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簡単に深い読み合いを味わえる式神将棋『Onitama』レビュー。世界的ボードゲーム販売会社からリリースされた日本発のゲーム

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がたん、ごとん。
電車に揺られて慣れたゲーム友達(もしくは恋人)と2人のちょっとした旅行。何か遊びたいけど、せっかく相手がいるのに別々のソシャゲを遊んでいても味気ない。
そんなときにお勧めしたいのが、今回紹介するドイツゲーム(カタンなどに代表されるボードゲーム・カードゲームの総称)の『Onitama』。
適度に短くて悩み、読み違えのハプニングもおきて「ああ、間違えたっ!」と叫べる。ガチでやるより、たまのタイミングに気軽に友達と対戦したいゲームだ。
『Onitama』は陰陽師の跡継ぎ争いをテーマとしたゲームで、式神を操ってライバルの陰陽師と1対1で戦う変則将棋。
お互いの情報が全て見えるアブストラクトゲームで、相手の手札から次の行動を読み、1手、2手先を読み続ける思考性の高いゲームを楽しめる。ゲームは5×5の盤面で行われ、それぞれの陣営の端に陰陽師コマを1つ、その横に式神コマを4つ配置して始まる。
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コマの間に優劣はなく、自分の手番にコマを移動させてライバルのコマに重ねると、そのコマを取り除ける。
勝利条件は2つあって、1つはベーシックに相手の陰陽師コマを取り除くこと。
もう1つは、相手陣地の中央(最初に陰陽師がいる位置)にある玉座に、自分の陰陽師を移動させても勝利となる。
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▲玉座には塔のマークがおかれる。

各プレイヤーは、1ターンに1つのコマだけを移動できるのだが、ここがゲーム最大の肝。
将棋やチェスなら毎回、同じコマなら同じ動きをする。しかし、『Onitama』では3枚の手札から1枚を選択し、そのカードに描かれたとおりにしかコマを移動させられない。
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しかも、使用した手札は次のライバルのターン終了後にライバルの手札になる。
つまり、自分の使用した移動パターンは相手のものになり、相手が移動に使用したカードは自分の手札になるわけだ。
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これがとても面白くて、例えば敵の手札に前進できるカードがなければ安心して敵の目の前に陰陽師コマを移動させることもできてしまう。
自分が全身用のカードを使わない限り、相手は永遠に前進できない(実際には、斜め移動などを組み合わせて相手も対処してくるから、こんな単純ではないが)。
アブストラクトゲームならではの読みあいの応酬が展開される。
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また、手札3枚というのが絶妙で、ほどほどに計算ができて、程よく見落としをする。
読み切ったつもりが2ターン後に読みの漏れがあって詰んでしまったり、逆に相手がひょいっとやられてくれたり、思いもよらないハプニングが連続し、友達などとのプレイは特に熱い。
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完全実力ゲームではあるが、狭い盤面で適度に軽くプレイでき、1プレイも15分程度(このあたりは人によるが)。オンラインプレイはもちろん、1台の端末を使って友達と対戦する“Pass'n Play”にも対応しており、旅行時の長い電車での暇つぶしなどに力を発揮する。
アナログゲーム版の『Onitama』も良いが、どこでも持ち運んで遊べる気軽さの点でアプリ版にもまた魅力がある。
コンパクトにまとまっていて、ドイツゲームファンはもちろん、ちょっとした時間に友達と遊びたい方にもお勧めできるアプリだ。
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ここまで遊べて、本体は完全無料(アナログ版は数千円)。
課金要素は16種類の追加カードパック“SENSEI'S PATH”とSFデザインのコマセットで、それぞれ240円。セットで360円。
“SENSEI'S PATH”は変則的な手札を楽しめるので、長時間遊ぶなら買って損はない。また、単品で買うと2,000円以上するアナログ製品のお試しとしても使える。
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と、アプリの紹介が終わったところでちょっと横道にそれるが、このアプリを見たとき、私がすごく感動してしまった話をして終わりたい。
近年『カタンの開拓者たち』あたりから盛り上がってきた感のあるドイツゲームだが、日本においても1988年の『モンスターメーカー』のヒットがあり、2000年には手作りのボードゲームを持ち寄れる展示会“ゲームマーケット”が始まっていて、私は日本のゲーム品質は良いし、歴史でも負けていないと思っていたのに、海外に出られていないことが学生ながら何だか悔しかった。
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▲『モンスターメーカー』。画像は近年発売されたリメイク版。海外の人にUNOやD&Dは通じるけどモンスターメーカーやソードワールドが通じないのが悔しかった。

そこにきて、2014年に“同人ボードゲーム”としてゲームマーケットに出店していた『Onitama』が、いつの間にか世界的ドイツゲームパブリッシャー、Asmodee Digital からアプリとして配信されているのを見て、日本のドイツゲーム(という言い方はなんだか変だが)も世界で認められるようになったのだな、と感慨深く思ってしまった。
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▲海外版のアナログ『Onitama』(Amazonより)。これが海外流通してる。

同じ年には『ラブレター』がドイツゲーム大賞4位入賞を果たしているが、やっぱり海外で遊ばれるアプリが目の前にあって、海外では実際に1,000件近いアプリレビューが投稿されているのを見ると感動してしまう。
一方で、『Onitama』は日本産のゲームなのに、日本語対応していない。「日本のボードゲーム製作者は一定の評価があるのに、市場が小さい」と言われているが、そういった現実もまた実感してしまった。
『Onitama』の紹介を機に、ドイツゲームアプリを日本語で遊べる日が来るように、積極的にこれらのゲームも紹介していこうと思う。
ということで、まずは皆さん第1弾の『Onitama』をよろしく。

概要:
簡易な将棋系対戦ゲーム。互いに使用したカードが次ターン相手の手札に入るので、カードコントロールの読みあいが熱い。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
わかりやすいルール
適度に先が読める情報量の少なさ
軽量ボードゲームが2人で気軽に遊べる

気になるポイント
ガチで遊ぶと千日手が発生することも

アプリDL:
Onitama: The Board Game (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:佐藤慎平(日本)

販売:Asmodee Digital(フランス)
HP:http://www.asmodee-digital.com/en/onitama/
レビュー時バージョン:1.1
課金:スキン(SF)、追加カード、前記2つのセット

ライター:ゲームキャスト トシ

動画:


アナログゲーム版Onitamaはこちら(Amazon)
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