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『どうぶつタワーバトル』をパクった『画太郎ババァタワーバトル』は何が問題だったのか。パクリだらけのアプリ世界で狂っていた作品リスペクト精神

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集英社は6月5日、『どうぶつタワーバトル』の類似性が話題を呼んでいたゲーム、『画太郎ババァタワーバトル』の配信停止と返金受付を発表した。
『画太郎ババァタワーバトル』は漫☆画太郎先生の作品『星の王子さま』コミックス2巻の発売を記念して6月4日にリリースされたものだが、物理シミュレートされた挙動で動く“ババァ”を2人のプレイヤーが交互に積み重ね、先に崩れて土台から落ちてしまったプレイヤーが負けるという内容がヒットゲーム『どうぶつタワーバトル』と酷似しており、作者がそれに対する不快感を表明し、ファンの間で騒ぎとなっていた。
しかし、パクリだらけのアプリ界で、このアプリの何が問題だったのだろうか?それを今から解説していきたい。

まず、『どうぶつタワーバトル』の説明をしておこう。
『どうぶつタワーバトル』は、2人のプレイヤーが動物型のブロックを交互に積んでタワーを作り、先にバランスを崩してどうぶつを画面外に出してしまったプレイヤーが敗北となる対戦ゲームだ。
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物理演算で落ちるブロックを積み重ねる『99 Bricks Wizard Academy』が話題になって以来、スマホでもこういったゲームは増えたし、対戦系ゲームもあった。
しかし、『どうぶつタワーバトル』はそのジャンルにおいて動物型のユニークなブロックと、45度単位でブロックを回転させる仕組み取り入れたオリジナル作品である。
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▲ブロックを落としてタワーを積み上げる『99 Bricks Wizard Academy』。現在は無料になっている。

続いて、『画太郎ババァタワーバトル』について。
『ババァタワーバトル』は、2人のプレイヤーがババァ型ブロックを交互に積んでタワーを作り、先にバランスを崩してどうぶつ(ババァ)を画面外に出してしまったプレイヤーが敗北となる対戦ゲームだ。
ゲームシステムは酷似しているが、ババァと動物の形が違うだけでゲームテンポは異なってくるし、ババァのコレクション、カットインが入るなどの違いがある。
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まず、ゲーム内容を見て違法と判断したり、裁判に持ち込めるかというと、それはない。
遊びのルールに権利が認められないので、ルールの類似で訴えることはできない(前述のとおり、どうぶつタワーバトルに似たゲームも以前からある)。また、ゲームはルールが一緒でもパラメーターが異なればプレイ感覚も異なってくるので、そこをとがめるべきでもない。

一方で、ゲーム名には明確に問題がある。
ゲームの内容が酷似しているうえに『タワーバトル』とついており、関連作品であることを連想させてしまうのだ。ゲーム会社同士で争いがおこる時は、いつもここが争点になる。
過去、エンターブレイン(ファミ通などを刊行していた会社)が独立したファイアーエムブレム開発者を支援して制作した『エムブレムサーガ』は、『ファイアーエムブレム』を想起させるとして不正競争防止の観点で敗訴し、のちに内容とタイトルを改め『ティアリングサーガ ユトナ英雄伝記』としてリリースされた。
『荒野行動』と『PUBG』の訴訟問題も、『荒野行動』が『PUBG』のモバイル版であるかのように宣伝したというのが問題とされている。
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▲イメージキャラに仮面を使っていることも含め、荒野行動はPUBGを想起させるプロモーションを行っていた

そんな名づけを行っていながら、似ている内容で配信してしまったのが『画太郎ババァタワーバトル』問題と言える。
『少年ジャンプ+』編集部はオリジナルの漫画を生み出す場所にもかかわらず、オリジナルゲームを尊重する配慮が足りなかったのだ。

では、今回はゲーム内容を似せても、『画太郎ババァ積み』など別の名前なら完全に問題はなかったのだろうか?
そうとも言い切れない。パクリ問題にはもう1つリスクが存在するのだ。
それは原作者の不興を買うリスクだ。ゲームルールは守られないから、類似ゲームを出すのは違法ではない。しかし、明らかにひねりがないゲームが出たとき、原作者が「不快である」と表明するのもまた自由だ。
『画太郎ババァタワーバトル』は、原作者の不興を買って騒ぎになり、このリスクを被った形となる。

アプリの世界に限らず、現実世界においては頻繁に小規模ヒット作品のルールや名前にあとのりしたゲームが登場し、何も知らないとそれが正常であるかのように勘違いしてしまう。
同じルールの作品もあれば、『●●タワー崩し』とか『●●バトルタワー』とか、『どうぶつタワーバトル』とルールに違いはあっても似たタイトルや画面で釣ることもある。
しかし、こういった便乗アプリは後ろ指を指されても仕方のない不名誉なゲームであり、名前を隠して個人名でリリースするか、「どこかで見たアプリ」に変更を加えて出す専門の業者が行っている。
もしくは、その不名誉やリスクをこうむっても大金を稼ぎたい会社が行っている(ゲームキャストでもこういったものは無視するか、良い感じには取りあげない)。
とはいえ、大手同士でも特定のゲームのコピーを扱ったことで関連会社へオリジナル作品を作った会社から広告発注が控えられるケースもあったりと、大手でもこのリスクは存在する。

そういった日陰者の会社が平然と商売している様子を見ると、正常な感覚も狂うのだろう。大手の集英社『少年ジャンプ+』編集部は、自らが著作物を作る会社でありながら、そういった業者と同じ土俵に乗ってしまった。それが今回の問題点と言える。

さらに言うなら今回、アプリ取り下げの騒ぎとなってしまったが、すでに話題になって原作マンガのプロモーションの役割は果たしてしまっているし、“クソ”を特徴とする漫☆画太郎先生の作風だと、このクソな騒ぎですら許される空気がファンの中にはある。
『どうぶつタワーバトル』作者が泣いて終わりではなく、お金を払ってアプリも再開するのがファンもゲーム開発者も幸せになる解決方法だと思うが……それについては今後の『ジャンプ+』編集部の動きを見守りたい。

アプリリンク:
どうぶつタワーバトル  (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
99 Bricks Wizard Academy (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)