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素直なお姉さんに振り回されて変わるコミュ障少年の青春物語『アイ・ビー ~コミュ障の俺が選んだ未来~』レビュー

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俺も、こんなお姉さんに振り回される少年時代を送ってみたかったよッ!
『アイ・ビー ~コミュ障の俺が選んだ未来~』は、アプリコンテストに挑むコミュ障な天才ハッカーの少年が、アプリコンテストのサポート係のお姉さんに出会って変わっていくSF青春ノベルだ。
少年の青春物語を軸に、SF的な裏テーマも背後で動いており、2時間程度で読み終わる良作短編なのだが……個人的にはツンしかない主人公を、外的要因によってデレさせるツンデレの演出が甘酸っぱすぎて、そこをみんなに見て欲しい1作だ。

本作はスマホに特化した画面表示と演出を評価され、Google Indie Fest でベスト10入りを果たした『怪異掲示板と7つのウワサ』を土台に使っており、スマホの縦画面で楽しむことを前提とした作りを特徴としている。
片手でいつでも見られる縦画面をベースにして、メッセージは上部にまとめて視線移動が少なくても読める配慮をし、映像も画面下にきっちり入れ込む。
キャラクターの表情は親指の位置で隠れないように配慮されており、すごく遊びやすい。
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肝心のストーリーも、ライトに読めて楽しめる内容だ。
主人公は“好きなことだけ早口で饒舌にしゃべる”オタク・コミュ障のハッカー少年で、自らのコミュニケーション能力不足を補うため、人の気持ちを理解するAIインタフェースを製作し、アプリコンテストに応募する。
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そして、そこにアプリコンテスト側からサポート役の天然で素直なお姉さんがやってきて、AIに人間の感情を理解させるべくネットをハッキングして人々のチャットデータを読ませたり、さまざまな場所に出かけたりする。
本作は、その過程で異常なチャットデータを発見して、事件に巻き込まれたりするショートストーリーの集合になっている。
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▲殺人事件寸前のチャットを発見し、しかたなく調査に出てしまう主人公たち

全6章の内容は短くまとまりつつ、全体として人の感情を理解していくテーマがあり、「異常に成長が早いAIの不思議」などSF的な伏線も張られて短く、楽しく読んでいける。
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何より、コミュ障の主人公がヒロインに振り回される姿が甘酸っぱくてたまらない。
最初から終盤まで主人公のひねくれぶりは変わらないのだが、愛を理解するために高校生カップルを尾行するなど、様々なイベントを経て外交的にはなっていく。
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▲カップルを追いかけるため、遊園地を楽しむ2人(画像右の左側)。お前ら早く付き合え。

しかし、主人公はややツン(デレはない)コミュ障だから、ヒロインに感謝をしつつも絶対言葉にはできない。そこで良い仕事をするのが主人公が作るAIだ。
AIが成長して感情を理解し始めると主人公が「帰れ!」と言ってもAIが「主人公はありがとうって言ってる!」などと翻訳し、本心が丸裸にされてしまうのだ。
素直なお姉さんと、感化されても言葉にできない主人公のやりとり。ツンデレの「デレ」をAIが担当することで、単なるツンデレよりも本心を暴かれた主人公の仕草の甘酸っぱさが際立つ。モロ青春モノである。

一方、アドベンチャーゲームとしては少し物足りなさもあって、ごく稀に登場する選択肢では間違えると即ゲームオーバー。この仕組み自体は前作の『怪異掲示板と7つのウワサ』と変わらないが、バッドエンドを見るたびホラーを味わえる前作と比べ、どうしてもバッドエンド見る動機が薄くなっている。
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▲最初の少年院ENDだけは凝っていて良かった。広告を見ると即座に直前の選択肢に戻れるが、やり直してもストレスはない。

心の描写に重点が置かれる一方、SF要素はあくまでおまけにとどまっており、ラストに関してはもうひとひねり欲しかったようにも思う。
とは言え、少年とお姉さんの歯がゆい青春物語としてはかなりいい感じにできていて、十分楽しめるので、青春ストーリーやお姉さんに変えられていく少年の姿を見たい方はぜひこのアプリを試してみて欲しい。

評価:6(面白い)

ゲーム概要
縦画面で読みやすく配慮したコミュ障主人公とお姉さんのSF青春物語。

おすすめポイント
心を暴かれる主人公が可愛い
短くて読みやすい物語

注意点
青春モノとしては良いが、SF的には物足りなさはある
稀に操作が反応しなくなる

アプリリンク:
アイ・ビー ~コミュ障の俺が選んだ未来~ (itunes 無料 / GooglePlay)

開発:エンタブリッジ(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし
公式ページ:https://twitter.com/entabridge
ライター:ゲームキャスト トシ