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セガハードが、初めて勝った。こじらせたセガマニアが『メガドラミニ』の『セガテトリス』に感じたこと

歴史のIFという言葉がある。
「武田信玄が生きていたら、信長が天下を取るなんてありえなかった」
など、現実と異なる仮定をして、歴史を妄想する作業である。
僕は(おそらく他の重度セガマニアも)そういった妄想にとらわれがちで、中でも「メガドライブ版テトリスが発売されたら、セガハードに有利に働いた」とか考える向きは多い。
もちろん、歴史のIFとはあり得なかったことだから、そうならないのだけども……。
2019年6月4日、“メガドライブミニびっくり話”の放送で、セガとM2がメガドライブ版『テトリス』を発表し、歴史が変わった。そして、僕の中のハード戦争はセガの勝利に終わった。

セガにまつわる歴史のIFは多い。
「CMで話題になったときドリームキャストの生産が間に合っていれば歴史は違った」
「セガとバンダイが合併していたらサターンは勝っていたかもしれない」
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▲当時の記事

そんな中でも現実味があるものが、
「もし、セガから家庭用テトリスが発売されていたら」
という妄想だ。なんせ、テトリスといえばセガという時期があり、実際にゲームまで製作されていたのだから。

1988年、セガが発売したアーケード用ゲーム『テトリス』は、ゲームセンターで圧倒的な支持を得ていた。
日本の『テトリス』ブームは、セガの力が大きかったと言われている。
実際、セガの『テトリス』はテトラミノ(テトリスのブロック)が画面下に着地してから動かせる“遊びの時間”を入れた初の作品とされていて、これが業界スタンダードになっている。
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当然の流れとしてセガはメガドライブ向けの『テトリス』を開発・製造するが、ここに任天堂がやってくる。
任天堂は『テトリス』の権利関係が混沌としていることに隙を見つけ、権利元と交渉して家庭用ゲーム版『テトリス』の独占権を得てしまう。
結果として、ゲームボーイ版の『テトリス』は独占キラーソフトとなり、ゲームボーイで最も多い400万本以上をうりあげてハード普及に貢献する。
一方、『テトリス』人気に貢献してきたセガは、すでに製造が終わったメガドライブ版の『テトリス』を廃棄する羽目になる。

これは任天堂を悪者とした書き方をしているが、この情報が完全な事実だとは、思っていない。
そもそも権利元が適当だった説もあるし、当時の当事者にしかわからなかった事情もある(ネットの情報も完全に真実とは思っていない)だろう。
だが、過去においてこれは大学生時代の先輩、そこに影響を受けた僕にとっての事実だった。
で、僕にも「もし、テトリスがセガ独占になっていたら今もハード事業をやっているかもしれない」という想像があり、任天堂悪者説が正しくないと考えている今でも、なんとなしにそれが心の呪縛になっていた。
青春時代の未解決事件は、心の中に残るのだ。

ところが、メガドライブミニに、新作として『テトリス』が収録されるときいてその状況は変わった。
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動画を見ると、テトリスの開発者アレクセイ・パジトノフさんと、テトリスカンパニーのヘンク・ロジャースさんがビデオレターで『セガテトリス』を祝福している。
権利元に蹴られた『セガテトリス』が、30年を経て権利元に祝福されてリリースされるとは、誰が思っただろうか。
メガドライブとテトリスのときを超えた和解の瞬間だ。
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続いて『セガテトリス』のプレイ画面に入って……この瞬間、セガが、メガドラミニが勝ちハードになったことを確信できた。
誤解ないように書いておくと、僕の中での“勝ちハード”とは、利益を出して存続するものすべてだ(昔は1位ハードと思っていたけど、時間を経て認識が変わった)。
で、メガドライブミニに関しては、これだけ良いものが積まれているなら、そういった意味で“勝ちハード”になると確信できた。
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僕は青春時代、「セガが勝てない」ことに対して何とも言えない“もやもや”を感じていた。当時、セガこそが夢のあるゲームを提供するメーカーだと思っていたから。
そして、成長した今でもごく小さい“もやもや”が残っていたと思う。
しかし、メガドライブミニが『セガテトリス』を搭載し、本来ありえなかった「セガハードが勝つ」瞬間を見せてくれそうで、それも終わる気がする。
メガドライブミニが、青春の積み残しをきれいに消してくれるはずだ。
あとはセガがドリキャス撤退時に妄想した“セガが世界1位のソフトメーカーになる”を応援するだけだ!(こじらせたセガマニアは、簡単に治らない)

関連リンク:
メガドライブミニコントロールパッド(※コントローラー単品買いもできる)

以下、余談。
今回、『セガテトリス』を見て「メガドライブ版テトリスが出ても、セガは(業界1位になる意味で)勝てなかった」ことを理解してしまった。
先に書いたメガドライブ版『テトリス』の話には続きがあって、廃棄されたはずのブツはなぜか東南アジアに持ち出され、一部は日本の露店などで売られていた。
(『テトリスコレクション』に収録されているらしいので、そこで遊べる)

で、セガマニアの先輩が「卑劣な任天堂がいなければ、これが出ていたんだよ!」と遊ばせてくれたのだが……M2の作った新作『セガテトリス』と比べて、当時として微妙な出来だったことを改めて自覚させられてしまった。
任天堂は、セガの『テトリス』を差し止めたかもしれない。
しかし、差し止められなくともセガは勝てなかっただろう、という思いを強くしたのだった。

あ、メガドライブミニが待ちきれないときはSwitchの『ゲイングランド』がめちゃくちゃに出来がいいから買ってまとうな!