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キャラクターが命を持ち、人間を襲う。狂気のアニメーターが作ったスタジオを探索する『Bendy and the Ink Machine』レビュー

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やあヘンリー。30年前、いっしょに働いていたアニメスタジオを覚えているかい?
もし、君が近くにきたらぜひ寄って欲しいんだ。見せたいものがあるからさ……。
そんな手紙を受け取り、かつての職場を訪れたヘンリーが見たものは、廃墟と化したスタジオだった。
だが、どうにも様子がおかしい。
動くはずのないものが動き、あり得ない音がする。
そう、かつて人気キャラクターを生み出していたスタジオは、悪魔のインクマシーンにより、怪物を生産するスタジオとなっていたのだ……。
『Bendy and the Ink Machine』は主観視点のアドベンチャーゲームだ。
バーチャルスティックで移動し、画面スワイプで周囲を見回し、アクションにはジャンプと調べるなどのボタンを使用するオードソックスな操作を採用しており、操作性は十分に良い。
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▲ジャンプはゲーム中ほぼ使わないので、実質死にボタン。

武器を持っていればここに攻撃ボタンも加わり、ゲーム内ではインクの化け物と戦う場面も多々ある。
一部を除いて激しいアクションは要求されず、スタジオ内から必要なものを探したり、仕掛けを動かしたりする探索がゲームのメインだ。
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そして、本作の特徴を考えれば、探索にメインを置いたのは完全に正しい。
舞台設定と物語こそ、このゲームの魅力だからだ。
物語として生み出されていたモノたちが、謎の力によって現実に登場して襲ってくる……そんな設定とアニメスタジオの舞台が完全にマッチしており、『Bendy and the Ink Machine』を輝かせている。
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古くなったアニメスタジオに足を踏み入れるチャプター1では、ただのひたすらに不穏なスタジオの描写がある。
アニメスタジオで生まれ、過去に人気を博したであろうキャラクターたちの残り香が、セピア調の不気味な映像と共にプレイヤーに突きつけられるのだ。
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なぜスタジオはこんな場所になってしまったのか、ジョーイはなぜ手紙を出したのか。
スタジオのいたるところに音声記録が残されており、それに対する回答が断片的に伝えられる。
ここでプレイヤーとヘンリーの疑問は完全に一致し、謎を解決しようという欲求のもとでゲームの世界にぐいぐいと引き込まれていく。
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さらに、世界観を表現するための要素として、重くなりすぎない程度にホラー演出が効果的に使われており、プレイヤーを飽きさせない。
序盤は見事な導入で、このゲームがPCなどで多くのファンを獲得した理由がすぐ理解できた。
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そして2章以降ではスタジオの人間関係やジョーイの奇行が断片的に明かされ、謎も少しずつ積み上げられる。
魅力的な世界を感じ、その背景を断片的な情報から推理し、答えを確かめるために先に進む。ミステリーの面白さがプレイを進める強力な力になっており、それに命じられるままにゲームをクリアしてしまった。
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私はいっきに通してプレイしたが、最終的にゲーム内容には満足した。
とにかく舞台設定の魅力は素晴らしかった。ゲームが進むにつれて映像表現に変化が見えるし、ヘッドホンで音を聞きながら遊ぶと臨場感もたっぷり。
エンディングにも十分に納得できた。
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また、アクションが苦手で倒れても、多くの場所でそのまま進める仕組みは素晴らしかった。
とくに、倒れがちな序盤ではゲームオーバーからスムーズに次に進行することでゲームオーバーすら物語の一部としていた。
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▲ダメージを受けると周囲がインクに包まれる。が、一定時間で全回復する。

ただ、本作は完璧(なんて常にないが)ではなかった。
チャプター3、最終章の繰り返し部分でゲーム世界から現実に引き戻される中だるみ、アプリ再起動を要求する進行不能バグとも遭遇する。
序盤と終盤が良いだけに、それらの欠点はノドにつっかえた魚の小骨のように、妙に気になってしまッたことも書いておく。
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▲イベント進行のルートが開放されない、拾えるはずのアイテムが拾えないなどがあればアプリ再起動を。ロードし直しでは解消されない。

良い部分だけを褒めるにしては、悪い部分が妙に気になる。
そんな本作ではあるが、魅力的な部分は十分に機能しており、怪奇もの、ライトホラー好きのプレイヤーには十分にお買い得だ。
最高グラフィック設定で遊ぶと iPad Pro でもつらいときがあるが、中間設定なら十分に動くし「バグは再起動すれば解消する」と知っていれば、買ってもいい。
英語が苦手なのであれば、アップデートを待って遊ぶと良い。

評価:6(面白い)

ゲーム概要
古いアニメスタジオで起きる怪奇を楽しむアドベンチャー

おすすめポイント
古いアニメスタジオに秘められた物語
独特の舞台を使った演出

注意点
進行不能バグが多い
英語力が必要(というか、日本語対応なのに字幕が出ないバグか?)
明確に中だるみする箇所がある

アプリリンク:
Bendy and the Ink Machine (itunes 840円 iPhone/iPad対応 / GooglePlay / Steam)

開発:Joey Drew Studios Inc(フランス)
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:なし
公式ページ:https://joeydrewstudios.com/
ライター:ゲームキャスト トシ

動画: