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プログラムの思考力を試し、伸ばす理系パズルゲーム『7 Billion Humans』レビュー。最適化・美しいコードの沼にハマれ

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久々にどえらくゲームにはまって、1晩でクリアしてしまった。
というか、今もってゲームがやめられない。
現役プログラマ、もしくは過去にプログラムに触れて楽しんだ・仕事にした経験があるプレイヤーにとって、『7 Billion Humans』は最高のパズルゲームだ。
本作は、プログラミングをパズルゲームとして設計しなおし、遊びながらプログラマ的な思考力を養う目的の教育ゲームである。
ただ、普通の教育ゲームと違うのは、ものすごく面白いこと。
ブラックな世界観、プログラムパズルの自由度が最初にあって、楽しく遊んでいると勉強になっている。最高だ。
まず『7 Billion Humans』のオープニングからして、よい子の勉強ゲーム的とは一線を画している。
ゲームの舞台は、機械の発達で人間が働く必要のなくなった未来。人間たちは、何もしなくても食べられるし、自由に好きなことをして生きられるようになった!
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しかし、労働がなくなった世界で人間たちが求めたのはステータスとしての仕事。
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仕事が欲しいか……。
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ならばくれてやるッ!
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おめでとう、人類。君たちは全員採用だ。人類の性質を皮肉るブラックユーモアからして最高。
すべての人間にロボットのプログラム通りに動く無価値な仕事が割り当てられた。
そして……その人類を動かすプログラムを作るのがプレイヤーの役割だ。
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そして、オープニングに痺れてゲームを始めると、今度はこちらも楽しくて病みつきになる。
お仕事を始めると、最初にプログラムのお題が示される。
「人間を下に歩かせて、ものを拾わせて」など、だ。
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それに対して、プレイヤーは“Step(指定の方向に1歩歩く)”、“pickup(ものを持ち上げる)”、“drop(ものを置く)”などのシンプルな命令をドラッグ&ドロップ組み立てる。
上の例だったら「step→pickup」となる。
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プログラムを組んだら実行を押すと、今度はステージ中の人間がゾロゾロとプログラムに従って動き始める。
すべての人間が命令に従って群れで動く様子は壮観で、プログラムの成果が目に見えるという意味でわかりやすいし、面白い。
また、失敗したら何が失敗したか分かりやすいのも良い。失敗の分かるゲームは良いゲームだ。
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▲前作『Human Resouce Machine』も良かったが、演出面のエンターテイメント性も大幅に増している。

失敗理由を分析し、無事にお題を達成できれば次のステージに進める。
最初は簡単なお題と命令から始まるが、だんだんとお題も命令も複雑になっていく。
ゲームが進めば“if文(条件分岐を判断して動かせる)”とか、“jump(プログラムを飛ばして移動)”などの要素が入り、操る人間も多くなり、本格的にプログラミングっぽくなってくるのだ。
が、意外なことにプログラムを知らないプレイヤーでも序盤は簡単に攻略できる。
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なぜなら、ステージ攻略に必要なのは結果だけだからだ。
「現在使える命令で、いかにお題を達成するか」を考えられれば、その過程はどうでもいい。
7マス歩くときに条件分岐を使って短いプログラムを書いても、7回step命令を使っていどうしても、結果は一緒。
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▲画面からはみ出すほどシンプルでプログラムを書いてもOKだ

結果が同じならどちらもクリア。「美しいプログラム」とか「最適化」などは何もいらない。現実のプログラムと同じで、顧客の要件さえ満たしていれば、中でどのように動いていてもいいのだ。
だから「限られた命令を組み合わせてお題を解く」発想力のパズルとして楽しめる。
そんな基本的な面白さを確保した上で、ゲームを進めるとプログラムの深淵……というより、『7 Billion Humans』の神髄が見えてくる。
本作にはクリアのためのお題と別に、少ない行数でお題を達成する“目標行数”と、早く動くプログラムでお題を達せする“目標実行速度”の2つが示されている。
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短くプログラムを書こうとすると何かしらの閃きが必要だし、条件分岐を省いて早く動くプログラムを書こうとするとある部分では頭の悪い書き方だって求められる。強烈に脳をストレッチする、さらなる発想力のパズルになる。
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▲プログラム実行速度が1秒だけ遅い……でも縮まらない!

と言っても、目標行数などは無視してもゲームは進むから、ある程度わりきって遊べば良い。これが意味を持つのは、時間がたってからだ。
しばらくゲームを進めて序盤に戻ると、数多くの問題で悩んだ過程から「このプログラム、もっと賢く書けるじゃん!」と簡単に思いつく。
過去に苦戦したステージで、短く美しいプログラムを書けると、プログラム思考が育ち、ゲームが上達していることが強烈に感じられる。
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▲クリア後に過去ステージで書いたプログラムを見ると、恥ずかしいほど稚拙だったりもする。

なぜ、こんなプログラムを書いてしまったのか。今なら、より効率の良いプログラムをかけるはず……なんて思ったらもう止まらない。
美しいプログラムを書くべく、過去のプログラムのメンテナンスが始まるのだ。
おそらく、単にクリアするだけなら普通のゲームと同じだが、最善を目指すと50時間は遊べる事だろう(あなたが達人のプログラマでなければ)。
最初にプログラム的なものを学び、使い続けて効率の良い作法を学び、最後に効率の良いプログラムを書くことが楽しくなる。

この流れが完全にアレ。新人プログラマが、1年たったあとにコードを見て直したくなるアレ。
現実だとプログラムを直していると怒られもするが、ゲーム内なら修正し放題。直してプログラムが美しくなると人間たちも効率的に動き、プレイヤーを褒め称えてくれる。
プログラムが上手いほど賞賛される本作は、プログラマ向けの最高のパズルゲームだ。
「コードの最適化」や「美しいプログラム」なんて言葉が好きなら、絶対ハマる。

一方で、このゲームでプログラムを勉強したいという方にも、本当にプログラマ思考育成の近道であることは保証できる。
限られた命令で、指定の結果を出す考え方は実用的だし、「同じ結果でも本当は良いコードがある」というのもこれで学習できる。
カジュアルゲームのように誰でもとは言わないが、やる気があれば面白いのは保証する。

あなたがプログラムに関わっているか、興味あるならば、本作は絶対のおすすめだ。

概要:
プログラムをパズルゲーム化した作品。プログラム思考を訓練できるだけでなく、世界感、ゲームとしても楽しい

評価:9(すごく面白い)

おすすめポイント
プログラム経験があるとすごく楽しい
プログラマ的な思考が身につき、訓練される
発想力を試すパズルとして普通に楽しい
職場で他のプログラマと最適化の腕を競うと楽しい

気になるポイント
プログラムに興味がないと厳しい
あなたが本物のプログラムの達人なら物足りないかも

アプリDL:
7 Billion Humans (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)

発売:Experimental Gameplay Group(米国)
開発:Tomorrow Corporation(米国)

HP:https://tomorrowcorporation.com/7billionhumans
レビュー時バージョン:1.0.3
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: