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デジゲー博主催、江崎望さんインタビュー「同人・インディーゲームに上も下もない。全ての開発者がフラットに参加できる場所を作りたい」

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日本最大規模の同人・インディーゲームの展示・博覧会として存在感を増しつつある『デジゲー博2018』。
なぜ、このイベントが立ち上がり、何を考えて、なぜ大きくなってきたのか。
11月4日(日)の開催を目前に、主催の江崎さんに「デジゲー博とは何か?」をお聞きしてきた。
イベント主催者から見る同人・インディーの違い、イベントに対する考え方など、面白い話がたくさん聞けたので、ぜひご覧いただきたい。

江崎:
デジゲー博主催の江崎望です。
一応、同人ゲームサークル、「D.N.A. Softwares」を経て、同人ゲームイベントの主催になり、今はデジゲー博の開催をしています。
昔はバイトしながら同人ゲームを作っていて、イベントに参加していました。
最近ではイベントの主催のほうが目立っていますが、今回のデジゲー博ではサークル参加しています。
ハードウェアが好きなので、電子工作というか、実証展示をやってみようかと。
僕が昔のアーケードでLEDの表示とゲームが一緒になっているヤツが好きだったので、そういうのがやってみたいなー、と。

ゲームキャスト:
主催のゲーム出展とは面白いですね。イベント日が楽しみです。
ところで、そもそもデジゲー博とは江崎さんから見てどんな位置づけのイベントになるのでしょうか。

江崎:
歴史の話になってしまいますが、先ほど言った通り自分はサークルで参加する立場だったんですね。
2013年の前あたり、同人ゲームって流浪のジャンルというか、コミケットでも日付の安定しないジャンルで、一般参加しづらいときもあって。
さらにゲームは手に取るというか、やってもらってなんぼなんで、電源がない会場ではノートパソコンを持っていく必要があって、展示のハードルがすごく高かった。

ゲームキャスト:
プレイできるイベントというと、2009年あたりに「秋葉原ロケテゲームショウ」(IDGA日本)というのがありましたよね。
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江崎:
ええ、そこでは試遊ができた。でも、僕の中で遊ぶと欲しくなる。そこでは売ることはできなかったので、やっぱり頒布できて欲しいなという気分になって。
そのあとM3というイベント(音楽中心のイベントだが、メディアミックスでゲームを出すこともできた)出してみたんですけど、やっぱりゲームのイベントじゃないと反応が良くない。
それで、同人ゲームを遊べて頒布できるイベントをやりたいな、とイベントの趣旨をメモするだけの妄想ノートがあって、ずっとそれに構想を描いていました。

ゲームキャスト:
しかし、2013年にそれは妄想から、実現に至っているわけですよね?

江崎:
転機は2013年で、「外国の方にインディーゲームを紹介するビットサミットやります」と聞いて、先こされちゃったと思って。
同人も立ち上がらなければあかんなぁ、と。
大田区産業プラザで他のイベントをやっている主催さんが「場所が余っているからその一部でどうですか」と言ってくれたので、間借りして第1回目をやりました。
(参考:デジゲー博(2013)アフターレポート

ゲームキャスト:
同人も立ち上がる……というと、早めに立ち上がらなければいけない理由があったのでしょうか。

江崎:
当時は同人の存在が薄くなってきた感じがしていて、ニュースもインディーゲーム一色になっていく不安がありました。
同人ショップが元気なくなってきていて、売るチャンネルが減ってきていた時期なんですね。
このままにしておくと、同人ゲームがアンダーグラウンドなものになってしまう気がして、ちゃんと同人ゲームの居場所を確保したい。と。

ゲームキャスト:
確かに、デジゲー博は場として同人を感じますね。理想の同人ゲーム博覧会、それがデジゲー博のコンセプトになるのでしょうか?

江崎:
最終的には「同人ゲームの良いイベントってこれじゃないかな、たぶん」ですね。
試しつつ遊んで、そのまま買って帰れる即売会。イベントとしては単純にオープンな場所であって、審査しない。
ゲームはフラットに行きましょう、みんな、平等なラインに立ちましょうと。
交流の場所としてやるために毎年同じ場所で同じ時期にやるし、ジャンルの区別もしないと。

ゲームキャスト:
ちょっと前に戻りますけども、デジゲー博はビットサミットができたことを契機に作ったと聞きましたが、かなりイベントとしての方向性が違うように感じているんですね。
ビットサミットは、お客さんを意識したショウで、ゲームを海外にプロモーションするものと感じているのですが、デジゲー博として意識していることはありますか。

江崎:
お客さんはいなくて、サークルと一般参加者という言い方をしています。「同人イベントはみんなで作るもの」と言っているんです。
何らかの形でデジゲー博にくる人は良いものを持ち帰って欲しいなぁ、と思っています。
サークルが展示しやすくしてあげれば、その分が一般参加者に返ってくるんじゃないかな、という気はしています。

ゲームキャスト:
最近ではどこのイベントでも配信などしていますが、デジゲー博では配信などしないのでしょうか?
インディー開発者などにとってそういったプロモーションは重要になりつつある気はしていますが。

江崎:
あると思いますけど、デジゲー博のルールで許可のない撮影は禁止、ストリーミングは全面禁止です。
同人ゲームの歴史的事情というのがあって、顔を出したくない人もいるんですよ。
顔が出てしまったために職場にばれて同人活動を停止というのが僕らにとって一番悲しいことで。

ゲームキャスト:
本業がゲーム開発者で、会社に内緒で出展している方とか結構いますよね。そういった受け皿としての同人なのですね。

江崎:
1回だけ、デジゲー博SPでは(ニコニコ超会議内のイベントだったこともあって)外側を放送しましたが、結局は限られたスタッフ人数でストリーミングをやっていると、人が足りない。
それに人を割くより、イベントを円滑に進めるスタッフを増やすのが僕らの筋だろうと。

ゲームキャスト:
とすると、広報はあくまでも限定していくということですね。
イベントにメディアを呼び込むようなこともあまりしていませんよね。

江崎:
同人誌のイベント(開催を)でニュースリリースする方はいませんからね。
Twitterに流していますし、メディアは来るものなら拒まないという感じで、興味を持った人がイベントにきて、参加者になって欲しい。
(デジゲー博としては)ひたすらリストを出すだけで、どういうサークルが出ますとか、「あの●●がくる!」みたいなことは言わず、中立で場を提供していくだけですね。
サークルさんがデジゲー博に出るというリリースを出すことはあるので、それで出ることはあります。

ゲームキャスト:
他のイベントとの比較で言うと、ゲーム賞を作って表彰したり、ステージイベントがないというのも特徴だと思いますが、こちらはどういった意図なのでしょうか。

江崎:
(賞については)ただの制作者である僕らが、人の作ったゲームを上にしたり下にしたりする役割じゃないよね、ということで。
企画は、僕の妄想の中ではあるんですけど。
ステージイベントをやって、パブリッシャーさんに来てもらって、プレゼンして、札をあげてもらって、スター誕生みたいに「パブリッシュ決定」ってやりたい(笑)

準備会としては、何かしたいと思ったサークルさんにはさせてあげたい。普段できないことを出せる羽目を外せる場所にしたい。
いつもだったら、持ってこられないものが持ってこられるとか。
乗馬マシーンを持ってこられるようにして、『ガンナーオブドラグーン』を展示できるようにしたり。

▲『ガンナーオブドラグーン』。体感VRゲームとして各所で話題になった。

2014年にシューティングサークルが集まって、総合スコアを競うという大会(今回もインディーシューティングゲームキャラバン2018という名前で開催される)もやっています。
面白いこと考えるブースさんとか、サークルの創意工夫に対応することもあるので、ブースを作るのは大変なんですけど。
ブースを作るという行為自体がサークルの表現であるというのを見て欲しいな、と。

ゲームキャスト:
そのように静かにやっているデジゲー博ですが、回を重ねるごとに大きくなっていますよね。規模や方向性で変わってきたものはあるのでしょうか。

江崎:
スタッフで言えば20人ぐらいです。いつもスタッフ募集中で、足りていないのでいつでも募集しています(笑)
方向性は第1回と変わっていなくて、大きくなったのは秋葉原の会場が良かったのかなと。なんだかんだで秋葉原がソフトウェアの街というイメージがったので良かったと思います。最初は「聖地秋葉原で開催!」って煽りまくっていましたね。

2016年が終わったあたりで厳しいなとなって、ついに上の階のUDXギャラリーを借りるようになり、2017年は余裕をもっていたのですが、今回の2018年は書類不備や入金確認できずなどを除いた、300サークル程度の申し込みに対して270サークルを当選となりました。

ゲームキャスト:
270サークル=270ゲームと考えると、日本で最大数の同人・インディーゲームが展示されるイベントになりますね……。
デジゲー博によって同人ゲームの勢いは復活したのでしょうか?

江崎:
うちの結果かどうかわからないですけど、コミケを見ても、若いサークルが入ってきているんですよね。
新しい風は入ってきているし、しばらくはゆるゆる続くんじゃないかなーと思っています。
デジゲー博は学割もあって、学生さんはちょっとだけ優遇しているんですが、そのおかげもあって学生さんの初参加が多くて。

ゲームキャスト:
いいことですね。さて、すでに最大のインディー・同人ゲーム博覧会になったデジゲー博ですが、今後の目標などはありますか?

江崎:
イベントの形は変わらないと思うのですけど、サークル数を増やしたいですね。イベントとして、広いところに移るかというのがホットな話題です。
抽選をして、落選しましたという残念な報告が上がっていて、こっちも悲しい。

ゲームキャスト:
サークルが増えるにしたがって、1日で回ることも難しくなってきていると思うんですけど。2日体制になることは考えられないでしょうか。

江崎:
そこは、サークルチェック頑張ってね、と。
スタッフの身体もあるので無茶は言えないし、代表もキツイ。今、20人の規模では難しいわ、と。

ゲームキャスト:
関西デジゲー博待望論もありますけど、それだと難しそうですね。

江崎:
デジゲー博待望論自体が高まっている気がするんですけど(笑)
関西側にはスタッフもいないので、現実的ではないかと。僕として言えるのは「暖簾でもわけます?」って。
春秋開催は面白いと思うんだけど、現実的には……と。
そういう意味では他のイベントにも盛り上がって欲しいですけど、なかなか理念が違って、同人ゲームの流れでイベントやっている人がいない。

ゲームキャスト:
ある意味では、「同人ゲームの居場所を作りたい」という江崎さんが作ったイベントが、そのまま本当に同人ゲームの居場所として機能しすぎたのかもしれませんね。
そういえば、ここまで同人軸で話をお聞きしていましたが、デジゲー博は「同人ゲームイベント」ではなく、「同人・インディーゲームイベント」ですよね。
そこはどういった理由で一緒にしたのでしょうか。

江崎:
インディーゲームが盛り上がってきたタイミングで、なんとなくですけど、同人とインディーを分けちゃいけないなと思って。
デジタルゲームならどちらも含めてるので、同人・インディー含めて「デジゲー博」となったと。

ゲームキャスト:
とすると、そのときから同人とインディーを同じようなものだと考えていた?

江崎:
結局は、サークルの履歴、デベロッパーが歩んできた道なんじゃないかなーと思っています。
あの人はインディーだ、同人だと分類するでもない。結局はどのイベントに出てきたかって話にならざるを得ないんじゃないかなーと。
同人でも商売っ気あるなしを言われているんですけど、インディーでも実験作もあるし、ゲーム開発にお金もかかる。イベントの参加費を回収したいでしょうし、単純に在庫は減った方がいいと思うんですよね。
ただ、うち(デジゲー博)は同人っぽい。そこは変わらない。

ゲームキャスト:
同人も、インディーも、どちらもインディペンデント(独立系)ですよね。
イベントに関しては思うところはみんな、それぞれあると思いますけど。

江崎:
どっちもインディペンデントで、同人はインディーのさらに狭い区域かな、と。
イベント側も作る側もインディーの定義も違うし、それが「思うところ」になるのかな。
インディーに思うところというと、(ゲームとしては)既存にないジャンルばかり求められている機運がいっときありましてね。

ゲームキャスト:
結局、『悪魔城ドラキュラ』っぽいゲームとか、そういった「昔はやっていたけど、今は商業に乗らないもの」がどんどん出てきた気はしますが。

江崎:
いわゆるメトロイドヴァニア系が出てくる前の空気、「既存のジャンルに乗っているのはインディーっぽくない」と言われていたころは僕の中で引っかかってました。
同人ゲームは既存のゲームに乗っているじゃないですか。シューティングとかガンガン出ていて。
ところがインディーゲームは既存のジャンルから二ひねり半ぐらいして、アートなゲームになってしまったりして僕は「うーん」と(笑)

ゲームキャスト:
ありましたね。でも最近、そういった空気はなくなってインディーが解放されたというか。いわゆるTGSのインディーゲームコーナーや、インディーゲームイベントを見ていると商業とのせめぎ合いが出てきているようにも思えます。
最近だと、老舗ゲーム企業のアクワイアがTGS2018のインディーブースに出展して、一部で話題になりましたね。
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▲アクワイアが展示した『SCRAP RUSH!!』。これもまたインディーか。

江崎:
あれは見てみると、アクワイアは自分たちを本気でインディーだと思っている。自分たちをインディーと思っているなら仕方ないなー、と。

ゲームキャスト:
海外ではUbisoftの『Child of Light』で物議を醸しだしましたが、社内で「企画を出して好きに出していいよ」って言われて、そこで制約なく自由に作っていい環境があれば、ある種「インディー」とは言えますからね。
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▲『Child of Light』。

江崎:
そういう気はする。
ただ、背負って立つ悲壮感は違う。だから、いわゆる身体1つで成り上がったインディーからすると「違う」と思うのはわかる。

ゲームキャスト:
とはいえ、デジゲー博にくると大御所でもそんなに違和感はないですよね。

江崎:
以前、アクワイアの遠藤さん、ノイジークロークの坂本さん、ビサイドの南治さん、ムームーの森川さん、4人の有名なクリエイターの方で組まれたゲームジャムチームがサークル参加するというのがあって。
普通に展示に溶け込んでいたのかな。
デジゲー博にくればフラットな感じになってしまうのかな、と。

明示的にショーレースがあってもいいですけど、草野球の自由にできるフィールドがあって、そこに小さな野球があって、そこがあってメジャーが生まれるものだろうと。
そこにプロが来て「こういうのもあるんだよ」というのもあるだろうし、ルールさえ守っていれば、上も下もないだろう、と。
大きいところでいうと主旨に賛成していただいて、毎回お世話になっているインティ・クリエイツさんとかもありますし。

ゲームキャスト:
結局、デジゲー博は草野球場と。
インディーゲームも同人ゲームも、誰が何を出しても場が序列をつけないフラットな草野球場だから溶け込むのかもしれませんね。
ゲーム機では売れるゲームがインディーって感じは少しありますが。

江崎:
Nintendo Switchでは結構ぽんぽん何でも出ている気がするけどね(笑)
でも、やっぱりパブリッシャーの選ぶものだから売れやすい。売れるか売れないかわからない、尖ったものを観たければitch.io(出店の敷居が低いPCゲームダウンロードサイト)とか見ればいいわけで。

ゲームキャスト:
それが日本ではデジゲー博ということですか。
実験作も、商品になるかわからないものも、なんでも日本で一番尖ったゲームが見られる場所、ですか。

江崎:
そういったものも来るといいな、と。
少なくとも、デジゲー博が一番なんでも展示しやすいと思いますし、そういうもの(尖ったゲーム)が見られると思いますし、書類不備さえなければ通りますし(笑)
一般参加者には、それを持ち帰ってもらいたいと思っています。

ゲームキャスト:
ありがとうございました。当日、個性的なゲームが見られるのを楽しみにしています。

以上。
デジゲー博2018は11月4日(日)11時~16時まで、秋葉原UDXの2F AKIBA_SQUARE と 4F UDXギャラリーNext1&3 で行われる。
新しいゲームとの出会いを探しているなら、日本ではこのイベントが最も多くの同人・インディーゲームと出会わせてくれることだろう。
ゲーム好きの皆さんは、ぜひ日曜日にデジゲー博に参加してほしい。なお、入場にはカタログが必要なので、当日、会場のカタログ販売所で購入しよう。

関連リンク:
デジゲー博 | 同人&インディーゲームオンリー展示・即売会
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