ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

『Hyper Light Drifter』レビュー。好きなように戦い、自由に歩き回り、気の向いたときにボスと戦う異世界の旅。

Hyper Light Drifter (itunes 600円 iPhone/iPad対応)
01
「SFC『ゼルダの伝説』の探索と『ブラッドボーン』のバトルを足して2で割ったようなゲームがあるから、やって欲しいんだ」

私に『Hyper Light Drifter』をすすめた知人は、たしかそんなことを言っていた。
ゲームをクリアした今に振り返ってみると、その表現も間違っていなかった気がする。だが、私がこのゲームを気に入った理由は違った。
私は、同じゼルダでも最新作『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』(以下、ゼルダBotW)のような面白さをこのゲームに感じていた。

このゲームにおいて、プレイヤーは荒涼とした土地を探索するドリフター(漂流者)だ。
銃弾を光速で避けるほどの戦闘力を持つあなたは、冒頭で何かしら巨大な力に立ち向かい……。
hy-12

その力によって死の病に侵される。だが、絶望することはない。
hy-7

この土地にはかつて高度な文明が栄えており、その過去を掘り起こすことで何かしら解放の手掛かりを得られるかもしれないのだ。
ドリフターは脳裏に浮かぶ啓示(太古の戦いの記憶だろうか?)を希望に、この土地の探索を始める。
hy-2

ゲーム内では言葉を一切使わず、映像で抽象的にストーリーを語るため、上記は私がオープニングで抱いたイメージとなる。よって、実際の設定と少し異なるかもしれないが、かなりヘビーな物語なのは間違いなさそうだ。
hy-5
▲他人に話しても返答はイラストで行われる。プレイヤーが想像で物語をつなげるしかない。

システム面で見ると、本作は小気味よい動きのアクションバトルと、マップ探索を組み合わせたアクションアドベンチャーになっている。。
操作はバーチャルスティックと、ソード、ダッシュ、銃撃、爆弾、調べるボタンの5ボタン。
ボタン数は多いが、ソードとダッシュがメインになるので、慣れれば十分に操作可能。
ただし、移動の正確性、画面左上になってしまった(急に押せない!)回復ボタンなど、改善が期待できる部分があり、この点はアップデートで対応して欲しい項目ではある。
もちろん、コントローラーで遊べるなら、それが一番おすすめだ。
hy-14
▲スティックの小回りは、ダッシュボタンで障害物を超えるときに効いてくる。ダッシュ攻撃などもコツが必要で、操作には最適化の余地を感じた。

バトルは接近主体(銃弾は限りがある)で、敵の攻撃をダッシュで避け、再びダッシュで潜り込んで切り込む素早い動きが要求される。
また、ドリフターは病のためか耐久力が低く、連続攻撃を受けるとすぐ倒れてしまう。このため、難易度はやや高め。
だが、倒れてもすぐ近くから再開できるし、致命傷を避ければ回復アイテムが使えるので、少しパターンを覚えてダメージを抑えるだけで雑魚は突破できる。
少し苦戦して、すぐに突破できる気持ちいい手ごたえ。いい調整だ。
hy-15
▲ドリフターの技と敵の行動パターンに少しずつ慣れる感覚に手ごたえを感じる。

世界には探索のベースとなる街が1つだけ存在し、その東西南北には水源や森、廃墟など4つののフィールドが広がっている。
hy-9
▲探索するマップは独特の2D表現で描かれており、美しさと暗さが同時に存在する神秘的なものを感じる。BGMも背景にマッチしており、探索に華を添えている。

それぞれのフィールドには“モジュール”と呼ばれるスイッチがあり、これを見つけてボスの封印を解き、倒すことでゲームが進行する……というのがゲームの概要だ。
hy-11

フィールドは結構広いが、要所にはワープゾーンがあり、全体マップやファストトラベルなども完備していて近代的な快適さもある。
バトルが激しいスーパーファミコンの『ゼルダの伝説』系ともいえる。
hy-3

だが、私が感じた『Hyper Light Drifter』の面白さは、昔の『ゼルダ』ではなく『ゼルダBotW』のものだった。
『ゼルダBotW』は、オープンワールドアドベンチャーの革命児で、すごい代物だった。
自由度が高く、物理法則を利用した攻略、壁に阻まれない広いフィールドなど、人によって楽しみ方は違うことだろう。
そんなゲームの中で私が好んだのは、明確な攻略順がない世界を自由に旅して、限られた情報から世界が危機にあることを想像し、好きなだけパワーアップしたら気の向いたときにボスと戦える「知らない世界を自由に旅している」感覚だった。
WS000164
▲ゼルダBotW 1st トレーラーより

『Hyper Light Drifter』に感じた面白さも、それだ。このゲームには壁のぼりも、物理法則を利用した攻略もないが「自由な旅」があった。
先に書いた通り、本作には東西南北の4体のボスキャラを倒すという道筋が存在する。だが、南のボスは最後に倒すという制約はあるが、その他のボスには好きな順番で挑戦できる。
hy-6

そのボスに挑戦する条件もまた緩い。
ボスの封印を解くためにモジュールを4つ起動する必要があるが、東西南北の各フィールドに8つモジュールが設置されており、そのうち4つを発見できればボスと戦える。
だから、ふらふらと探索してもなんとなくモジュールを見つけてボスと戦える。
hyrr-2
▲モジュール。見つけると割とうれしい。

ボスの攻略もまた自由だ。
この世界のフィールドには、“ギアビット”というキャラクター能力を強化するアイテムや、見た目を変えるアイテムなどが隠されている。
hyr-1
▲特別な場所に入る鍵、バックストーリーを語る石碑など、さまざまなものがフィールドに用意されている。アイテムが多く、隠し通路を探すのも楽しみの1つ。

世界を探索して“ギアビット”を集めれば、街で爆弾を買ったり、通常技のパワーアップを買ったりと、ドリフターの能力をあげられる
だが、このゲームのバトルはパワーアップが前提ではない。
hyrr-1

ドリフターは基本能力が高く、達人ならば初期状態でボスを倒す能力を持っている。
そこそこ腕に覚えがあるなら少し探索してからボスと戦えばいいし、アクションが苦手なら隅々まで探索して、十分パワーアップしてごり押し気味に攻略することもできる。

この自由なバランスが秀逸で、私はゲームシステムやお約束に煩わされることなく、荒涼とした世界を自分のペースで気楽に遊べた。
とにかく気の向くままに冒険していると、いつの間にか美しい風景が目の前に広がったり、この世界にかつて栄えていたであろう文明の気配が感じられた。
ボスが近くなるほどに「この先には近づいてはならぬ」という空気が漂い、恐ろしさを感じることもあった。
とにかく、好きに移動して「知らない世界を自由に旅をしている」楽しさがあった。
hy-13

貧乏くさいかもしれないが、600円の価格設定も良かった。ゲーム機・PC版は2,400円なのだが、それぐらい払うと私は「全部の要素を遊ぼう」と気張ってしまう。
この価格だと「要素を無視しても楽しめればいい」とばかりに、のびのびと遊べて、とにかく動きたいように雑に旅ができた。
それが、解放感につながっていた。
言葉を交わすことなく、映像だけで世界を創造し、異世界を気のおもむくままに堪能できた。
hy-10

自由な旅、たまに発生する激しいバトル、探すとすぐに見つかる隠し通路(だが、最初のプレイでは全体の25%も見つけていない。とにかく隠しアイテムが多いから探せば見つかって嬉しい)。
私が『Hyper Light Drifter』をクリアするまで、およそ6時間は最高に濃密な時間だった。
そして、気づけば2周目(クリアするとキャラを変更もできる)を遊んでしまい、ほぼすべての要素を見つけてがっつり遊んでしまった。

適度に手ごたえがあるアクションアドベンチャーを探しているなら『Hyper Light Drifter』を選ぶのが正解だ。
そして、さらに見知らぬ世界を自由に旅してみたいなら、このゲームを遊ぶのは大正解と言える。
アクションが苦手ならさすがに無理に進めないが、そうでなければぜひ手に取ってみて欲しい。

概要:
不穏で荒廃した世界に放り込まれたプレイヤーが、敵と戦いつつ冒険するアクションアドベンチャー。テキストはなく、映像だけで物語があいまいに語られる。

評価:9(すごく面白い)

おすすめ
美しくも不穏な世界観
手ごたえがある(しかし無理ではない)アクションバトル
無数の隠し通路、隠しアイテム
自由な順番で攻略できる

気になるポイント
十分遊べるが、タッチ操作には改善の余地がある
実績などを極めることを考えると、コントローラー必須
人によっては物語があいまいに感じすぎるかも

アプリリンク:
Hyper Light Drifter (itunes 600円 / Steam / Switch)

販売:Abylight S.L.(スペイン)
開発:Heart Machine(US)
HP:https://heartmachine.com/hyper-light
レビュー時バージョン:1.0.2
課金:なし

ライター:寺島壽久(ゲームキャスト トシ)
ゲーム紹介サイト、ゲームキャストを立ち上げたゲームライター。
自サイトでゲームを紹介しつつ、ファミ通・電ファミニコゲーマーなどでもゲームを紹介し続ける。新しさのあるゲーム、旅を感じるゲームが好き。

動画: