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みんなの時間を溶かしたい!あわよくば廃人にしたい!『ダンジョンメーカー』を広めたいゲームライターが考えて実行したこと

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『ダンジョンメーカー』を流行らせたい。
5月18日、私は『ダンジョンメーカー』と出会った。出会って、ハマって、即座に6時間遊んでしまった。
不親切なところはあるが、ビジュアルはすごくキャッチーだし、理想のダンジョン像を描きながらランダムな3択報酬を選ぶ「運と選択」のゲーム性も好きだ。
このゲームは有料ゲームTOP10に入るぐらいのポテンシャルはある。
『パワプロ』と『ローグライク』を足して3で割った感じの内容と周回テンポはソシャゲ好きもゲーム好きも楽しめて、紹介したら80%ぐらいの人は気にいるだだろう。普通は「自分の好きなもの、50%ぐらいの人は気に入るかな?」とか考えながら紹介するが、これはもう80%(感覚値)。これは全力で応援してやろうと決めた。

この記事は、そう思ったゲームキャストが『ダンジョンメーカー』の記事をどんな思いで書いたかという記録になる。同業ライターの参考のために書いているので、興味がなければ楽しすぎて時間がゆがむ…『ダンジョンメーカー』の次に遊ぶ”時間を溶かすゲーム”13選でもみていて欲しい。自分でいうのもなんだが、ガチすぎてちょっとやばいチョイスだ。

『ダンジョンメーカー』を流行らせたい。
ではどうするのか。面白いから放っておいてもヒットするかもしれないが、何もしなければマイナーサイトで取りあげられて、小ヒットで終わる可能性もある。
そこで、ゲームキャストの強みフル活用して応援することにした。ゲームキャストの強みとは、読者である。
ゲームレビューを書くと一定数のゲームキャスト読者がそれだけで買ってくれる。これは、本当にあり得ないほどありがたいことだ。
普通はちょろっと有料の新作ゲームの情報を書いても、ぜんぜんダウンロードされない。人にゲームを買ってもらうなら、本来は「複数サイトで見て、ツイート数1,000越えてる何かも回ってきて、友人も勧めてきたし買うか」ぐらいの準備が必要だ。

ところが、ゲームキャスト読者は(自分に合うと思えば)わりとそのまま買ってくれる。0の状態から、いきなり1にもっていける。
しかも、結構なゲーマーや業界人も多いので、楽しんでもらえればそこから波及することも多い。今回はゲームが特別に面白いので、プレイしてもらえれば波及すると信じていた。

そこで、今回の作戦としては読者に明確にメッセージを投げて最初のプレイヤーを確保し、他のメディアが見逃せないほど広げて拡大する作戦をとることにした。流行り始めた頃にゲームキャストが「有料ゲームTOP10に入ったダンジョンメーカーってなんだ!?」という感じでダメ押しのプッシュ記事を書き、あわよくば一般サイトにも波及させる。これだ。

そして、最初に『ダンジョンメーカー』について書いたのが、新作をまとめて伝える“新作一覧”という記事。ここでレビューするより1日前に新作を出し、特にアンテナの高い読者に伝えておくのだ。
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なぜ新作一覧を先に出したかというと、単に上手にレビューを書けてもゲームは広まらないと思っているから。レビューを見て喜んで、SNSなどで広げてくれる人は“すでにプレイしている人”が多い。
人は自分が好きなものが褒められているのが好き(これ自体はいいことだけど、それを理由に「読者に嫌われるから悪いことは書かない」というわけわからないネットメディアが蔓延しているのは問題)。
「これのレビューのゲーム面白そう」より、「このレビューのゲーム、面白かったしおすすめ」と言ってくれる人を先に作っておかないといけない。
そのために、ゲームキャストには5月19日の新作一覧のタイトルでは『ダンジョンメーカー』を強く押し出し、説明文も長めにして、画像もドット絵キャラを過剰に押し出した。

モンスター娘のドット絵は絶対に一部の層に刺さる。この絵が好きで、同時にゲーム好きで『ダンジョンメーカー』を気に入る読者がいることを確信していた。良い読者がいて、(多分)読者の顔が見えていることがゲーキャスの強みなのだ。
直接の名指しは避けるが、銀円錐な感じの人とか、『巣作りドラゴン』(2004年の同系統PCゲーム)をプレイしていた層が隠されたメッセージを受信してくれると信じて「頼む、このゲームは面白いと思うから…!」と、記事を送り出した。

翌日、『あと1回…が止まらない。魔王さま理想のダンジョンを作るSLG『ダンジョンメーカー』レビュー』を公開する。今度は、一般(?)向けなのでトップはタイトル画面。この絵はファンタジーだし、敵と味方が仲良くボードゲームしている様子がいいと思った。
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また、ヒットさせるためにはキャッチコピーがあった方がいいので、今回は「時間が溶ける」という言葉をレビューにいれて「時間が溶けるゲーム『ダンジョンメーカー』」としてTwitterでは強調することにした。
この言葉はキャッチーだし、自分でも「ああ、溶ける」とか言いながら遊ぶのが好きだったからだ。『ひまつぶスラッシュ』でも流行らせようとしたが小爆発だったので、今回は強めにやることにした。「時間が溶ける」を、バズり系サイトのタイトルで使わせてやろうと思った。
同時に、ゲームに絶対興味を持ってくれる層にも突き刺す宣伝をした。それは、『巣作りドラゴン』プレイヤー層。『巣作りドラゴン』とはゲーム内容が似ている。
2004年にこの手のゲームをやっていた方は今もゲームに関心が高いだろうし、彼らが認めれば面白さを保証するツイートをしてくれるはず。それを狙って専用にツイートした。
結果はと言うと、新作一覧で情報を拾ってくれた読者は思った以上にプレイしてくれていて(感謝しかない)、「これ、面白い」という感じで記事にお墨付きを与えて拡散してくれた。
そして『巣作りドラゴン』系ツイートは合計2,000ツイートぐらいいったし、ゲームレビューも500RT以上と健闘した。

ところが、今度は予想を遙かに超えた速度で広がって「マズい」とも思い始めていた。これだけ流行ると、ファミ通などが記事にする前に、あまりプレイしないで書くサイトや、SEOが強くて完全に中身のない攻略を書くサイトが乗っかってきてGoogle検索でゲームキャストが負けてしまう。自分の記事が最も中身があると言う気はないが、『ダンジョンメーカー』のことを知らない人が初めて触れる記事はある程度まともにしておきたい。
ところがゲームキャストのSEOは弱くて、先月80万アクセス中2万未満がGoogleからの流入(普通は検索流入が最も多い)。他サイトが記事を書けば検索順位で即負けである。
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▲4月のリンク元TOP10。突然SmartNewsからリンクされなくなり、読者の皆さんの記事RTなどに支えられて生きている

なので、急いで攻略ガイド記事を書いた。そして、ダンジョンメーカー攻略wikiを建てた。ここにゲーキャスの攻略記事をリンクしつつ、ちゃんと更新していけばwikiが検索エンジンに引っかかってGoogle検索上もある程度良い情報がでるはず、という考えだ。
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▲wikiの編集には自分も参加しているけど、みんなの努力で支えられている。参加者の皆さんありがとう。一応、丸コピーされるとばれる対策を独自に入れてます

ただ、wikiに関して一番大きいのは自分が楽しむ目的だ。プレイヤーが楽しく情報交換し、ゲーム側もそれで得をする関係性の2010年頃のwiki文化の楽しさを楽しむためにwikiを作った。
企業ゲーム攻略サイトが、ゲームに悪影響を与えるで書いたとおり、本来ゲーム攻略はプレイヤーのものでだったが、企業攻略サイトがそれを破壊した。
企業が乗り出しづらい中小PCゲームは未だに「集まった有志で攻略して日本語訳までやっちゃう」などが機能しているが、人気ゲームではそういった機能やコミュニティで攻略する楽しさが完全に破壊されている。その楽しさを、再び味わいたかったのだ。
現在、wikiには翻訳ミスの一覧が蓄積され、それがリスト化されて作者に送られている。作者からはwikiに対して感謝のメールが来ていて、今のところそういう作業をみんなで楽しんでいる……と思っている。こういう動きができれば他のゲームにも波及して欲しいと思っている。

……話がそれたが、ゲームに興味を持った人が良い情報に会えるように準備したころ、『ダンジョンメーカー』ブームは驚くべき速度で広がっていた。
予定通り大手メディアにも記事が載った。もちろん、ゲーキャスのレビューは検索順位が落ちて引っかからなくなった。
でもって、ある若いライターさんから「最初に見つけたのはゲーキャスなのに、大手はリスペクトなくあと乗りしている」と言われた。この記事自体がそもそもそのライターさんへの回答として書かれているのだが、実は大手メディアが後追いで書くのは自分には予定通りで、書いてもらわないと『ダンジョンメーカー』が流行らないので困ると思っていた。

というのも、ゲームキャストは素晴らしい読者(何度も言うけどすごく感謝している)に恵まれたおかげで、小さいながら0を1、0を10にするのが得意な独特なメディアになっている。ところが、10を50に増やすのは苦手で、そこからはゲームキャストを知らない人にも「なんかツイートで回ってきた(ゲームキャストの記事)けど、ファミ通にも電撃にも書いてあるから買うか」な状態になってもらわないとゲームを流行らすことはできない。

記事を盗用するサイトはともかく、大手も「状況が許せば面白いゲームをどんどん紹介したい(だが、生きるために書く記事が多い)」精神は同じで、異なる読者がいて、それぞれが協力して面白いゲームを広める同志だと思っている。
実際、大手メディアだけに載っても流行らないし、ゲームキャストだけに載っても流行らない。たくさんのメディアが書いて、プレイヤーが面白く思って、初めて流行る。
今回は『ダンジョンメーカー』を広めたい思惑に対して、大手が心で願っていた時期に記事を出してくれて「ありがとう!」と感謝している状況。ゲーキャスの記事はゲーマー読者に甘えて「気持ちが伝わればいい」で書いているので、何も知らない人には電撃がいい感じだったりする。記事の多様性も必要だった。
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▲電撃の記事は、ゲームサイクルが分かりやすかった。

まあ、大手の記事に「ゲームキャストを見て遊んだけど、ほんと面白い」って書いてあったら嬉しい。が、やってくれるのはアプリゲットさんだけだろう(この記事とかゲーキャスの受け売りだけど、まで書いてあって心配になるほど編集の心が広い)。普通は無理。
最近は開発者インタビュー名前が出たとき「某ブログ」と伏せられていたのが「ゲームキャスト」になったのでもうそれで良し。
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で、ついに予定通り「有料ゲームTOP10に入ったダンジョンメーカーってなんだ!?」という感じの記事を書く段階に入った。「ゲーム面白いよ!」という記事がたくさん出たとき、「面白い」以外の切り口の記事があった方がゲームに良い影響を及ぼすことが経験的に分かっていたからだ。
プレイヤーも大手メディアも「面白い、時間溶ける」とメッセージを出している。なので、そこの着地点として「面白すぎてこんなヒットしている!」と書いておけば情報がより多層的になって納得感が上がる……のだと思っている。
だから、大手メディアが情報を出すタイミングに合わせてセールス順位を元に「5年に1度クラスのヒット」であることを解説した。自分でも信じられないほど売れていたので、この記事は書いていて自分でも驚いた。
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▲現在70位と未曾有の大ヒット。厳密に言えば『ネオモンスターズ』が有料120円+PvPイベント+ガチャで上位にいたこともある。アプリ内課金が高い(ただしガチャのように無限ではない)のも上位の一因ではあると思うが。

そうして、ついに一般サイト……ねとらぼからコメントの依頼が来て記事が出た。自分でもできすぎだと思うが、ここまで結構時間をかけて、苦労しただけに感慨もひとしおだ。Yahooヘッドラインにも載った。
ゲームメディアが10を50にするのだとしたら、これらは50を500にしてくれる可能性があるので、どこまで行くか見てみたい。
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▲時間が溶ける、というキーワードも使われていて、涙出そう。

ということで、普段ゲームキャストがどんなことを考えて記事を書いているか、これが参考になる人もいると思うので書いてみた。
基本的にはセガのドリームキャストのゲームが売れなかった(青の六号とロードスはあの10倍売れるべきだった!)残念な経験を元に「どうすれば自分が好きなゲームは流行るの?」ということを考えて、記事を連携させている……つもり。
もちろん、次に多くの人に遊んで欲しいと思っているゲームもすでにあって、近々書くのでTwitterをフォローするなり、ブログをお気に入りに入れるなりして待っていていただけると、とても嬉しい。

今回はすごく上手くいった例で鼻高々に書いているが、「この言葉で攻めよう」のチョイスをミスって読者に怒られたこともあるし、開発者さんに「バズらせたい感じで書いた」と言ってまったく話題にならなかったり、いつも失敗と成功を繰り返してようやく超ヒットが出せただけなので、いずれ大失敗の話しも、機会があればまとめてみたいと思う。
でも、今は私にこれだけの手間をかけることを決心させた『ダンジョンメーカー』を遊んでみて欲しい。

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あと、これも。

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