだと500~650必要で、さすがに金ランクの取得は難しいですが、銀だと頑張れば手が届くレベル。
以前の欧陸戦争シリーズには、課金しないとまともに将軍を得られないゲームも多かったのですが、今回はかなりマシです。

加えて、戦闘で将軍の経験値が溜まり、レベルアップで能力を増やせるため、上限値はありますが、レベルが上がれば銅ランクでも十分な戦力になります。
将軍を増やして強くする、SRPGらしい楽しさが増しているのは嬉しいですね。

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資金を使って部隊の強さを底上げできる"元老院"の画面。
今回はツリー形式の強化画面はなく、歩兵を鍛えたいならここで"軍営"をレベルアップさせ、それから"歩兵戦術"のコマンドで上げたい能力を選択します。見た目は豪華ですが、システムはシンプル。
元老院の施設を強化することで"元老院レベル"も向上し、将軍の雇用可能数などが増えます。


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将軍のステータス画面。どんな人物だったのかわかる武将列伝も用意されています。
オススメなのは騎馬将軍の"パコルス"。高めの能力に加え、常時士気がMAXになる強力な特性を持ち、それでいて安い。真っ先に雇うこと。
他には、たまに敵の士気を下げる弓兵"ペディウス"、ダメージが増えても攻撃力が下がらない"インドゥティオマルス"などが安くて有用です。
ただし、主人公の指揮官をどう育てるかによって、優先すべき将軍は変わってきます。


全体としては、戦略シミュレーションとして目立った欠点はなく、欧陸戦争シリーズとしてそつなく作られているのですが、私的に気になるのは……地味なこと。

世界史全体を扱っていた『欧陸戦争5』をピークとして、だんだんシステムがシンプルに、演出も地味になっている印象があります。
硬派な歴史ストラテジーを望んでいる人は、そういうものは求めていないということなのでしょうか……?
でも、もうちょっとゲームらしいお遊びや演出があっても良かったように思います。

また、古代ローマをテーマにしていること自体も気になります。
ひとつ前の『欧陸戦争6: 1804』もナポレオン戦争やアメリカ独立戦争を舞台としており、ここ最近は第二次世界大戦を扱っていません。
でも本当なら、第一次~第二次の世界大戦が、多くのストラテジーファンにとって馴染みのあるテーマだと思います。

考えすぎかもしれませんが、これは昨今の中国当局のゲーム承認(検閲)が影響している気がします。
Easy Techは中国のメーカとしては結構「攻めて」いて、例えば『世界の覇者4』は、第二次世界大戦中の中国は中華民国(今で言う台湾)になっており、大戦後に国民党と共産党が戦った国共内戦のステージもありました。

しかし今だと、その内容では中国当局に止められてしまうでしょう。
でもEasy Techというメーカーはおそらく、嘘はつけない。
そうすると、もう第二次世界大戦は避けるのしかないのかな、と思います……。

とは言え、ゲームは自体はおなじみの内容。
古代ローマが好きな方もいるでしょうし、硬派な戦術級のシミュレーションが好きな方や、一連のシリーズを欠かさずプレイしている方なら、今作も必携でしょう。

概要:
『欧陸戦争』を流れを汲むターン制の戦略シミュレーション

評価:7(このジャンルが好きならお勧め)

おすすめポイント
 硬派な大戦略タイプのSLG
 将軍を雇用しやすくなった

気になるポイント
 戦略ゲームのマニア向け
 渋い外観だが、少し地味

アプリDL:
大征服者: ローマ (iTunes 120円 / Android 100円)

開発:Easy Tech(中国)
HP:https://www.ieasytech.com/ja/Manual/Rome/
レビュー時バージョン:1.1.0
課金:あり(通貨や課金将軍の購入)

ライター:
iPhone AC カムライターオ
数々のゲームのファンサイトを経て、iPhone 解説サイト『iPhone AC』を制作。現在はスマホゲームを紹介するレビュアーとしても活躍中。